安息香酸スクロースとは…成分効果と毒性を解説


・安息香酸スクロース
芳香族化合物の一種である安息香酸と二糖(∗1)の一種であり8個のヒドロキシ基(水酸基:-OH)をもつスクロースが結合した、化学式C68H54O19で表される分子量1175.1のショ糖安息香酸エステルです(文献1:2020)。
∗1 二糖は糖の一種であり、単糖が2個グリコシド結合した二量体です。複数の分子結合がまとまって機能する複合体を多量体といい、二糖の場合、2個の単糖がまとまって(結合して)機能しているため二量体として働きます。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、ネイル製品に汎用されています。
ネイルエナメル皮膜の可塑
ネイルエナメル皮膜の可塑(かそ)に関しては、まず前提知識として可塑性および可塑剤について解説します。
可塑性とは、粘土のように自由自在に形を整えることのできる物性のことであり、可塑剤とは樹脂などの皮膜にひびなどが入らないよう適度な柔軟性と弾力を付与し耐久性を向上する添加物の総称です(文献3:1990)。
安息香酸スクロースは、ニトロセルロースや樹脂との相溶性が良いため、ネイルエナメル皮膜の可塑剤としてマニキュア、ネイルエナメル、ネイルカラー、ネイルコートなどネイル製品に汎用されています(文献4:2020)。
実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
安息香酸スクロースの安全性(刺激性・アレルギー)について
- 20年以上の使用実績
- 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
- 眼刺激性:詳細不明
- 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
食品添加物に使用できる接着剤のコンポーネントとしてFDA(Food and Drug Administration:アメリカ食品医薬品局)にも承認されており(文献1:2019)、古くからの使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
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安息香酸スクロースは可塑剤にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
参考:可塑剤
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文献一覧:
- FDA:Food and Drug Administration(2019)「Code of Federal Regulations Title 21 Sec. 175.105 Adhesives」, <https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cdrh/cfdocs/cfCFR/CFRSearch.cfm?fr=175.105> 2020年6月9日アクセス.
- “Pubchem”(2020)「Sucrose octabenzoate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/25113553> 2020年6月9日アクセス.
- 田村 健夫, 他(1990)「可塑剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,439.
- 宇山 侊男, 他(2020)「安息香酸スクロース」化粧品成分ガイド 第7版,235.
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