クロルフェネシンの基本情報・配合目的・安全性

クロルフェネシン

化粧品成分表示名称 クロルフェネシン
医薬部外品表示名称 クロルフェネシン
配合目的 防腐

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される芳香族化合物(∗1)です[1][2]

∗1 芳香族化合物とは、主にベンゼン環を含む有機化合物のことをいいます。ベンゼン環を含む化合物はよい香りをもつものが多かったことから芳香族の名で呼ばれるようになりましたが、必ずしも芳香性を有しているわけではありません。

クロルフェネシン

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 防腐

主にこれらの目的で、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、クレンジング製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 防腐

防腐に関しては、クロルフェネシンは酸性領域(pH4.0-6.0)において優れた抗菌活性をもつ低毒性の防腐剤として知られています[3][4a]

1990年にドイツのHoechst AGによって報告されたクロルフェネシンの抗菌活性検証によると、

– in vitro : 抗菌活性試験 –

寒天培地を用いて化粧品の腐敗でよく見受けられる様々なカビ、酵母および細菌に対するクロルフェネシンのMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように(∗2)

∗2 MICの単位であるppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です。

微生物 MIC
% ppm
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa
0.250 2500
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli
0.125 1250
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus
0.125 1250
カンジダ(酵母)
Candida albicans
0.125 1250
コウジカビ(カビ)
Aspergillus brasiliensis
0.250 2500

クロルフェネシンは、細菌(グラム陽性菌、グラム陰性菌)、カビ、酵母など広範囲に高い抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており[4b]、クロルフェネシンに防腐作用が認められています。

3. 配合製品数および配合量範囲

クロルフェネシンは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.3
育毛剤 0.3
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.3
薬用口唇類 配合不可
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 配合不可
染毛剤 配合不可
パーマネント・ウェーブ用剤 配合不可

また、クロルフェネシンはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 0.3
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 0.3
粘膜に使用されることがある化粧品 配合不可

化粧品に対する実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2010-2011年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

クロルフェネシンの配合製品数と配合量の調査(2011-2012年)

4. 安全性評価

クロルフェネシンの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし
  • 皮膚吸収・代謝・排泄:経皮吸収後に尿排泄される

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5a]によると、

  • [ヒト試験] 15人の被検者に0.2%メチルパラベン、0.1%プロピルパラベンおよび0.25%クロルフェネシンを含む製剤および0.2%メチルパラベン、0.1%プロピルパラベン、0.25%クロルフェネシンおよび0.4%フェノキシエタノールを含む乳化物それぞれ20μLを週3回21日間にわたって累積刺激性試験を実施したところ、製剤の累積刺激スコアは0.40±0.91であり、乳化物の累積刺激スコアは0.87±1.19であった(E. Lee et al,2007)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.3%クロルフェネシン水溶液0.1mLを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去20分後に皮膚刺激性を評価したところ、2人の被検者は最小限の紅斑を示した(刺激スコア1)。クロルフェネシンは最小限の皮膚刺激物質に分類された(Harrison Research Laboratories Inc,1997)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-最小限の皮膚刺激が報告されているため、一般に濃度0.3%以下において皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5b]によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に1%クロルフェネシン蒸留水0.1mLを点眼し、約10秒間目を閉じさせ、点眼1時間後および1,2,3,4および7日後に眼刺激性を評価したところ、それぞれのウサギでわずかな結膜刺激が報告されたが、これらの反応は点眼から24時間以内に消失した。クロルフェネシンは弱い眼刺激性に分類された(EviC-CEBA,1994)

このように記載されており、試験データをみるかぎり軽度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5c]によると、

  • [ヒト試験] 55人の被検者に5%および9%クロルフェネシンを含む試験物質を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、試験期間中にいずれの被検者も皮膚刺激および皮膚感作を示さなかった(Collaborative Connections Inc,2002)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に12%および17%クロルフェネシンを含む試験物質を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間19日目に1人の被検者でほとんど知覚できない紅斑(刺激スコア0.5)が観察され、22日目には軽度の紅斑(刺激スコア1)が観察された。この紅斑は臨床的に一過性の皮膚刺激であると考えられた。この試験においていずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Collaborative Connections Inc,2002)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.4. 光感作性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5d]によると、

  • [ヒト試験] ケトプロフェン(非ステロイド系抗炎症薬)に光感作を示す11人の患者にクロルフェネシンを対象に光パッチテストを実施した。試験開始2日目に試験部位にUVA(5J/c㎡)を照射し、3および4日目に試験部位を評価したところ、試験部位にクロルフェネシンに対する陽性反応はみられなかった(M. Vigan et al,2002)

このように記載されており、試験データをみるかぎり光感作なしと報告されていることから、一般に光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「クロルフェネシン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,382.
  2. “Pubchem”(2021)「Chlorphenesin」,2021年7月20日アクセス.
  3. 日光ケミカルズ株式会社(2006)「殺菌・防腐剤」新化粧品原料ハンドブックⅠ,458-470.
  4. abK.H. Wallhausser(1990)「香粧品工業で使用されている防腐剤」香粧品 医薬品 防腐・殺菌剤の科学,501-565.
  5. abcdW. Johnson, et al(2014)「Safety Assessment of Chlorphenesin as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(33)(2_Suppl),5S-15S. DOI:10.1177/1091581814526893.

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