エタノールの基本情報・配合目的・安全性

エタノール

化粧品成分表示名称 エタノール
医薬部外品表示名称 エタノール、無水エタノール
慣用名称 アルコール、エチルアルコール、酒精
配合目的 溶剤・基剤収れん清涼感付与、防腐、整髪 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、疎水性のエチル基(CH3CH2-)と親水性のヒドロキシ基(-OH)が結合した特有の芳香を有する揮発性一価アルコール(∗1)かつ低級アルコール(∗2)です[1a][2a]

∗1 一価アルコールとは、化学的に1個のヒドロキシ基(-OH)が結合したアルコールで、2個以上のヒドロキシ基(-OH)が結合したものは多価アルコールと呼ばれ(n個結合したものはn価アルコールとも呼ばれる)、高い吸湿性と保水性をもっているため保湿剤・保水剤として化粧品に汎用されています。一般にアルコールと呼ばれる酩酊成分はエタノールのみを指します。

∗2 低級アルコールとは、1個のヒドロキシ基(-OH)をもつ一価アルコールの中で、炭素数6個以下のアルコールのことを指し、一方で炭素数8個以上のアルコールは高級アルコール(脂肪族アルコール)に分類されます。一般に炭素数が少ないほど親水性が強くなり(親油性が弱くなり)、炭素数が多いほど親油性が強くなる(親水性が弱くなる)特徴を有しています。エタノールは炭素数2個の低級アルコールです。

エタノール

1.2. 物性

エタノールの物性は、

融点(℃) 沸点(℃) 比重(d 20/4) 屈折率(n 20/D)
-114.5 78.325 0.7893 1.3614

このように報告されています[2b]

1.3. 純度による分類

エタノールは、純度によって以下のように分類されており[3a][4a][5]

エタノールの種類 アルコール濃度:純度(vol%)
日本薬局方 医薬部外品
無水エタノール 99.5以上 99.5以上
エタノール 95.1 – 96.9 95.0 – 95.5
消毒用エタノール 76.9 – 81.4

医薬部外品(薬用化粧品)においては純度95.0-95.5%のものが用いられ、化粧品においては純度は定義されていませんが医薬部外品または日本薬局方の純度範囲に準ずると考えられます。

1.4. 化粧品以外の主な用途

エタノールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 各種アルコール飲料に用いられるほか[2c]、2-3%の低濃度で微生物に対する静菌効果を有しているため食品の保存用に汎用されていますが、エタノールは揮発性が強く一般的な保存料と同等の効果を発揮するには数%の添加が必要となり食品の風味を損なうため、比較的保存期間の短い食品の日持ち向上剤としてみそ、醤油、めん類、菓子類、畜肉、水産加工品、缶詰などに酸類や他の日持ち向上剤と併用して広く用いられています[6]
医薬品 濃度76.9-81.4%のものが手指・皮膚の消毒に用いられるほか[7]、安定化剤、可溶化剤、基剤、矯味剤、懸濁化剤、消泡剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤として用いられています[3b]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 溶剤・基剤
  • 収れん作用
  • 揮発性による清涼感付与効果
  • 防腐
  • 乾燥促進による整髪

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、日焼け止め製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、トリートメント製品、頭皮ケア製品、アウトバストリートメント製品、ヘアカラー製品、ヘアスタイリング製品、香水、ネイル製品、入浴剤など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 溶剤・基剤

溶剤・基剤に関しては、エタノールは化学構造的に油になじみやすいエチル基(CH3CH2-)と水になじみやすいヒドロキシ基(-OH)が結合した構造をもち、炭化水素鎖が2つと充分に短く、ヒドロキシ基の影響が強く出ることから、極性溶媒である水と自由な割合で混和する性質を有しています。

また、2つとはいえ炭化水素鎖を有していることから、様々な油や有機溶媒とも混和する性質も有しています。

このような背景から、香料着色剤植物エキス、ポリマーなどを溶かし込む溶剤・溶媒として汎用されています[1b][8a][9]

2.2. 収れん作用

収れん作用に関しては、エタノールは揮発性をもち、皮膚に塗布した場合に蒸発熱による皮膚温の一時的な低下による物理的な収れん作用を発揮することから、収れん性化粧品に配合されています[1c][8b][10a]

2.3. 揮発性による清涼感付与

揮発性による清涼感付与に関しては、エタノールは揮発性をもち、皮膚に塗布した場合に蒸発熱による皮膚温の一時的な低下が起こることが知られています[10b]

2008年に資生堂によって報告されたエタノール塗布による皮膚温度変化検証によると、

– ヒト皮膚温度変化測定試験 –

およびエタノール25μLを皮膚に塗布した場合の皮膚温度変化を測定したところ、以下のグラフのように、

エタノール塗布による皮膚温度変化

最大降下温度は、水で2.9℃、エタノールで1.1℃であり、初期温度降下は、エタノールの揮発が速かった。

このような検証結果が明らかにされており[11a]、エタノールは水と比較して初期温度降下が速いことが認められています。

初期温度降下速度がより早くかつ最大降下温度が大幅に低下するほど清涼感が高くなることから、エタノールの塗布は清涼感の付与効果を有していると考えられており[11b]、清涼感付与目的でアフターシェービングローション、さっぱり系化粧品などに使用されています。

2.4. 防腐

防腐に関しては、エタノールは濃度70%で最大の殺菌力を有することから、日本薬局方において76.9vol%-81.4vol%濃度範囲で消毒用エタノールとして用いられている一方で[4b]、濃度20%以下の低濃度では殺菌力は有さず、細菌の発育または増殖を抑制する静菌作用にとどまり、グラム陰性菌に対してはやや抑制力が高いことから、濃度7%程度まではグラム陰性菌の増殖抑制効果を有すると報告されています[12]

2012年に御木本製薬によって報告された抗菌性物質の最小発育阻止濃度の検証によると、

– in vitro : 保存性効力試験 –

抗菌性原料の強さを表す最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)を基準として、化粧品に汎用される8種類の抗菌性原料の抗菌性を日本薬局方保存効力試験で推奨された下記5菌種を使用して検討した。

  • 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus:Sa):グラム陽性球菌
  • 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa:Pa):グラム陰性桿菌
  • 大腸菌(Escherichia coli:Ec):グラム陰性桿菌
  • カンジダ(candida albicans:Ca):酵母
  • コウジカビ(aspergillus brasiliensis:Ab):カビ

滅菌容器に20gの試料を入れ、1mLあたり10⁷-10⁸個に調整した微生物懸濁液0.2mLを接種・混合し、1週間おきに一部を取り出し、MICを基準として生菌数を測定したところ、以下の表(∗3)のように、

∗3 表のSa,Pa,Ec,CaおよびAbは菌の英語表記の略称です。またMICは最小発育阻止濃度であるため、数字が小さい(濃度が低い)ほど抗菌力が高いことを意味します。

抗菌剤 MIC:最小発育阻止濃度(%)
Sa Pa Ec Ca Ab
メチルパラベン 0.2 0.225 0.125 0.1 0.1
フェノキシエタノール 0.75 0.75 0.5 0.5 0.4
BG 16 8 10 14 18
ペンチレングリコール 4 2 2 3 3
エタノール 9 5 5 7 5
DPG 22.5 8 12 16 22.5
1,2-ヘキサンジオール 2.5 1 1 1.5 1.5
カプリリルグリコール 0.35 >0.5 0.125 0.175 0.175

防腐剤として配合されるメチルパラベンやフェノキシエタノールに顕著な抗菌性があることは広く知られていますが、エタノールは抗菌性を有する多価アルコールであるカプリリルグリコール、1,2-ヘキサンジオールおよびペンチレングリコールに次ぐ抗菌性を示し、また5種類の菌種すべてに抗菌性を有していることが示された。

このような検証結果が明らかにされており[13]、エタノールに抗菌性が認められています。

このような背景から、濃度5%-7%以上では静菌性を発揮すると考えられますが、それ以下の濃度においては静菌作用はほとんどなく、防腐剤としての効果はほとんどないと考えられます。

2.5. 乾燥促進による整髪

乾燥促進による整髪に関しては、エタノールは揮発性を有していることから整髪料の乾燥を促進し毛髪のスタイリングを早める目的で整髪料・ヘアスタイリング製品に使用されています[8c]

3. 安全性評価

エタノールの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の一般飲食物添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):濃度依存的に皮膚刺激を引き起こす可能性あり
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚炎を有する場合は健常な皮膚と比較して皮膚刺激を引き起こす可能性がかなり高くなるため、注意が必要であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性

市立柏原病院皮膚科の試験データ[14]によると、

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 皮膚炎などを有する314人の患者に70%消毒用エタノール(添加物なし)を30分間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、以下表のように、
    皮膚病名 試験数 陽性数 陽性割合(%)
    蕁麻疹 84 35 41.7
    接触皮膚炎 164 102 62.2
    脂漏性皮膚炎 13 9 69.2
    尋常性ざ瘡 19 12 63.2
    その他 36 17 47.2

    175人(55.5%)の患者に刺激反応がみられた。70%の高濃度で刺激反応を生じている可能性が考えられたため、70%濃度で刺激反応を示した97人に13%エタノール希釈液で同様にパッチテストしたところ、82人が刺激反応を示した。さらに51人に3%エタノール希釈液で同様にパッチテストしたところ、30人が刺激反応を示した

このように濃度依存的な皮膚刺激反応が記載されており、国内においては化粧水に用いられる濃度は高くても20%程度と報告されていますが[15]、濃度13%および3%においても皮膚刺激反応が報告されていることから、一般に皮膚炎を有する場合においては皮膚刺激を引き起こす可能性が低くないと考えられます。

健常な皮膚においては、試験データはみあたりませんが日本薬局方および医薬部外品原料規格2021に収載されており、古くから溶剤・基剤として使用実績がある中で重大な皮膚刺激の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激はほとんどない(あっても軽度)と考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

3.2. 眼刺激性

化粧品使用濃度範囲における試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

3.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

東京医療保険大学大学院によって報告されたエタノール接触皮膚傷害症例データ[16]によると、

  • [ヒト試験] 1982年から2008年の間において日本人におけるエタノール接触皮膚障害は、接触蕁麻疹38例、アレルギー性接触皮膚炎18例、接触蕁麻疹とアレルギー性接触皮膚炎2例、接触蕁麻疹と刺激性接触皮膚炎1例であり、その多くはパッチ塗布5分後に紅斑が生じる即時型アレルギーで、まれに24-72時間後にも紅斑が持続または増強する遅延型反応も確認された

このように記載されており、試験データをみるかぎりごくまれにエタノールによる接触蕁麻疹およびアレルギー性接触皮膚炎が報告されているものの、臨床的な皮膚感作報告は非常に少なく[17a]、一般的に皮膚感作性はほとんどない(ごくまれに起こる可能性あり)と考えられます。

ただし、以下の東邦大学医学部附属大橋病院皮膚科によって報告された試験データによると[17b]

  • [ヒト試験] エタノールに過敏反応を有する17人にイソプロパノールおよびラノリンをパッチテストしたところ、6人(35.3%)がイソプロパノールに、2人がラノリンに感作反応を示し、またラノリンに感作した2人はイソプロパノールにも感作していた

このように記載されており、試験データをみるかぎりエタノールに過敏反応を示す場合はイソプロパノールラノリンにも感作反応を示す可能性があることから、エタノールに皮膚感作を有する場合はイソプロパノールおよびラノリンにも注意が必要であると考えられます。

4. 参考文献

  1. abc日本化粧品工業連合会(2013)「エタノール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,218-220.
  2. abc大木 道則, 他(1989)「エタノール」化学大辞典,256-257.
  3. ab日本医薬品添加剤協会(2021)「エタノール」医薬品添加物事典2021,66-67.
  4. ab日本医薬品添加剤協会(2021)「消毒用エタノール」医薬品添加物事典2021,300.
  5. 日本医薬品添加剤協会(2021)「無水エタノール」医薬品添加物事典2021,636-637.
  6. 樋口 彰, 他(2019)「エタノール」食品添加物事典 新訂第二版,49-50.
  7. 浦部 晶夫, 他(2021)「エタノール」今日の治療薬2021:解説と便覧,160.
  8. abc日光ケミカルズ株式会社(1977)「天然アルコール」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,58-70.
  9. 宇山 侊男, 他(2020)「エタノール」化粧品成分ガイド 第7版,229.
  10. ab西山 聖二・熊野 可丸(1989)「基礎化粧品と皮膚 (Ⅱ)」色材協会誌(62)(8),487-496. DOI:10.4011/shikizai1937.62.487.
  11. ab石窪 章・野田 章(2008)「化粧品基剤塗布時の熱的特性と清涼感への影響」日本化粧品技術者会誌(42)(4),289-296. DOI:10.5107/sccj.42.289.
  12. 人見 潤(2005)「アルコールと殺菌の話」花王ハイジーンソルーション(8),16-17.
  13. 谷口 康将・野村 重雄(2012)「最小発育阻止濃度(MIC)を基準とした予測式からの化粧品の保存効力の予測」日本化粧品技術者会誌(46)(4),295-300. DOI:10.5107/sccj.46.295.
  14. 東 順子(1986)「エタノール皮膚障害とエタノールによる20分間密封貼布試験」皮膚(28)(1),11-16. DOI:10.11340/skinresearch1959.28.11.
  15. 霜川 忠正(2001)「エタノール」BEAUTY WORD 製品科学用語編,63-64.
  16. 遠藤 博久, 他(2009)「エタノール接触皮膚障害症例と交差反応について」Journal of Healthcare-associated Infection(2),13-17.
  17. ab斎藤 文雄・松岡 芳隆(1985)「エタノール接触アレルギー」皮膚(27)(3),578-584. DOI:10.11340/skinresearch1959.27.578.

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