イソプロパノールの基本情報・配合目的・安全性

イソプロパノール

化粧品成分表示名称 イソプロパノール
医薬部外品表示名称 イソプロパノール
慣用名称 IPA、イソプロピルアルコール
配合目的 溶剤・基剤 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、3個の炭素鎖の2個目にヒドロキシ基(-OH)が結合したプロパノールの構造異性体(∗1)であり、エタノール様香気をもつ揮発性の一価アルコール(∗2)かつ低級アルコール(∗3)です[1a][2a][3]

∗1 構造異性体とは、化学組成式が等しく、原子の間の結合関係が異なる分子のことです。プロパノールは1-プロパノールと2-プロパノールの2種類の構造異性体があり、1-プロパノールは1つ目の炭素が、2-プロパノールは2つ目の炭素がヒドロキシ基(-OH)に置換された構造であることを意味します。

∗2 一価アルコールとは、化学的に1個のヒドロキシ基(-OH)が結合したアルコールで、2個以上のヒドロキシ基(-OH)が結合したものは多価アルコールと呼ばれ(n個結合したものはn価アルコールとも呼ばれる)、高い吸湿性と保水性をもっているため保湿剤・保水剤として化粧品に汎用されています。

∗3 低級アルコールとは、ヒドロキシ基(水酸基:-OH)を1つだけもった一価アルコールの中で、炭素数6個以下のアルコールのことを指し、一方で炭素数8個以上のアルコールは高級アルコール(脂肪族アルコール)に分類されます。一般に炭素数が少ないほど親水性が強くなり(親油性が弱くなり)、炭素数が多いほど親油性が強くなる(親水性が弱くなる)特徴を有しています。イソプロパノールは炭素数3個の低級アルコールです。

イソプロパノール

1.2. 物性

イソプロパノールの物性は、

融点(℃) 沸点(℃) 比重(d 25/4) 屈折率(n 25/D)
-89.5 82.4 0.78095 1.3747

このように報告されています[2b]

1.3. 分布

イソプロパノールは、自然界において果実類(リンゴ、バナナなど)や野菜類(トマト、玉ねぎなど)に香気成分として常在しています[4a]

1.4. 化粧品以外の主な用途

イソプロパノールの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 製造において抽出溶媒として、香りの再現目的として様々な加工食品に用いられています[4b]
医薬品 濃度50%-70%イソプロパノールは消毒用エタノールと同様に手指・皮膚の消毒に用いられています[5]。また可溶・可溶化、基剤、保存、溶剤、溶解補助目的の医薬品添加剤として外用剤に用いられています[6]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 溶剤・基剤

主にこれらの目的で、ネイル製品、メイクアップ化粧品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ヘアカラー製品、スキンケア化粧品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 溶剤・基剤

溶剤・基剤に関しては、イソプロパノールは水になじみやすいヒドロキシ基(-OH)をもつことからエタノールなどの極性溶媒に溶け、同時に相対的に大きな疎水性のイソプロピル基(-CH(CH3)2をもつことから油性成分などの非極性溶媒にも溶ける両親媒性(∗4)を示すとともに香料や油性成分などの水中における分散を均一にし、香気の発散を良好にする性質を有しています[7]

∗4 両親媒性とは、親水性と親油性の両方を有している性質のことです。

とくに、高分子化合物(ポリマー)皮膜形成剤を溶かす性質に優れた溶媒成分であることから[8]、香気の発散性を向上させる溶剤としてネイル製品、メイクアップ化粧品、シャンプー製品、ヘアコンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品などに使用されています[1b]

3. 配合製品数および配合量範囲

配合製品数および配合量に関しては、海外の2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

イソプロパノールの配合製品数と配合量の調査(2009年)

4. 安全性評価

イソプロパノールの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

グンゼの安全性試験データ[9]によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデルを用いて、角層表面にイソプロパノールを処理した後にPII(Primary Irritation Index)を指標(無刺激性:0-0.4、弱い刺激性:0.5-1.9、中程度の刺激性:2-4.9、強い刺激性:5-8)として判定したところ、PIIは0.78であり、非刺激性であると結論付けられた。また細胞生存率においては50%以下に減少する場合は刺激物と判定されるが、イソプロパノールの細胞生存率は処理の18時間後に89.5% ± 6.0、42時間後に84.8% ± 10.8であり、非刺激性に分類された

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

化粧品使用濃度範囲における試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ[10]によると、

  • [ヒト試験] 9人の被検者に80.74%イソプロパノールを含むスプレーを対象に皮膚感作性試験を実施(詳細不明)したところ、この試験物質は皮膚感作の可能性を示さなかった(J.M. Damato et al,1979)
  • [ヒト試験] 109人の被検者に2.85%イソプロパノールを含む毛髪染料を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚感作性を示さなかった(Anonymous,2010)
  • [ヒト試験] ペラルゴン酸の刺激能を評価する試験においてイソプロパノールを溶剤として用いて、健常な皮膚を有する被検者に適用したところ、陽性の試験結果は報告されなかった(International Agency for Research on Cancer,2010)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「イソプロパノール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,196.
  2. ab大木 道則, 他(1989)「イソプロピルアルコール」化学大辞典,181.
  3. 浅原 照三, 他(1976)「2-プロパノール」溶剤ハンドブック,345-349.
  4. ab樋口 彰, 他(2019)「イソプロパノール」食品添加物事典 新訂第二版,40-41.
  5. 浦部 晶夫, 他(2021)「イソプロパノール」今日の治療薬2021:解説と便覧,161.
  6. 日本医薬品添加剤協会(2021)「イソプロパノール」医薬品添加物事典2021,53-54.
  7. 日光ケミカルズ株式会社(1977)「天然アルコール」ハンドブック – 化粧品・製剤原料 – 改訂版,58-70.
  8. 宇山 侊男, 他(2020)「イソプロパノール」化粧品成分ガイド 第7版,229.
  9. N. Morikawa, et al(2008)「Assessment of the in vitro skin irritaion by chemicals using the Vitrolife-Skin human skin model.」Alternatives to Animal Testing and Experimentation(13)(1),11-26. DOI:10.11232/aatex.13.11.
  10. B. Heldreth, et al(2012)「Final Report of the Cosmetic Ingredient Review Expert Panel on the Safety Assessment of Methyl Acetate」International Journal of Toxicology(31)(4_suppl),112S-136S. DOI:10.1177/1091581812444142.

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