水の基本情報・配合目的・安全性

水

化粧品表示名称
医薬部外品表示名称 精製水
化粧品国際的表示名称(INCI名) Water
配合目的 溶剤・基剤 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される水素(元素記号:H)と酸素(元素記号:O)から成る化合物を、蒸留、イオン交換、超ろ過またはこれらの組み合わせにより精製して得られる液状物質です[1a][2][3]

水

1.2. 分布

水は、水溶液として地球表面の70%を覆っており、そのうち97.5%は塩水で残りの2.5%を淡水が占めています[4a]

淡水のうち70%は氷河・氷山として固定されており、残りの30%のほとんどは土中の水分あるいは地下深くの帯水層の地下水となっているため、ヒトが利用しやすい河川や湖沼に存在する地表水は淡水のうち約0.4%(地球上のすべての水の0.01%)となっています[4b]

1.3. 皮膚における水の役割

皮膚の上層部は真皮および表皮から成り立っていますが、皮膚における水分量は、以下の皮膚における水分量の変化図をみてもらうとわかるように、

皮膚における水分量の変化

真皮では約70%存在する水分量が表皮の基底層から角質層に向かうにつれて減少し、角質層においては約10%-30%とされており、角質層が極めて有効な水分保持機能および水分蒸散抑制機能を発揮していることから、水バリア機構の主体が角質層であることが定説とされています[5]

皮膚最外層である角質層は、以下の角質構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子(NMF)を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[6][7]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[8a]

角質層内の主な水分は、角層構成タンパク質であるケラチンや角質細胞に存在するイオン類、アミノ酸類など天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在し、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[8b][9a]

また、真皮における水分は、以下の真皮構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

真皮の構造

真皮構造物と水和(∗1)して存在したり、構造水や細胞水として存在しています[8c]

∗1 水和(hydration)とは、ある化学種へ水分子が付加する現象であり、イオン性化合物や水素結合性化合物が水に溶解し、静電相互作用や水素結合することによって起こります。

構造物の中では、基質の主要成分であるヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンが水和して膨潤し、空間的に60%-70%を占め、コラーゲンなどに結合して存在しており、残りの空間の25%がコラーゲンなどの繊維であり、水和しながらその構造を維持しています[8d]

1.4. 化粧品以外の主な用途

水の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
生活用品 トイレ、風呂、炊事、洗濯、洗面などに家庭用水として用いられています[10]
食品 水道水、ミネラルウォーターなど飲料水として、水割りなどに溶媒として用いられています[11]
医薬品 基剤、湿潤、湿潤調整、光沢化、溶剤、溶解目的の医薬品添加剤として経口剤、外用剤、眼科用剤、耳鼻科用剤、口中用剤などに用いられています[12]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 溶剤・基剤
  • 効果・作用についての補足

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、シート&マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、トリートメント製品、頭皮ケア製品、アウトバストリートメント製品、ヘアカラー製品、ネイル製品、入浴剤など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 溶剤・基剤

溶剤・基剤に関しては、水は様々な水溶性物質を溶かし込むために最も汎用されている溶媒であり、またその水溶性物質を溶かし込む性質および安全性・安定性の側面から水溶性基剤としても最も汎用されています[1b][8e][13]

2.2. 効果・作用についての補足

蒸留水単体を直接皮膚表面に塗布した効果に関しては、水を皮膚表面に塗布した場合、角層中の天然保湿因子(NMF)やケラチンなどのタンパク質と水との水素結合、タンパク質同士の結合に自由度が増して構造がゆるんだり、破壊されたりするため、角質層は柔軟化しますが、水分が蒸発し乾燥すると再び水素が結合し角質層は元の状態よりも硬化することが知られています[14][9b][8f]

一方で、油剤(炭化水素)/水の混合系を塗布した場合、水単体の塗布と同様にタンパク質の構造中の水との水素結合に対する破壊作用が瞬時にみられますが、油剤の閉塞作用により水の蒸発が抑制され、硬化するまでの時間が水単体よりも長くなることが報告されています[8g]

ヒアルロン酸などの保湿剤/水の混合系を塗布した場合、柔軟作用に寄与し、処理前よりも角質層が硬化することがないことから[8h]、角質層に水を塗布して保湿するためには、保湿剤や油性成分の併用が重要であると考えられます。

3. 安全性評価

水の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

日本薬局方および医薬部外品原料規格2021に収載されており、40年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

3.2. 眼刺激性

日本薬局方および医薬部外品原料規格2021に収載されており、古来からの日常的な使用実績の中で重大な眼刺激はほとんどないと考えられますが、試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「水」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,827.
  2. “Pubchem”(2021)「Water」,2021年6月30日アクセス.
  3. 霜川 忠正(2001)「精製水」BEAUTY WORD 製品科学用語編,412.
  4. ab環境省(2010)「水の星地球 – 美しい水を将来へ –」図で見る環境白書,102-127.
  5. 安部 隆(1985)「皮膚と水」油化学(34)(6),413-419.
  6. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  7. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  8. abcdefgh日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  9. ab武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  10. 国土交通省(2014)「水の利用状況」,2021年6月30日アクセス.
  11. 国土交通省(2018)「安全でおいしい水の確保」,2021年6月30日アクセス.
  12. 日本医薬品添加剤協会(2021)「精製水」医薬品添加物事典2021,336-337.
  13. 宇山 侊男, 他(2020)「水」化粧品成分ガイド 第7版,50.
  14. H. Tagami, et al(1980)「Evaluation of the Skin Surface Hydration in Vivo by Electrical Measurement」Journal of Investigative Dermatology(75)(6),500-507. DOI:10.1111/1523-1747.ep12524316.

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