3-O-エチルアスコルビン酸の基本情報・配合目的・安全性

3-O-エチルアスコルビン酸

化粧品表示名 3-O-エチルアスコルビン酸
医薬部外品表示名 3-O-エチルアスコルビン酸
愛称 VCエチル
INCI名 3-O-Ethyl Ascorbic Acid
配合目的 美白 など

3-O-エチルアスコルビン酸は、日本ハイボックスの申請によって2004年に医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

愛称として用いられる「VCエチル」は「ビタミンCエチル(vitamin C エチル)」の略称です。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるアスコルビン酸の3位のヒドロキシ基(-OH)にエトキシ基(-OCH2CH3をエーテル結合したビタミンC誘導体です[1][2a][3a]

3-O-エチルアスコルビン酸

1.2. 物性・性状

3-O-エチルアスコルビン酸の物性・性状は、

状態 溶解性
結晶または結晶性粉末 水、エタノール、多価アルコールに可溶

このように報告されています[4a]

1.3. ビタミンC誘導体としての特徴

アスコルビン酸(ビタミンC)は、皮膚において抗酸化作用、メラニンの産生抑制、コラーゲンやムコ多糖類の合成など優れた機能を有していますが、一方で水溶液では熱および光に不安定であることから、化粧品においては多くの場合、安定化したビタミンC誘導体の形で用いられることが知られています[5][6]

3-O-エチルアスコルビン酸は、アスコルビン酸の3位のヒドロキシ基(-OH)をエーテル結合によりエチル化したビタミンC誘導体であり、水溶性かつ弱酸性(pH4.0-6.0)領域での安定性に優れ、皮膚においては他のビタミンC誘導体がビタミンCに変換されて効果を発揮するのに対して、そのままで効果を発揮することから[3b][4b][7]、「即効型ビタミンC誘導体」とよばれています。

2. 化粧品および医薬部外品としての配合目的

化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)に配合される場合は、

  • チロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による美白作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、マスク製品、洗顔料、日焼け止め製品、化粧下地製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、、ファンデーション製品、リップケア製品、クレンジング製品など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)として配合される目的に対する根拠です。

2.1. チロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による美白作用

チロシナーゼおよびTRP-2活性阻害による美白作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズム、チロシナーゼおよびTRP-2について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています[8a][9][10a]

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます[8b][10b]

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外は以下の図のように、

ドーパキノンがユウメラニンに変化するまでの詳細な仕組み

自発的にドーパクロムまで変化し、そこから自発的にDHI(5,6-dihydroxyindole)に変化する合成経路と、TRP-2(tyrosinaserelated protein-2:チロシナーゼ関連タンパク質2)およびTRP-1(tyrosinaserelated protein-1:チロシナーゼ関連タンパク質1)と反応する合成経路の2つの経路からユウメラニンに合成されることが知られています[8c][10c]

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します[8d]

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています[8e]

このような背景から、チロシナーゼおよびTRP-2の活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

2013年に台湾のCorumによって報告された3-O-エチルアスコルビン酸(VCエチル)のメラニンに対する影響検証によると、

– in vitro : チロシナーゼ活性阻害作用 –

B16メラノーマ細胞にメラニン生成を促進させるα-MSHを添加した培養液に各濃度のVCエチルを添加し、チロシナーゼの発現量を測定し、VCエチル無添加と比較したところ、以下のグラフのように、

VCエチルのチロシナーゼ活性阻害作用

VCエチルは、濃度依存的なチロシナーゼ発現量の抑制を示した。

– in vitro : TRP-2活性阻害作用 –

B16メラノーマ細胞にメラニン生成を促進させるα-MSHを添加した培養液に各濃度のVCエチルを添加し、TRP-2の発現量を測定し、VCエチル無添加と比較したところ、以下のグラフのように、

VCエチルのTRP-2活性阻害作用

VCエチルは、濃度依存的なTRP-2発現量の抑制を示した。

このような検証結果が明らかにされており[11]、3-O-エチルアスコルビン酸にチロシナーゼおよびTRP-2活性阻害作用が認められています。

次に、2006年に三木形成外科および日本ハイボックスによって報告された3-O-エチルアスコルビン酸(VCエチル)の紫外線照射による色素沈着に対する有用性検証によると、

– ヒト使用試験:色素沈着抑制作用 –

健常な皮膚を有する21名の被検者の前腕に自然光を曝露し、1箇所は1%VCエチル配合美容液を、もう1箇所は比較対照として3%APM(∗1)配合美容液を28日間塗布し、塗布開始から14および28日後に色彩色差計により皮膚明度(L*値)(∗2)を測定し塗布開始前のL*値を基準として増減を算出したところ、以下の表のように、

∗1 APMはリン酸アスコルビルMgの慣用名です。

∗2 L値は見た目の色の濃さや色相を表す単位であり、数値が高いほど明るいことを示します。

自然光による色素沈着に対する3-O-エチルアスコルビン酸の抑制作用

1%VCエチル配合美容液は、28日後において有意に色素沈着抑制作用を示した。

このような検証結果が明らかにされており[3c]、3-O-エチルアスコルビン酸に自然光曝露による色素沈着抑制作用が認められています。

3. 混合原料としての配合目的

3-O-エチルアスコルビン酸は、混合原料が開発されており、3-O-エチルアスコルビン酸と以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Bicowhite
構成成分 レシチンリゾレシチン、乳酸桿菌発酵液、ナイアシンアミド3-O-エチルアスコルビン酸、アゼロイルジグリシンK、ビサボロールフィチン酸トコフェロールシトステロールスクワレン
特徴 美白に関与する5つの有効成分としてフィチン酸、ビタミンC誘導体、ナイアシンアミド、ビサボロール、アゼライン酸誘導体を内包した皮膚浸透カプセル剤

4. 安全性評価

3-O-エチルアスコルビン酸の現時点での安全性は、

  • 2004年に医薬部外品有効成分に承認
  • 2002年からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-中程度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品および医薬部外品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

National Industrial Chemicals Notification and Assessment Schemeの安全性データ[2b]によると、

  • [ヒト試験] 被検者(人数不明)に2%3-O-エチルアスコルビン酸を含む製剤を対象に皮膚刺激性試験を実施したところ、この試験製剤はこの試験条件下において皮膚刺激剤ではなかった
  • [ヒト試験] 56人の被検者に100%3-O-エチルアスコルビン酸を対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚感作剤ではなかった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に3-O-エチルアスコルビン酸を処理し、皮膚刺激性を評価したところ、皮膚刺激性は予測されなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、医薬部外品有効成分に承認されており、2002年からの使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がないことも3-O-エチルアスコルビン酸の安全性を裏付けていると考えられます。

4.2. 眼刺激性

National Industrial Chemicals Notification and Assessment Schemeの安全性データ[2c]によると、

  • [in vitro試験] ウサギ角膜由来株化細胞であるSIRC細胞に10%3-O-エチルアスコルビン酸を5分間曝露した後、細胞生存率を測定したところ、この試験物質は細胞毒性を示さなかった
  • [in vitro試験] 鶏卵の漿尿膜を用いて3%3-O-エチルアスコルビン酸を含む製剤を処理したところ(HET-CAM法)、この試験製剤は中程度の刺激性が予測された

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-中程度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-中程度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「3-O-エチルアスコルビン酸」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,221-222.
  2. abcNational Industrial Chemicals Notification and Assessment Scheme(2016)「L-Ascorbic acid, 3-O-ethyl- (INCI Name: 3-O-ethyl ascorbic acid)」LTD/1879.
  3. abc畑尾 正人, 他(2012)「UVAによる持続型即時黒化に注目した美白アプローチ」機能性化粧品の開発Ⅳ,15-23.
  4. ab三木 聡子・西川 洋史(2006)「ビタミンCエチルの有用性 -色素沈着抑制作用およびその他の薬理作用-」アンチ・エイジングシリーズ No.2 皮膚の抗老化最前線,265-278.
  5. 石神 昭人(2011)「美容とビタミンC」ビタミンCの事典,189-203.
  6. 田村 健夫・廣田 博(2001)「ビタミン類」香粧品科学 理論と実際 第4版,242-245.
  7. 伊東 忍, 他(2014)「美白ケア」プロビタミンC – 分子デザインされたビタミンCの知られざる働き,57-73.
  8. abcde朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  9. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  10. abc田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43. DOI:10.11469/koshohin.43.39.
  11. Jill Hsu(2013)「3-O-Ethyl Ascorbic Acid: A Stable, Vitamin C-Derived Agent for Skin Whitening」Cosmetics & Toiletries(128)(9),676-684.

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