ビオチンの基本情報・配合目的・安全性

ビオチン

化粧品表示名 ビオチン
医薬部外品表示名 ビオチン
慣用名 ビタミンB7
INCI名 Biotin
配合目的 肌荒れ改善 など

1. 基本情報

1.1. 定義

ビタミンB群の一種であるビタミンB7(∗1)として知られている水溶性有機化合物であり、以下の化学式で表される複素環式化合物です[1]

∗1 以前は皮膚と関連が深いビタミンとしてビタミンH(この「H」はドイツ語で皮膚の意味である「Haut」からとられています)とよばれていましたが、現在はビタミンB7とよばれています。

ビオチン

1.2. 物性・性状

ビオチンの物性・性状は、

状態 結晶
溶解性 熱水に易溶、水、エタノールに可溶、有機溶媒に不溶

このように報告されています[2a]

1.3. 分布

ビオチンは、生体組織中に結合型として広く分布しています[2b]

1.4. 生体における働き

生体内では、カルボキシラーゼの補酵素として機能し、脂肪酸合成、β酸化、糖新生、アミノ酸や脂肪酸の代謝に関与して皮膚や神経組織などを正常に保つ働きを担っています[3a][4a]

1.5. 皮膚における浸透性

1998年に東北大学 大学院農学研究科・農学部および牧野皮膚科クリニックによって報告されたビオチンの経皮吸収性検証によると、

アトピー性皮膚炎を有する20名の患者および健常な皮膚を有する11名の被検者に0.3%ビオチンを含む軟膏を1日7gずつ、全身に連日塗布した。

血清中のビオチン量を微生物学的方法により定量したところ、健常な皮膚を有する11名のうち10名がビオチン量の上昇を示し(p<0.02)、アトピー性皮膚炎を有する患者では20名のうち18名が上昇を示した(p<0.01)

とくにビオチン量の低いアトピー性皮膚炎患者群において顕著な上昇がみられた。

このような検証結果が明らかにされており[5a]、ビオチンに真皮までの経皮吸収が認められています。

1.6. 化粧品以外の主な用途

ビオチンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 強化目的で保健機能食品に用いられています[6]
医薬品 アセチルCoAカルボキシラーゼなどの酵素の補酵素として働くことから、急・慢性湿疹、小児湿疹、接触皮膚炎、脂漏性湿疹、尋常性ざ瘡などのビタミン製剤として用いられます[3b][7]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品および医薬部外品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 肌荒れ改善作用

主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、リップケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、コンシーラー製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、ボディソープ製品、頭皮ケア製品など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 肌荒れ改善作用

肌荒れ改善作用に関しては、2004年にトキコクリニックによって報告されたビオチンの肌荒れに対する有用性検証によると、

– ヒト試験試験 –

アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、皮脂欠乏症皮膚炎、尋常性ざ瘡のいずれかを有する60名の患者の顔面全体に0.2%ビオチン配合ジェルまたは1%ビオチン配合軟膏を1日2回塗布してもらった。

ビオチン外用前と外用後で顔面写真を撮り目視で「著効」「有効」「変化なし」「悪化」の4段階で評価し、有効率を算出したところ、有効以上が63%、変化なしが31%、悪化が6%であった。

さらに、効果のあった患者のうち約半数はドライスキンに対して著効であった。

今回の結果は、角質水分量や経表皮水分蒸散量(TEWL)などの測定を行っておらず、科学的なビオチンの保湿効果として評価されるべき性格のものではないことをお断りしておく。

このような検証結果が明らかにされており[8a]、ビオチンに肌荒れ改善作用が認められています。

ビオチンの外用による肌荒れ改善のメカニズムに関する試験データはみつけられていませんが、ビオチンの生理作用としてカルボキシラーゼの補酵素として機能し、脂肪酸、糖、アミノ酸の代謝に関与していること[4b]、アトピー性皮膚炎においてビオチン吸収率が高く[5b]、改善率も高いこと[8b]、頭皮において毛母細胞活性化による細胞賦活作用などが認められていることなどから[9]、細胞賦活に関連した作用メカニズムである可能性が推測されます。

外用によるビオチンのメカニズムや有用性に関するデータはまだ少なく、今後みつかりしだい再編集します。

3. 混合原料としての配合目的

ビオチンは、混合原料が開発されており、ビオチンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 RonaCare Biotin Plus
構成成分 尿素リン酸2Naビオチンクエン酸
特徴 高溶解性ビオチン
原料名 ROVISOME Biotin
構成成分 エタノールパンテノールレシチン酢酸トコフェロール、カフェイン、ビオチン
特徴 ビオチン(ビタミンH)、酢酸トコフェロール(ビタミンE)、D-パンテノール(プロビタミンB5)およびカフェイン組み合わせ、これらが頭皮と毛根領域に効果的に輸送され、成長期と休止期の毛周期比率を正常化し発毛促進にアプローチする複合原料
原料名 Asebiol
構成成分 ピリドキシンHClナイアシンアミドグリセリンパンテノール、加水分解酵母タンパク、トレオニンアラントインビオチンフェノキシエタノールソルビン酸Kリン酸2Naクエン酸
特徴 皮脂の産生に関与する酵素である5α-リダクターゼを阻害することにより頭皮の皮脂量を調整するビタミンおよびアミノ酸の複合体
原料名 Trichogen VEG
構成成分 アルギニン、アセチルチロシン、PEG-12ジメチコンパントテン酸Ca、グルコン酸亜鉛、ナイアシンアミド、オルニチンHCl、ポリクオタニウム-11、シトルリン、加水分解ダイズタンパク、グルコサミンHCl、アルクチウムマジュス根エキス、オタネニンジン根エキスビオチンフェノキシエタノールコハク酸2Na
特徴 髪の強度を改善し、抜け毛を減らして頭皮の状態の改善にアプローチする、抜け毛予防のための最適化された複合体

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-1999年および2015-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

ビオチンの配合製品数と配合量の調査結果(1998-1999年および2015-2017年)

5. 安全性評価

ビオチンの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 局外規2002規格の基準を満たした成分が収載される日本薬局方外医薬品規格2002に収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

食品添加物の指定添加物リストおよび医薬部外品原料規格2021に収載されており、化粧品として20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

5.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[10a]によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に0.1%ビオチンを適用し、適用後に眼刺激性を評価したところ、一過性のわずかな刺激がみられた(Crittenden,1948)

このように記載されており、試験データをみるかぎり一過性のわずかな眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-わずかな眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5.3. 光毒性(光刺激性)

ビオチンは、UVBおよびUVA領域および可視光をほとんど吸収せず、光毒性(光刺激性)は問題にならないと考えられています[10b]

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ビオチン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,787.
  2. ab大木 道則, 他(1989)「ビオチン」化学大辞典,1836.
  3. ab西村 友宏(2021)「ビタミン剤」今日のOTC薬 改訂第5版:解説と便覧,532-549.
  4. ab白川 仁(2010)「生理作用」ビタミン総合事典,363-367.
  5. ab古川 勇次, 他(1998)「アトピー性皮膚炎患者におけるビオチンの経皮吸収」ビタミン(72)(10),579-580. DOI:10.20632/vso.72.10_579_2.
  6. 樋口 彰, 他(2019)「ビオチン」食品添加物事典 新訂第二版,277.
  7. 浦部 晶夫, 他(2021)「ビオチン」今日の治療薬2021:解説と便覧,512.
  8. ab小村 十樹子(2004)「ビオチン配合外用製剤のドライスキンへの応用」Fragrance Journal(32)(2),29-34.
  9. 岩渕 徳郎(2018)「育毛薬剤の開発と評価方法(これまでと今後)」日本香粧品学会誌(42)(2),98-103. DOI:10.11469/koshohin.42.98.
  10. abM.Z. Fiume, et al(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Biotin」International Journal of Toxicology(20)(4_suppl),1-12. DOI:10.1080/109158101529025472.

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