炭酸プロピレンとは…成分効果と毒性を解説

溶剤
炭酸プロピレン
[化粧品成分表示名称]
・炭酸プロピレン

アセトンやアルコール類に溶ける無色無臭の液体です。

樹脂類と相溶性が良いのでマスカラやネイルエナメルなどのメイクアップ製品の溶剤として使用されています。

また、シクロペンタシロキサン(シリコーンオイル)ジステアルジモニウムヘクトライト(粘土系増粘剤)を膨潤させたゲル化剤の溶剤としても使用されています。

実際に配合されている製品や配合量に関しては、海外の1981年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

炭酸プロピレンの配合製品数と配合量の調査結果(1981年)

アイシャド-、アイライナー、マスカラなどメイクアップ製品やリップスティックなどに配合が多く、1~5%の配合量が多いのがわかります。

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炭酸プロピレンの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

炭酸プロピレンの現時点での安全性は、ごくまれに皮膚刺激および眼刺激が起こる可能性がありますが、化粧品に配合される範囲内において基本的に皮膚刺激や眼刺激はほとんどなく、重大なアレルギー(皮膚感作)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Propylene Carbonate」(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 10人の男女に100%炭酸プロピレン0.1mLを3日間毎日閉塞パッチ下で適用し、24時間ごとに刺激スコアを採点した。また刺激スコアは0点(刺激なし)から4点(合併した重度の紅斑、浮腫、壊死)の5段階スケールで等級分けした。それぞれの被検者の3日間における平均刺激スコアは1.5~2.4の範囲であり、中等の皮膚刺激を示した
  • [ヒト試験] 2つのグループの合計50名の被検者に5%または10%炭酸プロピレン水溶液を合計15回の反復パッチ適用したところ、皮膚刺激は観察されなかった
  • [ヒト試験] 26名の被検者に20%炭酸プロピレンを含むエタノール溶液の累積刺激を試験した。試験物質0.2mLを30分間パッチに載せて揮発性物質を蒸発させてから毎日パッチを背中に合計21回適用したところ、12名の被検者が皮膚反応を示し、反応のうち11個は最小限の皮膚紅斑を有し、1個は明確な紅斑を有した。また12名全員に時折色素沈着および乾燥がみられた。さらに12名のうち1名の被検者は強い陽性反応を示し、angryback syndrome(強い陽性反応がでると、その周囲にも多くの陽性反応を引き起こすこと)の可能性を示唆された。21日間の平均刺激スコアは最大2184(26人の被検者×21日間×最大刺激スコア4)中66.0の累積刺激スコアであった
  • [ヒト試験] 91人の被検者(18~78歳)に誘導期間として20%炭酸プロピレンを含む脇下スティック50mgを半閉塞パッチで48時間(週末は72時間)を10回繰り返し、14日の無処置期間を経て新しい部位に単一48時間チャレンジパッチを適用したところ、誘導期間ではかろうじて知覚可能な紅斑から明確な紅斑がみられ、ときおり数人の被検者においては浮腫も認められた。チャレンジパッチでは10人の被検者に皮膚反応がみられ、そのうち6個はほとんど知覚できない最小限の紅斑で、残りの4個は明確な紅斑または最小の浮腫を有した。後者の4人に再パッチを提案したところ3人の了承が得られたため再試験したところ、3人中2人は陰性であり、残りの1人はほとんど知覚できない紅斑が生じた。これらの結果から20%炭酸プロピレンを含む脇下スティックはこの試験条件下で感作を起こさなかったと結論づけた
  • [ヒト試験] 54人の被検者に3.5%炭酸プロピレンを含む4種類のゲル(A,B,C,D)の皮膚刺激試験で、54人の上腕または背中にゲルAを閉塞パッチ下で24時間週3回合計10日間適用し、14日間の無処置期間を経て処置部位に24時間のチャレンジパッチ適用し、48時間後に部位を検査した。ゲルBは49人の被検者に適用し、ゲルCおよびDは51人の被検者に適用したところ、4種類のゲルを適用した154人のうちゲルDに2人の皮膚反応があったが、1人は誘導期間4~5日目にわずかな紅斑を示し、もう1人は誘導期間10日目に紅斑および浮腫を示したが、これらは試験部位を変えると再発しなかったため、疲労による反応であると示唆し、3.5%炭酸プロピレンを含むゲルDは累積刺激剤または疲労剤であると結論付けられた
  • [ヒト試験] 210人の背中に誘導期間として2%炭酸プロピレンを含むクリームブラッシュを24時間週に3回合計10回適用し、10~14日の無処置期間を経て48時間チャレンジパッチを適用し、さらに7~10日後に2回目の48時間チャレンジパッチを適用した。皮膚反応は0(反応なし)~4+(著しい浮腫および小胞)のスケールで等級付けし、採点したところ、2人の被検者に誘導期間において2+(紅斑および丘疹)の反応がみられたが、これらの反応は非刺激性として報告され、誘導期間およびチャレンジ期間に他の皮膚反応は認められず、このクリームブラッシュは皮膚刺激剤でも接触増感剤でもないと結論付けられた
  • [ヒト試験] 51人の被検者の上腕の無傷および擦過部位に2%炭酸プロピレンを含む制汗剤の閉塞パッチを24時間週3回合計9回適用し、6週目に元の処置部位および未処置部位に24時間チャレンジパッチを適用したところ、4人は無傷の部位に紅斑を有し、他の4人の被検者は誘発期間に擦過部位に紅斑を有した。チャレンジ期間に対する反応は観察されなかった。

厚生労働省が運営している”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献2:2009)によると、

  • [動物試験] ウサギの試験で軽度の刺激(slight irritant)(PATTY (5th、2001))、及びウサギの試験(OECD Guide-line 404)で刺激性なし(IUCLID (2000))

と記載されています。

試験結果ではほとんどが皮膚刺激性なしと結論づけているため、ごくまれにわずか~軽度の紅斑が起こる可能性がありえますが、基本的に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Propylene Carbonate」(文献1:1987)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの右眼に希釈されていない炭酸プロピレン0.1mLを注入し、Draize法に従って評価したところ、1,24,48,72時間および7日間の平均スコアはそれぞれ12.5,9.8,5.1,4.8および0.0であり、刺激が最小であることを示した。6匹のうち5匹は結膜の刺激のみを有し、残りの1匹は角膜、虹彩および結膜の刺激を有していた
  • [動物試験] 10.5%、17.5%および100%の炭酸プロピレンの眼刺激性を3群のウサギで評価した。1つの試験材料1滴を3匹のウサギの片眼の結膜嚢に注入し、他方の眼は未処置対照として14日連続で行ったところ、100%炭酸プロピレンを注入した3匹のうち2匹は7日目まで黄色に目やにを有したが他に変化は観察されず、他の低い濃度の2つの炭酸プロピレンを注入した6匹の眼には刺激は認められなかった
  • [動物試験] 6匹のウサギの右眼に希釈されていない炭酸プロピレン0.1mLを注入し、処置した眼をすすぎ、1時間後および1,2,3,4および7日後に検査した。刺激はKay and Calandraによって記載された方法で0(非刺激性)から110(極めて刺激性)のスケールでスコア化したところ、スコアは8.5から17.17の範囲であり、炭酸プロピレンがウサギの眼に刺激性またはわずかに刺激性であることが示された
  • [動物試験] 6匹のウサギのそれぞれ片眼の結膜嚢に0.51%炭酸プロピレンを含むリップグロス0.1gを注入し、6匹中3匹は処置4秒後に塩化ナトリウムですすぎを受けたが、他の3匹はすすぎを受けなかった。処置後24,48および72時間後にウサギを観察したところ、眼刺激は認められなかった
  • [動物試験] 9匹のウサギのそれぞれ片眼に1.85%炭酸プロピレンを含むアイライナー0.1mLを適用し、3匹は点滴の2秒後に塩化ナトリウムですすぎをうけ、もう3匹は4秒後にすすぎを受け、残りの3匹はすすぎを受けなかった。処置の24,48および72時間後に刺激に対する評価を行ったところ、眼刺激性は生じなかった
  • [動物試験] 9匹のウサギのそれぞれ片眼に20%炭酸プロピレンを含む脇下スティック0.1gを点滴し、9匹中6匹は点滴後に水洗いをせず、残りの3匹は点滴後30秒後に1分間水ですすいだ。処置した眼を1時間後および1,2,3および7日後に検査したところ、虹彩や角膜の変化は観察されなかったが、すべてのウサギに軽度の結膜刺激があった。しかし、この刺激は時間がたつにつれ、または水洗いにより重症度は軽減した。すすいでいない眼の平均刺激スコアはそれぞれ1時間および1,2,3および7日で9.7,7.7,4.3,3.0,2.7だった。すすいだ眼の平均刺激スコアはそれぞれ4.0,2.0,2.0,2.0,0.7だった。この製品はおそらく眼刺激性であると結論づけた

厚生労働省が運営している”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献2:2009)によると、

  • [動物試験] ウサギの試験で中程度の刺激性(moderate irritant)(PATTY (5th、2001)、及び他のウサギの試験(OECD Guide-line 405)で角膜混濁=1.72、結膜発赤=2.67で刺激性(irritating)(IUCLID (2000))との報告に基づく

と記載されています。

試験結果では眼刺激性なし、またはわずかな刺激性を有する結果が示されているため、わずかに刺激が起こる可能性がありますが、化粧品に配合される濃度において眼刺激はほとんど起こらないと考えられます。

アレルギー(皮膚感作性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Propylene Carbonate」(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 210人の被検者背中に1.85%炭酸プロピレンを含むアイライナーを週3回3週間にわたって適用し、2週間の無処置期間を経て48時間チャレンジパッチを処置部位に隣接した未処置部位に適用し、48および96時間後に反応を検査したところ、皮膚感作は認められなかった

厚生労働省が運営している”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献2:2009)によると、

  • [ヒト試験] ヒトのパッチテストで感作性なし(notsensitizing)(IUCLID(2000))との報告があるが詳細は不明であり、データ不足により分類できない

と記載されています。

試験結果は少ないですが、下の光感作性の試験もふまえ、また国内で重大なアレルギーの報告もないため、アレルギー(皮膚感作)はほとんど起こらないと考えられます。

光毒性および光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Propylene Carbonate」(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 304人の被検者に1.51~1.98%炭酸プロピレンを含むアイメイクアップ製品を単一解放または閉鎖パッチにて48時間適用し、14日の無処置期間を経て48時間の解放および閉鎖チャレンジパッチを適用した。閉鎖パッチ部位に誘導期間およびチャレンジ期間の両方でUVライト(365nmの波長を含むSpectronics B-100)を照射したところ、チャレンジ期間で304人中2人は閉鎖パッチにおいて無数の弱い反応を示し、4人はUVライトにおいて皮膚反応を示した。これらの反応が炭酸プロピレンによるものなのかどうかは確かではなく、このアイメイク製品は、試験条件下で非光感作性であると考慮された
  • [ヒト試験] 149人の被検者に1.51~1.98%炭酸プロピレンを含む同じアイメイク製品を解放パッチと閉塞パッチの両方で1日おきに24時間合計10回ずつ適用し、2~3週間の無処置期間を経て48時間の解放および閉塞チャレンジパッチを適用した。閉塞パッチのほうは誘導期間の1,4,7および10回目とチャレンジ期間に処置部位をUVライト照射(365nmの波長を含むSpectronics B-100)したところ、数人の閉塞パッチ部位に誘導期間とチャレンジ期間の間に無数の弱い反応が観察され、また1人においては誘導期間の6~7回目に強い反応も認められた。一方で解放パッチにはUVライトも含め反応は観察されなかった。このアイメイク製品は光感作性ではなかった
  • [ヒト試験] 10人の被検者の背中に20%炭酸プロピレンを含む脇下製品50mgをパッチ下で適用し24時間後に除去した。次に処理された部位にUVA(290-400nm)とUVB(320-400nm)を有するキセノンアークソーラーシミュレーターで12分間照射し、24および48時間後に評価したところ、24および48時間後の評価で10人中8人で色素沈着が観察された。脇の下だけを処置した部位では皮膚反応は認められなかったため、脇の下に光毒性があるとは認められないと結論づけた

と記載されています。

試験結果は共通して光感作性および光毒性を示さなかったと結論付けられているため、光感作性および光毒性はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
炭酸プロピレン

参考までに化粧品毒性判定事典によると、炭酸プロピレンは△(∗2)となっており、毒性はほとんどないと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

炭酸プロピレンはその他にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:その他

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Propylene Carbonate」,<http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915818709095488> 2017年10月23日アクセス.
  2. “職場のあんぜんサイト”(2009)「安全データシート プロピレンカーボネート」,<http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/108-32-7.html> 2017年10月23日アクセス.

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