4-n-ブチルレゾルシノールの基本情報・配合目的・安全性

4-n-ブチルレゾルシノール

医薬部外品表示名称 4-n-ブチルレゾルシノール
愛称 ルシノール
配合目的 美白

4-n-ブチルレゾルシノールは、ポーラ化成工業の申請によって1998年に医薬部外品美白有効成分として厚生省(現 厚生労働省)に承認された、一般に「ルシノール(rucinol)」とよばれる成分です。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるレゾルシンの4位にブチル基(-CH2CH2CH2CH3を結合したレゾルシン誘導体です[1a]

4-n-ブチルレゾルシノール

1.2. 物性・性状

4-n-ブチルレゾルシノールの物性・性状は、

状態 溶解性
粉末

このように報告されています[2]

2. 医薬部外品(薬用化粧品)としての配合目的

医薬部外品(薬用化粧品)に配合される場合は、

  • チロシナーゼおよびTRP-1活性阻害による美白作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品などに使用されています。

以下は、医薬部外品(薬用化粧品)として配合される目的に対する根拠です。

2.1. チロシナーゼおよびTRP-1活性阻害による美白作用

チロシナーゼおよびTRP-1活性阻害による美白作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズム、チロシナーゼおよびTRP-2について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています[3a][4][5a]

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます[3b][5b]

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外は以下の図のように、

ドーパキノンがユウメラニンに変化するまでの詳細な仕組み

自発的にドーパクロムまで変化し、そこから自発的にDHI(5,6-dihydroxyindole)に変化する合成経路と、TRP-2(tyrosinaserelated protein-2:チロシナーゼ関連タンパク質2)およびTRP-1(tyrosinaserelated protein-1:チロシナーゼ関連タンパク質1)と反応する合成経路の2つの経路からユウメラニンに合成されることが知られています[3c][5c]

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します[3d]

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています[3e]

このような背景から、チロシナーゼおよびTRP-1の活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

2001年にポーラ化成工業によって報告された4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)のメラニン産生抑制への影響検証および紫外線照射による色素沈着に対する有用性検証によると、

– in vitro : チロシナーゼ活性阻害作用評価試験 –

L-ドーパを基質としてB16メラノーマ細胞から調製したチロシナーゼ酵素液を加えた後に、試料としてルシノールを、また比較対照として代表的なチロシナーゼ活性阻害剤(美白成分)であるコウジ酸、アルブチンをそれぞれ添加し、チロシナーゼ活性阻害に対するIC50(∗1)をそれぞれ求めたところ、以下の表のように、

∗1 IC50値とは、50%を阻害するのに必要な濃度のことであり、数値(濃度)が低いほど作用が強いことを意味します。

美白成分 IC50(μM)
ルシノール 44
コウジ酸 250
アルブチン 17,000

ルシノールのIC50値は44μMであり、コウジ酸の約5.6倍、アルブチンの約380倍のチロシナーゼ活性阻害作用を示した。

– in vitro : TRP-1活性阻害作用評価試験 –

DHICAを基質としてB16メラノーマ細胞から調製したTRP-1酵素液を加えた後に、ルシノールを添加し、基質としたDHICAの減少量を測定することにより、相対的なTRP-1の活性阻害率を求めたところ、以下のグラフのように、

4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)のTRP-1活性阻害作用

ルシノールはTRP-1に対して濃度依存的に阻害効果を示し、またIC50値は0.93μMであった。

– ヒト使用試験:色素沈着抑制作用評価 –

健康な44名の上腕内側に隣接する2箇所の一方に0.3%ルシノール配合ローションを、他方にルシノール未配合プラセボローションをそれぞれ1日3回塗布し、塗布開始より2日後に試験部位に0.7MED(最小紅斑線量)相当のUVBランプを1日1回、連続3日間照射した。

照射期間中は、照射前に2回、照射後に3回の1日5回塗布とし、照射終了後より試験終了まで1日3回に戻した。

照射開始より7,14および21日後に試験部位の黒化度を肉眼観察によりスコア評価し、また色彩色差計を用いて皮膚明度(L値)(∗2)を測定したところ、以下のグラフのように、

∗2 L値は見た目の色の濃さや色相を表す単位であり、数値が高いほど明るいことを示します。

紫外線照射に対する4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)の色素沈着抑制効果(肉眼観察)

紫外線照射後に対する4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)の色素沈着改善効果(皮膚明度測定)

0.3%ルシノール配合ローション塗布部位は、未配合プラセボローション塗布部位と比較して肉眼観察および皮膚明度測定(L値)ともに、照射7日後より有意な色素沈着抑制効果が示された。

– ヒト使用試験:色素沈着改善作用評価 –

健康な17名の男性の上腕内側に隣接する2箇所の試験部位に0.7MED(最小紅斑線量)相当のUVBランプを1日1回3日間連続で照射し、照射開始から7日後に肉眼観察により2箇所の部位の色素沈着が同レベルにある13名を選別した。

13名の被検者の試験部位の一方に0.3%ルシノール配合ローション、他方にルシノール未配合プラセボローションを1日3回6週間にわたって塗布し、1週間ごとに色素沈着の黒化度を肉眼観察によりスコア評価し、また色彩色差計を用いて皮膚明度(L値)を測定したところ、以下のグラフのように、

紫外線照射後に対する4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)の色素沈着改善効果(肉眼観察)

紫外線照射後に対する4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)の色素沈着改善効果(皮膚明度測定)

0.3%ルシノール配合ローション塗布部位は、未配合プラセボローションと比較して肉眼観察および皮膚明度測定(L値)ともに、6週塗布後の有意差が認められた。

以上の結果から、細胞レベルで有効であるだけでなく、紫外線によるヒト色素沈着に対しても有効であることが示された。

このような検証結果が明らかにされており[1b]、4-n-ブチルレゾルシノールにヒトにおけるチロシナーゼおよびTRP-1活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

3. 安全性評価

4-n-ブチルレゾルシノールの現時点での安全性は、

  • 1998年に医薬部外品有効成分に承認
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度0.3%以内においてほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):濃度0.3%以内においてほとんどなし

このような結果となっており、医薬部外品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

ポーラ化成工業の臨床データ[1c]によると、

  • [ヒト試験] 44名の被検者に0.3%4-n-ブチルレゾルシノールを含むローションを1日3回、21日間にわたって塗布したところ、いずれの被検者においても試用期間を通じて問題となるような皮膚症状は認められなかった
  • [ヒト試験] 13名の被検者に0.3%4-n-ブチルレゾルシノールを含むローションを1日3回、6週間にわたって塗布したところ、いずれの被検者においても試用期間を通じて問題となるような皮膚症状は認められなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度0.3%以下において共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に濃度0.3%以下において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

3.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4. 参考文献

  1. abc片桐 崇行, 他(2001)「4-n-ブチルレゾルシノール(ルシノール)のメラニン産生抑制作用とヒト色素沈着に対する有効性」日本化粧品技術者会誌(35)(1),42-49. DOI:10.5107/sccj.35.42.
  2. European Chemicals Agency(2022)「4-butylbenzene-1,3-diol」, 2022年5月13日アクセス.
  3. abcde朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  4. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  5. abc田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43. DOI:10.11469/koshohin.43.39.

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