二酸化炭素の基本情報・配合目的・安全性

二酸化炭素

化粧品表示名 二酸化炭素
医薬部外品表示名 二酸化炭素
慣用名 炭酸ガス
INCI名 Carbon Dioxide
配合目的 噴射血行促進 など

1. 基本情報

1.1. 定義

俗に炭酸ガス(∗1)とよばれる炭素の酸化物であり、以下の化学式で表される無機化合物です[1a][2a]

∗1 気体は炭酸ガス、固体はドライアイス、液体は液体二酸化炭素、炭酸ガスが液体に溶けた水溶液は炭酸・炭酸水とよばれます。

二酸化炭素

1.2. 物性・性状

二酸化炭素の物性・性状は、

状態 気体
溶解性 水に易溶

このように報告されており[2b]、二酸化炭素が溶けた水溶液は炭酸を生成し、炭酸または炭酸水とよばれます。

1.3. 分布

二酸化炭素は、自然界において大気中に約0.03vol%含まれているほか、天然ガスにも存在し、海水中にも大量に溶存しています[2c]

また、温泉の一種である二酸化炭素泉としても存在しており、二酸化炭素泉は皮膚から二酸化炭素が吸収されることにより皮膚の血管が拡張し循環を改善する効果が知られています[3][4]

1.4. 化粧品以外の主な用途

二酸化炭素の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 炭酸ガスとして清涼飲料類の酸味料に用いられています[5]
医薬品 安定・安定化、pH調整、噴射目的の医薬品添加剤として外用剤、静脈内注射に用いられています[6]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 噴射
  • 血管拡張による血行促進作用
  • 配合目的についての補足

主にこれらの目的で、洗顔料、スキンケア製品、シャンプー製品、ボディケア製品、頭皮ケア製品、マスク製品、入浴剤、ミスト系スキンケア製品、ヘアムース製品などに使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 噴射

噴射に関しては、圧縮ガスである二酸化炭素は加圧状態から大気圧に減圧されたときの瞬間的な気化膨張によって容器の外にジェット状に噴出させることから[1b][7][8]、ミスト状化粧水、ヘアムース製品などの噴射剤として使用されています。

2.2. 血管拡張による血行促進作用

血管拡張による血行促進作用に関しては、水に溶存した二酸化炭素(炭酸ガス)は皮膚から浸透しその刺激が血管に伝わり血管が拡張することで血行促進が起こると考えられており、化粧品において実際的に皮膚に対して二酸化炭素の血行促進作用を発揮するためには、二酸化炭素の大気中への放散を最低限にとどめて皮膚へ浸透させるためのアプローチとして、剤型と炭酸ガスの大きさが重要であることが知られています[9][10a]

剤型によるアプローチとしては、代表的なものとして吐出直後から大気中へ放散しやすい一方で高濃度の炭酸ガスを短時間で肌に供給できるエアゾール型や、供給できる炭酸ガス量は限られるものの高粘度のゲルにより大気中への放散を最低限にとどめることが可能なシート型などが用いられています[10b]

炭酸ガスの大きさによるアプローチとしては、炭酸ガスの泡径が小さくなるほど泡と皮膚との接触面積は大きくなり、また炭酸ガスが溶解しやすくなり溶解量が上がることで浸透量が増加すると考えられていることから、マイクロバブル技術が用いられることがあります[10c]

このような背景から、皮膚の血行促進目的でシート製品、パック製品、エアロゾル製品、クレンジング製品、洗顔料、入浴剤などに使用されています。

2.3. 配合目的についての補足

二酸化炭素の効果を発現させるには、ただ単に塗布するだけでは期待できず、皮膚上に数分間保持させる必要がありますが、経皮吸収された二酸化炭素の効果として、20-30分の炭酸パック使用において個人差があるものの肌状態(肌のキメ、ハリ、透明度、小ジワ、たるみなど)の改善が複数報告されています[11][12a]

これらの効果に関しては、血管拡張による血行促進作用のみでは説明がつかず、現時点では作用メカニズムが不明とされていることから、作用メカニズムや明確な効果が明らかになり次第追補します。

3. 安全性評価

二酸化炭素の現時点での安全性は、

  • 食品添加物の指定添加物リストに収載
  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか(有害な事象ではなく一過性の心地良い刺激)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性

日進化学の臨床試験データ[12b]によると、

  • [ヒト試験] 15名の女性被検者(30-60歳)に濃度約1,500ppmの炭酸ガス(二酸化炭素)を含む化粧水を100mLエアゾール容器に50mL充填し、これを30日間にわたってコットンに適量吐出して気になる箇所(目元や頬)に2分間コットンパックしてもらい、皮膚科専門医による皮膚所見による観察および皮膚刺激感を尋ねたところ、8名は刺激感を感じたと回答し、6名に1分以内に消失する程度のわずかな皮膚紅潮が確認できた。皮膚刺激に関しては耐えられない嫌な感じの刺激ではなく、1分程度で収まる心地よい、効果が実感できる感覚の刺激であったとの意見であった。また皮膚科医の所見では皮膚に有害な事象はなく、炭酸ガスによる皮膚紅潮が問題ないことが確認された

このように記載されており、試験データをみるかぎり、わずかな皮膚紅潮や刺激感が報告されているものの、有害な事象ではなく、1分程度で収まる心地良い刺激であると報告されていることから、一般に皮膚刺激性はわずかな皮膚刺激を引き起こすものの、安全性に問題のある皮膚刺激ではないと考えられます。

3.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

3.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

食品添加物の既存添加物リストおよび日本薬局方に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「二酸化炭素」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,728.
  2. abc大木 道則, 他(1989)「二酸化炭素」化学大辞典,1670.
  3. 前田 眞治(2012)「二酸化炭素泉」温泉の百科事典,296-297.
  4. 萬 秀憲, 他(1984)「人工炭酸浴に関する研究」日本温泉気候物理医学会雑誌(47)(3-4),123-129. DOI:10.11390/onki1962.47.123.
  5. 樋口 彰, 他(2019)「二酸化炭素」食品添加物事典 新訂第二版,258.
  6. 日本医薬品添加剤協会(2021)「二酸化炭素」医薬品添加物事典2021,386.
  7. 森本 秀樹(2001)「エアゾールタイプ育毛剤について」香粧品製造学-技術と実際,370-373.
  8. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「プロペラント」薬科学大辞典 第5版,1388.
  9. Y. Sakai, et al(2011)「A Novel System for Transcutaneous Application of Carbon Dioxide Causing an “Artificial Bohr Effect” in the Human Body」Plos One(6)(9),e24137. DOI:10.1371/journal.pone.0024137.
  10. abc小林 由佳・棚橋昌則(2015)「血行促進効果を高める炭酸製剤設計とそのスキンケア効果の検証」Fragrance Journal(43)(7),16-20.
  11. 田中 雅也(2015)「炭酸ガスの美容効果について」Fragrance Journal(43)(7),35-39.
  12. ab角本 次郎(2015)「炭酸ガスの化粧品への配合と肌質改善効果に関して」Fragrance Journal(43)(7),40-44.

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