炭酸プロピレンとは…成分効果と毒性を解説

溶剤
炭酸プロピレン
[化粧品成分表示名称]
・炭酸プロピレン

[医薬部外品表示名称]
・炭酸プロピレン

化学構造的に多価アルコール(∗1)の一種であるPG(プロピレングリコール)と炭酸(∗2)を結合した分子量102.09のエステルです(文献2:2020)

∗1 多価アルコールとは、2個以上のヒドロキシ基(水酸基:-OH)をもつアルコールを指し、水酸基の影響で非常に高い吸湿性と保水性をもっているため化粧品に最も汎用されている保湿剤です。名称に「アルコール」がついているので勘違いしやすいですが、一般的なアルコール(エタノール)は1個の水酸基をもつ一価アルコールで、多価アルコールと一価アルコール(エタノール)は別の物質です。

∗2 炭酸は炭素のオキソ酸であり、二酸化炭素を溶解することで生じます。

一般的な用途としては、高い誘電率をもつため電解液としてリチウムイオン電池などに汎用されています(文献3:2018)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でメイクアップ化粧品、ネイル製品、ヘアマニキュアリムーバーなどに汎用されています。

溶剤

溶剤に関しては、炭酸プロピレンは非プロトン性極性溶媒(∗3)であり、粘土ゲル化剤であるジステアルジモニウムヘクトライトステアラルコニウムヘクトライトステアラルコニウムベントナイトなど有機変性粘土鉱物の溶媒として、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、リップカラー、ファンデーション、チーク、コンシーラーなどメイクアップ化粧品に汎用されています(文献4:-;文献5:-)

∗3 高極性溶媒とは、比較的水に溶けやすい(親水性)の溶液であり、一般に誘電率が高いほど極性が高くなります。プロトンとは水素の陽イオン「H⁺」を指し、プロトン性溶媒とはプロトン(水素イオン)供与性を持つ溶媒を指し、この性質から一般的に溶媒分子間で水素結合を形成しています。非プロトン性溶媒は、プロトン(水素イオン)供与性が著しく低い溶媒を指し、プロトン性極性溶媒がイオンを安定化する効果があるのに対して、非プロトン性溶媒は陽イオンのみを安定化するものが多く、陰イオンの反応性を高める傾向があります。

また、溶剤としてネイルカラー、ネイルリムーバー(除光液)にも使用されています。

酸性染料の溶出

酸性染料の溶出に関しては、まず前提知識としてヘアマニキュアを使用する際に頻繁に起こる皮膚染色について解説します。

ヘアマニキュアを塗布する際は少なからず皮膚(頭皮)への染色が起こることから問題視されており、ヘアマニキュア剤においては皮膚および頭皮に付着しにくいものが開発されてきていますが、付着を除去するリムーバーの存在も重要視されています。

炭酸プロピレンは誘電率の高い極性溶媒であり、皮膚および頭皮に付着したヘアマニキュア(酸性染料)の溶出(酸性染料を溶剤に溶かし込む)作用に優れていることが報告されており(文献6:2003)、皮膚および頭皮に付着したヘアマニキュアを溶出する目的でヘアマニキュアリムーバー(ヘアカラー専用リムーバー)に使用されています。

また、炭酸プロピレンは経皮浸透性が低く、単体では染料を溶かし込む効果が限られますが、エタノール(∗4)を併用することで経皮浸透性が促進され、染色部位に届くことが確認されていることから(文献6:2003)、酸性染料の溶出目的の場合はエタノールと併用して使用されます。

∗4 エタノールは変性アルコールを使用している可能性も考えられます。

実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

炭酸プロピレンの配合製品数と配合量の調査(2002-2003年)

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炭酸プロピレンの安全性(刺激性・アレルギー)について

炭酸プロピレンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:5%濃度以下においてほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:5%濃度以下においてほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に10%炭酸プロピレン水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験条件下においてこの試験物質は皮膚刺激剤、皮膚疲労剤および皮膚感作剤ではなかった(Food and Drug Research Laboratories,1972)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に5%炭酸プロピレン水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験条件下においてこの試験物質は皮膚刺激剤、皮膚疲労剤および皮膚感作剤ではなかった(Food and Drug Research Laboratories,1972)
  • [ヒト試験] 210人の被検者に2%炭酸プロピレンを含むクリームブラッシュを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において2人の被検者に中程度の紅斑および丘疹がみられたが、この反応は非特異的(この試験物質に特徴的にみられる症状とは限らない)であるとみなされ、また試験期間を通じて他に有害な皮膚反応はみられず、この試験条件下においてこの試験物質は強い皮膚刺激剤および接触感作剤ではないと結論付けられた(Leo Winter Associates,1979)
  • [ヒト試験] 51人の被検者の無傷または擦過した皮膚に2%炭酸プロピレンを含むアンチパースピラントを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において無傷な皮膚および擦過した皮膚各4人の被検者に紅斑がみられたが、試験期間を通じて他に有害な皮膚反応はみられず、この試験条件下においてこの試験物質は強い皮膚刺激剤および接触感作剤ではないと結論付けられた(Hill Top Research,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されており、また皮膚刺激性は非刺激-軽度の範囲で報告されていることから、一般に5%濃度以下において皮膚感作性はほとんどなく、皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギ2群の片眼にそれぞれ10.5%および17.5%炭酸プロピレン製剤を14日間連続で点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激は認められなかった(M Kuramoto et al,1972)
  • [動物試験] 6匹のウサギ5群の片眼に3%炭酸プロピレンを含む有機変性粘土鉱物ゲル0.1mLを点眼し、眼はすすがず、点眼1時間後および1,2,3,4および7日後に眼刺激性を0-110のスケールで評価したところ、眼刺激スコアは8.5-17.17の範囲であり、この試験物質はわずかな眼刺激剤に分類された(Journal Officiel de la Republique Francaise,1971;1973;JH Kay et al,1962;JP Guillot et al,1980;1982)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に2%炭酸プロピレンを含むブラッシュクリーム0.1mLを点眼し、眼はすすがず、点眼1時間後および1,2,3,4および7日後に眼刺激性を0-110のスケールで評価したところ、1時間後でわずかな結膜刺激が観察されたが、この刺激は24時間以内に消失し、他の目刺激の兆候はなく、この試験物質はわずかな眼刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.54%炭酸プロピレンを含むリップスリッカー0.1mLを点眼し、眼はすすがず、点眼1時間後および1,2,3,4および7日後に眼刺激性を0-110のスケールで評価したところ、いずれのウサギも眼刺激は観察されず、この試験物質は非刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.51%炭酸プロピレンを含むリップグロス0.1gを点眼し、3匹は眼ずすすぎ、残りの3匹は眼をすすがず、点眼24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギも眼刺激は観察されず、この試験物質は非刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、5%濃度以下において非刺激-わずかな眼刺激が報告されているため、5%濃度以下において一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 304人の被検者に1.51%-1.98%炭酸プロピレンを含む目元化粧品を対象に光感作性試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も光感作反応を示さず、この試験条件下においてこの製品は光アレルゲンではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,-)
  • [ヒト試験] 10人の被検者に20%炭酸プロピレンを含むアンダーアームスティックを24時間半閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にUVライト(320-400nm)を照射したところ、いずれの被検者も光毒性の兆候はみられなかった(TKL Research Inc,1983)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作なしと報告されていることから、一般に光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

炭酸プロピレンは溶剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:溶剤

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Propylene Carbonate」Journal of the American College of Toxicology(6)(1),23-51.
  2. “Pubchem”(2020)「Propylene carbonate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Propylene-carbonate> 2020年2月26日アクセス.
  3. 吉野 彰(2018)「モバイル機器を支える電池」化学と教育(66)(6),296-299.
  4. Elementis(-)「BENTONE GEL Series」Technical Data Sheet.
  5. IOI Oleo(-)「MIGLYOL Gel Series」Technical Data Sheet.
  6. 鎌田 勉, 他(2003)「溶媒特性を利用したヘアマニュキュア用新規リムーバーの開発」日本化粧品技術者会誌(37)(3),213-217.

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