メチルイソチアゾリノンの基本情報・配合目的・安全性

メチルイソチアゾリノン

化粧品成分表示名称 メチルイソチアゾリノン
医薬部外品表示名称 メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液(∗1)
配合目的 防腐

∗1 メチルイソチアゾリノン(methylisothiazolinone)は、製造工程におけるメチルクロロイソチアゾリノン(methylchloroisothiazolinone)の副産物であるため併用されることも多く、医薬部外品(薬用化粧品)に併用される場合は医薬部外品表示名称として「メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液」と表示されます。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される複素環式化合物(∗2)であり、イソチアゾリノン(isothiazolinone)の誘導体です[1][2]

∗2 複素環式化合物とは、炭素(C)以外の原子を環の構成元素に持つ有機化合物であり、メチルイソチアゾリノンの場合は環の中に炭素(C)の他に窒素(N)と硫黄(S)を含む複素環式化合物です。

メチルイソチアゾリノン

1.2. 歴史および規制状況

殺菌剤として水銀化合物を使用することへの懸念が高まる中で、1960年代にイソチアゾリノン類が広域に抗菌活性を有しかつ有機薬品によって不活性化されないことが発見されたことをきっかけに、1980年代にはメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液を活性成分とする化粧品・トイレタリー用防腐剤が開発されました[3a]

メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液は、近年まで米国、ヨーロッパを中心に汎用されていましたが、2014年9月に欧州委員会(European Commission)は2016年7月15日からメチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン混合液をリーブオン製品(∗3)では使用禁止、リンスオフ製品(∗4)では15ppm(0.0015%)以下へ変更という委員会規則を発行しました[4]

∗3 リーブオン製品とは、スキンケア製品やメイク製品など付けっ放しの製品のことです。
∗4 リンスオフ製品とは、シャンプーやボディソープなどの洗い流し系製品のことです。

このような通知の影響もあり、より安全性に配慮する形でリーブオン製品にも配合可能なメチルイソチアゾリノン単体での配合が増えてきています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 防腐

主にこれらの目的で、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、ボディソープ製品、整髪料、洗顔料、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 防腐

防腐に関しては、メチルイソチアゾリノンは幅広い範囲の細菌(グラム陰性菌、グラム陽性菌)および真菌(カビ、酵母)に強い抗菌活性を示すイソチアゾリノン系防腐剤として知られています[3b]

2004年にロームアンドハースジャパンによって報告されたメチルイソチアゾリノンの抗菌活性検証によると、

– in vitro : 抗菌活性試験 –

寒天培地を用いて化粧品の腐敗でよく見受けられる様々なカビ、酵母および細菌に対するメチルイソチアゾリノンのMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように(∗5)

∗5 MICの単位であるppm(parts per million)は100万分の1の意味であり、1ppm = 0.0001%です。

微生物 MIC
% ppm
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa
0.0040 40
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli
0.0035 35
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus
0.0040 40
カンジダ(酵母)
Candida albicans
0.0040 40
コウジカビ(カビ)
Aspergillus brasiliensis
0.0003 3

メチルイソチアゾリノンは、細菌(グラム陽性菌、グラム陰性菌)、カビ、酵母など広範囲に非常に高い抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており[3c]、メチルイソチアゾリノンに防腐作用が認められています。

また、メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液の抗菌活性については、1990年にアメリカのRohm and Haasによって報告されたメチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液の抗菌活性検証によると、

– in vitro : 抗菌活性試験 –

寒天培地を用いて化粧品の腐敗でよく見受けられる様々なカビ、酵母および細菌に対するメチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液のMIC(minimum inhibitory concentration:最小発育阻止濃度)を検討したところ、以下のグラフのように、

微生物 MIC
% ppm
緑膿菌(グラム陰性桿菌)
Pseudomonas aeruginosa
0.030 300
大腸菌(グラム陰性桿菌)
Escherichia coli
0.030 300
黄色ブドウ球菌(グラム陽性球菌)
Staphylococcus aureus
0.015 150
枯草菌(グラム陽性桿菌)
Bacillus subtilis
0.015 150
カンジダ(酵母)
Candida albicans
0.030 300
コウジカビ(カビ)
Aspergillus brasiliensis
0.060 600

メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液は、細菌(グラム陽性菌、グラム陰性菌)、カビ、酵母など広範囲に高い抗菌活性を示した。

このような検証結果が明らかにされており[5]、メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン混合液に防腐作用が認められています。

3. 配合製品数および配合量範囲

メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.1
育毛剤 配合不可
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 配合不可
薬用口唇類 配合不可
薬用歯みがき類 配合不可
浴用剤 配合不可
染毛剤 配合不可
パーマネント・ウェーブ用剤 配合不可

また、メチルイソチアゾリノンはポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 0.01
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 0.01
粘膜に使用されることがある化粧品 配合不可

化粧品に対する実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2014年および2019-2020年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗6)

∗6 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

メチルイソチアゾリノンの配合比較調査(2014年および2019-2020年)

4. 安全性評価

メチルイソチアゾリノンの現時点での安全性は、

  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度0.01%以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:濃度0.01%以下においてほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):濃度0.01%以下においてほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):濃度0.02%以下においてほとんどなし
  • 光感作性:濃度0.02%以下においてほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

また、メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液の現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:濃度0.01%以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:濃度0.0056%以下においてほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):濃度0.0015%以下においてほとんどなし
  • 光毒性(光刺激性):濃度0.0015%以下においてほとんどなし
  • 光感作性:濃度0.0015%以下においてほとんどなし

このような結果となっており、濃度0.0015%以下および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、メチルイソチアゾリノンに敏感な皮膚を有する場合やすでにメチルイソチアゾリノンにアレルギーを有する場合は、メチルイソチアゾリノンを含む製品を避ける必要があると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

メチルイソチアゾリノンの安全性評価については、メチルイソチアゾリノンやメチルクロロイソチアゾリノンといった長い化学名称が複数回にわたって記載されることで閲覧性が著しく低下するため、それぞれ、

  • メチルイソチアゾリノン(methylisothiazolinone):MI
  • メチルクロロイソチアゾリノン(methylchloroisothiazolinone):MCI
  • メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン液:MI/MCI混合液

このように省略して記載しています。

4.1. 皮膚刺激性

4.1.1. メチルイソチアゾリノン(MI)のみ

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6a]によると、

  • [ヒト試験] 40人の被検者に0.01%,0.03%および0.06%MI15μLを24時間適用し、また陰性対照として水を適用し、適用から1および24時間後に皮膚刺激スコアを評価したところ、水が5.0だったのに対してMIは100,300および600ppmでそれぞれ6.3,1.3および6.3であった。この試験条件下でこの試験物質は非刺激剤であった(Rohm & Haas LLC,2001)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に0.01%MIを含むシャンプー15μLを24時間単回適用し、また陰性対照としてMI未配合シャンプーおよび水のみを適用し、適用から1および24時間後に皮膚刺激スコアを評価したところ、水、MI未配合シャンプーおよび0.01%MIを含むシャンプーの皮膚刺激スコアはそれぞれ5.0,15.0および21.3であった。この試験において濃度0.01%MIを含むシャンプーは刺激剤ではなかった(Rohm & Haas LLC,2001)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に0.01%MIを含むボディローション15μLを24時間単回適用し、また陰性対照としてMI未配合ボディローションを適用し、皮膚刺激スコアを評価したところ、皮膚刺激スコアは両方1.3であり、ともに非刺激剤であると結論付けられた(Rohm & Haas LLC,2001)
  • [ヒト試験] 40人の被検者に0.01%MIを含むサンスクリーン15μLを24時間単回適用し、また陰性対照としてMI未配合サンスクリーンを適用し、皮膚刺激スコアを評価したところ、皮膚刺激スコアはMIの有無でそれぞれ、1.3および6.3であり非刺激剤であると結論付けられた(Rohm & Haas LLC,2001)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度0.01%以下において共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に濃度0.01%以下において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

4.1.2. メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン液(MI/MCI混合液)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7a]によると、

  • [ヒト試験] 13人の被検者に0.001%,0.0015%,0.0025%および0.005%MI/MCI混合液水溶液0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、いずれの被検者においても累積皮膚刺激の兆候は観察されなかった(H.I. Maibach,1985)
  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.01%,0.02%および0.03%MI/MCI混合液水溶液0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、濃度0.01%では累積皮膚刺激の兆候は観察されなかったが、濃度0.02%および0.03%においてそれぞれ4人の被検者に軽度の累積刺激が観察された(H.I. Maibach,1985)
  • [ヒト試験] 14人の被検者に0.0025%,0.005%および0.01%MI/MCI混合液水溶液0.2mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、いずれの被検者も累積皮膚刺激の兆候は観察されなかった(H.I. Maibach,1985)
  • [ヒト試験] 80人の被検者に0.01%MI/MCI混合液を含むヘア&スキン製剤を対象にパッチテストを実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激の兆候は観察されなかった(H I Maibach,1980)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度0.01%以下において共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に濃度0.01%以下において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

4.2. 眼刺激性

4.2.1. メチルイソチアゾリノン(MI)のみ

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片目の結膜嚢に0.01%MI水溶液を点眼し、ウサギの眼を24時間後に1分間すすぎ、点眼1,24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、有害な反応は観察されず、0.01%MIは非刺激剤であると結論づけた(Rohm & Haas LLC,2000)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片目の結膜嚢に0.01%MIを含むボディローション0.1mLを点眼し、一方で別の6匹のウサギにMIを含まないボディローションを点眼した。20-30秒間ウサギの眼をすすぎ、点眼1,24,48および72時間後に眼刺激性を評価したところ、両方のボディローションで有害な反応は観察されず、0.01%MIは非刺激剤であると結論づけた(Rohm & Haas LLC,2001)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度0.01%において共通して眼刺激なしと報告されているため、一般に濃度0.01%以下において眼刺激性はほとんどないと考えられます。

4.2.2. メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン液(MI/MCI混合液)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7b]によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に0.0056%MI/MCI混合液水溶液0.1mLを15分ごとに2時間にわたって点滴し、この手順を週5日4週間にわたって繰り返したところ、軽度の結膜炎が観察されたが、この試験物質は眼刺激性剤ではないと結論づけられた(Rohm and Haas Company,1984)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度0.0056%において眼刺激なしと報告されているため、一般に濃度0.0056%以下において眼刺激性はほとんどないと考えられます。

4.3. 皮膚感作性(アレルギー性)

4.3.1. メチルイソチアゾリノン(MI)のみ

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6c]によると、

  • [ヒト試験] MI/MCI混合液に対して陽性反応を示した22人の患者に0.001%,0.003%,0.01%および0.03%MIをパッチテストしたところ、2人の患者は0.03%MIに陽性反応を示した。これらのうち1人は0.01%MIにも陽性反応を示した。MIは感作剤ではあるが、MCIほど強力な増感剤ではなく、またMCIとの交差反応の可能性もあると結論づけた(M. Bruze,1987)
  • [ヒト試験] MI/MCI混合液で陽性反応を示した12人の患者に0.0115%および0.00575%MIをパッチテストしたところ、3人の患者は0.0115%MIで偽陽性反応を示し、そのうち1人は0.00575%においても別の偽陽性反応を示した。これらの結果からMIは弱感作剤であると結論付けられた(M. Bruze,1989)
  • [ヒト試験] MCIとMIの交差反応を検討するために、以前にMI/MCI混合液で陽性反応を示した4人の患者にMI/MCI混合液、MCI、0.095%MIを対象にパッチテストを実施したところ、すべての患者はMI/MCI混合液で陽性反応を示し、3人の患者はMCI単体で陽性反応を示し、1人の患者は0.095%MI単体で陽性反応を示した。この結果は、MI/MCI混合液の感作がMCIの感作によって誘発されたものであり、MCIに高い感作反応を示す場合に高濃度のMIに反応する可能性があると結論づけられた(M. Isaksson et al,2008)
  • [ヒト試験] 80人の被検者に0.005%,0.01%,0.025%,0.05%および0.1%MI0.1mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者は濃度0.1%で一過性の紅斑を示し、またチャレンジ期間で1人の被検者は濃度0.05%で紅斑を示した。2人の被検者は濃度0.1%で軽度の皮膚反応を示し、これらは感作反応であると判断された。MIは濃度0.1%付近では感作性を有すると結論付けられた(Rohm & Haas LLC,1994)
  • [ヒト試験] 0.01%MI/MCI混合液で陰性であった98人の被検者に0.01%MI0.15mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において1人の被検者は以前の感作性物質による反応を示したが、残りの被検者は誘導期間およびチャレンジ期間において皮膚反応を示さず、0.01%MIは皮膚感作を誘発しないと結論付けられた(Rohm & Haas LLC,2000)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度0.01%以下において共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に濃度0.01%以下において皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.3.2. メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン液(MI/MCI混合液)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7c]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 96人の被検者に0.005%および0.01%MI/MCI混合液水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、50ppm濃度では皮膚感作の兆候は観察されなかったが、100ppm濃度で再チャレンジパッチを実施した52人のうち1人の被検者に曖昧な反応が観察された(H.I. Maibach,1980)
  • [ヒト試験] 1,450人の被検者に0.0002%-0.005%MI/MCI混合液水溶液0.3または0.5mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、濃度0.00125%未満では皮膚刺激および皮膚感作の兆候はみられなかった。3人の被検者は遅延感作性を示唆する反応がみられたため(0.00125%で1人、0.002%で2人)、再度チャレンジパッチを適用したところ、決定的な結果は得られなかった。しかしながら、それらの感作の兆候は濃度0.01%にて再びチャレンジパッチを適用すると確認された(J.E. Weaver et al,1985)
  • [ヒト試験] 18人の被検者に0.0025%MI/MCI混合液水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚刺激は観察されなかったが、1人の被検者に感作反応が認められたため、この被検者に6週間後再度チャレンジパッチを適用したところ、陽性反応を示した(Rohm and Haas Company,1984)
  • [ヒト試験] 9人の被検者群にそれぞれ0.0005%,0.001%,0.0015%,0.0025%,0.005%および0.01%MI/MCI混合液水溶液を48時間閉塞パッチ適用し、処理された部位を49,96および168時間後に評価したところ、いずれの被検者も濃度0.0015%以下においては皮膚反応を示さなかった。しかし、濃度0.0025%,0.005%および0.01%はそれぞれ1,6および9人が皮膚感作を示した。配合範囲を超える濃度ではヒトにおいて皮膚感作を引き起こすと結論づけられた(J.E. Weaver et al,1985)

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] 国際接触皮膚炎研究グループおよび北米接触皮膚炎グループは、化粧品およびトイレタリーにおけるMI/MCI混合液の使用に関する感作性リスクを評価するために、7,000人以上の患者に0.01%MI/MCI混合液水溶液をパッチ試験したところ、陽性反応の発生率は41人(0.58%)であった(A.C. Degroot et al,1985)
  • [ヒト試験] 顔に接触皮膚炎を有する98人の患者に0.01%MI/MCI混合液を閉塞パッチ適用し、試験部位を48および72時間後に検査したところ、98人のうち6人に陽性反応がみられた。これら6人の患者のいずれも自身の化粧品またはトイレタリー製品に対して皮膚反応を示さなかったが、それは化粧品のMI/MCI混合液の濃度が低すぎたために感作反応を誘発しないことを示唆した(A. Tosti et al,1986)
  • [ヒト試験] 接触性皮膚炎を有する1,511人の患者に0.01%MI/MCI混合液をパッチテストしたところ、13人(0.8%)が陽性反応を示した。13人のうち8人は2週間後に同様のテストを実施したところ、8人すべての被検者が陽性反応を示した。皮膚感作の程度を調査するために、最初に陽性反応を示した13人のうち11人(再テストした8人含む)にあらためて0.00077%-0.00155%MI/MCI混合液を含む様々な化粧品を対象にパッチテストしたところ、いずれの患者も皮膚反応を示さなかった(N. Hjorth et al,1986)
  • [ヒト試験] 0.01%MI/MCI混合液を用いたパッチテストで陽性反応が認められた18人の被検者に0.0004%-0.0006%MI/MCI混合液を含む液体石鹸、シャンプー、ヘアコンディショナー、液体柔軟剤、入浴剤のうち少なくとも1つの製品を1日1回使用してもらったところ、これらの製品でのアレルギー性皮膚炎反応の兆候はなかった。これらの洗浄系製品はすぐに水で希釈されてはるかに低い濃度一時的に使用され、実際のMI/MCI混合液の適用となると約0.0001%相当であることから、MI/MCI混合液にアレルギーのある消費者でさえ、これらの製品の使用で皮膚炎を誘発するリスクは極めてわずかであることが示唆された(J. E. Weaver et al,1985)
  • [ヒト試験] 420人の患者に0.01%MI/MCI混合液をパッチテストしたところ、23人(5.5%)が陽性反応を示した。この23人のうち12人の患者に0.0007%,0.0015%,0.0025%,0.005%および0.01%MI/MCI混合液をパッチテストしたところ、濃度0.0025%以下において皮膚反応は減少した。しかしながら、濃度0.0007%においても2人の患者にわずかな皮膚反応が観察された(F. Pasche et al,1989)

このように記載されており、試験データをみるかぎり健常な皮膚および皮膚炎を有する皮膚のどちらでも0.0015%以下において共通して皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚状態に関わらず0.0015%以下において皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

4.4. 光毒性(光刺激性)および光感作性

4.4.1. メチルイソチアゾリノン(MI)のみ

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[6d]によると、

  • [ヒト試験] 12人の被検者に0.02%MI50μLを24時間閉塞パッチ適用し、また陰性対照としてMIなしの閉塞パッチを適用し、パッチ除去後にUVA(20J/c㎡)およびUVBの最小紅斑線量を照射した。照射24および48時間後に試験部位を評価したところ、いずれの被検者も光刺激を示さなかった(Rohm & Haas LLC,2000)
  • [ヒト試験] 32人の被検者に0.02%MI20μLを対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も光感作反応を示さなかった(Rohm & Haas LLC,2000)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度0.02%以下において光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に濃度0.02%以下において光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

4.4.2. メチルイソチアゾリノン・メチルクロロイソチアゾリノン液(MI/MCI混合液)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[7d]によると、

  • [ヒト試験] 27人の被検者に0.0015%MI/MCI混合液を対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチ下で実施したところ、誘導期間に一過性のわずかな刺激反応がみられたが、感作を示す反応は観察されなかったため、この条件下では光感作の兆候はなかったと結論づけた(Rohm and Haas Company,1984)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に0.0015%MI/MCI混合液を含む製剤を24時間単一閉塞パッチ適用し、パッチ除去後にUVAライトを10cm(4400kW/c㎡)の距離で15分間照射し、パッチ除去24および48時間後および7日後に評価したところ、4人の被検者に一過性の非特異的な紅斑がみられたが、これらは光刺激反応ではないとみなされ、この条件下でこの試験物質は光刺激剤はないと結論付けられた(Rohm and Haas Company,1984)

このように記載されており、試験データをみるかぎり濃度0.0015%以下において光刺激および光感作なしと報告されているため、一般に濃度0.0015%以下において光毒性(光刺激性)および光感作性はほとんどないと考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「メチルイソチアゾリノン」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,983.
  2. “Pubchem”(2021)「2-Methyl-4-isothiazolin-3-one」,2021年7月23日アクセス.
  3. abcロームアンドハースジャパン株式会社(2004)ネオロン950」技術資料.
  4. “EUR-Lex”(2014)「COMMISSION REGULATION (EU) No 1003/2014」Official Journal of the European Union(1003). ELI:2014/1003/oj.
  5. Andrew B. Law, et al(1990)「メチルクロロイソチアゾリノン・メチルイソチアゾリノン」香粧品 医薬品 防腐・殺菌剤の科学,105-116.
  6. abcdC.L. Burnett, et al(2010)「Final Report of the Safety Assessment of Methylisothiazolinone」International Journal of Toxicology(29)(4),187S-213S. DOI:10.1177/1091581810374651.
  7. abcdR.L. Elder(1992)「Final Report on the Safety Assessment of Methylisothiazolinone and Methylchloroisothiazolinone」Journal of the American College of Toxicology(11)(1),75-128. DOI:10.3109/10915819209141993.

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