PETの基本情報・配合目的・安全性

PET

化粧品表示名 PET
INCI名 Polyethylene Terephthalate
配合目的 パール光沢

化粧品表示名「PET」は、「ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)」の頭文字をとった略称で、日本においては「ペット」と発音します。

1. 基本情報

1.1. 定義

以下の化学式で表されるテレフタル酸とエチレングリコール(HO-CH2-CH2-OH)が脱水縮合(∗1)した共重合体(∗2)(ポリエステル樹脂)です[1]

∗1 脱水縮合とは、分子と分子から水(H2O)が離脱することにより分子と分子が結合する反応のことをいいます。PETにおいては、テレフタル酸のカルボキシ基(-COOH)の「OH」とエチレングリコールのヒドロキシ基(-OH)の「H」が分離し、これらが結合して水分子(H2O)として離脱する一方で、残ったカルボキシ基の「CO」とヒドロキシ基の「O」が結合してエステル結合(-COO-)が形成されます。

∗2 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が繰り返し結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)のことを指し、2種類以上の単量体(モノマー:monomer)がつながってできているものを共重合体(copolymer:コポリマー)とよびます。

PET

1.2. 物性・性状

PETの物性・性状は、

状態 フレーク
粒径(μm) 100-3,100
溶解性 水に不溶

このように報告されています[2a][3a][4a][5a]

1.3. 化粧品以外の主な用途

PETの化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
日用品 PET樹脂は透明性、耐薬品性、衛生性、強度物性などに優れているため、飲料、洗剤、醤油、化粧品などのボトル容器の材料として広く用いられています[6]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • パール光沢付与

主にこれらの目的で、メイクアップ製品、ネイル製品などに汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. パール光沢付与

パール光沢付与に関しては、PETはキラキラとした光輝感をもつことから、パール光沢付与目的でメイクアップ製品、ネイル製品などに汎用されています[3b][4b][5b]

3. 混合原料としての配合目的

PETは混合原料が開発されており、PETと以下の成分が併用されている場合は、混合原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Geocrystal C Series
構成成分 PETアクリレーツコポリマー
特徴 見る角度によって異なる色に変化するPETを基材としたグリッター

4. 配合製品数および配合量範囲

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2012-2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています(∗3)

∗3 以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を指し、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

PETの配合製品数と配合量の調査結果(2012-2013年)

5. 安全性評価

PETの現時点での安全性は、

  • 15年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

5.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ[2b]によると、

  • [ヒト試験] 107名の被検者に1.5%PETを含むアイライナーを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作の兆候を示さなかった(Consumer Product Testing Co,2011)
  • [ヒト試験] 30名の被検者に12%PETを含むアイシャドーペンシルを対象にHRIPT(皮膚刺激性&皮膚感作性試験)を実施したところ、試験期間を通じていずれの被検者においても皮膚刺激および皮膚感作の兆候はみられなかった(Dermatest,1999)
  • [ヒト試験] 20名の被検者(過敏な皮膚を有する8名およびコンタクトレンズ装着6名含む)に15%PETを含むリキッドアイライナーを4週間使用してもらったところ、試験期間を通じていずれの被検者からも有害な皮膚反応の報告はなく、また皮膚感作の兆候もみられなかった(Dermatest,2006)

このように記載されており、試験データをみるかぎり共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

5.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

6. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「PET」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,69.
  2. abL.C. Becker(2014)「Safety Assessment of Modified Terephthalate Polymers as Used in Cosmetics」International Journal of Toxicology(33)(3_suppl),36S-47S. DOI:10.1177/1091581814537001.
  3. abGeotech International B.V.(2021)「Geoshine」Product Catalog.
  4. abGeotech International B.V.(2022)「Geocrystal」Product Catalog.
  5. abGeotech International B.V.(2022)「Geospectra」Product Catalog.
  6. 葛良 忠彦(2007)「プラスチック包装容器の分類と使用材料」色材協会誌(80)(1),32-39. DOI:10.4011/shikizai1937.80.32.

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