アルブチンの基本情報・配合目的・安全性

アルブチン

化粧品表示名 アルブチン
医薬部外品表示名 アルブチン
慣用名 β-アルブチン
INCI名 Arbutin
配合目的 美白 など

アルブチンは、資生堂の申請によって1989年に医薬部外品美白有効成分として厚生省(現 厚生労働省)に承認された成分です。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるハイドロキノングルコースがβ結合したハイドロキノン誘導体です[1]

アルブチン

1.2. 物性・性状

アルブチンの物性・性状は、

状態 溶解性
結晶性粉末 水、エタノールに可溶

このように報告されています[2a][3][4a]

1.3. 分布

アルブチンは、主にツツジ科植物であるウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi)、コケモモ(Vaccinium vitis-idaea)、ツルコケモモ(Vaccinium oxycoccos)やバラ科植物セイヨウナシ(Pyrus communis)などの葉に存在しています[4b][5]

2. 化粧品および医薬部外品としての配合目的

化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)に配合される場合は、

  • チロシナーゼ活性阻害による美白作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、マスク製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、ネックケア製品、洗顔料、クレンジング製品などに汎用されています。

以下は、化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)として配合される目的に対する根拠です。

2.1. チロシナーゼ活性阻害による美白作用

チロシナーゼ活性阻害による美白作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています[6a][2b][7a]

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます[6b][7b]

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています[6c][7c]

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します[6d]

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています[6e]

このような背景から、チロシナーゼの活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

1991年に資生堂および製品研究所によって報告されたアルブチンのメラニンに対する影響検証によると、

– in vitro : メラニン生成抑制作用 –

マウス由来B16メラノーマ細胞を用いた培地5mLに5×10-5M濃度のアルブチン20μLを添加し、3日間培養・処理後にメラニン量測定を行い、試料無添加の場合と比較したメラニン生成率を算出したところ、以下のグラフのように、

B16メラノーマ細胞におけるアルブチンのメラニン生成への影響

アルブチンは、10-6M濃度では無添加の約98%、10-5M濃度では約60%、5×10-5M濃度では約39%、10-4M濃度では約41%と濃度依存的なメラニン生成率の減少を示した(∗1)

∗1 10-6は0.000001、10-5は0.00001および10-4は0.0001のことです。

5×10-5M以下濃度で細胞増殖に影響を与えないことが明らかになっているため、アルブチンは細胞増殖に影響を与えない濃度で、メラニン生成抑制作用があることが示された。

– in vitro : チロシナーゼ活性阻害作用 –

B16メラノーマ細胞を増殖させた培地5mLに5×10-5M濃度のアルブチン20μLを添加し、3日間培養・処理後にチロシナーゼ活性を測定したところ、以下のグラフのように、

B16メラノーマ細胞におけるアルブチンのチロシナーゼ活性への影響

5×10-5M濃度のアルブチンを添加した場合、細胞内のチロシナーゼ活性は無添加の場合の約51%であり、明らかな活性の減少を示した。

さらにアルブチンのチロシナーゼ阻害率は、アルブチンの終濃度が1mMでは約35%、10mMでは約65%、100mMでは約76%と濃度依存的にチロシナーゼ阻害作用を示した。

また、アルブチンを添加した培地において、1,3,5および24時間のいずれの培養時間でも反応液中にハイドロキノンは検出されず、B16メラノーマ培養細胞の細胞浮遊液によってアルブチンはハイドロキノンに加水分解されないことが示されたため、アルブチンのメラニン生成抑制作用に対するハイドロキノンの寄与はないものと考えられた。

このような検証結果が明らかにされており[8a]、アルブチンにチロシナーゼ活性阻害によるメラニン生成抑制作用が認められています。

次に、1990年に資生堂によって報告されたヒトに対するアルブチンの有効性検証によると、

– ヒト使用試験 –

40名の被検者(男性19名、女性21名)の上腕内側部に隣接する2箇所に、3%アルブチン配合エッセンスおよび対照としてアルブチン無配合エッセンスをそれぞれ塗布し、1MED(最小紅斑線量)の紫外線を1日1回、3日間続けて照射した。

試料は、紫外線照射開始日より1日3回、6日間の合計18回塗布し、試験開始7,14および21日後に試験部位について黒化度を肉眼判定したところ、以下の表のように、

  有効 やや有効 不変 やや悪化 悪化
7日後 24 12 4 0 0
14日後 20 15 4 0 1
21日後 21 14 5 0 0

3%アルブチン配合エッセンスは、7日後の観察日において「やや有効」以上の有効率は90%以上であり、紫外線による皮膚の黒化を抑制することが示された。

なお、試験期間内に副作用のために試験を中止した例はなかった。

以上の結果から3%アルブチン配合エッセンスは、紫外線照射により生じる色素沈着を効果的に抑制し、かつ安全なものと考えられた。

このような検証結果が明らかにされており[9a]、アルブチンにヒトに対する色素沈着抑制作用が認められています。

また、アルブチンは医薬部外品の美白有効成分として承認されていることから、医薬部外品(薬用化粧品)の有効成分として配合されている場合は、その製品において美白効果を発揮する濃度が配合されていると考えられます。

3. 安全性評価

アルブチンの現時点での安全性は、

  • 1989年に医薬部外品有効成分に承認
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ[10a]によると、

  • [ヒト試験] 43名の被検者に10%アルブチン水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去30分および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激はみられず、この試験物質はこの試験条件下において皮膚刺激剤ではなかった(1986)
  • [ヒト試験] 46名の被検者に7または10%アルブチン製剤を1日3回、24週間連続適用し、各適用後に皮膚反応を評価したところ、試験期間内にいずれの被検者においても有害な皮膚反応はみられず、この試験物質はこの試験条件下において皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(1993)
  • [ヒト試験] 59名の被検者に10%アルブチン製剤を1日4回、24週間連続適用し、各適用後に皮膚反応を評価したところ、試験期間内にいずれの被検者においても有害な皮膚反応はみられず、この試験物質はこの試験条件下において皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

3.2. 眼刺激性

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ[10b]によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に10%アルブチン水溶液を点眼し、眼はすすがず、Draize法に基づいて点眼1,4および24時間後および2,3,6および7日後に眼刺激性を評価したところ、いずれのウサギにおいても眼刺激はみられず、この試験製剤は眼刺激剤ではなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

3.3. 光毒性(光刺激性)および光感作性

Scientific Committee on Consumer Safetyの安全性データ[10c]によると、

  • [動物試験] 10匹のモルモットの背中2箇所に10%アルブチンを含む水-エタノール混合液)を24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に1箇所はブラックライト(300-400nm)を照射し、もう片方は照射せずアルミニウムで覆い、照射24,48および72時間後に光刺激性を評価したところ、どちらの箇所においても皮膚反応はみられず、この試験製剤は光刺激剤ではなかった(Morikawa et al,1974)
  • [動物試験] 10匹のモルモットを用いて10%アルブチンを含む水-エタノール混合液)を対象に光感作性試験を実施したところ、いずれも皮膚反応はみられず、この試験製剤は光感作剤ではなかった(Ichikawa et al,1981)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

3.4. 安全性についての補足

アルブチンはハイドロキノン誘導体ですが、アルブチンが皮膚に作用するメカニズムはアルブチン自身によるものであり、皮膚に浸透する際に分解・代謝を通じてグルコースから遊離したハイドロキノンによるものではありません[8b][9b]

ハイドロキノンと比較しても極めて毒性が低く、これはハイドロキノンに糖が付加することで、細胞毒性が大きく低下したためであると考えられています。

4. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「アルブチン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,164-165.
  2. ab日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  3. Scientific Committee on Consumer Safety(2022)「OPINION on the safety of alpha-arbutin and beta-arbutin in cosmetic products」SCCS/1642/22.
  4. ab有機合成化学協会(1985)「アルブチン」有機化合物辞典,82.
  5. 大木 道則, 他(1989)「アルブチン」化学大辞典,121.
  6. abcde朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  7. abc田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43. DOI:10.11469/koshohin.43.39.
  8. ab秋保 暁, 他(1991)「アルブチンのメラニン生成抑制作用」日本皮膚科学会雑誌(101)(6),609-613. DOI:10.14924/dermatol.101.609.
  9. ab富田 健一, 他(1990)「アルブチンの作用機序とヒトに対する有用性」Fragrance Journal(18)(6),72-77.
  10. abcScientific Committee on Consumer Safety(2015)「OPINION ON β-arbutin」SCCS/1550/15.

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