ハイドロキノンの基本情報・配合目的・安全性

ハイドロキノン

化粧品表示名 ハイドロキノン
INCI名 Hydroquinone
配合目的 美白

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるベンゼン環の1位と4位にヒドロキシ基(-OH)が結合した二価フェノールです[1]

ハイドロキノン

1.2. 物性・性状

ハイドロキノンの物性・性状は、

状態 溶解性
針状または柱状結晶 水に可溶、エタノールに易溶

このように報告されています[2]

また、酸素、光、熱などに対して不安定な性質を有するため、製品化においては酸化防止剤の併用や酸素との接触を避けるチューブ型容器の使用など対策が試みられているものの、着色をともなう製剤劣化が完全に解決できておらず、現時点では製剤劣化原因解明およびその解決に関する研究が続けられている状況です[3a]

1.3. 化粧品以外の主な用途

ハイドロキノンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
医薬品 安定・安定化目的の医薬品添加剤として経口剤に用いられています[4]

これらの用途が報告されています。

また、ハイドロキノンは臨床学的に炎症後の色素沈着、肝斑、雀卵斑などの外用治療薬として有効であることが報告されており[5a]、米国においては濃度約2%以下のものが市販薬として市販され、処方箋薬としては濃度5%以下で使用されています[6a]

日本において医薬品は、薬機法によって承認され薬価基準に収載される必要があり、ハイドロキノンは収載されていないことからOTC薬としての市販はないものの、実際の医療現場では患者の病態や症状によって医療上必要と判断された場合に、医薬品として収載のない薬物を製剤化した上で院内製剤・薬局製剤として患者に用いるケースがあり、米国での治療例や有効性評価結果をうけて皮膚科や美容形成外科などではハイドロキノンをしみ治療薬として用いています[3b]

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • チロシナーゼ活性阻害による美白作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、マスク製品、パック製品、ボディケア製品、洗顔石鹸、クレンジング製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. チロシナーゼ活性阻害による美白作用

チロシナーゼ活性阻害による美白作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています[7a][8][9a]

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます[7b][9b]

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています[7c][9c]

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します[7d]

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています[7e]

このような背景から、チロシナーゼの活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

ハイドロキノンは、化粧品配合上限濃度である2%以上のハイドロキノン配合クリームで炎症後の色素沈着、肝斑、雀卵斑などの色素沈着改善作用が報告されていることから[5b]、色素沈着改善作用を有していることが知られています。

その作用メカニズムについては、ハイドロキノン分子がチロシン構造に類似しており、チロシンの代わりにチロシナーゼのポケットに入り込みチロシンと反応させないことで、結果としてメラニン生成反応を抑制するチロシナーゼ活性阻害作用であることが知られています[10][11]

ただし、化粧品においては安全性と有効性を十分に考慮した上での濃度設定の検討が必要であると考えられており[6b]、カプセル化や分子複合体(結晶体)化など安定性を高めた処方技術も提案されています[3c]

3. 配合製品数および配合量範囲

2001年の化粧品規制緩和の際に配合禁止リストに収載されず、濃度2%以下において化粧品への配合が可能となっています[12]

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ハイドロキノンの配合製品数と配合量の調査結果(2009年)

4. 安全性評価

化粧品配合上限である濃度2%以下におけるハイドロキノンの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 2003年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度1%においてほとんどなし。ただし、濃度依存的に皮膚刺激性が高くなる傾向あり
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • その他:濃度1-2%配合クリームの6ヶ月以上の長期使用において組織黒変症を引き起こす可能性あり

このような結果となっており、一般にリーブオン製品(付けっ放し製品)において安全性に問題のある成分であることから、医師指導下での使用が推奨されています。

また、濃度1%以下および非連続的な短時間曝露のリンスオフ製品(洗い流し製品、主に染毛剤)の通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられています。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[13][14]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 19名の被検者に2%ハイドロキノン製剤をパッチ適用し、パッチ除去後にPII(Primary Irritation Index:皮膚一次刺激性指数)0.0-4.0のスケールで皮膚刺激性を評価したところ、PIIは0.89であり、この試験製剤は軽度の皮膚刺激剤に分類された(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 53名の被検者に1%ハイドロキノンを含む軟膏を24時間閉塞パッチ適用し、1名の被検者に紅斑と浸潤がみられたが、他の被検者はいずれも皮膚反応を示さなかった(S. Kaaber et al,1979)
  • [ヒト試験] 90名の被検者に2%ハイドロキノン製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、誘導期間において69名に1箇所以上の軽度の刺激反応がみられ、チャレンジ期間においても22名に軽度以下の皮膚反応がみられたが、これらの反応は皮膚感作反応ではないと判断され、この試験製剤は皮膚感作剤ではないと結論付けられた(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 少なくとも1つ以上のハプテン(アロマ化合物)に陽性反応を示す80名の患者に0.5%ハイドロキノン溶液50μLを対象にICDRG(International Contact Dermatitis Research Group:国際接触皮膚炎研究グループ)標準シリーズに基づいて皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は皮膚感作反応を示さなかった(Picardo et al, 1990)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度2%以下において共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

皮膚刺激性については、濃度2%以下において多くの被検者で軽度の皮膚反応が報告されており、一般に濃度依存的に非刺激-軽度の皮膚刺激を引き起こす可能性が考えられます。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4.3. その他

少なくとも1-2%ハイドロキノン配合クリームの6ヶ月以上の長期使用が、アジア、ラテンアメリカおよびアフリカ系の人々の外因性組織黒変症(Exogenous Ochronosis)(∗1)に関連していると報告されています[15]

∗1 組織黒変症(Ochronosis)とは、組織に青みがかった黒い変色が起こる色素沈着症状のことです。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ハイドロキノン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,756.
  2. 大木 道則, 他(1989)「ヒドロキノン」化学大辞典,1896.
  3. abc飯村 菜穂子(2014)「ハイドロキノン含有新規美白剤の開発とその評価」Fragrance Journal(42)(11),56-60.
  4. 日本医薬品添加剤協会(2021)「ヒドロキノン」医薬品添加物事典2021,494.
  5. abK.A. Arndt & T.B. Fitzpatrick(1965)「Topical Use of Hydroquinone as a Depigmenting Agent」JAMA(194)(9),965-967. PMID:5897965.
  6. ab飯村 菜穂子(2006)「ヒドロキノンの美白効果とその応用」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,231-246.
  7. abcde朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  8. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  9. abc田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43. DOI:10.11469/koshohin.43.39.
  10. A. Palumbo, et al(1991)「Mechanism of inhibition of melanogenesis by hydroquinone」Biochimica et Biophysica Acta(1073)(1),85-90. PMID:1899343.
  11. 伊東 忍(2018)「美容医療分野で注目される美白剤とそのメカニズム」Fragrance Journal(46)(4),12-18.
  12. 鈴木 一成(2012)「ハイドロキノン」化粧品成分用語事典2012,365.
  13. R.L. Elder(1986)「Final Report on the Safety Assessment of Hydroquinone and Pyrocatechol」Journal of the American College of Toxicology(5)(3),123-165. DOI:10.3109/10915818609141928.
  14. F.A. Andersen(1994)「Addendum to the Final Report on the Safety Assessment of Hydroquinone」Journal of the American College of Toxicology(13)(3),167-230. DOI:10.3109/10915819409141000.
  15. F.A. Andersen, et al(2010)「Final Amended Safety Assessment of Hydroquinone as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(29)(6_suppl),274S-287S. DOI:10.1177/1091581810385957.

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