ベンジルアルコールとは…成分効果と毒性を解説

溶剤 浸透
ベンジルアルコール
[化粧品成分表示名称]
・ベンジルアルコール

[医薬部外品表示名称]
・ベンジルアルコール

化学構造的にベンゼン環にメチレン基(CH₂)を通じて水酸基(−OH)がついた分子量108.14の揮発性芳香族アルコール(∗1)です(文献5:1994)

∗1 芳香族アルコールとは、分子中に芳香環をもち、芳香環にメチレン基(CH₂)を通じて水酸基(ヒドロキシ基:−OH)をもつアルコールのことです。

主な用途として、塗料分野において塗膜剥離用溶剤、業務用の床ワックス除去溶剤、インキやラッカーの溶剤などに、医薬品分野において殺虫剤、防虫剤、シラミ駆除剤などに、香料としてライラックやジャスミンなどの合成香料の一成分として使用されています(文献5:1994;文献6:2013)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ハンドケア製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、染毛製品、ヘアカラー製品、ネイル製品、香水などに汎用されています。

溶剤

溶剤に関しては、ベンジルアルコールは溶剤・ハイドロトロープ剤(∗2)として広く知られており、植物エキスなどの溶媒および配合成分の溶解性向上目的で(文献9:2010)、スキンケア化粧品、ハンドケア製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、ネイル製品、香水などに汎用されています。

∗2 ハイドロトロープ剤(Hydrotropes)とは、分子中に親水基と親油基が存在するが、親油基の大きさが小さく界面活性を示すには至らない化合物であり、かつ他の有機化合物を水あるいは塩類の水溶液中に高濃度に溶かす性質をもつ比較的低分子量の有機化合物のことをいいます(文献7:1984;文献8:2016)。

浸透による染毛促進

浸透による染毛促進に関しては、ベンジルアルコールは羊毛用染料をよく溶解し、羊毛繊維に対する染料の染色速度を増染毛度を高める染色助剤として古くから知られており(文献10:1962;文献11:1967)、酸性染毛料においても染毛速度および染毛度の増強補助としてベンジルアルコールがヘアカラー、ヘアマニキュアなどに使用されています(文献12:1993)

実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の2010-2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ベンジルアルコールの配合製品数と配合量の調査(2010-2011年)

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ベンジルアルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ベンジルアルコールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:0.65%濃度以下においてほとんどなし、3%濃度以上においてまれに皮膚刺激の可能性あり
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-まれに可能性あり
  • 眼刺激性:非刺激-中程度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし-まれに可能性あり
  • 皮膚浸透・代謝・排泄:生体内で安息香酸に変換されて尿排泄される

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001;文献3:2017)によると、

  • [ヒト試験] 9人の被検者に3%ベンジルアルコールを含むポリプロピレンを4日間連続パッチ適用し、5日目に試験部位の皮膚反応をFrosch-Kligmanスコアリングシステムに基づいて評価したところ、この試験物質は刺激剤に分類された(Harvell et al,1994)
  • [ヒト試験] 110人の被検者に0.65%ベンジルアルコールを含むマスカラ製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった(Hill Top Research,1997)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に10%ベンジルアルコールを含むペトロラタム製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても皮膚反応はみられなかった(Kligman,1970;Opdyke,1973)
  • [ヒト試験] 31人の被検者にベンジルアルコール0.2mLを4時間パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、1人の被検者が皮膚刺激を示した(DA Basketter,1997)
  • [ヒト試験] 485人の患者に5%ベンジルアルコールを含むローションをアタマジラミ治療プログラムとして適用したところ、11人(2.3%)の患者が皮膚刺激を示した(TL Meinking et al,2010)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されており、また3%濃度以上においてまれに皮膚刺激が報告されていることから、一般に皮膚感作性はほとんどなく、3%濃度以上においてまれに皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2001;文献3:2017)によると、

  • [ヒト試験] 化粧品皮膚炎を有する713人の患者に5%ベンジルアルコールを含むペトロラタムを48時間パッチ適用し、パッチ除去後すぐおよび24時間後に皮膚反応を評価したところ、3人の患者に皮膚反応がみられた(Adams and Maibach,1985)
  • [ヒト試験] アレルギー性接触皮膚炎の可能性のある5,202人の患者(化粧品に対する過敏症517人含む)にパッチテスト(詳細不明)を実施したところ、ベンジルアルコールに対して48人(0.92%)が皮膚反応を示した。化粧品皮膚炎を有する155人の患者の中で皮膚反応を示したのは2人であった(Broeckx et al,1987)
  • [ヒト試験] 102人の患者に5%ベンジルアルコールを含むペトロラタムを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、8人の患者が陽性反応を示した(BM Hausen,2001)
  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する2,166人の患者に1%ベンジルアルコールを24-48時間パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、6人(0.3%)の患者が陽性反応を示した(A Schnuch et al,2007)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、まれに皮膚反応が報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどなし-まれに起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

Organization for Economic Cooperation and Developmentの評価報告書(文献2:2001)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に4%ベンジルアルコール水溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験条件下においてこの試験物質は非刺激剤であった(D. I. Match,1921)
  • [動物試験] ウサギの眼に0.08%ベンジルアルコール水溶液を2滴4日間にわたって点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験条件下においてこの試験物質は非刺激剤であった(D. V. Carter et al,1958)
  • [動物試験] ウサギの眼にベンジルアルコール(濃度不明)を適用し、OECD405テストガイドラインに基づいて適用後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は中程度の眼刺激に分類された(Bayer AG data,1990)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激-中程度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-中程度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚吸収および体内挙動(代謝、排泄)について

ベンジルアルコールは、体内で代謝されると単純な酸化により安息香酸に変換されることがわかっています(文献1:2001)

また、安息香酸と安息香酸Naの生体内変換は同等であることが実証されており(文献1:2001;文献4:1991)、生体内における安息香酸Naは、

  • 24時間内の尿中の安息香酸排泄量を定量化し、身体領域の2ヶ所に安息香酸を塗布した後、ある部位をテープで剥離し角質層中の安息香酸の量を測定したところ、尿からの定量値はテープ剥離から推定された予測値と同等であった(Rougier et al,1986)

このように報告されていることから(文献1:2001)、安息香酸Naは尿排泄されることが認められており、一般にベンジルアルコールは体内で安息香酸に変換され、尿排泄されると考えられます。

∗∗∗

ベンジルアルコールは溶剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:溶剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid, and Sodium Benzoate」International Journal of Toxicology(20)(3_suppl),23-50.
  2. Organization for Economic Cooperation and Development(2001)「Benzoate」OECD SIDS Initial Assessment Report.
  3. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid and its Salts, and Benzyl Benzoate」International Journal of Toxicology(36)(3_suppl),5S-30S.
  4. K Kubota, et al(1991)「Dose-dependent pharmacokinetics of benzoic acid following oral administration of sodium benzoate to humans.」European Journal of Clinical Pharmacology(41)(4),363–368.
  5. 有機合成化学協会(1994)「ベンジルアルコール」新版 溶剤ポケットブック,388-390.
  6. 環境省(2013)「ベンジルアルコール」化学物質の環境リスク評価(11)(16).
  7. 荻野 圭三(1984)「混ぜる – 分散と溶解」油化学(33)(9),563-572.
  8. 野々村 美宗(2016)「化粧品におけるエマルション・可溶化物・泡製剤調製のテクノロジー」日本接着学会誌(52)(5),134-138.
  9. 鐵 真希男(2010)「コンディショナーの配合成分と製剤」化学と教育(58)(11),536-537.
  10. 飯島 俊郎(1962)「溶媒染色法」有機合成化学協会誌(20)(4),401-406.
  11. 高瀬 福巳(1967)「有機溶媒を助剤にした羊毛染色」繊維学会誌(23)(1),S21-S28.
  12. 新井 泰裕(1993)「ヘアカラー」色材協会誌(66)(11),665-670.

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