エトキシジグリコールとは…成分効果と毒性を解説


・エトキシジグリコール
[医薬部外品表示名称]
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル
化学構造的に一価アルコール(∗1)であるエタノールと二価アルコールの一種であるグリコール(∗2)の二量体であるジエチレングリコール(∗3)が結合した分子量134.2のエーテルアルコールです(文献2:1994)。
∗1 一価アルコールとは、一分子中にヒドロキシ基(水酸基:-OH)を1個もつアルコールのことです。
∗2 多価アルコールとは一分子中にヒドロキシ基(水酸基:-OH)を2個以上もつアルコールのことであり、グリコールとは、化学構造的に鎖式脂肪族炭化水素または環式脂肪族炭化水素の2つの炭素原子に1つずつヒドロキシ基(水酸基:-OH)が置換した構造を持つ多価アルコールの一種である二価アルコール(ジオール)です。多価アルコールは、水酸基の影響で高い吸湿性と保水性を有しており、化粧品においては保湿剤・基剤に用いられることが多いです。
∗3 複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体(重合体)といいますが、ジエチレングリコールとは2個のエチレングリコールが脱水縮合し二量体(平均重合度2)として機能する重合体です。ギリシャ語で「2」を「ジ(di)」ということから、ジエチレングリコールと呼ばれます。
一般的な用途としては、塗料分野において染料や樹脂の溶剤やペイント除去剤などに、またブレーキ液、可塑剤の原料などに使用されています(文献2:1994;文献3:1986)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的でスキンケア化粧品、クレンジング製品、洗顔料、ボディソープ製品、ヘアカラー製品、メイクアップ化粧品、ボディケア製品、アウトバストリートメント製品、ネイル製品など様々な製品に使用されています。
溶剤
溶剤に関しては、エトキシジグリコールは非常に吸湿性の高い溶剤であり、油性成分、染料、樹脂、高分子化合物、植物エキスなどを溶かし込む目的で(文献4:2016;文献5:2012)、様々な製品に使用されています。
実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
エトキシジグリコールの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
- 30年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:2%濃度以下においてほとんどなし-最小限
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
- [ヒト試験] 12人の被検者に2%エトキシジグリコールを含むペーストマスクを対象に21日間累積刺激性試験を閉塞パッチにて実施し、累積刺激を0-630のスケールで評価したところ、累積刺激スコアは36であり、実質的に非刺激とみなされた(Hill Top Research,1979)
- [ヒト試験] 213人の被検者に2%エトキシジグリコールを含むペーストマスクを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験を通じてこの試験物質は最小の皮膚刺激剤であり、また皮膚感作の兆候は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1979)
- [ヒト試験] 93人の被検者に1%エトキシジグリコールを含むボディローションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験を通じてこの試験物質は最小の皮膚刺激剤であり、また皮膚感作の兆候は観察されなかった(Testkit Laboratories,1981)
と記載されています。
試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されており、皮膚刺激は非刺激-最小限の刺激が報告されていることから、一般に皮膚感作性はほとんどなく、皮膚刺激性は非刺激-最小限の皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
∗∗∗
エトキシジグリコールは溶剤にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:溶剤
∗∗∗
文献一覧:
- Cosmetic Ingredient Review(1985)「Final Report on the Safety Assessment of Butylene Glycol, Hexylene Glycol, Ethoxydiglycol, and Dipropylene Glycol」Journal of the American College of Toxicology(4)(5),223-248.
- 有機合成化学協会(1994)「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」新版 溶剤ポケットブック,572-573.
- 小川 時彦, 他(1986)「ガスクロマトグラフィーによるアイスクリーム中のジエチレングリコールモノエチルエーテルの分析法の検討」食品衛生学雑誌(27)(6),656-661.
- 日光ケミカルズ(2016)「エーテル」パーソナルケアハンドブックⅠ,56-61.
- 鈴木 一成(2012)「ジエチレングリコールモノエチルエーテル」化粧品成分用語事典2012,648.
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