パパイア果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

角質剥離 色素沈着抑制
パパイア果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・パパイア果実エキス

パパイア科植物パパイヤ(学名:Carica papaya L. 英名:Papaya)の未成熟果実(∗1)からエタノールBGPGグリセリン、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

∗1 パパイア果実は、タンパク質分解酵素であるパパインを含有していることが知られており、そのため穏やかなピーリング効果などを目的に化粧品に配合されます。ただし、成熟果実は植物酵素を自己消化してしまいパパインがほとんど存在せず、パパインを豊富に含むのは未成熟果実であることから、ここでは未成熟果実を前提として解説します。

パパイヤ(パパイア)は南米(メキシコ南部)原産で、16世紀(1501-1600年)にスペインの探検隊によってパナマおよび南米の北西部で発見されたことをきっかけに急速にカリブ海沿岸一帯に伝播し、現在は主にインド、ブラジル、メキシコ、インドネシアなど熱帯の国々で栽培されています(文献1:2017;文献2:2019;文献3:2014)

日本においては、古くから沖縄県の庭先に自生しており、現在は主に沖縄県、鹿児島県などで栽培されています(文献3:2014)

パパイア果実エキス(未成熟果実)は天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 多糖 デンプン
無機質 カリウム など
有機酸 リンゴ酸クエン酸
ビタミン アスコルビン酸
酵素 システインプロテアーゼ パパイン

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献4:2011;文献5:2005)

パパイア果実の化粧品以外の主な用途としては、食品分野においては完熟果が生食用果物として、沖縄県では未熟果(青パパイヤ)が「パパイヤイリチー」など炒めものに野菜として用いられるほか、加工用としては完熟果がドライフルーツ、ジュース、ジャム、アイスクリーム、砂糖漬けなどに用いられます(文献1:2017;文献3:2014;文献4:2011)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ピーリング系スキンケア化粧品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、リップ系メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、ボディソープ製品などに使用されています。

タンパク質分解による角質剥離作用

タンパク質分解による角質剥離作用に関しては、まず前提知識として表皮の新陳代謝メカニズムについて解説します。

以下の皮膚の最外層である表皮の構造図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

表皮細胞の新陳代謝(ターンオーバー)の仕組み

表皮細胞は、角化細胞(ケラチノサイト)とも呼ばれ、表皮最下層である基底層で生成された一個の角化細胞は、その次につくられた、より新しい角化細胞によって皮膚表面に向かい押し上げられていき、各層を移動していく中で有棘細胞、顆粒細胞と分化し、最後はケラチンから成る角質細胞となり、角質層にとどまったのち、角片(∗2)として剥がれ落ちます(文献6:2002)

∗2 角片とは、体表部分でいえば垢、頭皮でいえばフケを指します。

この表皮の新陳代謝は一般的にターンオーバー(turnover)と呼ばれ、正常なターンオーバーによって皮膚は新鮮さおよび健常性を保持しています(文献7:2002)

一方で、表皮のターンオーバーは様々な要因によって遅れることがあり、ターンオーバーが遅れると剥がれ落ちるべき角質細胞が残ったままの状態となり、次第に角質層の異常堆積(∗3)が起こり、ターンオーバーのサイクルが狂いはじめます(文献8:2002)

∗3 堆積とは、幾重にも積み重なることをいいます。

その結果として、以下の皮膚の表面(皮表)の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

皮表の構造

角層が生理的範囲を超えて肥厚し、部分的に皮膚が硬くなり、皮丘と皮溝の高低差が増し、キメが粗くなる過角化(角質肥厚:ハイパーケラトーシス)と呼ばれる症状が現れます(文献8:2002;文献9:2018)

このような背景から、剥がれ落ちるべき古い角質を除去することは、表皮の新陳代謝(ターンオーバー)の正常化、ひいては皮膚の健常性を保つために重要なアプローチであると考えられています。

化粧品において、表皮を分解する働きで皮膚の過角化を防ぐ目的で使用される成分としては、タンパク質分解酵素の頻度が最も高く、タンパク質分解酵素の中では角化表皮タンパク質分解作用が高いことからパパイア果実の乳汁に含まれるパパインが汎用されています。

パパイア果実エキスは、目的に応じてパパインの含有量や酵素活性が調整されており、表皮を分解する働きで皮膚の過角化を防ぐ目的で配合される場合はパパインが含まれていると考えられますが、その酵素活性はパパインそのものよりも低い分、皮膚や粘膜に対する刺激性が少なく穏やかな作用であることを特徴としています(文献10:2003)

そのため、一般的にはフルーツをコンセプトにした角質除去効果や皮膚にやさしくソフト・マイルドな角質除去効果を目的に、ピーリング系スキンケア製品、ボディケア製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、ボディソープ製品などに使用されています。

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献11:2002;文献12:2016;文献13:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献11:2002;文献13:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献11:2002;文献13:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献11:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献11:2002)

このような背景から、チロシナーゼの活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

2015年に第一工業製薬によって報告されたパパイア果実エキスのチロシナーゼに対する影響検証によると、

in vitro試験においてリン酸緩衝溶液40μLとパパイア果実エキス溶液80μLに、230U/mLチロシナーゼ溶液とL-ドーパ(5mM)40μLを添加し反応させてドーパクロムの形成を吸光度測定した。

同時にパパイア果実エキス溶液の代わりに陽性対照として広く知られているチロシナーゼ活性阻害剤であるアルブチンを0.5%濃度に希釈して添加し、同様に吸光度を測定し、チロシナーゼ活性阻害率を算出したところ、以下のグラフのように、

パパイア果実エキスのチロシナーゼ活性阻害作用

パパイア果実エキスは、アルブチンほどではないものの、チロシナーゼ活性阻害効果を有していることが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献14:2015)、パパイア果実エキスにチロシナーゼ活性阻害作用が認められています。

次に、2006年に御木本製薬によって報告されたパパイア果実エキスのヒト皮膚明度および色素沈着に対する影響検証によると、

120人の女性被検者(25-55歳)のうち20人を1グループとし、抽出方法が異なる1%パパイア果実エキスを配合した化粧水、美容液、クリームを各グループに1日2回(朝晩)3ヶ月にわたって洗顔後に顔面に塗布してもらい、対照として残りの3グループにそれぞれパパイア果実エキス未配合の化粧水、美容液、クリームを同様に使用してもらった。

3ヶ月後に「◎:12人以上に効果あり」「○:8-12人に効果あり」「△:4-8人に効果あり」「☓:0-4人に効果あり」の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 抽出方法 肌のくすみ改善効果 シミ・ソバカス改善効果
パパイア果実エキス配合化粧水
化粧水のみ(対照)
パパイア果実エキス配合美容液 50%エタノール
美容液のみ(対照)
パパイア果実エキス配合クリーム エタノール
クリームのみ(対照)

各抽出方法による1%パパイア果実エキス配合製剤の塗布は、未配合製剤と比較して肌のくすみおよびシミ・ソバカスを改善することがわかった。

このような試験結果が明らかにされており(文献15:2006)、パパイア果実エキスに肌のくすみおよび色素沈着抑制作用が認められています。

複合植物エキスとしてのパパイア果実エキス

パパイア果実エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、パパイア果実エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Dermawhite WF
構成成分 酒石酸BGEDTA-2Na硫酸Na、ピロ亜硫酸Na、グリセリンBGユキノシタエキスパパイア果実エキス、グアバ果実エキス
特徴 白く輝く花にインスピレーションをうけて設計された、肌にやさしくかつメラニン合成阻害作用の相乗効果を有した3種類の複合植物抽出液

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2020年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

パパイア果実エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2020年)

パパイア果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

パパイア果実エキスの現時点での安全性は、

  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、ラテックスアレルギーを有している場合は、ラテックスとパパイヤの間に交差反応が起こる可能性が否定されていないことから、パパイヤ由来製品を使用する際には注意が必要であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献16:2020)によると、

  • [ヒト試験] 27人の被検者に0.0003%パパイア果実エキス水溶液0.2mLを5日間連続で24時間半閉塞パッチ適用し、各パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、この試験物質は皮膚刺激を誘発しなかった(TKL Research,2016)
  • [ヒト試験] 119人の被検者に0.0075%パパイア果実エキスを含む化粧水0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(TKL Research,2019)
  • [ヒト試験] 104人の被検者に0.02%パパイア果実エキスを含むリップスティック製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を半閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(Clinical Research Laboratories Inc,2014)
  • [ヒト試験] 107人の被検者に0.0586%パパイア果実エキスを含むボディバターを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(Cantor Research Laboratories,2005)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、ラテックスとパパイア由来製品との間で交差反応が起こる可能性について否定するに至っていないことから(文献16:2020)、ラテックスアレルギーを有している場合はパパイア由来製品を使用する際には注意が必要であると考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献16:2020)によると、

  • [ヒト試験] 23人の被検者の背中2箇所に0.0075%パパイア果実エキスを含む日焼け止め(SPF50)を24時間閉塞パッチ適用し、適用後1箇所にUVAライトを照射した。照射直後および24および48時間後に皮膚反応を評価したところ、この試験物質はヒト皮膚において検出可能な光毒性を示さなかった(KGL LLC,2019)
  • [ヒト試験] 30人の被検者の背中複数箇所に0.0075%パパイア果実エキスを含む日焼け止め(SPF50)を3週間の間に6回24時間閉塞パッチ適用し、適用箇所のうち1箇所は各適用後にUVAライトを照射した。10日間の休息期間を設けた後に別の部位にチャレンジパッチを適用した後、適用箇所のうち1箇所にUVAライトを照射し、皮膚反応を評価したところ、この試験物質はヒト皮膚において検出可能な光感作性を示さなかった(KGL LLC,2019)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作なしと報告されているため、一般に光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

パパイア果実エキスは角質剥離成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:角質剥離成分 美白成分

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参考文献:

  1. 杉田 浩一, 他(2017)「パパイア」新版 日本食品大事典,632-633.
  2. 中央果実協会(2019)「パパイア」, <http://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_138.pdf> 2021年2月12日アクセス.
  3. 農研(2014)「はるみとパパイア」, <http://www.naro.affrc.go.jp/archive/fruit/itiosi/2014/049790.html> 2021年2月12日アクセス.
  4. 鈴木 洋(2011)「パパイヤ」カラー版健康食品・サプリメントの事典,145-146.
  5. A.K. Prabhu, et al(2005)「chemical profile of unripe pulp of carica papaya」Pakistan Journal of Nutrition(4)(6),379-381.
  6. 朝田 康夫(2002)「表皮を構成する細胞は」美容皮膚科学事典,18.
  7. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  8. 朝田 康夫(2002)「異常角化現象とは」美容皮膚科学事典,134-135.
  9. 清水 宏(2018)「過角化(角質増殖/角質肥厚/角質増生)」あたらしい皮膚科学 第3版,41-42
  10. 株式会社サンブレン(2003)「パパイヤ末配合含水化粧料」特開2003-081751.
  11. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  12. 日光ケミカルズ株式会社(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  13. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  14. 第一工業製薬株式会社(2015)「チロシナーゼ活性阻害剤及び美白用皮膚外用剤」特開2015-086187.
  15. 御木本製薬株式会社(2006)「美白皮膚外用剤」特開2006-062991.
  16. Cosmetic Ingredient Review(2020)「Safety Assessment of Carica papaya (Papaya) – Derived Ingredients as Used in Cosmetics」Tentative Report for Public Comment.

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