ファルネソールとは…成分効果と毒性を解説

香料
ファルネソール
[化粧品成分表示名称]
・ファルネソール

シトロネラ油、ビターオレンジ花油、レモングラス油およびローズ油などに含まれる、化学構造的にイソプレンユニット(C5ユニット)が直鎖状に3個結合したテルペノイド化合物(∗1)であり、セスキテルペン(∗2)に分類される花様香気を有した分子量222.37の非環式セスキテルペンアルコール(∗3)です(文献2:1994)

∗1 二重結合をもち炭素数5個(C5)を分子構造とするイソプレンを分子構造単位(イソプレンユニット)とし、イソプレンが直鎖状に複数個(C5×n個)連結した後に環化や酸化など種々の修飾を経て生成する化合物のことです(文献3:2017)。多くのテルペノイドは疎水性であり、ファルネソールもまた疎水性です。イソプレン単体(C5)の場合はイソプレンまたはテルペンと呼ばれますが、イソプレンが2個以上連なった場合(C5×2個以上)は複数形としてテルペノイド(イソプレノイド)と呼ばれます。

∗2 イソプレン(C5)ユニットが3個連結した炭素数15個(C5×3)のテルペノイド化合物です(文献4:2017)。

∗3 セスキテルペン構造に官能基としてヒドロキシ基(水酸基:-OH)が結合した化合物の総称です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、香水、オーデコロン、ファンデーションなどに使用されています。

花香の強調

花香の強調に関しては、ファルネソールはライラックやシクラメンなど甘い花を想起させる香気を有していることから(文献2:1994)、甘い花系香料を強調する目的で、スキンケア化粧品、ボディケア製品、香水、オーデコロン、ファンデーションなどに使用されています。

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ファルネソールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ファルネソールの現時点での安全性は、

  • 30年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:12%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:0.3%濃度以下においてほとんどなし-軽度
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし-まれに皮膚感作を引き起こす可能性あり
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):まれに皮膚感作を引き起こす可能性あり
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、皮膚状態に関係なくまれに皮膚感作を引き起こす可能性が報告されているため、パッチテストなどで安全性を確認してからの使用を推奨します。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者に12%ファルネソールを含むワセリンを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1975)
  • [ヒト試験] 25人の被検者に10%ファルネソールを含むワセリンを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者も皮膚刺激反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1976)
  • [ヒト試験] 101人の被検者に5%ファルネソールを含むワセリンを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間においていずれの被検者も皮膚刺激反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,2000)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、12%濃度以下において共通して皮膚刺激なしと報告されていることから、一般に健常皮膚を有する場合、12%濃度以下において皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [動物試験] 6匹の動物の片眼に0.3%ファルネソールを含むダイズ油0.1mLを点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、8時間までわずかな腫れと発赤がみられたが、24時間までにそれらは消失した(Research Institute for Fragrance Materials,1976)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、0.3%濃度以下において非刺激-軽度の眼刺激が報告されていることから、一般に0.3%濃度以下において眼刺激性は非刺激-軽度の眼刺激を引き起こす可能性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

– 健常皮膚を有する場合 –

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 50人の被検者に12%ファルネソールを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、2人の被検者は陽性反応を示したが、他の被検者はいずれも皮膚感作反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1975)
  • [ヒト試験] 75人の被検者に10%ファルネソールを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、6人の被検者は陽性反応を示したが、他の被検者はいずれも皮膚感作反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1976)
  • [ヒト試験] 51人の被検者に10%ファルネソールを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1977)
  • [ヒト試験] 35人の被検者に12%ファルネソールを含むワセリンを対象にMaximization皮膚感作性試験を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1978)
  • [ヒト試験] 103人の被検者に5%ファルネソールを含むワセリンを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,2000)
  • [ヒト試験] 101人の被検者に5%ファルネソールおよび0.2%トコフェロールを含むワセリンを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応を示さなかった(Research Institute for Fragrance Materials,2000)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、まれに陽性反応を示す事例が報告されていることから、一般に12%濃度以下においてまれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 皮膚炎を有する182人の患者に4%ファルネソールを含むワセリンを対象にパッチテストを実施したところ、2人(1.1%)の患者が陽性反応を示した(Malten et al,1984)
  • [ヒト試験] 皮膚科に通院する2,021人の患者に5%ファルネソールを含むラノリンを対象にパッチテストを実施したところ、22人(1.1%)の患者が陽性反応を示した(Schnuch et al,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、濃度に関係なく試験対象者の1%範囲で陽性反応が報告されていることから、一般に皮膚炎を有する場合、まれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

香料は、化粧品皮膚炎の原因の30%以上を占める最も頻度の高い原料ですが(文献6:2020)、原因を特定するためにすべての香料成分をパッチテストするのは不可能であり、通常は陽性頻度の高いアレルゲンを一度にパッチテストできるようにICDRG(International Contact Dermatitis Research Group:国際接触皮膚炎研究斑)標準アレルゲンの香料ミックスとして以下の成分が選定されています。

香料ミックスの種類 成分名称
香料ミックスNo.1
(Fragrance Mix Ⅰ)
ケイ皮アルコール、ケイ皮アルデヒド、α-アミルシンナムアルデヒド、オイゲノール、イソオイゲノール、ヒドロキシシトロネラール、ゲラニオール、オークモスアブソリュート
香料ミックスNo.2
(Fragrance Mix Ⅱ)
ヒドロキシメチルペンチルシクロヘキセンカルボキシアルデヒド(HICC)、シトラールファルネソールシトロネロール、α-ヘキシルシンナム、クマリン

国内の標準アレルゲンシリーズ(ジャパニーズスタンダードアレルゲン)として使用されるのは、香料の中で最も陽性頻度の高い香料ミックスNo.1であり、香料ミックスNo.1は香料アレルギーの70%-80%を占めている(検出できる)と報告されています(∗4)(文献6:2020)

∗4 ジャパニーズスタンダードアレルゲンシリーズによるパッチテストを受けたもののうち、香料ミックスNo.1での陽性率は1999年で5%、2003年で4%、2016年で5.3%となっています(文献5:2010;文献6:2020)。

香料No.1で感作成分が特定できない場合に、さらにICDRGが選定した香料ミックスNo.2を加えると、香料アレルギーのスクリーニングの検出率が上昇します(文献5:2010)

ファルネソールは、香料ミックスNo.2に選定されていることから、高い皮膚感作性を有しているように認識しそうになりますが、香料における感作物質の70%-80%が香料ミックスNo.1であり、香料ミックスNo.1で感作物質が見つからない場合の感作原因物質のひとつであるため、試験データにも反映されているように、感作物質ではあるものの陽性率の高い香料ではないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Research Institute for Fragrance Materialsの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いて10%ファルネソールを含むワセリン0.5mLを1日1回適用した後にUVライト(320nm)を30秒間照射する手順を2週間にわたって実施したところ、この試験物質は光毒性ではなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1983)
  • [動物試験] モルモットを用いて10%ファルネソールを含むワセリン0.5mLを1日1回適用した後にUVライト(320nm)を30秒間照射する手順を21日間にわたって繰り返し実施したところ、この試験物質は光感作剤ではなかった(Research Institute for Fragrance Materials,1983)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作なしと報告されていることから、一般に光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ファルネソールは香料にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:香料

∗∗∗

文献一覧:

  1. Research Institute for Fragrance Materials(2008)「A toxicologic and dermatologic assessment of cyclic and non-cyclic terpene alcohols when used as fragrance ingredients」Food and Chemical Toxicology(46)(11),S1-S71.
  2. 大木 道則, 他(1994)「ファルネソール」化学辞典,1186.
  3. 池田 剛(2017)「テルペノイド」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,120-124.
  4. 池田 剛(2017)「セスキテルペン」エッセンシャル天然薬物化学 第2版,127-131.
  5. 皆本 景子(2010)「化粧品,医薬部外品成分中の皮膚感作性物質と接触皮膚炎」日本衛生学雑誌(65)(1),20-29.
  6. 高山 かおる, 他(2020)「接触皮膚炎診療ガイドライン2020」日本皮膚科学会雑誌(130)(4),523-567.

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