ヒドロキシプロリンの基本情報・配合目的・安全性

ヒドロキシプロリン

化粧品表示名称 ヒドロキシプロリン
医薬部外品表示名称 L-オキシプロリン、L-ヒドロキシプロリン
医薬部外品表示名称(簡略名) オキシプロリン
化粧品国際的表示名称(INCI名) Hydroxyproline
配合目的 保湿 など

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、プロリンの4位にヒドロキシ基(-OH)が結合したイミノ酸(∗1)に分類されるアミノ酸です[1][2][3a]

∗1 イミノ酸とは、分子中にイミノ基(>C=NH)とカルボキシ基(-COOH)の両方を含む有機化合物の一群ですが、広義にはプロリン分子に含まれるN-H結合(-NH-)もイミノ基に分類されていることから、プロリンはイミノ酸に分類されています。また一般にアミノ基(-NH2)とカルボキシ基(-COOH)の両方の官能基をもつ有機化合物をアミノ酸とよびますが、プロリンはアミノ基をもたず、代わりにアミノ基に類似したイミノ基をもつイミノ酸であるため、厳密にはアミノ酸ではないという議論もありますが、現時点ではアミノ酸に分類されています。

ヒドロキシプロリン

1.2. 分布

ヒドロキシプロリンは、自然界において動物の結合組織を構成する繊維状タンパク質であるコラーゲンの構成成分として10%%以上含まれています[3b][4][5a]

1.3. 化粧品以外の主な用途

ヒドロキシプロリンの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 調味料や強化剤として用いられています[6]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 角層水分量増加による保湿作用

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディ&ハンドケア製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 角層水分量増加による保湿作用

角層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および天然保湿因子と水の関係について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[7][8]

角質層において水分を保持する働きをもつ天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)は親水性の吸湿物質であり、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しています[9]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[10a][11]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[10b]

このような背景から、角層の水分量が低下している場合に角層水分量を増加することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2002年に協和発酵工業によって報告されたヒドロキシプロリンの角層水分量への影響検証によると、

– ヒト使用試験 –

4人の被検者(23-28歳)の前腕屈曲部に各濃度のヒドロキシプロリン水溶液と対照として精製水をそれぞれ2μL/c㎡ずつ毎日朝夕2回2ヶ月にわたって塗布し、経時的に朝の塗布前の被検部位の肌伝導度を水分量として測定した。

肌伝導度の測定は、0日目から14日おきに行い、また0日目の水分量を100とした伝導度変化に対する相対値を算出したところ、以下の表のように、

試料 濃度
(%)
相対伝導度(%)
0日 14日 28日 42日 56日
ヒドロキシプロリン 3.0 100 128 118 109 110
0.5 100 125 120 111 110
精製水 100 97 95 89 94

ヒドロキシプロリン水溶液は、精製水と比較して肌の水分量が増加し、水分維持機能の改善が認められた。

このような検証結果が明らかにされており[12]、ヒドロキシプロリンに角層水分量増加による保湿作用が認められています。

3. 混合原料としての配合目的

ヒドロキシプロリンは、混合原料が開発されており、ヒドロキシプロリンと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 RonaCare VTA
構成成分 エタノールレシチン、ルチニル二硫酸2Na、ヒドロキシプロリンソルビトールリン酸アスコルビルMgトコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸グリセリルオレイン酸グリセリルクエン酸
特徴 ルチン誘導体、リン酸アスコルビルMgおよびヒドロキシプロリンを含むリポソームが浸透することにより、ヒアルロン酸を分解酵素から保護すると同時に細胞外マトリックスであるグルコサミノグルカンの合成促進を発揮するよう設計された複合抗老化原料

4. 安全性評価

ヒドロキシプロリンの現時点での安全性は、

  • 食品添加物の既存添加物リストに収載
  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

協和発酵工業の安全性データ[5b]によると、

  • [ヒト試験] 被検者にヒドロキシプロリン(濃度不明)を対象にHRIPT(皮膚性刺激&皮膚感作性試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

協和発酵工業の安全性データ[5c]によると、

  • [動物試験] ウサギの眼にヒドロキシプロリン(濃度不明)を適用し、適用後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤に分類された

このように記載されており、試験データをみるかぎり眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

4.3. 光毒性(光刺激性)

協和発酵工業の安全性データ[5d]によると、

  • [ヒト試験] 被検者にヒドロキシプロリン(濃度不明)を対象に光毒性(光刺激性)試験を実施したところ、この試験物質は光刺激剤ではなかった

このように記載されており、試験データをみるかぎり光刺激なしと報告されているため、一般に光毒性(光刺激性)はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ヒドロキシプロリン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,814.
  2. 大木 道則, 他(1989)「4-ヒドロキシプロリン」化学大辞典,1892.
  3. ab有機合成化学協会(1985)「ヒドロキシプロリン」有機化合物辞典,756-757.
  4. 大木 道則, 他(1989)「コラーゲン」化学大辞典,814.
  5. ab小林 麻子・柴崎 剛(2003)「ヒドロキシプロリンの製造と生理活性」Fragrance Journal(31)(3),37-43.
  6. 樋口 彰, 他(2019)「L-ヒドロキシプロリン」食品添加物事典 新訂第二版,284-285.
  7. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  8. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  9. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592. DOI:10.1111/j.1365-2133.1989.tb08190.x.
  10. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  11. 武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  12. 協和発酵工業株式会社(2002)「化粧料」再表00-051561.

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