テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの基本情報・配合目的・安全性

テトラヘキシルデカン酸アスコルビル

化粧品表示名 テトラヘキシルデカン酸アスコルビル
医薬部外品表示名 テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルEX
愛称 VC-IP
INCI名 Ascorbyl Tetraisopalmitate
配合目的 美白抗炎症、毛髪補修 など

テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビルEXは、日光ケミカルズの申請によって2007年に医薬部外品美白有効成分として厚生労働省に承認された成分です。

愛称として用いられる「VC-IP」は「Vitamin C tetra-isopalmitate」の略称です。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるアスコルビン酸の4個のヒドロキシ基(-OH)にイソパルミチン酸が結合したテトラエステル(∗1)ですビタミンC誘導体です[1]

∗1 モノエステルとは分子内に1基のエステル結合をもつエステルであり、通常はギリシャ語で「1」を意味する「モノ(mono)」が省略され「エステル結合」や「エステル」とだけ記載されます。分子内に4基のエステル結合をもつ場合はギリシャ語で「4」を意味する「テトラ(tetra)」をつけてテトラエステルと記載されます。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビル

1.2. 物性・性状

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの物性・性状は(∗2)(∗3)

∗2 比重とは固体や液体においては密度を意味し、標準密度1より大きければ水に沈み(水より重い)、1より小さければ水に浮くことを意味します。

∗3 屈折とは光の速度が変化して進行方向が変わる現象のことで、屈折率は「空気中の光の伝播速度/物質中の光の伝播速度」で表されます。光の伝播速度は物質により異なり、また同一の物質でも波長により異なるため屈折率も異なりますが、化粧品において重要なのは空気の屈折率を1とした場合の屈折率差が高い界面ほど反射率が大きいということであり、平滑性をもつ表面であれば光沢が高く、ツヤがでます(屈折率の例としては1.33、エタノールは1.36、パラフィンは1.48)。

状態 比重(d 20/20) 屈折率(n 25/D) 溶解性
液体 0.930-0.943 1.459-1.465 水に不溶、油性成分に可溶

このように報告されています[2a][3a]

1.3. ビタミンC誘導体としての特徴

アスコルビン酸(ビタミンC)は、皮膚において抗酸化作用、メラニンの産生抑制、コラーゲンやムコ多糖類の合成など優れた機能を有していますが、一方で水溶液では熱および光に不安定であることから、化粧品においては多くの場合、安定化したビタミンC誘導体の形で用いられることが知られています[4][5]

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは、アスコルビン酸のすべてのヒドロキシ基(-OH)にイソパルミチン酸を結合した液状の油溶性ビタミンC誘導体であり、ほとんどの油性成分と溶解する油溶性、熱に対する高い安定性および表皮への高い浸透性を有しており、皮膚においては酵素によってアスコルビン酸に変換され、アスコルビン酸として効果を発揮することが報告されています[3b][6][7a][8a]

2. 化粧品および医薬部外品としての配合目的

化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)に配合される場合は、

  • チロシナーゼ活性阻害による美白作用
  • IL-1αおよびプロスタグランジンE2産生抑制による抗炎症作用
  • 毛髪補修作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、洗顔料、クレンジング製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、マスク製品、リップケア製品、アウトバストリートメント製品、メイクアップ製品、コンシーラー製品、ネイル製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)として配合される目的に対する根拠です。

2.1. チロシナーゼ活性阻害による美白作用

チロシナーゼ活性阻害による美白作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています[9a][2b][10a]

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます[9b][10b]

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています[9c][10c]

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します[9d]

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています[9e]

このような背景から、チロシナーゼの活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2000年に日本サーファクタント工業によって報告されたテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP)のメラニンに対する影響検証によると、

– in vitro : メラニン生成抑制作用 –

ヒトメラノーマ細胞にVC-IPを添加し、4日間培養後、細胞中のメラニンを抽出し500nmの吸光度でメラニン量を測定したところ、以下のグラフのように、

ヒトメラノーマ細胞におけるテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのメラニン産生抑制作用

VC-IPは濃度依存的にヒトメラノーマ細胞のメラニン産生を抑制した。

– in vitro : チロシナーゼ活性阻害作用 –

B16メラノーマ細胞に各濃度のVC-IPを添加した培地で72時間培養したあと、細胞の抽出液にL-ドーパを添加した。

37℃で60分間反応させた後、メラノーマ細胞中のチロシナーゼによりL-ドーパから生成したドーパクロムを540nmの吸光度で測定し、チロシナーゼ活性を算出したところ、以下のグラフのように、

B16メラノーマ細胞におけるテトラヘキシルデカン酸アスコルビルのチロシナーゼ活性阻害作用

VC-IPは、濃度0.02%以上で濃度依存的に細胞内チロシナーゼ活性を阻害した。

このような検証結果が明らかにされており[7b]、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルにチロシナーゼ活性阻害によるメラニン生成抑制作用が認められています。

次に、2006年にコスモステクニカルセンターおよび京都薬科大学代謝分析学教室によって報告されたテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP)の紫外線照射による色素沈着に対する有用性検証によると、

– ヒト使用試験:色素沈着抑制作用 –

22名の被検者上腕内側部に最小紅斑線量の1.5倍の紫外線ライトを照射した後、3%VC-IP配合クリームおよびプラセボクリームを二重盲検法に基づいて塗布し、塗布1,2および3週間後に紫外線照射部位の色素沈着の程度を評価した。

紫外線照射部位の色調として皮膚明度(L*値)を測定し、色調変化を⊿L*(⊿L*値=各週のL*値-UV照射前のL*値)として表したところ、以下の表のように、

試料 平均⊿L*
1週目 2週目 3週目
3%VC-IP 2.93 2.31 1.70
クリームのみ(対照) 3.36 2.76 2.03

3%VC-IP配合クリームの塗布は、未配合クリームと比較して1および2週目において有意に低い値(∗4)を示した。

∗4 ⊿L*値が低いということは、紫外線照射前のL*値に近いということであり、相対的に色素沈着が抑制されていることを示します。

このような検証結果が明らかにされており[11]、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルに紫外線による色素沈着抑制作用が認められています。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは皮膚内でアスコルビン酸として機能することから、メラニン抑制メカニズムはチロシナーゼ活性阻害となりますが、これはドーパキノンをドーパに還元することによりチロシナーゼのドーパオキシダーゼ活性を抑制することによるものであるため[8b]、メラニン還元による美白作用ともいえます。

また、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは医薬部外品の美白有効成分として承認されていることから、医薬部外品(薬用化粧品)の有効成分として配合されている場合は、その製品において美白効果を発揮する濃度が配合されていると考えられます。

2.2. IL-1αおよびプロスタグランジンE2産生抑制による抗炎症作用

IL-1αおよびプロスタグランジンE2産生抑制による抗炎症作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UVB)曝露による炎症反応のメカニズムとIL-1αおよびプロスタグランジンE2について解説します。

以下の紫外線(UVB)曝露による炎症のメカニズム図(一部省略)をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線曝露による炎症反応メカニズム

最初に皮膚が紫外線(UVB)に曝露されると、転写因子(∗5)の一種であるNF-κB(nuclear factor-kappa B)が過剰に発現することが知られており、このNF-κBの過剰な発現によって、炎症反応に深く関与している炎症性サイトカイン(∗6)であるIL-1α(interleukin-1α:インターロイキン-1α)やTNF-α(tumor necrosis factor-α)が産生・放出されます[12a][13a]

∗5 転写因子とは、細胞内のDNAに特異的に結合するタンパク質の一群のことです。

∗6 サイトカインとは、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称であり、標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知られています。炎症性サイトカインとは、サイトカインの中で主に生体内に炎症反応を引き起こすサイトカインのことをいいます。

これらの炎症性サイトカインは、種々のサイトカインを産生させ、さらに真皮の血管内皮細胞に存在する細胞接着因子を誘導し、血中に存在する炎症細胞(白血球)を血管内皮細胞に強固に接着することにより炎症細胞の血管透過性を高め、炎症反応を増強することが知られています[13b][14][15]

また、これらの炎症性サイトカインはさらにNF-κBの発現を誘導するため、炎症反応の悪循環が生じ、炎症反応は増幅していくことも明らかにされています[12b]

同時に、皮膚が紫外線(UVB)に曝露されると表皮細胞においてプロスタグランジン産生酵素であるCOX-2(cyclooxygenase-2:シクロオキシゲナーゼ-2)の増加によりプロスタグランジンE2(Prostaglandin E2:PGE2が過剰に産生されることが知られており、プロスタグランジンE2は真皮の血管拡張に関与することや紅斑を生成することが知られています[16][17]

このような背景から、IL-1αおよびプロスタグランジンE2の産生を抑制することは、紅斑の抑制や過剰な炎症の抑制において重要であると考えられます。

2015年にコスモステクニカルセンターによって報告されたテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP)のIL-1αおよびプロスタグランジンE2に対する影響検証およびニキビに対する有用性検証によると、

– in vitro : IL-1α産生抑制作用 –

表皮細胞にVC-IPを処理し24時間培養した後、緩衝液中でUVBを照射した。

その後、培地を添加し24時間培養後、培養上清を回収し、培養上清中に放出されたIL-1αを測定したところ、以下のグラフのように、

UVB照射表皮細胞におけるVC-IPのIL-1α産生抑制作用

表皮細胞にVC-IPを処理することで、UVB照射により増加するIL-1αは顕著に抑制された。

– in vitro : プロスタグランジンE2産生抑制作用 –

IL-1α産生抑制作用評価試験の中で、培養上清中に放出されたプロスタグランジンE2を測定したところ、以下のグラフのように、

UVB照射表皮細胞におけるVC-IPのプロスタグランジンE<sub>2</sub>産生抑制作用

表皮細胞にVC-IPを処理することで、UVB照射により増加するプロスタグランジンE2は顕著に抑制された。

– ヒト使用試験:ニキビ改善作用 –

顔面両側にニキビを有する被検者の片側にVC-IP配合製剤を、他方にプラセボ製剤を二重盲検法に基づいて塗布し、1ヶ月にニキビの改善作用を評価した。

評価は、面皰、紅色丘疹、膿疱数、色素沈着の改善度(∗7)「5:著効」「4:有効」「3:やや有効」「2:無効」「1:悪化」の5段階でスコア化し、塗布前のスコアを基準として塗布1ヶ月後のスコアを比較したところ、以下の表のように、

∗7 面皰、紅色丘疹、膿疱などの用語やニキビの重症度の分類などはカテゴリ「角質剥離成分の解説と成分一覧」のニキビ(尋常性ざ瘡)の解説を参照してください。

項目 プラセボ VC-IP
塗布前 1ヶ月後 塗布前 1ヶ月後
面皰(コメド) 2.6 2.6 3.2 2.4
紅色丘疹 2.9 3.0 3.2 2.3
膿疱数 0.3 0.5 0.3 0.4
色素沈着度 2.3 2.2 2.3 1.8

VC-IP配合製剤の塗布は、面皰および紅色丘疹の改善傾向を示し、さらにニキビ後の色素沈着が有意に改善された。

このような検証結果が明らかにされており[18a]、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルにIL-aαおよびプロスタグランジンE₂の産生抑制作用および抗炎症作用が認められています。

炎症はニキビの憎悪にも深く関与していることが知られており、VC-IP配合製剤の連用によるニキビ改善効果はVC-IPの抗酸化作用および抗炎症作用に起因することが示唆されています[18b]

また、日本皮膚科学会によって公開されている「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」において炎症性皮疹や炎症後の紅斑にテトラヘキシルデカン酸アスコルビルの外用が選択肢のひとつとして推奨されています[19]

2.3. 毛髪補修作用

毛髪補修作用に関しては、まず前提知識として毛髪の構造と毛髪ダメージとその原因について解説します。

毛髪の構造については、以下の毛髪構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

毛髪の構造

キューティクル(毛小皮)とよばれる5-10層で重なり合った平らかつうろこ状の構造からなる厚い保護外膜が表面を覆い、その最外層はエピキューティクル(epicuticle)とよばれ、75%の強く架橋したケラチンタンパク質と18-メチルエイコサン酸(18-MEA)を主とする25%の脂肪酸で構成されています[20a][21]

キューティクル内部は紡錘状細胞から成り繊維体質の大部分を占めるコルテックス(毛皮質)およびメデュラ(毛髄質)とよばれる多孔質部分で構成され、また細胞膜複合体(CMC:Cell Membrane Complex)がこの3つの構造を接着・結合し、毛髪内部の水分保持や成分の浸透・拡散の主要通路としての役割を担っています[20b]

これら毛髪構造の中でキューティクルは、摩擦、引っ張り、曲げ、紫外線への曝露などの影響による物理的かつ化学的劣化に耐性をもち、その配列が見た目の美しさや感触特性となります[22a]

一方で、キューティクルはシャンプーや毎日の手入れなどの物理的要因、あるいはヘアアイロン、染毛・脱色、パーマなど化学的要因によるダメージに対して優れた耐性を有しているものの、これらのダメージが重なり合い繰り返され、毛髪表面に存在する18-メチルエイコサン酸の消失やケラチンタンパク質由来のスルホ基やアミノ基などの親水基が露出する結果、以下の図のように、

毛髪状態の違い

キューティクル層状態が変化し、キューティクルのめくれ上がりや毛髪繊維の弱化につながることが知られています[22b][23][24a]

このような背景から、損傷したキューティクルを補修することは、毛髪の外観や感触の改善において重要なアプローチであると考えられています。

2018年にコスモステクニカルセンターによって報告されたテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(VC-IP)のアミノ基に対する反応性検証およびダメージ毛髪に対する有用性検証によると、

– in vitro : アミノ基との反応性評価試験 –

アミノ修飾ガラス基板上に各種油剤を一定時間塗布した後に、ガラス基板を十分に洗浄し、ガラス基板に対する水の接触角を測定したところ、以下のグラフのように、

各油剤を塗布した後のアミノ修飾ガラス上の水の接触角の結果

無塗布の場合は、アミノ修飾ガラス基板に対する接触角であり、65°という値は表面がアミノ修飾された状態であることが確認でき、VC-IPのみが撥水性(∗8)を示す結果であった。

∗8 撥水性とは水をはじく性質のことです。

また、VC-IPは濃度の違いによって大きな違いはみられず、低濃度においてもアミノ基との反応性を確認した。

– 毛髪ダメージ評価試験 –

ブリーチ処理したダメージ毛髪に対してスクワランまたは0.5%VC-IP配合スクワラン溶液を塗布し、十分になじませ、30分静置した後に洗浄および乾燥処理し、毛髪表面に対して水の接触角を測定し、毛髪の撥水性を評価した。

その結果、VC-IP配合によりキューティクルの剥離の改善、毛髪撥水性の向上を確認した。

このような検証結果が明らかにされており[24b]、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルに毛髪補修作用が認められています。

VC-IPの毛髪補修作用メカニズムは、ダメージによって露出したアミノ基とVC-IPが反応し、毛髪表面が撥水性を示すことでキューティクル間の接着性を高め、結果としてキューティクル剥離が改善されたと考えられていますが、現時点では十分に立証できておらず、今後の検証課題とされています[24c]

3. 混合原料としての配合目的

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは、混合原料が開発されており、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 NIKKOL NET-VCIP
構成成分 テトラヘキシルデカン酸アスコルビルグリセリンラウリン酸ポリグリセリル-10
特徴 脂溶性ビタミンCを高濃度含有するO/W型乳化基剤
原料名 Nikkol NET-Vitamin-ACE
構成成分 ラウリン酸ポリグリセリル-10グリセリンテトラヘキシルデカン酸アスコルビル酢酸トコフェロールトコフェロールパルミチン酸レチノールピーナッツ油スクワラン
特徴 ビタミンA、CおよびE誘導体を高濃度含有するO/W型乳化基剤
原料名 NIKKOL ソルブル VCIP
構成成分 テトラヘキシルデカン酸アスコルビルグリセリン、PPG-8セテス-20、BG、PPG-4セテス-20、
特徴 VC-IPを高濃度に含有するナノエマルション
原料名 NIKKOL Nikkosome Vitamin ABCE
構成成分 グリセリン水添レシチンソルビトールテトラヘキシルデカン酸アスコルビルトコフェロールパンテノールパルミチン酸レチノールピーナッツ油スクワラン
特徴 4種のビタミン(脂溶性ビタミンC誘導体、ビタミンE、ビタミンA誘導体、ビタミンB前駆体)を配合したビタミン補給向けナノエマルジョン
原料名 Nikkol Nikkosome Antiage T
構成成分 グリセリントコフェロール、トウニンエキス、トルメンチラ根エキス、水添レシチンテトラヘキシルデカン酸アスコルビル、ココグリセリル硫酸Na、スクワラン、リン酸ジセチル、エタノールBG
特徴 脂溶性ビタミンC誘導体、トウニンエキス、トルメンチラ根エキスを配合したエイジングケア向けナノエマルジョン

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗9)

∗9 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

5. 安全性評価

テトラヘキシルデカン酸アスコルビルの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 2007年に医薬部外品有効成分に承認
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品および医薬部外品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[25]によると、

  • [ヒト試験] 102名の被検者に10%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルを含むシリコーン0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても有害な皮膚反応はみられず、この試験製剤は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(AMA Laboratories Inc,1997)

– 個別事例 –

  • [個別事例] アトピー性皮膚炎を有していない54歳の女性患者はエイジングケア製品を塗布したところ、2日後に皮膚反応を示し、その反応は顔から腕や胸骨前まで広がったことから、ICDRG(International Contact Dermatitis Research Group:国際接触皮膚炎研究グループ)のガイドラインに基づいてパッチテストを実施した。製品の使用では3日後に陽性反応を示し、製品の成分を使用したパッチテストでは20%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルに対してツヨイ陽性反応を示した。20人の対照被検者にテトラヘキシルデカン酸アスコルビルをパッチテストしたところ、いずれの被検者も陰性であった(I. Swinnen & A. Goossens,2011)
  • [個別事例] 83歳の男性患者はアトピー性皮膚炎の治療の一環としてテトラヘキシルデカン酸アスコルビルを含む非ステロイド性のOTC保湿剤を使用したところ、適用14日目に急性接触皮膚炎がみられたことから、ICDRG(International Contact Dermatitis Research Group:国際接触皮膚炎研究グループ)のガイドラインに基づいてパッチテストを実施した。0.05%テトラヘキシルデカン酸アスコルビルは4日目に陽性反応を示した(H. Assier et al,2014)

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、2例の個別事例が報告されているため、ごくまれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

5.2. 眼刺激性

National Industrial Chemicals Notification and Assessment Schemeの安全性データ[26]によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギにテトラヘキシルデカン酸アスコルビルを適用し、OECD405テストガイドラインに基づいて適用72時間後まで眼刺激性を評価したところ、この試験物質はわずかな眼刺激剤であった(Notox,1996)

このように記載されており、試験データをみるかぎりわずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

6. 参考文献

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  23. クラーレンス・R・ロビンス(2006)「シャンプー、髪の手入れ、ウェザリング(風化)による毛髪ダメージおよび繊維破断」毛髪の科学,293-328.
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  25. W.F. Bergfeld, et al(2017)「Safety Assessment of Ethers and Esters of Ascorbic Acid as Used in Cosmetics(∗10)」, 2022年5月25日アクセス.
    ∗10 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。
  26. National Industrial Chemicals Notification and Assessment Scheme(2015)「L-Ascorbic acid, 2,3,5,6-tetrakis(2-hexyldecanoate) (INCI name: Ascorbyl Tetraisopalmitate)」LTD/1705.

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