酢酸エチルとは…成分効果と毒性を解説

溶剤
酢酸エチル
[化粧品成分表示名称]
・酢酸エチル

ネイルエナメルの主成分である皮膜形成剤のニトロセルロースを溶かす低沸点の溶剤です。

ネイルエナメルの流動性を高めたり、乾きを早くするために他の溶剤と混合して、マニキュア、マニキュアリムーバー、ベースコートおよび他のマニキュア溶剤として使用されます。

海外の1989年の資料なのですが、”Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」の調査では、酢酸エチルの配合製品数や配合濃度は以下のように明らかになっています。

酢酸エチルの配合製品数や配合濃度

圧倒的にネイルエナメルでの使用率が高く、配合量は5~25%の間が主流です。

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酢酸エチルの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

酢酸エチルの現時点での安全性は、皮膚刺激性や毒性はほとんどなく、わずか~中程度の眼刺激が起こる可能性はあるものの、アレルギー(皮膚感作)もほとんど起こらず、国内でも重大なアレルギーの報告がないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」(文献1:1989)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギに10%酢酸エチルを含むマニキュア液を24時間にわたって3回塗布したところ、いずれのウサギにおいても陽性反応は観察されず、マニキュア液に皮膚刺激性はなかった
  • [ヒト試験] 10名の被検者(40~60歳)に97%酢酸エチル0.1mLを21日間ぞれぞれの背中に閉塞パッチ下で連続塗布したところ、累積皮膚刺激の兆候はみられなかった
  • [ヒト試験] 13名の被検者(男性2名、女性11名)に10%酢酸エチルおよび25%酢酸ブチルを含むマニキュア液0.4mLをそれぞれの背中に閉塞下で毎日23時間21日間連続して適用したところ、わずかに皮膚刺激があると判断された

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全性データシート(文献2:2010)によると、

  • [動物試験] ウサギ皮膚に0.01mLを24時間解放適用した試験において、刺激性スコア1/10で刺激性なしとの結果に基づき皮膚刺激性なし(区分外)

と記載されています。

試験データをみると濃度にかかわらずほとんどの場合に皮膚刺激なしとの結果なので、ごくまれにわずかな皮膚刺激が起こる可能性はありますが、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」(文献1:1989)によると、

  • [動物試験] ウサギの片眼に16.5%酢酸エチルを含むマニキュア除光液0.1mL注入したところ、実施1時間でわずかな角膜の混濁と重度の結膜炎が観察され、3日目に中程度の角膜の混濁と重度の虹彩炎が認められました。8日目には角膜のわずかな混濁と中程度の結膜炎、および角膜の血管新生が観察された
  • [動物試験] 9匹のウサギの片目に10%酢酸エチルおよび25%酢酸ブチルを含むマニキュア0.1mLを点眼し、3匹のウサギは処理した眼を30秒後に水ですすぎ、反応を1,2,3,4および7日目に観察したところ、水ですすがなかったウサギの眼は、3匹に角膜混濁、2匹に中程度の角膜混濁、6匹すべての角膜に斑点がみられたが、6匹中5匹のウサギの異常は7日目には治まっていた。水洗いをした3匹のウサギは角膜混濁が最小限であり、7日後には治まっていた
  • [動物試験] 9匹のウサギの片目に10%酢酸エチルを含むマニキュア液0.1mLを点眼し、3匹のウサギは処理した眼を30秒後に水ですすぎ、Draize法に従って評価したところ、水ですすがなかったウサギの眼は3匹中3匹に発赤および化学兆候がみられたが9日後には治まっており、マニキュア液を適用してから4秒間水ですすいだウサギでは3匹中2匹72時間後および6日後にわずかな発赤を示し、7日後には治まっていた。またマニキュア液適用後2秒間水洗いしたウサギ3匹はいずれも目刺激性はみられず、この観察結果からマニキュア液は軽度の眼刺激性あり

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全性データシート(文献2:2010)によると、

  • [動物試験] 4匹のウサギに酢酸エチル0.1mLを点眼したDraize法による試験において、4匹中4匹に角膜混濁がみられたが2日目までに回復し、4匹中1匹に虹彩炎がみられたが2日までに回復し、結膜の発赤、浮腫、分泌物などは7日目までに治まり、24,48,72時間の最大刺激平均スコアは15.0との報告に基づき、わずか~軽度の目刺激性あり(区分2B)

と記載されています。

共通して眼刺激性はわずか~中程度の目刺激性が起こっているため、軽度~中程度の眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 25名(18~48歳)の被検者に97%酢酸エチルを含む溶剤0.3mLを48時間にわたって5回それぞれの前腕の裏側に閉塞パッチした後、10日間の休息期間を経て別の部位に再パッチを実施した24時間後に評価したところ、酢酸エチルは皮膚感作剤ではなかった
  • [ヒト試験] 118名(18~65歳)の被検者に16.5%酢酸エチルを含むマニキュア除光液1.0mLをそれぞれの背中に塗布し、48時間後に評価したところいずれの被検者にも反応はみられなかった。次に、マニキュア除光液を4週間使用してもらい、その後同じ手順でパッチテストしたところ、反応は観察されなかったため、酢酸エチルは皮膚感作剤ではないと結論付けられた
  • [ヒト試験] 25名(21~48歳)の男性被検者に10%酢酸エチルを含むワセリンを48時間にわたって5回前腕の裏側に閉塞パッチ適用し、10日間の休息を経て未処置の部位にチャレンジパッチを48時間適用したところ、どの被検者も反応を示さなかった
  • [ヒト試験] 25名(男性11名、女性14名、18~40歳)の被検者に10%酢酸エチルおよび25%酢酸ブチルを含むマニキュアを48時間閉塞パッチ下で適用し、10日間の無処置期間の後24時間チャレンジパッチを適用し除去した後に反応を評価して、さらに24時間後に反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚感作性を示さなかった

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全性データシート(文献2:2010)によると、

  • [動物試験] モルモットのマキシマイゼーション試験で感作性なし(IUCLID(2000))の報告、およびヒト被検者25名を用いて実施したマキシマイゼーション試験でも感作性なしの結果(DFGOTvol.12(1999))に基づき皮膚感作性なし(区分外)

と記載されています。

多くのヒト試験結果が報告されていますが、共通して皮膚感作性は観察されておらず、国内でも重大なアレルギーの報告はないため、アレルギー(皮膚感作)はほとんど起こらないと考えられます。

光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」(文献1:1989)によると、

  • [ヒト試験] 18~65歳の30人の被検者に6.5%酢酸エチルを含むネイルカラーを24時間閉塞パッチ下で適用し、除去後に光源としてキセノンアークソーラーシミュレーターで紫外線A(UVA)および紫外線B(UVB)範囲(290~400nm)で照射した48時間後に評価してパッチを再適用するという手順を6回繰り返した。10日の無処置期間の後に未処理部位に閉塞チャレンジパッチを適用し光源にSchott WG345フィルターを用いて3分間照射し、15分後,24時間後,48時間後および72時間後に観察したところ、いずれの被検者も反応を示さず、ネイルカラーは光毒性も光感作性も生じなかった

と記載されています。

試験結果をみても光感作性がないため、光感作性(光毒性)はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
酢酸エチル

参考までに化粧品毒性判定事典によると、酢酸エチルは■(∗2)となっており、やや毒性ありという判定になっていますが、安全性データやレポートをみる限りでは、皮膚刺激性や毒性はほとんどないと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

酢酸エチルはその他にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:その他

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1989)「Final Report on the Safety Assessment of Ethyl Acetate and Butyl Acetate」,<http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915818909010527> 2017年10月5日アクセス.
  2. “職場のあんぜんサイト”(2010)「安全性データシート」,<http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/141-78-6.html> 2017年10月5日アクセス.

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