カプリルヒドロキサム酸の基本情報・配合目的・安全性

カプリルヒドロキサム酸

化粧品表示名称 カプリルヒドロキサム酸
化粧品国際的表示名称(INCI名) Caprylhydroxamic Acid
配合目的 防腐補助

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される、ヒドロキサム酸(R-C(=O)-NH-OH)のアルキル基(R)にオクチル基(CH3(CH2)6CH2-)をもつ有機化合物です[1][2]

カプリルヒドロキサム酸

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 防腐補助

主にこれらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、化粧下地製品、マスク製品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、ボディソープ製品、アウトバストリートメント製品など様々な製品に使用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 防腐補助

防腐補助に関しては、カプリルヒドロキサム酸はpH3.0-8.0で真菌(カビ、酵母)に対して静菌活性を示すことが知られており、防腐剤の配合量を低減する目的で主に他の防腐・防腐助剤と組み合わせて製品に用いられています[3][4]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2018-2020年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗1)

∗1 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

カプリルヒドロキサム酸の配合製品数と配合量の比較調査結果(2018-2020年)

4. 安全性評価

カプリルヒドロキサム酸の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):濃度0.76%以下においてほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):濃度0.032%以上おいて皮膚感作性を引き起こす可能性あり

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚炎を有する場合においては濃度0.032%以上において濃度依存的に皮膚感作率および皮膚感作強度が増加し、現時点では濃度0.032%以上配合されている製品が多いと推測されるため、注意が必要であると考えられます(現時点で国内で重大なアレルギーの報告はみつけられていません)

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5a]によると、

– 健常皮膚を有する場合 –

  • [ヒト試験] 54人の被検者に0.105%カプリルヒドロキシサム酸を含むアイライナー製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において2人の被検者にほとんど知覚できない紅斑がみられたが、そのほかに皮膚反応はみられず、この試験製剤は皮膚刺激剤および皮膚感作剤とみなされなかった(Consumer Product Testing Company,2014)
  • [ヒト試験] 109人の被検者に0.15%カプリルヒドロキシサム酸を含むフェイシャルクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、チャレンジ期間において1人の被検者にわずかな皮膚反応がみられたが、そのほかに皮膚反応はみられず、この試験製剤は皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Anonymous,2019)
  • [ヒト試験] 52人の被検者に0.195%カプリルヒドロキシサム酸を含むアイブロウパウダーを対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も試験期間を通じて皮膚刺激およびアレルギー性接触皮膚感作の兆候を示さなかった(Anonymous,2019)
  • [ヒト試験] 104人の被検者に0.3%カプリルヒドロキシサム酸を含む製剤水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において7人の被検者にほとんど知覚できない紅斑から軽度の紅斑が、チャレンジ期間に1人の被検者にほとんど知覚できない紅斑および軽度の浮腫がみられたが、この試験製剤は皮膚刺激およびアレルギー性接触感作の臨床的に有意な可能性を示さなかったと結論付けられた(Consumer Product Testing Company,2018)
  • [ヒト試験] 205人の被検者に0.76%カプリルヒドロキシサム酸水溶液を対象にHRIPT(皮膚刺激性&感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も試験期間を通じて重大な皮膚反応を示さなかった(Anonymous,2020)

このように記載されており、試験データをみるかぎり健常な皮膚を有する場合かつ濃度0.76%以下において共通して重大な皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に健常な皮膚を有する場合かつ濃度0.76%以下において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

次に、フィンランドのヘルシンキ大学病院皮膚科、タンペレ大学病院皮膚科およびアレルギーセンター、クオピオ大学病院皮膚科およびオウル大学病院皮膚科の安全性データ[6]によると、

– 皮膚炎を有する場合 –

  • [ヒト試験] パラベンを除去するために防腐剤混合物として0.49-0.56%フェノキシエタノール、0.075-0.15%カプリルヒドロキサム酸および0.04-0.075%メチルプロパンジオールを配合した保湿剤を使用したことが原因で接触アレルギーを発症したと考えられる39人の患者に、パラベンのみを含む製剤、フェノキシエタノールのみを含む製剤、防腐剤混合物を含む製剤および0.001-3.2%カプリルヒドロキサム酸を含む軟膏を対象に欧州接触皮膚炎学会のテストガイドラインに基づいてパッチテストを実施したところ、パラベンのみを含む製剤およびフェノキシエタノールを含む製剤では皮膚反応がみられなかったのに対して、防腐剤混合物を含む製剤およびカプリルヒドロキサム酸を含む軟膏では陽性反応が認められた。カプリルヒドロキサム酸を含む軟膏の陽性反応は以下の表のように、
    感作
    強度
    カプリルヒドロキサム酸濃度(%)
    0.001 0.0032 0.01 0.032 0.10 0.32
    +++ 0 0 0 0 1 4
    ++ 0 0 0 3 6 15
    + 0 0 1 14 18 17
    ?+ 0 1 3 6 10 2
    陰性 7 6 8 16 4 1
    人数 7 7 12 39 39 39

    濃度0.1%以上で+++が、濃度0.032%以上で++が、濃度0.01%以上で+が報告された

このように記載されており、試験データをみるかぎり皮膚炎を有する場合かつ濃度0.01%以下において皮膚感作はほとんどありませんが、濃度0.032%以上で濃度依存的に+以上の陽性反応率および感作強度が増加する傾向があり、海外の2018-2020年におけるリーブオン製品の使用濃度範囲は0.032%以上であるため、一般に皮膚感作の懸念があると考えられます。

ただし、フィンランドではいくつかの個別事例報告があるものの[7]、国内では10年以上の使用実績がある中でカプリルヒドロキサム酸の皮膚感作・アレルギーの事例報告がみあたらないことから、海外と比較して配合濃度が低く皮膚感作性がほとんどない可能性もありますが、いずれにせよ現時点では結論がでていないため、注意が必要であると考えられます。

今後新たな試験データや配合濃度調査データが蓄積されることで皮膚感作の懸念がなくなる可能性もあり、新たな情報がみつかりしだい追補・再編集します。

4.2. 眼刺激性

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[5b]によると、

  • [in vitro試験] 畜牛の眼球から摘出した角膜を用いて、角膜表面に20%カプリルヒドロキサム酸溶液を処理した後、角膜の濁度ならびに透過性の変化量を定量的に測定したところ(BCOP法)、軽度の眼刺激剤に分類された(MB Research Laboratories,2011)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に100%カプリルヒドロキサム酸100mgを処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤または最小限の眼刺激剤に分類された(MB Research Laboratories,2010)

このように記載されており、試験データをみるかぎり非刺激-軽度の眼刺激が報告されているため、一般に眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

5. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「カプリルヒドロキサム酸」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,316.
  2. “Pubchem”(2021)「N-Hydroxyoctanamide」,2021年11月14日アクセス.
  3. Inolex Chemical Company(2013)「Spectrastat」Technical Data Sheet.
  4. Inolex Investment Corporation(2009)「Preservatives for cosmetic, toiletry and pharmaceutical compositions」WO 2009/070736 A1.
  5. abW.F. Bergfeld, et al(2020)「Safety Assessment of Caprylhydroxamic Acid as Used in Cosmetics(∗2)」, 2021年11月14日アクセス.
    ∗2 PCPCのアカウントをもっていない場合はCIRをクリックし、表示されたページ中のアルファベットをどれかひとつクリックすれば、あとはアカウントなしでも上記レポートをクリックしてダウンロードが可能になります。
  6. L. Ackermann, et al(2017)「An epidemic of allergic contact dermatitis caused by a new allergen, caprylhydroxamic acid, in moisturizers」Contact Dermatitis(77)(3),159-162. DOI:10.1111/cod.12787.
  7. N. Kluger(2018)「Contact allergy to moisturizers in Finland: the tale of the lurking tube in the medicine cupboard」Contact Dermatitis(78)(4),289-290. DOI:10.1111/cod.12927.

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