酢酸ブチルとは…成分効果と毒性を解説

溶剤
酢酸ブチル
[化粧品成分表示名称]
・酢酸ブチル

ネイルエナメルの主成分である皮膜形成剤のニトロセルロースを溶かす中沸点の溶剤です。

ネイルエナメルの流動性を高めたり、乾きを早くするために他の溶剤と混合して、マニキュア、マニキュアリムーバー、ベースコートおよび他のマニキュア溶剤として使用されます。

海外の1989年の資料なのですが、”Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」の調査では、酢酸ブチルの配合製品数や配合濃度は以下のように明らかになっています。

酢酸ブチルの配合製品数や配合濃度

圧倒的にネイルエナメルでの使用率が高く、配合量は10~50%の間が主流です。

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酢酸ブチルの安全性(刺激性・アレルギー)について

酢酸ブチルの現時点での安全性は、皮膚刺激性や毒性および眼刺激性はほとんどなく、アレルギー(皮膚感作)も起こっていないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 26人の被検者に4%酢酸ブチルを含むワセリンを48時間おきに合計5回前腕に閉塞パッチ下で適用し、約2週間の休息後に2つのチャレンジパッチを48時間適用したところ、皮膚刺激の兆候は観察されなかった
  • [ヒト試験] 13名の被検者(男性2名、女性11名)に10%酢酸エチルおよび25%酢酸ブチルを含むマニキュア液0.4mLをそれぞれの背中に閉塞下で毎日23時間21日間連続して適用したところ、わずかに皮膚刺激があると判断された

厚生労働省の運営する”職場のあんぜんサイト”の安全性データシート(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] ウサギに99.6%酢酸ブチルを4時間適用したところ刺激反応はみられず、痂皮形成および浮腫のスコアは0だったとの報告(SIDS(2009))や、モルモットを用いた試験において刺激性はみられなかったとの報告(SIDS(2009))がある
  • [ヒト試験] ヒトに対して4%酢酸ブチルを48時間閉塞パッチしたところ、刺激性なしだったと報告がある(SIDS(2009))ため、皮膚刺激性なし(区分外)

と記載されています。

試験データをみると濃度にかかわらずほとんどの場合に皮膚刺激なしとの結果なので、ごくまれにわずかな皮膚刺激が起こる可能性はありますが、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」(文献1:1989)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの片目に10%酢酸エチルおよび25%酢酸ブチルを含むマニキュア0.1mLを点眼し、3匹のウサギは処理した眼を30秒後に水ですすぎ、反応を1,2,3,4および7日目に観察したところ、水ですすがなかったウサギの眼は、3匹に角膜混濁、2匹に中程度の角膜混濁、6匹すべての角膜に斑点がみられたが、6匹中5匹のウサギの異常は7日目には治まっていた。水洗いをした3匹のウサギは角膜混濁が最小限であり、7日後には治まっていた
  • 酢酸ブチルは希釈されていない0.005mLでいわゆる重度の火傷のような眼刺激性を示しており、グレード5の刺激剤として報告されている(点滴後に水ですすぎを受けているかどうかは明らかではない)

厚生労働省の運営する”職場のあんぜんサイト”の安全性データシート(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に酢酸ブチル0.1mLを適用したところ、軽度から中程度の虹彩炎がみられたが48時間後には回復したとの報告(SIDS(2009))やウサギを用いた他の眼刺激性試験で軽度の刺激性、または刺激性なしとの結果が複数ある(SIDS(2009))
  • [ヒト試験] 酢酸ブチル(70~1400mg/m3)に曝露されたヒトにごく軽度の刺激性がみられたとの報告(SIDS(2009))があるため、わすか~軽度の眼刺激性あり(区分2B)

と記載されています。

共通して眼刺激性が起こっていますが、程度は様々で最も多い結果が軽度の眼刺激性だったことから、軽度以上の眼刺激性が起こると考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 50名の被検者が酢酸ブチル(濃度不明)0.5mLを含むパッチを24時間3週間にわたって合計9回適用したところ、いずれの被検者も感作されていなかった
  • [ヒト試験] 26人の被検者に4%酢酸ブチルを含むワセリンを48時間おきに合計5回前腕に閉塞パッチ下で適用し、約2週間の休息後に2つのチャレンジパッチを48時間適用したところ、皮膚感作の兆候は観察されなかった
  • [ヒト試験] 26人の被検者に4%酢酸ブチルを含むワセリンを48時間おきに合計5回前腕に閉塞パッチ下で適用し、約2週間の休息後に2つのチャレンジパッチを48時間適用したところ、皮膚感作の兆候は観察されなかった
  • [ヒト試験] 25名(男性11名、女性14名、18~40歳)の被検者に10%酢酸エチルおよび25%酢酸ブチルを含むマニキュアを48時間閉塞パッチ下で適用し、10日間の無処置期間の後24時間チャレンジパッチを適用し除去した後に反応を評価して、さらに24時間後に反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚感作性を示さなかった
  • [ヒト試験] 25名(男性10名、女性15名、18~57歳)の被検者に25.5%酢酸ブチルを含むマニキュア液0.3mLを48時間閉塞パッチ下で合計5回適用し、10日間の無処置期間の後24時間チャレンジパッチを適用し除去した後に反応を評価して、さらに24時間後に反応を評価したところ、いずれの被検者からも反応を観察できなかったため、通常使用において接触感作性の危険性があるとは考えにくい
  • [ヒト試験] 55名の女性被検者(約半分の被検者が乳酸に対する顔面紅斑試験に敏感反応あり)に25.5%酢酸ブチルを含むマニキュア液を1週間に少なくとも3回適用し、3週間後に爪、キューティクル、顔、手、まぶたを観察したが有害反応は示されなかったため、マニキュア液は安全性の観点から許容される

厚生労働省の運営する”職場のあんぜんサイト”の安全性データシート(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いた試験やマウスの耳介膨張試験において感作性はみられなかった(SIDS(2009))との報告やヒトに対して感作性は認められない(環境省リスク評価第1巻(2002))などの記載があるが、試験法や結果の詳細について不明であるため、分類に用いるには不十分なデータであるため分類できない

と記載されています。

多くのヒト試験結果が報告されていますが、共通して皮膚感作性は観察されておらず、国内でも重大なアレルギーの報告はないため、アレルギー(皮膚感作)はほとんど起こらないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
酢酸ブチル

参考までに化粧品毒性判定事典によると、酢酸ブチルは■(∗2)となっており、やや毒性ありという判定になっていますが、安全性データやレポートをみる限りでは、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

酢酸ブチルはその他にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:その他

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1989)「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」,<http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915818909010527> 2017年10月5日アクセス.
  2. “職場のあんぜんサイト”(2015)「安全性データシート」,<http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/123-86-4.html> 2017年10月5日アクセス.

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