HEMAとは…成分効果と毒性を解説

結合剤
HEMA
[化粧品成分表示名称]
・HEMA

メタクリル酸2-ヒドロキシエチルと呼ばれる代表的なアクリル酸モノマーの一種で、化粧品成分表示では2-Hydroxyethyl methacrylateの略でHEMA(ヒーマ)と呼ばれるネイル接着剤です。

ビニルモノマーとして用いた場合、透明性、耐候性、可撓性(∗1)に優れた被膜が得られるため、熱硬化性塗料、接着剤などで使用され、またHENA重合物の親水性、酸素透過性により、コンタクトレンズにも使用されています(文献3:1992)

∗1 可撓性(かとうせい)とは、物質の弾性変形のしやすさのことです。

化粧品に配合される場合は、

  • 接着剤

これらの目的で、マニキュア、ジェルネイルなどのネイル製品に使用されます。

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HEMAの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

HEMAの現時点での安全性は、一般的に皮膚刺激は非刺激または軽度の皮膚刺激が起こる可能性があり、眼刺激性はデータ不足ため詳細不明ですが、遅延型アレルギー性があるため注意が必要な成分であると考えられます。

また、HEMAはメタクリル酸の一種ですが、HEMAのみにアレルギーを有している場合でも他のメタクリル酸にアレルギー反応を起こす交差反応性が確認されているため、HEMAにアレルギーが確認された場合はネイル製品に配合されている他のメタクリル酸類にも注意が必要です。

はじめは皮膚に問題がなくても使い続けるうちにアレルギー症状(紅斑、かゆみ、蕁麻疹)がでることがあり、また皮膚炎は爪や指先だけでなく、まぶた、顔面、頸部(首部分)にも発症報告があるため、使用する場合はパッチテストでアレルギーの有無を確認することを推奨します。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report of the Safety Assessment of Methacrylate Ester Monomers Used in Nail Enhancement Products」(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットに10%HEMAを適用したところ、皮膚刺激反応はみられなかったが、25%HEMAを適用したところ、軽度の紅斑が観察された(Haskell Laboratories,1969)
  • [動物試験] ウサギの剃毛した擦過または未擦過の背部にHEMAとメタクリル酸ヒドロキシプロピルの混合物0.25mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24および72時間後に皮膚刺激を評価したところ、HEMAの刺激スコアは0.7~1.2の範囲で、メタクリル酸ヒドロキシプロピルの刺激スコアは1.0であった。HEMAおよびメタクリル酸ヒドロキシプロピルの両方ともヒト皮膚上で軽度の刺激物である可能性が高いと結論付けられた(The British Petroleum Company,1981a)
  • [動物試験] 4匹のモルモットの剃毛した背部に35%HEMA水溶液50μLを1~18日および25~32日の間毎日8時間適用したところ、適用18日目にわずかな発赤が認められたが、25および32日目には反応は観察されなかった。この刺激試験の結果は遅延型アレルギー反応の可能性を示唆していると考えられた(Katusno et al,1992a)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしまたは軽度の皮膚刺激が報告されているため、皮膚刺激性は非刺激または軽度の皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

ただし、ネイル製品に使用されるため、ネイリストに施術してもらうなど皮膚につかない場合は皮膚刺激は過度に注意する必要がないと考えられます。

眼刺激性について

詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report of the Safety Assessment of Methacrylate Ester Monomers Used in Nail Enhancement Products」(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] 6匹のモルモットに10%および25%HEMAを誘導期間およびその2週間後にチャレンジ適用し、最初のチャレンジの1週間後に再チャレンジ適用した上でチャレンジおよび再チャレンジの48および72時間後に皮膚反応を評価したところ、すべてのモルモットで10%HEMAで陽性反応が観察された。5%HEMAで同様の試験を実施したところ、陽性反応を有した6匹のうち4匹で陽性反応が観察された。これらの結果からHEMAは強力な感作物質であると結論づけた(The British Petroleum Company,1981b)
  • [動物試験] 10匹のモルモットにHEMA50μLを皮内注射し、6日目に10%ラウリル硫酸ナトリウムで前処理した。7日目に誘導期間として剃毛した背部に0.2%、1.0%または5.0%HEMA0.2mLを48時間パッチ適用し、21日目に100%HEMAを含むチャレンジパッチを24時間適用したところ、HEMAに感作された10匹のうち6匹は24時間で陽性反応を示し、また10匹のうち5匹は48時間でも強い発赤作用とともに陽性反応を示した。次にメタクリル酸またはメチルメタクリレートを用いて交差反応性を調べたところ、試験した12匹のモルモットはすべて陰性であった。これらの結果からHEMAは遅延型アレルギー反応を引き起こしたが、ヒトとモルモットで異なるアレルギー反応を有することを示唆した(Katsuno et al,1995)

昭和大学医学部皮膚科学教室の「HEMA感作によって手指に出現した接触性皮膚炎の一症例」(文献3:1996)によると、

  • [個別事例] 動物皮膚にHEMAおよびメタクリル酸グリセリル水溶液を連続塗布することによる影響を検討中に、ゴム手袋を介して反復接触した術者の両手手指に掻痒感、紅斑をともなった皮疹が出現した。そのため、この症状を有した術者に対してHEMAおよびメタクリル酸グリセリルに対してパッチテストを実施し、さらにHEMAを主成分とする各種メタクリル酸誘導体を含有する市販ボンディング材に対する反応を観察して交差反応成立の可能性もあわせて検討したところ、両試験においてHEMAに対して強い陽性反応が認められ、さらにメタクリル酸グリセリルに対してもアングリーバック症候群(∗2)によると思われる陽性反応が認められた。また、市販ボンディング材に対しても明らかな陽性反応を示したことから、他のメタクリル酸誘導体に対する交差反応も成立することが確認された。この結果からHEMAはゴム手袋をしていても通過して感作する可能性を有していると結論づけられた

∗2 アングリーバック症候群とは、非常に強い陽性反応が、その反応の近隣にもアレルギーを介さない反応を誘発する現象のことです。

“British Association of Dermatologists(イギリス皮膚科医師協会)”の「Dermatologists issue warning about UK artificial nail allergy epidemic」(文献4:2018)によると、

  • [ヒト試験] イギリスおよびアイルランドにある13の皮膚科施設で4,931人の患者のメタクリレートアレルギーについて検査した結果、最も一般的なメタアクリレートであるHEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)に対して74人(1.5%)が陽性反応を示した。同協会が別で実施した皮膚科に通う742人の患者を対象にした調査では、141人(19%)の回答者がサロンでアクリルネイルを利用した経験があると回答しており、119人(16%)がサロンでジェルネイルを利用した、193人(26%)が爪の損傷およびアレルギー性皮膚炎の症状があらわれたと回答した

と記載されています。

試験データをみるかぎり、モルモットを用いた試験では遅延型アレルギーの報告が多く、またヒトではHEMAに接触する機会の多い職業にアレルギー性皮膚炎の報告が多いため、皮膚感作性(アレルギー性)が起こる可能性があり、注意が必要な成分であると考えられます。

また、HEMAはメタクリル酸の一種ですが、HEMAのみにアレルギーを有している場合でも他のメタクリル酸にアレルギー反応を起こす交差反応性が確認されているため、HEMAにアレルギーが確認された場合はネイル製品に配合されている他のメタクリル酸類にも注意が必要です。

本来HEMAはネイルを接着するために使用されるため、ネイリストに施術してもらう場合は皮膚に付着することはなく、過度にアレルギー性皮膚炎を心配することはないのですが、セルフネイル製品の販売にともなって皮膚にHEMAが付着する機会が急増し、その結果としてアレルギー性皮膚炎発症者が増えているのだと推測されます。

ネイリストは、職業的にどうしても日常的にネイル成分を皮膚に付着させてしまうため、ネイリストでは一般ネイルユーザーに比べてアレルギー性皮膚炎が起こる可能性は高くなると考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
HEMA 掲載なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、HEMAは掲載なしとなっていますが、遅延型アレルギー性皮膚炎の報告が少なくないため、パッチテストでアレルギーの有無を確認した後に使用することが推奨されます。

∗∗∗

HEMAはその他にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:その他

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文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2005)「Final Report of the Safety Assessment of Methacrylate Ester Monomers Used in Nail Enhancement Products」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1080/10915810500434209> 2018年8月21日アクセス.
  2. 加藤 正明(1992)「メタクリル酸2-ヒドロキシエチル」有機合成化学協会誌(50)(10),926-927.
  3. 栗原 彩, 他(1996)「HEMA感作によって手指に出現した接触性皮膚炎の一症例」接着歯学(14)(3),164-172.
  4. “British Association of Dermatologists”(2018)「Dermatologists issue warning about UK artificial nail allergy epidemic」, <http://www.bad.org.uk/media/news#collapse9667> 2018年8月21日アクセス.

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