クエン酸アセチルトリブチルとは…成分効果と毒性を解説

可塑
クエン酸アセチルトリブチル
[化粧品成分表示名称]
・クエン酸アセチルトリブチル

[医薬部外品表示名称]
・クエン酸アセチルトリブチル

アセチル化した有機酸の一種であるクエン酸と炭素数4個の一価アルコールかつ低級アルコールであるブタノールとのトリエステル(∗1)であり、分子量402.5のクエン酸エステルです(文献2:2020)

∗1 「トリ(tri)」はギリシャ語で「3」を意味し、トリエステルとは3基のエステル結合のことであり、クエン酸アセチルトリブチルにおいてはクエン酸にブタノールが3つ結合した化学構造となります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ネイル製品に汎用されています。

ネイルエナメル皮膜の可塑

ネイルエナメル皮膜の可塑(かそ)に関しては、まず前提知識として可塑性および可塑剤について解説します。

可塑性とは、粘土のように自由自在に形を整えることのできる物性のことであり、可塑剤とは樹脂などの皮膜にひびなどが入らないよう適度な柔軟性と弾力を付与し耐久性を向上する添加物の総称です(文献3:1990)

クエン酸アセチルトリブチルは、ニトロセルロースや樹脂との相溶性が良いため、ネイルエナメル皮膜の可塑剤としてマニキュア、ネイルエナメル、ネイルカラー、ネイルコートなどネイル製品に汎用されています(文献4:1990)

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-1999年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

クエン酸アセチルトリブチルの配合製品数と配合量の調査結果(1998-1999年)

スポンサーリンク

クエン酸アセチルトリブチルの安全性(刺激性・アレルギー)について

クエン酸アセチルトリブチルの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚病既往歴のない59人の被検者(21-60歳)にクエン酸アセチルトリブチル0.4mLで湿らせた閉塞パッチを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は皮膚刺激剤ではなく、接触感作を示唆する反応は観察されなかった(Hill Top Research,1978)
  • [動物試験] 4匹のモルモットに0.05%,1%,1.25%,および100%クエン酸アセチルトリブチルを適用した刺激試験において、0.05%濃度において2匹のモルモットにかすかなピンク色の浮腫が生じ、残りの2匹には浮腫を伴う淡いピンク色の紅斑が生じた。1%濃度においては3匹のモルモットで浮腫を伴う淡いピンク色の紅斑を生じ、1.25%濃度においてはあまり皮膚刺激は生じなかった。100%濃度においてはパッチ除去24および48時間後で1匹にほとんど知覚できない紅斑を誘発した((Unilever Limited,1976)
  • [動物試験] 4匹のモルモットを用いた50%クエン酸アセチルトリブチルのmaximization皮膚感作試験において、パッチ除去24および48時間後に1匹のモルモットでほとんど知覚できない紅斑が観察され、別の1匹では24時間でほとんど知覚できない紅斑および48時間で散在した軽度の紅斑が観察された。これらの反応は2回目のチャレンジパッチの後にも同様に観察され、処置および未処置対照群では観察されなかった。また3回目のチャレンジパッチでクエン酸アセチルトリブチルとクエン酸アセチルトリエチルまたはクエン酸トリエチルとの交差反応の可能性を評価したところ、クエン酸アセチルトリブチルはクエン酸アセチルトリエチルまたはクエン酸トリエチルと交差反応しないことを示した。クエン酸アセチルトリブチルは非感作物質として分類された((Unilever Limited,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ヒト試験では皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されていますが、動物試験では皮膚感作性はなしと報告されているものの、皮膚刺激性においてわずかな紅斑が報告されているため、皮膚刺激性は非刺激-わずかな皮膚刺激を引き起こす可能性が考えられ、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2002)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼にクエン酸アセチルトリブチルを点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、点眼から20分以内に3匹のうち2匹で中程度の紅斑が観察された。紅斑は点眼3時間後まで持続し、5時間後に1匹で沈静化した。24時間で中程度の紅斑が観察された1匹のウサギの症状がわずかに増加したが、他の2匹のウサギは眼刺激に対して陰性に分類された。点眼から48および72時間ですべての眼が陰性であった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1998)
  • [動物試験] ウサギの結膜嚢に1滴のクエン酸アセチルトリブチルを滴下し、滴下後に眼刺激性を評価したところ、炎症は観察されなかった(Larionov and Cherkasova,1998)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

クエン酸アセチルトリブチルは可塑剤にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:可塑剤

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2002)「Final Report on the Safety Assessment of Acetyl Triethyl Citrate, Acetyl Tributyl Citrate, Acetyl Trihexyl Citrate, and Acetyl Trioctyl Citrate」International Journal of Toxicology(21)(2_Suppl),1-17.
  2. “Pubchem”(2020)「Acetyl tributyl citrate」, <https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Acetyl-tributyl-citrate> 2020年6月11日アクセス.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「可塑剤」香粧品科学 理論と実際 第4版,439.
  4. 柴谷 順一, 他(1990)「最近の化粧品用樹脂の動向」色材協会誌(63)(4),217-225.

スポンサーリンク

TOPへ