フェネチルアルコールとは…成分効果と毒性を解説

香料 防腐
フェネチルアルコール
[化粧品成分表示名称]
・フェネチルアルコール

[医薬部外品表示名称]
・フェニルエチルアルコール

ここで解説するのはβ-フェニルエチルアルコールです。

ローズ油、ゼラニウム油およびネロリ油などに含まれる、化学構造的にフェネチル基(C6H5CH2CH2にヒドロキシ基(水酸基:−OH)が結合した分子量122.17のローズ様の花香調香気を有した芳香族アルコール(∗1)です(文献2:1994)

∗1 芳香族アルコールとは、分子中に芳香環をもち、芳香環にメチレン基(CH2)を通じてヒドロキシ基(水酸基:−OH)をもつアルコールのことです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、日焼け止め製品、クレンジング製品、洗顔料、フレグランス製品などに使用されています。

ローズおよびハチミツ様花香の賦香

ローズおよびハチミツ様花香の賦香(∗2)に関しては、フェネチルアルコールは暖かいローズおよびハチミツ様の花香調(∗3)香気を有していることから(文献3:2000)、フローラル系調合香料の成分として花香を賦香する目的で使用されています。

∗2 賦香(ふこう)とは、香りを付けるという意味です。

∗3 香調とは、香料分野においてはノート(note)とも呼ばれ、香りのタイプを意味します。フェネチルアルコールは花の香りを有していることからフローラルノート(Floral note:花香調)に分類されます。

また、調合香料は、それらの揮発性から、

揮発性 分類 解説 保留時間 香調

トップノート 最初に感じ、そのものを印象づける香気 約30分 シトラス
グリーン
フルーティ-
ミドルノート 香りの中心となる中盤に感じる香気 数時間 フローラル
ラストノート 最後まで残る重量感のある香気 数日-数週間 ウッディ
アンバー
ムスク

これら3つのステージに分類して表現されることが多く(文献4:2013;文献5:1993)、フェネチルアルコールは中程度の揮発性のミドルノートであることから、香気の保留性(持続性)もあり、トップノートが揮発した後にとって代わる中心的な香気を担うのが特徴です。

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の抗菌・防腐作用に関しては、フェネチルアルコールはグラム陰性菌に対して選択的に高い抗菌作用を有していることから防腐剤として利用されてきており(文献6:1968)、またローズ油などに含まれる天然由来化合物であることから、主にオーガニック系やハーバル系製品の防腐剤として配合されています。

実際の配合製品の種類や配合濃度範囲は、海外の2006年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

フェネチルアルコールの配合製品数と配合量の調査(2006年)

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フェネチルアルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

フェネチルアルコールの現時点での安全性は、

  • 薬添規2018規格の基準を満たした成分が収載される医薬品添加物規格2018に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 40年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:1%濃度以下においてほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者に未希釈のフェネチルアルコールを24時間パッチ適用し、パッチ除去後5日間皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応は観察されなかった(AE. Katz,1946)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に8%フェネチルアルコールを含むフタル酸ジエチル、20%ブラシル酸エチレンを含むフタル酸ジエチル(陰性対照)およびフタル酸ジエチルのみを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、1人の被検者はチャレンジパッチ後48時間ですべての試験物質に軽度の紅斑を、96時間で明瞭な丘疹を示したことから、3つすべての試験物質に感作したと判断された。また別の1人の被検者は誘導期間において3つすべての試験物質で中程度の皮膚反応を示した。他の被検者においては皮膚刺激および皮膚感作の兆候はみられなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1988)
  • [ヒト試験] 155人の被検者に0.05%フェネチルアルコールを含むアイメイクアップリムーバーを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も陽性反応は観察されず、この製品は臨床的に重要な皮膚刺激剤および皮膚感作剤ではなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)
  • [ヒト試験] 53人の被検者に0.05%フェネチルアルコールを含むアイメイクアップリムーバーを1日1回、少なくとも4週間にわたって使用してもらったところ、1人の被検者にまぶたの乾燥およびわずかな腫れが報告されたが、これは製品の界面活性剤含有量に起因すると考えられた。他の報告はなく、また他の皮膚反応は観察されなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1981)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して非刺激および皮膚感作なしと報告されていることから、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1990)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に1%フェネチルアルコール溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、角膜刺激および一過性の曇りが観察された(WM. Grant,1974)
  • [動物試験] 2匹のウサギの片眼に0.3%フェネチルアルコールを含む生理食塩水を1日3回、週5回、2週間にわたって点眼し、眼刺激の兆候を観察したところ、眼刺激性は観察されなかった(IW. Grote,1955)
  • [動物試験] 9匹のウサギの片眼に0.05%フェネチルアルコールを含むアイメイクアップリムーバー0.1mLを点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この製品はウサギの眼に対して刺激を示さなかった(Cosmetic Toiletry and Fragrance Association,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、1%濃度以下において非刺激-軽度の眼刺激と報告されていることから、一般に1%濃度以下において眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

∗∗∗

フェネチルアルコールは香料、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:香料 安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1990)「Final Report on the Safety Assessment of Phenethyl Alcohol」Journal of the American College of Toxicology(9)(2),165-183.
  2. 大木 道則, 他(1994)「フェネチルアルコール」化学辞典,1200.
  3. デイビッド・G.ウィリアムズ(2000)「アルコールおよびフェノール類:官能基-OH」精油の化学,43-49.
  4. 長谷川香料株式会社(2013)「フレグランスの分類と原料」香料の科学,124-127.
  5. 駒木 亮一(1993)「化粧品と香り」繊維製品消費科学(34)(5),208-213.
  6. 中村 運(1968)「フェネチルアルコールの生理作用」化学と生物(6)(5),267-272.

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