ベンジルアルコールの基本情報・配合目的・安全性

ベンジルアルコール

化粧品成分表示名称 ベンジルアルコール
医薬部外品表示名称 ベンジルアルコール
配合目的 溶剤、浸透促進 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、ベンゼン環にメチレン基(CH₂)を通じてヒドロキシ基(−OH)が結合した弱い特有の香気をもつ揮発性の芳香族アルコール(∗1)です[1][2a]

∗1 芳香族アルコールとは、分子中に芳香環をもち、芳香環にメチレン基(CH₂)を通じて水酸基(ヒドロキシ基:−OH)をもつアルコールのことです。

ベンジルアルコール

1.2. 物性

ベンジルアルコールの物性は、

融点(℃) 沸点(℃) 比重(d 25/4) 屈折率(n 20/D)
-15.3 205.5 1.0454 1.5396

このように報告されています[3]

1.3. 分布

ベンジルアルコールは、自然界においてジャスミン、アカシア、チョウジ、チャなどの花精油中にそのまま、またはエステルの形で存在しています[2b][4a]

1.4. 化粧品以外の主な用途

ベンジルアルコールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 チェリー、オレンジ、バニラ、グレープやナッツ類の香料保留効果目的に、また油性香料の溶解助剤として用いられています[4b]
医薬品 安定・安定化、基剤、懸濁・懸濁化、等張化、防腐、保存、無痛化、溶剤、溶解・溶解補助目的の医薬品添加剤として各種注射、外用剤、口中用剤、眼科用剤、耳鼻科用剤、経口剤などに用いられています[5]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 溶剤
  • 染料の浸透促進
  • 効果・作用についての補足

主にこれらの目的で、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、ヘアカラー製品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、整髪料、香水など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 溶剤

溶剤に関しては、ベンジルアルコールはにはわずかしか溶解しないものの、ほとんどの有機溶媒と混和する高沸点溶剤・ハイドロトロープ剤(∗2)であり[6][7]、配合成分の溶解性向上目的で主に洗浄系製品や染料、防腐剤の溶解剤に使用されています[8][9]

∗2 ハイドロトロープ剤(Hydrotropes)とは、分子中に親水基と親油基が存在するが、親油基の大きさが小さく界面活性を示すには至らない化合物であり、かつ他の有機化合物を水あるいは塩類の水溶液中に高濃度に溶かす性質をもつ比較的低分子量の有機化合物のことをいいます[10][11]

また、ベンジルアルコールは抗菌性は高くありませんが、グラム陽性菌およびグラム陰性菌に活性を示すことから[12a]、防腐成分の溶媒および防腐助剤として使用されており、とくに安息香酸、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、安息香酸Naデヒドロ酢酸Naソルビン酸Kなどの防腐剤を溶かし込む溶媒として使用されています。

2.2. 染料の浸透促進

染料の浸透促進に関しては、ベンジルアルコールは羊毛用染料をよく溶解し、羊毛繊維に対する染料の染色速度および増染毛度を高める染色助剤として古くから知られており[13][14]、酸性染毛料においても染毛速度および染毛度の増強補助としてヘアカラー剤、ヘアマニキュアなどに使用されています[15]

2.3. 効果・作用についての補足

ベンジルアルコールは、高くはないものの細菌に対する抗菌性を示すことが報告されている一方で[12b]、細菌に対してもほとんど抗菌性を示さないデータも報告されていることから[16]、ベンジルアルコールの抗菌性に関しては、他の抗菌試験データなどがみつかりしだい総合的に判断し、再編集します。

ただし、実際的に他の防腐剤と組み合わせて細菌への防腐を兼ねた溶剤として原料化されているものもあるため、防腐を兼ねた配合目的で用いられている製品もあると考えられます。

3. 配合製品数および配合量範囲

ベンジルアルコールは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 上限なし
育毛剤 上限なし
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 5.0
薬用口唇類 配合不可
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 5.0
染毛剤 上限なし
パーマネント・ウェーブ用剤 上限なし

また、化粧品としての配合製品数および配合量に関しては、海外の2010-2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ベンジルアルコールの配合製品数と配合量の調査(2010-2011年)

4. 安全性評価

ベンジルアルコールの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:0.65%濃度以下においてほとんどなし、3%濃度以上においてまれに皮膚刺激の可能性あり
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-まれに皮膚刺激を引き起こす可能性あり
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-まれに皮膚感作を引き起こす可能性あり
  • 皮膚吸収・代謝・排泄:生体内で安息香酸に変換され尿排泄される

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[17a][18]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 9人の被検者に3%ベンジルアルコールを含むポリプロピレンを4日間連続パッチ適用し、5日目に試験部位の皮膚反応をFrosch-Kligmanスコアリングシステムに基づいて評価したところ、この試験物質は刺激剤に分類された(Harvell et al,1994)
  • [ヒト試験] 110人の被検者に0.65%ベンジルアルコールを含むマスカラ製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった(Hill Top Research,1997)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に10%ベンジルアルコールを含むワセリン製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった(Kligman,1970;Opdyke,1973)
  • [ヒト試験] 31人の被検者にベンジルアルコール0.2mLを4時間パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、1人の被検者が皮膚刺激を示した(DA Basketter,1997)
  • [ヒト試験] 485人の患者に5%ベンジルアルコールを含むローションをアタマジラミ治療プログラムとして適用したところ、11人(2.3%)の患者が皮膚刺激を示した(TL Meinking et al,2010)

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 化粧品皮膚炎を有する713人の患者に5%ベンジルアルコールを含むワセリンを48時間パッチ適用し、パッチ除去後すぐおよび24時間後に皮膚反応を評価したところ、3人の患者に皮膚反応がみられた(Adams and Maibach,1985)
  • [ヒト試験] アレルギー性接触皮膚炎の可能性のある5,202人の患者(化粧品に対する過敏症517人含む)にパッチテスト(詳細不明)を実施したところ、ベンジルアルコールに対して48人(0.92%)が皮膚反応を示した。化粧品皮膚炎を有する155人の患者の中で皮膚反応を示したのは2人であった(Broeckx et al,1987)
  • [ヒト試験] 102人の患者に5%ベンジルアルコールを含むワセリンを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、8人の患者が陽性反応を示した(BM Hausen,2001)
  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する2,166人の患者に1%ベンジルアルコールを24-48時間パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、6人(0.3%)の患者が陽性反応を示した(A Schnuch et al,2007)

このように記載されており、試験データをみるかぎり健常な皮膚においては共通して皮膚感作なしと報告されており、また3%濃度以上においてまれに皮膚刺激が報告されていることから、一般に皮膚感作性はほとんどなく、3%濃度以上においてまれに皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚炎を有する場合においては、まれに皮膚刺激および皮膚感作が報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどなし-まれに起こる可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development)の安全性データ[19]によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に4%ベンジルアルコール水溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験条件下においてこの試験物質は非刺激剤であった(D. I. Match,1921)
  • [動物試験] ウサギの眼に0.08%ベンジルアルコール水溶液を2滴4日間にわたって点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験条件下においてこの試験物質は非刺激剤であった(D. V. Carter et al,1958)
  • [動物試験] ウサギの眼にベンジルアルコール(濃度不明)を適用し、OECD405テストガイドラインに基づいて適用後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は中程度の眼刺激に分類された(Bayer AG data,1990)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 皮膚吸収および体内挙動(代謝、排泄)

ベンジルアルコールは、体内で代謝されると単純な酸化により安息香酸に変換されることがわかっています[17b]

また、安息香酸と安息香酸Naの生体内変換は同等であることが実証されており[17c][20]、生体内における安息香酸Naは、

  • 24時間内の尿中の安息香酸排泄量を定量化し、身体領域の2ヶ所に安息香酸を塗布した後、ある部位をテープで剥離し角質層中の安息香酸の量を測定したところ、尿からの定量値はテープ剥離から推定された予測値と同等であった

このように報告されていることから[21]、安息香酸Naはほぼ全量が尿排泄されることが認められており、この結果から一般にベンジルアルコールは体内で安息香酸に変換され、尿排泄されると考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ベンジルアルコール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,881.
  2. ab大木 道則, 他(1989)「ベンジルアルコール」化学大辞典,2169.
  3. 有機合成化学協会(1985)「ベンジルアルコール」有機化合物辞典,935.
  4. ab樋口 彰, 他(2019)「ベンジルアルコール」食品添加物事典 新訂第二版,329.
  5. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ベンジルアルコール」医薬品添加物事典2021,546-547.
  6. 日光ケミカルズ株式会社(1977)「香料」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,527-551.
  7. 浅原 照三, 他(1976)「ベンジルアルコール」溶剤ハンドブック,388-390.
  8. 鐵 真希男(2010)「コンディショナーの配合成分と製剤」化学と教育(58)(11),536-537. DOI:10.20665/kakyoshi.58.11_536.
  9. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「アルコール」パーソナルケアハンドブックⅠ,44-55.
  10. 荻野 圭三(1984)「混ぜる – 分散と溶解」油化学(33)(9),563-572. DOI:10.5650/jos1956.33.563.
  11. 野々村 美宗(2016)「化粧品におけるエマルション・可溶化物・泡製剤調製のテクノロジー」日本接着学会誌(52)(5),134-138. DOI:10.11618/adhesion.52.134.
  12. ab日光ケミカルズ株式会社(1977)「フェノール類」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,650-651.
  13. 飯島 俊郎(1962)「溶媒染色法」有機合成化学協会誌(20)(4),401-406. DOI:10.5059/yukigoseikyokaishi.20.401.
  14. 高瀬 福巳(1967)「有機溶媒を助剤にした羊毛染色」繊維学会誌(23)(1),S21-S28. DOI:10.2115/fiber.23.S21.
  15. 新井 泰裕(1993)「ヘアカラー」色材協会誌(66)(11),665-670. DOI:10.4011/shikizai1937.66.665.
  16. K. Sawano, et al(1993)「Activity of Fragrance Materials Against Skin Resident Flora Responsible for the Axillary Odor」日本化粧品技術者会誌(27)(3),227-241. DOI:10.5107/sccj.27.227.
  17. abcB. Nair(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid, and Sodium Benzoate」International Journal of Toxicology(20)(3_suppl),23-50. DOI:10.1080/10915810152630729.
  18. W. Jphnson, et al(2017)「Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid and its Salts, and Benzyl Benzoate」International Journal of Toxicology(36)(3_suppl),5S-30S. DOI:10.1177/1091581817728996.
  19. OECD(2001)「Benzoate」Final Assessment Report.
  20. K. Kubota & T. Ishizaki(1991)「Dose-dependent pharmacokinetics of benzoic acid following oral administration of sodium benzoate to humans」European Journal of Clinical Pharmacology(41)(4),363–368. DOI:10.1007/bf00314969.
  21. A. Rougier, et al(1986)「Regional variation in percutaneous absorption in man: measurement by the stripping method」Archives of Dermatological Research(278)(6),465-469. DOI:10.1007/bf00455165.

TOPへ