安息香酸スクロースの基本情報・配合目的・安全性

安息香酸スクロース

化粧品表示名 安息香酸スクロース
INCI名 Sucrose Benzoate
配合目的 可塑

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表される安息香酸のカルボキシ基(-COOH)スクロースのヒドロキシ基(-OH)を脱水縮合(∗1)したエステルです[1a]

∗1 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。脂肪酸とアルコールのエステルにおいては、脂肪酸(R-COOH)のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とアルコール(R-OH)のヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。

安息香酸スクロース

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 可塑

主にこれらの目的で、ネイル製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 可塑

可塑に関しては、安息香酸スクロースは皮膜に適度な柔軟性や屈曲性を付与し耐久性や加工性を向上させる目的でマニキュア製品やネイルコート製品に汎用されています[1b][2][3]

3. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗2)

∗2 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

安息香酸スクロースの配合製品数と配合量の調査結果(2016年)

4. 安全性評価

安息香酸スクロースの現時点での安全性は、

  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

4.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

食品添加物に使用できる接着剤のコンポーネントとしてFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)にも承認されており[4]、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

4.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

5. 参考文献

  1. ab日本化粧品工業連合会(2013)「安息香酸スクロース」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,171.
  2. 薬科学大辞典編集委員会(2013)「可塑剤」薬科学大辞典 第5版,294.
  3. 田村 健夫・廣田 博(2001)「可塑剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,439.
  4. U.S. Food and Drug Administration(2022)「Adhesives」21CFR175.105.

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