パパインとは…成分効果と毒性を解説

ピーリング
パパイン
[化粧品成分表示名称]
・パパイン

[医薬部外品表示名称]
・パパイン

パパイア科植物パパイア(学名:Carica papaya 英名:Papaya)の果実の乳汁から抽出・精製して得られるタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)です。

パパイアはメキシコ南部から西インド諸島を原産とし、現在では多くの熱帯の国々で栽培されており、日本では沖縄などで自生しています。

パパイアから発見されたことでその名がついたパパインは、タンパク質分解酵素であり、その中でも活性中心にアミノ酸であるシステインをもつシステインプロテアーゼに分類される酵素です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ピーリング化粧品、スキンケア化粧品、洗顔料・洗顔石鹸、ボディ&フットケア製品、洗浄製品、シート&マスク製品などに使用されています(文献1:2015;文献2:2012)

ピーリング作用

ピーリング作用に関しては、パパインはタンパク質分解酵素であり、タンパク質中のペプチド結合を切断してアミノ酸に分解する働きがあるため、角質細胞のタンパク質を分解によって角質を柔軟にしつつ古い角質を除去し、皮膚を滑らかにする目的で、ピーリング製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、ボディ&フットケア製品などに配合されています(文献1:2015;文献2:2012)

パパインは医薬部外品への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 2.0
育毛剤 2.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 2.0
浴用剤 1.0

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パパインの安全性(刺激性・アレルギー)について

パパインの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっていますが、皮膚に対する感作成立の特徴をすべて備えているという報告が複数あり、また表皮顆粒層におけるタイトジャンクション分解によるバリア機能低下および経表皮水分喪失増加の報告も複数あるため、さらなる検証が必要な成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

サンパウロ大学薬学部薬学科、オズワルドクルス薬学部およびサンパウロ大学生物医学研究所の安全性データ(文献3:2008)によると、

  • [in vitro試験] ヒト皮膚サンプルにパパインを暴露し、4,24および48時間で皮膚安全性を評価したところ、24時間で角質細胞に変化が生じたが、48時間での皮膚サンプルは対照と比較して大きな変化を示さなかったため、これらの知見はパパインが皮膚に安全に使用できることを示した

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

順天堂大学医学部皮膚科および順天堂大学アトピー疾患研究センターの安全性データ(文献7:2014)によると、

  • [動物試験] ヘアレスマウスの背部にパパインを貼付し、皮膚バリア機能を経表皮水分蒸散量(TEWL)の測定により評価し、抗体産生をELISAにより測定した。またC57BL/6マウスの耳介にパパインを塗布し、抗体産生を測定した。これらの結果、パパイン貼付群のTEWLは対照群と比較して有意に増加し、総IgE値およびパパイン特異的IgG値の上昇を認めた。C57BL/6マウス耳介塗布モデルにおいて、パパイン塗布群ではパパイン特異的IgEおよびIgGが誘導され、システインプロテアーゼ阻害剤で処理したパパイン塗布群では抑制された。これらの結果からプロテアーゼの経皮適用は、皮膚バリア機能障害を引き起こすのみならず、プロテアーゼ活性依存的な抗体産生を誘導した。システインプロテアーゼ(プロテアーゼアレルゲン)の酵素活性が経皮的な感作成立に寄与する可能性が示唆された

ウィーン医科大学の研究報告(文献4:2015)によると、

  • [in vitro試験] パパイン自体の皮膚感作の可能性を調査するために、ヒト角質細胞を用いてタイトジャンクションへの影響を、またC57BL/6野生型とTLR4欠損マウスを用いて皮膚感作の可能性、皮膚バリアへの影響および免疫細胞動員状況を検討したところ、経表皮水分蒸喪失の増加、タイトジャンクションの分解などによる皮膚バリアへの影響が示された。またパパインを局所適用した場合、TH2に偏った抗体応答を誘導することによって好中球、肥満細胞、およびCD3陽性細胞を動員し炎症を示した。皮膚を介した特異的な感作性はTLR4に依存しておらず、またタイトジャンクションへの分解性を示しているにもかかわらず、酵素機能に依存していなかった。これらのデータからパパインは皮膚に対する強いアレルゲンとしての特徴をすべて備えていると結論づけられた

– 個別事例 –

フィンランドのオウル大学中央病院皮膚科による臨床データ(文献5:1993)によると、

  • [個別事例] 美容院を経営していた健常な皮膚を有する女性患者(30歳)はタルク、ベントナイト、酸化鉄、パパインを含む粉末とコーンミール、大麦粉、アーモンドミール、および小麦ふすまなどが含まれた保湿剤を混ぜたピーリングクリームを美容院で使用しており、美容室を開いた1年後に患者は結膜刺激、鼻漏、および鼻のかゆみを経験した。最初は症状は軽度で、勤務時間中にのみ発生し、週末や休暇中には発生しなかった。1991年1月に臨床検査を行ったところ、胸部聴診および皮膚検査は正常でした。皮膚プリックテスト(皮膚に試験物質を1滴垂らし、検査用の針を皮膚の表面に押し当てて、15分後に反応を観察する)をクリーム配合成分で実施したところ、小麦粉で弱い陽性反応を示し、10-0.01mg/mLに希釈したパパインで陽性反応を示した。次に鼻腔にパパイン1mg/mLおよび対照として無菌食塩水を綿棒に湿らせて挿入したところ、パパインで患者は鼻のかゆみ、くしゃみおよび鼻水を経験した。このクリームの使用を止めたところ、症状は消失した。患者はこのクリームをクライアントに提供するために週に1-2回、5-10分にわたってクリームを混ぜるためにパパインに曝されており、パパインの濃度は明らかに高く、臨床診断としては職業性鼻結膜炎であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、パパインは皮膚に対するアレルゲン・感作成立の特徴をすべて備えていると複数報告されていますが、現時点で一般化粧品による皮膚感作の報告がなく、一方で10年以上の使用実績などがあるため、一般化粧品配合量および通常使用下において皮膚感作性はほとんど起こらないと考えられます。

ただし、パパインの適用によるタイトジャンクション分解によるバリア機能の低下および経表皮水分喪失の増加の報告が複数あるため、現時点では通常使用においてさらなる検証が必要な成分であると考えられます。

経表皮水分喪失(TEWL:Transepidermal Water Loss)とは、バリア機能が低下することで表皮における角質と細胞間脂質のバランスが崩れて、表皮から外界へ水分が蒸散していき、角層内の水分量が減少することをいいます。

次にタイトジャンクションとは、以下の図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

肌図 - タイトジャンクションの解説

表皮の顆粒層に存在し、細胞同士を結びつける細胞間接着装置のことで、細胞間を通り抜ける物質の調節に関与し、肌内部の水分が過剰に蒸散するのを抑制したり、細菌などの異物が体内に侵入するのを防ぎ、肌のバリア機能の役割をしています。

タイトジャンクションが緩んだり分解されると、バリア機能低下によって経表皮水分蒸散量が増えたり、外的刺激による刺激感受性が高くなったり、炎症が起こりやすくなることが考えられます。

こういった背景から、タイトジャンクションを分解し、バリア機能低下および経表皮水分蒸散量の増加が複数報告されているパパインは、さらなる検証が必要な成分であると考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

– 個別事例 –

アメリカのシンシナティ大学メディカルセンター医学部免疫学部門による臨床データ(文献6:1984)によると、

  • [個別事例] アトピー性皮膚炎歴および7ヶ月間の慢性眼掻痒症などの既往歴のある女性患者(31歳)は、症状が現れるまでの1年間、パパインを含む市販のコンタクトソフトレンズ洗浄液を毎週使用しており、酵素洗浄溶液はパパインの錠剤を0.001%チオメロサールおよびエデト酸二ナトリウムで保存した食塩水に溶解することによって調製するものであった。この患者はレンズ洗浄のためにこの溶液を使用した直近6回のそれぞれで、4時間以内に重度の眼窩周囲の血管浮腫を経験し、レンズ装着後は掻痒と流涙が持続した。様々な検査を実施したところ、患者の症状は本質的に季節性ではなかったため、レンズ液の成分に対する眼の感作が疑われた。パパインを含有するレンズクレンジング溶液の使用を止めると、眼の痒みおよび流涙の迅速な消散が認められ、それ以後は血管浮腫の症状もなかった。不活性化パパインおよびキモパパイン1mg/mLのプリックテスト(皮膚に試験物質を1滴垂らし、検査用の針を皮膚の表面に押し当てて、15分後に反応を観察する)を実施したところ、どちらも陽性であった

と記載されています。

試験データは個別事例のみですが、アトピー性皮膚炎歴のある場合に感作反応が報告されているため、アトピー性皮膚炎を有する場合はまれに皮膚感作を引き起こす可能性があると考えられます。

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パパインはピーリング成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ピーリング成分

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文献一覧:

  1. 宇山 光男, 他(2015)「パパイン」化粧品成分ガイド 第6版,105.
  2. 鈴木 一成(2012)「パパイン」化粧品成分用語事典2012,318-319.
  3. C Stremnitzer, et al(2008)「In_vitro_safety_assessment_of_papain_on_human_skin」Brazilian Journal of Pharmaceutical Sciences(44)(1),151-156.
  4. C Stremnitzer, et al(2015)「Papain Degrades Tight Junction Proteins of Human Keratinocytes In Vitro and Sensitizes C57BL/6 Mice via the Skin Independent of its Enzymatic Activity or TLR4 Activation」The Journal of Investigative Dermatology(135)(7),1790-1800.
  5. A Niinimäki, et al(1993)「Papain-induced allergic rhinoconjunctivitis in a cosmetologist.」The Journal of Allergy and Clinical Immunology(92)(3),492-493.
  6. DI Bernstein, et al(1984)「Local ocular anaphylaxis to papain enzyme contained in a contact lens cleansing solution.」The Journal of Allergy and Clinical Immunology(74)(3 Pt 1),258-260.
  7. 清村 咲子, 他(2014)「プロテアーゼアレルゲンによる経皮的感作はプロテアーゼ活性依存的にIgE/IgG産生を誘導する」アレルギー(63)(3-4),546.

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