ヘキシレングリコールの基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | ヘキシレングリコール |
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医薬部外品表示名 | ヘキシレングリコール |
INCI名 | Hexylene Glycol |
配合目的 | 溶剤 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
以下の化学式で表される二価アルコール(多価アルコール)(∗1)です[1a][2a]。
∗1 2個以上のヒドロキシ基(-OH)が結合したアルコールを多価アルコールといい(n個結合したものはn価アルコールともよばれる)、ヘキシレングリコールは2個のヒドロキシ基(-OH)が結合した二価アルコールです。
1.2. 物性
ヘキシレングリコールの物性は、
融点(℃) | 沸点(℃) | 比重(d 20/20) | 屈折率(n 20/D) |
---|---|---|---|
-50 | 197.1 | 0.925 | 1.4276 |
このように報告されています[2b]。
1.3. 化粧品以外の主な用途
ヘキシレングリコールの化粧品以外の主な用途としては、
分野 | 用途 |
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医薬品 | 溶解目的の医薬品添加剤として外用剤に用いられています[3]。 |
これらの用途が報告されています。
2. 化粧品としての配合目的
- 溶剤
主にこれらの目的で、メイクアップ製品、化粧下地製品、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、アウトバストリートメント製品、メイクアップリムーバー製品などに汎用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 溶剤
溶剤に関しては、ヘキシレングリコールは分子内に水やエタノールと親和性のあるヒドロキシ基(-OH)と炭化水素や脂肪酸と親和性のある炭素鎖をもつことから、水と完全に混和し低級アルコール、炭化水素および脂肪酸と溶け合う性質を有しており、主に原料に配合されている防腐剤の溶剤として使用されています[1b][4][5]。
3. 配合製品数および配合量範囲
配合製品数および配合量に関しては、海外の1985年および2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
4. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 40年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:濃度1.6%以下においてほとんどなし-軽度
- 眼刺激性:濃度25%以下においてほとんどなし
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6a]によると、
- [ヒト試験] 103名の被検者に1%ヘキシレングリコールを含むアイメイクアップリムーバーを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を実施したところ、この製品は軽度の皮膚刺激剤および非感作剤に分類された(Testkit Laboratories,1980)
- [ヒト試験] 52名の被検者に0.016%ヘキシレングリコールを含む洗浄製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この製品は軽度の皮膚刺激剤および非感作剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1976)
- [ヒト試験] 106名の被検者に0.016%ヘキシレングリコールを含む洗浄製品を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この製品は非刺激剤および非感作剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
- [ヒト試験] 80名の被検者に1.6%ヘキシレングリコールを含む洗浄製品を対象に2週間の使用テストを実施したところ、この製品は最小限の皮膚刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)
このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。
皮膚刺激性に関しては、濃度1.6%以下において非刺激-軽度の皮膚刺激が報告されているため、一般に濃度1.6%以下において皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。
4.2. 眼刺激性
Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6b]によると、
- [動物試験] ウサギの眼に25%ヘキシレングリコール水溶液を適用し、眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1973)
このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度25%において眼刺激なしと報告されていることから、一般に濃度25%以下において眼刺激性はほとんどないと考えられます。
5. 参考文献
- ⌃ab日本化粧品工業連合会(2013)「ヘキシレングリコール」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,865.
- ⌃ab有機合成化学協会(1985)「2-メチル-2,4-ペンタンジオール」有機化合物辞典,1033.
- ⌃日本医薬品添加剤協会(2021)「ヘキシレングリコール」医薬品添加物事典2021,537.
- ⌃伊藤 輝雄(1987)「ヘキシレングリコール」有機合成化学協会誌(45)(1),71-72. DOI:10.5059/yukigoseikyokaishi.45.71.
- ⌃Rhodia S.A.(2015)「Hexylene Glycol」Technical Data Sheet.
- ⌃abR.E. Elder(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Butylene Glycol Hexylene Glycol Ethoxydiglycol and Dipropylene Glycol」Journal of the American College of Toxicology(4)(5),223-248. DOI:10.3109/10915818509078692.