リナロールとは…成分効果と毒性を解説

香料
リナロール
[化粧品成分表示名称]
・リナロール

[医薬部外品表示名称]
・リナロール

ここで解説するのはD体とL体の等量混合物であるdl-リナロールです。

ローズウッド油、ラベンダー油およびベルガモット油などに多量に含まれる、化学構造的に不斉炭素原子(∗1)を1個もつイソプレンユニット(C5ユニット)が鎖状に2個結合したテルペノイド化合物(∗2)であり、モノテルペン(∗3)に分類されるスズラン様の花香調香気を有した分子量154.25の非環式モノテルペンアルコール(∗4)です(文献2:1994)

∗1 1分子中の炭素原子(C)に互いに異なる4個の原子または原子団が結合しているとき、この炭素原子を不斉炭素原子といい、分子中に不斉炭素原子が1個存在すると1対の光学異性体が存在し、リナロールではL体とD体になります。

∗2 二重結合をもち炭素数5個(C5)を分子構造とするイソプレンを分子構造単位(イソプレンユニット)とし、イソプレンが直鎖状に複数個(C5×n個)連結した後に環化や酸化など種々の修飾を経て生成する化合物のことです(文献3:2017)。多くのテルペノイドは疎水性であり、極性基をもつため水にわずかに溶けますが、リナロールもまた疎水性です。イソプレン単体(C5)の場合はイソプレンまたはテルペンと呼ばれますが、イソプレンが2個以上連なった場合(C5×2個以上)は複数形としてテルペノイド(イソプレノイド)と呼ばれます。

∗3 イソプレン(C5)ユニットが2個連結した炭素数10個(C5×2)のテルペノイド化合物です。

∗4 モノテルペン構造に官能基としてヒドロキシ基(水酸基:-OH)が結合した化合物の総称です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、香水、オーデコロン、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品、シャンプー製品、トリートメント製品、ボディソープ製品、ボディ&洗顔石鹸、アウトバストリートメント製品、メイクアップ化粧品、クレンジング製品など様々な製品に汎用されています。

スズラン様花香の賦香

スズラン様花香の賦香(∗5)に関しては、dl-リナロールはスズラン様の花香調(∗6)香気を有していることから(文献4:1991;文献5:2012)、スズラン(ミュゲ)系調合香料(∗7)の成分として花香を賦香する目的で、香水、オーデコロン、ボディ&ハンドケア製品、スキンケア化粧品、シャンプー製品、トリートメント製品、ボディソープ製品、ボディ&洗顔石鹸、アウトバストリートメント製品、メイクアップ化粧品、クレンジング製品などに汎用されています(∗8)

∗5 賦香(ふこう)とは、香りを付けるという意味です。

∗6 香調とは、香料分野においてはノート(note)とも呼ばれ、香りのタイプを意味します。リナロールは花の香りを有していることからフローラルノート(Floral note:花香調)に分類されます。

∗7 スズランをフランス語でミュゲ(muguet)といい、香料分野ではミュゲと呼ばれることも多いです。

また、調合香料は、それらの揮発性から、

揮発性 分類 解説 保留時間 香調

トップノート 最初に感じ、そのものを印象づける香気 約30分 シトラス
グリーン
フルーティ-
ミドルノート 香りの中心となる中盤に感じる香気 数時間 フローラル
ラストノート 最後まで残る重量感のある香気 数日-数週間 ウッディ
アンバー
ムスク

これら3つのステージに分類して表現されることが多く(文献6:2003;文献7:2013)、リナロールは中程度の揮発性のミドルノートであることから、香気の保留性(持続性)もあり、トップノートが揮発した後にとって代わる中心的な香気を担うのが特徴です(文献8:1993)

スポンサーリンク

リナロールの安全性(刺激性・アレルギー)について

リナロールの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 50年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:20%濃度以下においてほとんどなし
  • 皮膚刺激性(皮膚炎を有する場合):0.4%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし(ただし酸化したリナロールは皮膚感作を引き起こす可能性あり)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、酸化したリナロールは皮膚感作を引き起こす可能性があることから、注意が必要な成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

– 健常皮膚を有する場合 –

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 28人の被検者に20%リナロールを含むワセリンを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤に分類された(Fujii et al,1972)
  • [ヒト試験] 30人の被検者に2%リナロールを含む軟膏を24-72時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤に分類された(Fujii et al,1972)
  • [ヒト試験] 32人の被検者に4%リナロールを含むワセリンを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤に分類された(Research Institute for Fragrance Materials,1976)
  • [ヒト試験] 84人の被検者に0.05%-0.5%リナロールを含むクリームを24-48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去30分後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤に分類された(Takenaka et al,1986)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、20%濃度以下において共通して非刺激と報告されていることから、一般に健常皮膚を有する場合、20%濃度以下において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する84人の患者に0.4%リナロールを含むエタノールを24-48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は非刺激剤に分類された(Fujii et al,1972)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、0.4%濃度以下において非刺激と報告されていることから、一般に皮膚炎を有する場合、0.4%濃度以下において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– 健常皮膚を有する場合 –

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に20%リナロールを含むワセリンを対象にmaximization皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は非感作剤に分類された(Research Institute for Fragrance Materials,1970)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に8%リナロール製剤を対象にmaximization皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は非感作剤に分類された(Greif,1967)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に20%リナロール製剤を対象にmaximization皮膚感作性試験を実施したところ、この試験物質は非感作剤に分類された(Ishihara et al,1986)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して20%濃度以下において皮膚感作なしと報告されていることから、一般に20%濃度以下において皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 化粧品アレルギーを有する179人の患者に30%リナロールを含むワセリンを対象にパッチテストを実施したところ、いずれの患者も皮膚反応を示さなかった(De Groot et al,1985)
  • [ヒト試験] 化粧品アレルギーを有する119人の患者に10%リナロールを含むワセリンを対象にパッチテストを実施したところ、1人の患者が陽性反応を示した(De Groot et al,1988)
  • [ヒト試験] 接触性皮膚炎を有する1,200人の患者に5%リナロールを含むワセリンを対象にパッチテストを実施したところ、いずれの患者も皮膚反応を示さなかった(Santucci et al,1987)
  • [ヒト試験] 香料に過敏な皮膚反応を有する218人の患者に5%リナロールを含むワセリンを対象にパッチテストを実施したところ、いずれの患者も皮膚反応を示さなかった(Larsen et al,2002)
  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する1,511人の患者にリナロール製剤(濃度不明)を対象にパッチテストを実施したところ、酸化リナロールに20人(1.3%)が、リナロール・ヒドロペルオキシドに16人(1.1%)が陽性反応を示し、酸化していないリナロールは非常に弱い感作剤であった(Matura et al,2005;Sköld et al,2005)
  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する1,511人の患者にリナロール製剤(濃度不明)を対象にパッチテストを実施したところ、酸化リナロールに25人(1.7%)が陽性反応を示した(Sköld et al,2006)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、酸化していないリナロールにおいては濃度に関係なく共通してほとんど皮膚感作なしと報告されていることから、一般に皮膚炎を有する場合、酸化していないリナロールにおいて皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、酸化したリナロール(リナロール・ヒドロペルオキシド含む)においては約1.5%の陽性率が報告されているため、一般に皮膚炎を有する場合、酸化したリナロールにおいて皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

リナロールは香料にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:香料

∗∗∗

文献一覧:

  1. Research Institute for Fragrance Materials(2008)「A toxicologic and dermatologic assessment of cyclic and non-cyclic terpene alcohols when used as fragrance ingredients」Food and Chemical Toxicology(46)(11),S1-S71.
  2. 大木 道則, 他(1994)「d-リナロオール」化学辞典,1508.
  3. 池田 剛(2017)「モノテルペン」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,120-124.
  4. 谷田 嘉市(1991)「リナロール」有機合成化学協会誌(49)(4),348-349.
  5. 鈴木 一成(2012)「リナロール」化粧品成分用語事典2012,586.
  6. 兼井 典子(2003)「香りの化学」化学と教育(51)(2),86-88.
  7. 長谷川香料株式会社(2013)「フレグランスの分類と原料」香料の科学,124-127.
  8. 駒木 亮一(1993)「化粧品と香り」繊維製品消費科学(34)(5),208-213.

スポンサーリンク

TOPへ