イソプロパノールとは…成分効果と毒性を解説

溶剤 効果促進
イソプロパノール
[化粧品成分表示名称]
・イソプロパノール

[医薬部外品名]
・イソプロパノール

[慣用名]
・IPA、イソプロピルアルコール、2-プロパノール

化学構造的に3個の炭素鎖の2個目にヒドロキシ基(水酸基:-OH)を結合したプロパノールの構造異性体(∗1)であり、分子量60.1の一価アルコール(∗2)かつ低級アルコール(∗3)です(文献4:1994)

∗1 構造異性体とは、化学組成式が等しく、原子の間の結合関係が異なる分子のことです。プロパノールは1-プロパノールと2-プロパノールの2種類の構造異性体があり、1-プロパノールは1つ目の炭素が、2-プロパノールは2つ目の炭素がヒドロキシ基(水酸基:-OH)に置換された構造であることを意味します。

∗2 一価アルコールとは、一分子中にヒドロキシ基(水酸基:-OH)を1個もつアルコールのことです。

∗3 低級アルコールとは、ヒドロキシ基(水酸基:-OH)を1つだけもった一価アルコールの中で、炭素数6個以下のアルコールのことを指し、一方で炭素数8個以上のアルコールは高級アルコール(脂肪族アルコール)に分類されます。一般に炭素数が少ないほど親水性が強くなり(親油性が弱くなり)、炭素数が多いほど親油性が強くなる(親水性が弱くなる)特徴を有しています。

一般的な用途としては、工業分野において天然および合成樹脂の溶剤、医療分野において消毒剤として汎用されています(文献4:1994;文献7:2010)

消毒剤としては、エタノールが消毒用として76.9%-81.4%濃度で、イソプロパノールが70%濃度で汎用されており、殺菌力はこれらの濃度において同様とされています(文献5:1960;文献6:1998;文献7:2010)

ただし、消毒用エタノールには酒税が課せられている一方でイソプロパノールおよびエタノールにイソプロパノールを少量混ぜたものには課税がないことから、2010年時点では医療施設においてイソプロパノールを少量混ぜたエタノールを採用している医療施設が増えていると報告されています(文献5:2010)

イソプロパノールは、30%-99%濃度の範囲で殺菌力を有しており(文献5:1960;文献6:1998)、消毒剤としては一般的に70%濃度が汎用されていますが、化粧品に用いる場合は一般的に30%濃度以下であり、殺菌力は有していないと考えられます。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でネイル製品、ヘアカラー製品、シャンプー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、メイクアップ化粧品、スキンケア化粧品などに汎用されています。

溶剤

溶剤に関しては、イソプロパノールは水、油性成分および様々な高分子化合物を溶かす性質に優れていることから(文献8:2001;文献9:2012)、ネイルカラー、ネイルコート、リキッドファンデーション、リップカラーなどに使用されています。

香気の発散性向上

香気の発散性向上に関しては、イソプロパノールは、水、油性成分および様々な高分子化合物を溶かす性質に優れていますが、溶剤として水中に香油を均一に分散することで、香気の発散を良好にする効果が知られており(文献9:2012)、香り成分の発散向上目的でシャンプー、トリートメント、アウトバストリートメント、ヘアムース、ヘアミスト、ヘアウォーターなどに使用されています。

実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

イソプロパノールの配合製品数と配合量の調査(2009年)

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イソプロパノールの安全性(刺激性・アレルギー)について

イソプロパノールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

グンゼの安全性試験データ(文献2:2008)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデルを用いて、角層表面にイソプロパノールを処理した後にPII(Primary Irritation Index)を指標(無刺激性:0-0.4、弱い刺激性:0.5-1.9、中程度の刺激性:2-4.9、強い刺激性:5-8)として判定したところ、PIIは0.78であり、非刺激性であると結論付けられた。また細胞生存率においては50%以下に減少する場合は刺激物と判定されるが、イソプロパノールの細胞生存率は処理の18時間後に89.5% ± 6.0、42時間後に84.8% ± 10.8であり、非刺激性に分類された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性なしと報告されているため、一般的に化粧品配合量において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2012)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いて70%イソプロパノール溶液0.1mLを塗布した眼刺激試験に基づいて重度の眼刺激物質である(International Programme on Chemical Safety,2009)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、70%濃度において重度の眼刺激性が報告されているため、70%濃度において重度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

ただし、リーブオン製品(∗4)に用いられる最大濃度は3%濃度以下であるため、3%濃度以下の試験データが必要であると考えられます。

∗4 リーブオン製品とは、スキンケア製品やメイク製品など付けっ放しの製品のことです。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2012)によると、

  • [ヒト試験] 9人の被検者に80.74%イソプロパノールを含むスプレーを対象に皮膚感作性試験を実施(詳細不明)したところ、この試験物質は皮膚感作の可能性を示さなかった(JM Damato et al,1979)
  • [ヒト試験] 109人の被検者に2.85%イソプロパノールを含む毛髪染料を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚感作性を示さなかった(Anonymous,2010)
  • [ヒト試験] ペラルゴン酸の刺激能を評価する試験においてイソプロパノールを溶剤として用いて、健常な皮膚を有する被検者に適用したところ、陽性の試験結果は報告されなかった(International Agency for Research on Cancer,2010)

ダイセル化学工業のLLNA:DAEによる皮膚感作試験データ(文献3:2016)によると、

  • [動物試験] LLNA:DAE(誘発相を含み、境界線陽性化学物質を識別する局所リンパ節試験)において、試験群マウスの右耳に50%イソプロパノール溶液を1,2および3日目に塗布し、10日目に両耳に塗布、またコントロール群には10日目のみ左耳に50%イソプロパノール溶液を塗布し、どちらも12日目にリンパ節を摘出し、リンパ節重量を測定したところ、陰性であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般的に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

イソプロパノールは溶剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:溶剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2012)「Final Report of the Cosmetic Ingredient Review Expert Panel on the Safety Assessment of Methyl Acetate」International Journal of Toxicology(31)(4_suppl),112S-136S.
  2. N. Morikawa(2008)「Assessment of the in vitro skin irritaion by chemicals using the Vitrolife-Skin human skin model.」Alternatives to Animal Testing and Experimentation(13)(1),11-26.
  3. 山下 邦彦(2016)「惹起相を含む皮膚感作性試験 LLNA:DAE 法の開発」, <https://ynu.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=7668&item_no=1&attribute_id=20&file_no=1> 2019年1月26日アクセス.
  4. 有機合成化学協会(1994)「イソプロピルアルコール」新版 溶剤ポケットブック,341-344.
  5. 出井 勝重(1960)「Isopropanolの殺菌力について」医療(14)(2),98-102.
  6. 白石 正, 他(1998)「エタノール, イソプロパノール, メタノール変性アルコール製剤に関する殺菌効力の検討」環境感染(13)(2),108-112.
  7. 白石 正(2010)「知っておきたい消毒薬の知識」日本内科学会雑誌(99)(8),1916-1922.
  8. 大枝 一郎(2001)「メイクアップ化粧品の最近の動向」色材協会誌(74)(10),518-525.
  9. 鈴木 一成(2012)「イソプロパノール」化粧品成分用語事典2012,637.

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