加水分解卵白の基本情報・配合目的・安全性
化粧品表示名 | 加水分解卵白 |
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医薬部外品表示名 | 加水分解卵殻膜、卵白ペプタイド |
部外品表示簡略名 | 水解卵白 |
INCI名 | Hydrolyzed Albumen |
配合目的 | 感触改良 など |
1. 基本情報
1.1. 定義
キジ科動物であるニワトリ(学名:Gallus gallus domesticus 英名:Chicken)の卵白を酵素で加水分解して得られる加水分解物です[1]。
1.2. 構造と物性
加水分解卵白は、卵白のアミノ酸バランスを保持しながら耐熱性をもつ(熱に対して凝固しない)、平均分子量1,100の水溶性タンパク質です[2a]。
加水分解卵白のアミノ酸組成比としては、一例として以下の表のように、
必須アミノ酸 | アミノ酸組成(mg/g 窒素) 窒素量は12.5%として計算 |
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リシン | 445 |
ヒスチジン | 162 |
トレオニン | 287 |
トリプトファン | 93 |
システイン | 174 |
メチオニン | 232 |
バリン | 466 |
イソロイシン | 343 |
ロイシン | 560 |
チロシン | 276 |
フェニルアラニン | 401 |
このような組成比が報告されており[2b]、他のタンパク質と比較してメチオニンやシステインなどの含硫アミノ酸や、バリン、ロイシンおよびイソロイシンなどの分岐鎖アミノ酸(BCAA)を豊富に含んでいるのが特徴です。
2. 化粧品としての配合目的
- 潤滑性による感触改良
主にこれらの目的で、洗顔料、化粧下地製品、スキンケア製品などに使用されています。
以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。
2.1. 潤滑性による感触改良
潤滑性による感触改良に関しては、加水分解卵白は適度なしっとり感およびなめらかな感触を付与することから、感触を調整する目的で主に洗顔料やシャンプー製品に使用されています[3a][4a]。
2003年に成和化成によって報告された加水分解卵白の使用感に対する影響検証によると、
– ヒト使用試験 –
10名の女性被検者の手の甲に5%加水分解卵白を含む化粧水、5%ブタ由来加水分解コラーゲンまたは対照として化粧水のみをそれぞれ塗布し、乾燥後の皮膚の潤い感およびなめらかさについて評価した。
評価基準として「2:最も良いもの」「1:2番目に良いもの」「0:悪いもの」の3段階で評価し10名の平均値を算出したところ、以下の表のように、
試料 | 潤い感 | なめらかさ |
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加水分解卵白 | 1.6 | 1.7 |
加水分解コラーゲン | 1.4 | 1.3 |
化粧水のみ | 0.0 | 0.0 |
加水分解卵白を配合した化粧水の塗布群は、化粧水のみ塗布群と比較して皮膚の潤い感やなめらかさのいずれも評価値がやや高く、加水分解コラーゲン配合化粧水と比較しても同程度以上の潤い感となめらかさを有していることがわかった。
このような試験結果が明らかにされており[3b]、加水分解卵白に潤滑性による感触改良効果が認められています。
また、2009年にキューピーによって報告された加水分解卵白の使用感に対する影響検証によると、
– ヒト使用試験 –
12名の被検者(男性7名、女性5名)に0.15%加水分解卵白を含む洗顔料または対照として加水分解卵白未配合の洗顔料をそれぞれ使用してもらい、洗顔後の肌の感触について評価した。
評価は「5:非常に良い」から「1:非常に悪い」の5段階で評価し12名の平均値を算出したところ、以下の表のように、
試料 | しっとり感 | べたつき感 | つっぱり感 |
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加水分解卵白 | 3.5 | 3.5 | 3.3 |
洗顔料のみ | 2.6 | 3.5 | 3.2 |
加水分解卵白を配合した洗顔料は、べたつき感やつっぱり感は対照と同等であった一方で、しっとり感では有意な差があることがわかった。
この結果から、加水分解卵白を使用することによりべたつき感が少なく、しっとり感の高い使用感を付与することができることが示唆された。
このような試験結果が明らかにされており[4a]、加水分解卵白にしっとり感の付与効果が認められています。
3. 安全性評価
- 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
- 10年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。
ただし、卵白は食品においてアレルギーに関する特定原材料に指定されており、鶏卵にアレルギーを有している場合は加水分解卵白も同様に回避する必要があると推測されます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)
医薬部外品原料規格2021に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
ただし、卵白は食品においてアレルギーに関する特定原材料に指定されており[5]、鶏卵にアレルギーを有している場合は加水分解卵白も同様に回避する必要があると推測されます。
3.2. 眼刺激性
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。