変性アルコールとは…成分効果と毒性を解説

溶剤 冷感
変性アルコール
[化粧品成分表示名称]
・変性アルコール

[医薬部外品表示名称]
・酢酸リナリル変性アルコール

工業用アルコールの飲用への転用を防止するために、少量の変性剤を混和したエタノールです。

工業用エタノール単体では飲用に転用することが可能であるため、許可を得ない場合は酒税相当の加算額が課せられ原料価格が高騰するという現状があります。

その現状の中で、工業用エタノールに変性剤を混和し工業用アルコールである(飲用アルコールでない)ことを明示することで加算額を免れることが可能であり、加算額を回避し原料価格を抑える目的で変性アルコールが流通しています。

現状に至る経緯としては、1937年から2001年まで施行されたアルコール専売法では、エタノール単体には酒税が課せられていたため、工業用に使用するアルコールには添加物を加えて飲用不可の状態(変性アルコール)とすることが義務付けられており、工業用には変性エタノールが汎用されていました。

2000年にアルコール専売法と入れ替わる形で施行されたアルコール事業法では、事前許可を得なければ加算額(不正使用を防止する価格:酒税相当額)が課せられるため価格が高くなる一方で、事前許可を得た場合は加算額が免除されるというものになっており(文献2:2000;文献3:2007;文献4:2014)、事前許可を得ればエタノールを変性アルコールと同等の価格で提供できるため、現在は変性アルコールの使用は減少傾向にあると考えられます。

変性アルコールの変性剤には、ローズ様芳香を有する香料成分であるゲラニオールフェネチルアルコール、ベルガモット様芳香を有する酢酸リナリル(リナリールアセテート)、強い苦味を有する成分である八アセチルショ糖(8アセチルショ糖:オクタアセチルスクロース)などが使用されており(文献3:2007;文献5:2012)、香料を変性剤とした変性アルコールが配合されている場合は、化粧品成分一覧に香料成分の表示がない場合であってもかすかな花様の芳香を感じる可能性があると考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で香水、ネイル製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、スキンケア化粧品、ボディケア製品、メイクアップ化粧品などに使用されています。

溶剤

溶剤に関しては、変性アルコールはエタノールベースであるため溶剤目的で、香水、コロン、ネイルコート、シャンプー製品、コンディショナー製品、リキッドファンデーションなどに使用されています(文献5:2012)

揮発性による清涼作用

揮発性による清涼作用に関しては、まず前提知識として揮発に伴う清涼感のメカニズムを解説します。

揮発とは、通常の温度で液体が気体になることであり、エタノールを皮膚に塗布すると揮発にともなって熱も一緒に奪うことから、塗布する際に温度変化が生じます。

ヒトの表皮や神経には温感や冷感を感じ取る受容体が組み込まれているので、個人の皮膚温度や製品の処方にもよりますが、瞬間的に熱移動が起こると冷涼感を感じます。

2008年に資生堂によって報告された基剤塗布による温度変化検証によると、

およびエタノール25μLを皮膚に塗布した場合の皮膚温度変化を測定したところ、以下のグラフのように、

エタノール塗布による皮膚温度変化

最大降下温度は、水で2.9℃、エタノールで1.1℃であり、初期温度降下はエタノールの揮発が速かった。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2008)、エタノールに揮発性による清涼作用が認められています。

変性アルコールもエタノールと同様の揮発性を有していることから、揮発性による清涼感付与目的で化粧水、化粧ミスト、ボディローションなどをはじめとするスキンケア&ボディケア製品、清涼感をコンセプトとした製品に使用されています(文献5:2012)

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変性アルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

変性アルコールの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載(∗1)
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載(∗2)
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
  • 光毒性:ほとんどなし

∗1 医薬品添加物規格2018に収載されているのは、ゲラニオール変性アルコール、八アセチルしょ糖変性アルコール、フェニルエチルアルコール変性アルコール、リナリールアセテート変性アルコールです。

∗2 医薬部外品原料規格2006に収載されているのは、酢酸リナリル変性アルコールです。

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

名古屋大学医学部附属病院分院皮膚科の皮膚安全性試験データ(文献1:1988)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者に70%ゲラニオール変性アルコール溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後すぐおよび24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、3人の被検者に最小限の反応、2人の被検者に軽度の皮膚反応が観察されたが、実質的にこの試験物質は皮膚刺激剤ではなかった
  • [ヒト試験] 31人の被検者に70%ゲラニオール変性アルコール溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後すぐおよび24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、6人の被検者に最小限の反応、1人の被検者に軽度の皮膚反応が観察されたが、実質的にこの試験物質は皮膚刺激剤ではなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して非刺激-軽度の皮膚刺激性が報告されているため、一般的に皮膚刺激性は非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

ゲラニオール変性アルコールとして医薬品添加物規格2018に収載に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

光毒性について

名古屋大学医学部附属病院分院皮膚科の皮膚安全性試験データ(文献1:1988)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者に70%ゲラニオール変性アルコール溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にUVAを6J照射し光による影響を観察したところ、光照射によって反応が増強した被検者は認められなかった
  • [ヒト試験] 31人の被検者に70%ゲラニオール変性アルコール溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にUVAを6J照射し光による影響を観察したところ、光照射によって反応が増強した被検者はいなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性なし報告されているため、一般的に光毒性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

変性アルコールは溶剤、温冷感成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:溶剤 温冷感成分

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文献一覧:

  1. 早川 律子, 他(1988)「センブリ抽出物配合育毛剤の皮膚安全性試験」皮膚(30)(2),136-143.
  2. 厚生省(2000)「アルコール事業法施行に伴う医薬品等の承認申請の取り扱いについて」医薬審第1803号.
  3. 経済産業省(2007)「アルコール使用法の手引き」,<http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/alcohol/data/4siyoutebiki.pdf> 2018年5月29日アクセス.
  4. 経済産業省(2014)「アルコール事業法の理解を深める」,<https://www.meti.go.jp/policy/alcohol/alc_pamphlet_rev.pdf> 2018年5月29日アクセス.
  5. 鈴木 一成(2012)「政府所定変性アルコール」化粧品成分用語事典2012,638-639.
  6. 石窪 章, 他(2008)「化粧品基剤塗布時の熱的特性と清涼感への影響」日本化粧品技術者会誌(42)(4),289-296.

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