サリチル酸とは…成分効果と毒性を解説

ピーリング成分 防腐
サリチル酸
[化粧品成分表示名称]
・サリチル酸

[医薬部外品表示名称]
・サリチル酸

化学構造的にベンゼンのオルト位にヒドロキシ基とカルボキシ基が結合したモノヒドロキシ安息香酸誘導体(β-ヒドロキシ酸)です。

サリチル酸は多様な植物が共通して生産する低分子化合物であり、また様々な食品にも含まれています。

人間社会におけるサリチル酸の歴史は、鎮痛剤としてはじまり、また角質軟化作用を有していることから乾癬、角化症、イボおよびウオノメなどの治療に用いられ、ほかにも白癬菌(水虫菌)を抑制する作用を有していることから水虫の治療にも使われています(文献2:2005)

近年では、サリチル酸をマクロゴールという溶剤に溶かしたサリチル酸マクロゴールがニキビやニキビ痕を治療するケミカルピーリングに利用されています(文献3:2008)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、ピーリング化粧品、洗顔料・洗顔石鹸などに使用されています(文献1:2003)

角質軟化によるピーリング作用

角質軟化によるピーリング作用に関しては、サリチル酸は角質軟化・溶解作用を有しており、代表的なケミカルピーリング剤のひとつとして、主にざ瘡、色素異常、光老化にともなう症状などの治療や皮膚の若返り、シミ、クスミ、質感など皮膚の美容的改善目的に用いられ、医療下においてその有効性と安全性は十分に確認されています(文献3:2008;文献6:2017)

そういった背景から、化粧品においても穏やかなピーリング効果目的でピーリング系化粧品やニキビケア化粧品などに配合されます。

製品自体の抗菌・防腐作用

製品自体の殺菌・防腐作用に関しては、もともとは1882年に田邉屋(現 田辺製薬)がサリチル酸による清酒保存法を取り入れ、ドイツの酒類防腐剤サリチル酸の国内販売権を得て、国内初の食品添加物として清酒の防腐剤を販売したことから普及しました。

しかし、1961年にWHO(World Health Organization:世界保険機関)がサリチル酸の毒性について勧告したことにより、サリチル酸の防腐剤利用が問題となり、現在では飲食物に対して一切使用されていません(文献2:2005)

ただし、pHによって効果は大きく変化するものの、一般細菌、真菌に対して強い発育抑制作用を示し、その防腐力は抗菌力は、サリチル酸 > 安息香酸Na > メチルパラベンであることから、現在でも防腐剤として使用されています(文献4:1993)

2010年に報告された国立医薬品食品衛生研究所の化粧品中の防腐剤の分析では、サリチル酸は21製品中3製品(すべてシャンプー)に使用されています(文献5:2010)

サリチル酸はポジティブリストであり、化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用されます。

種類 最大配合量(g/100g)
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 0.20
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 0.20
粘膜に使用されることがある化粧品 0.20

また、サリチル酸は医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.20 すべてのサリチル酸、その塩及びその誘導体をサリチル酸に換算して、サリチル酸として合計。
育毛剤 0.20
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.20
薬用口唇類 0.20
薬用歯みがき類 0.20
浴用剤 0.20
染毛剤 サリチル酸の合計として0.2
パーマネント・ウェーブ用剤

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1998-2000年および2018年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

サリチル酸の配合比較調査(1998-2000年および2018年)

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サリチル酸の安全性(刺激性・アレルギー)について

サリチル酸の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:化粧品配合量およびpH2.75以上においてほとんどなし-わずか
  • 皮膚累積刺激性:化粧品配合量およびpH2.75以上においてほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 皮膚感作性(皮膚炎を有する場合):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2003)によると、

  • [ヒト試験] 27人の被検者(男性15人、女性12人)に2%サリチル酸を含むゲルを対象に2週間累積刺激性試験を閉塞パッチにて実施(48時間パッチを週3回)したところ、累積刺激スコアは14.5であり、最小限の累積刺激を生じたと結論づけた(Harrison Research Laboratories Inc,1993)
  • [ヒト試験] 27人の被検者に1.5%サリチル酸(pH2.75)を含むフェイスクリームを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、試験物質はわずかな累積刺激性に分類された(TKL Research Inc,1998)
  • [ヒト試験] 27人の被検者に1.5%サリチル酸(pH2.78)を含むフェイシャルクリームおよび0.02%サリチル酸(pH3.5)を含むスキンケアローションを対象に累積刺激性試験を実施した。1.5%サリチル酸(pH2.78)を含むフェイシャルクリームはそれぞれ閉塞パッチおよび半閉塞パッチにて適用したところ、閉塞パッチ適用した1.5%サリチル酸を含むクリームは合計累積刺激スコア125.0および正規化刺激スコア45.7であり、半閉塞パッチ適用した1.5%サリチル酸を含むクリームは、合計累積刺激スコア45.0および正規化刺激スコア16.5であった。両方の試験条件下でこのクリームは有意な刺激を生じないと結論づけられた。0.02%サリチル酸を含むローションは半閉塞パッチ適用したところ、合計累積刺激スコア50.0および正規化刺激スコア18.3であり、有意な刺激を生じないと結論づけられた(TKL Research Inc,1998)
  • [ヒト試験] 上記の同じ手順で28人の被検者を用いて1.5%サリチル酸(pH2.78)を含むフェイスクリームを対象に累積刺激性試験を閉塞および半閉塞パッチ実施したところ、閉塞パッチを適用した場合の合計累積刺激スコアは381.0および正規化刺激スコア132.0であり、わずかに刺激性があると判断された。半閉塞パッチを適用した場合の合計累積刺激スコアは69.0および正規化刺激スコア23.9であり、有意な刺激を生じないと判断された(TKL Research Inc,1998)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して非刺激性-わずかな累積刺激性と報告されているため、化粧品配合量およびpH2.75以上において皮膚刺激性はほとんどなし-わずかと考えられます。

眼刺激性について

化粧品配合範囲における試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2003)によると、

  • [ヒト試験] 25人の被検者にサリチル酸のMaximization皮膚感作性試験を実施(誘導期間20%濃度およびチャレンジ期間10%濃度)したところ、いずれの被検者も皮膚感作を示さなかった(Kligman,1966)
  • [ヒト試験] 99人の被検者に2%サリチル酸を含むクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚反応は観察されなかった(TKL Research Inc,1993)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に2%サリチル酸を含む保湿剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、いずれの被検者も皮膚感作反応は観察されなかった(TKL Research Inc,1993)
  • [ヒト試験] 193人の被検者に2%サリチル酸を含むゲル0.2gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、誘導期間において5人の被検者に最小限の紅斑が観察され、チャレンジ期間においては7人の被検者に最小限の反応が観察されたが、この試験物質は皮膚感作剤ではないと結論付けられた(HRL,1993)
  • [ヒト試験] 198人の被検者に2%%サリチル酸を含むゲルを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、誘導期間において2人の被検者は最小限の反応を示し、チャレンジ期間では5人の被検者が最小限の反応を示したが、2%サリチル酸を含むゲルは再び感作剤ではないと結論付けられた(HRL,1997)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚感作の報告はないため、化粧品に配合される通常の範囲内において、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

– 皮膚炎を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2003)によると、

  • [ヒト試験] 湿疹を有する230人の患者に5%サリチル酸を含むワセリンを4日間にわたって24時間パッチ適用したところ、3人の患者はパッチ除去24時間後に陽性反応(明瞭な紅斑)を示した(Thune,1969)
  • [ヒト試験] 1979年-1983年の間に標準パッチテストを実施した中で5%サリチル酸を含むワセリンをパッチした9,701人のうち11人に(偽)陽性反応が観察された。これら11人の患者に0.5%,1%,2%および5%サリチル酸を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、サリチル酸塩に対して即時型過敏症の経験を有する1人の患者は1%-5%サリチル酸に陽性反応を示した(Goh and Ng,1986)
  • [ヒト試験] アスピリンに過敏症を有する27人の患者にサリチル酸25-400mgを経口投与したところ、すべての患者は陰性であった(Zhu et al,1997)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、一部の陽性反応の報告を除き、大部分は皮膚感作性の報告はないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2003)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者(男性5人、女性5人)の背中3ヶ所のうち2%サリチル酸を含むクリーム0.2gを2ヶ所に残りの1ヶ所は陰性対照としてサリチル酸未配合軟膏をそれぞれ24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後クリームを適用した1ヶ所にUVA(20J/c㎡)を照射し、もう1ヶ所は未照射陰性対照とした。照射24および48時間後に光毒性を評価したところ、光毒性は観察されず、この試験物質は検出可能な光毒性の可能性を示さないと結論づけた(Ivy Laboratories,1993)
  • [ヒト試験] 10人の被検者の両腕に2%サリチル酸を含むゲルを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後片腕にUVAライト(0.22J/c㎡/min)を15cmの距離で15分間照射し、照射24および48時間後に光毒性を評価したところ、照射による皮膚反応は観察されず、この試験物質は光毒性ではなかった(HRL Inc,1993)
  • [ヒト試験] 25人の被検者(男性8人、女性17人)に2%サリチル酸を含むクリームを対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、試験期間を通じて光感作反応は認められず、この試験物質は光感作性を示さないと結論づけた(Ivy Laboratories,1993)
  • [ヒト試験] 28人の被検者に2%サリチル酸を含むゲルを対象に光感作試験をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この試験物質は接触性光感作および接触性皮膚感作を誘発しないと結論づけた(HRL,1997)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

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サリチル酸はピーリング成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ピーリング成分 安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2003)「Safety Assessment of Salicylic Acid, Butyloctyl Salicylate, Calcium Salicylate, C12–15 Alkyl Salicylate, Capryloyl Salicylic Acid, Hexyldodecyl Salicylate, Isocetyl Salicylate, Isodecyl Salicylate, Magnesium Salicylate, MEA-Salicylate, Ethylhexyl Salicylate, Potassium Salicylate, Methyl Salicylate, Myristyl Salicylate, Sodium Salicylate, TEA-Salicylate, and Tridecyl Salicylate」International Journal of Toxicology(22)(3),1-108.
  2. 安田 美智子, 他(2005)「サリチル酸からアスピリンへ」植物の生長調節(40)(1),39-43.
  3. 古川 福実, 他(2008)「日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン(改訂第3版)」日本皮膚科学会雑誌(118)(3),347-356.
  4. 岡田 文裕, 他(1993)「微生物細胞の熱測定による香粧品の防腐評価」日本化粧品技術者会誌(27)(3),242-248.
  5. 五十嵐 良明, 他(2010)「化粧品中の防腐剤の分析:サリチル酸,安息香酸ナトリウム,デヒドロ酢酸ナトリウム,ソルビン酸カリウム,フェノキシエタノール及びパラベン類」Bulletin of National Institute of Health Sciences(128),85-90.
  6. 林 伸和, 他(2017)「尋常性痤瘡治療ガイドライン2017」日本皮膚科学会雑誌(127)(6),1261-1302.

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