ベンジルアルコールとは…成分効果と毒性を解説

溶剤 抗菌成分
ベンジルアルコール
[化粧品成分表示名称]
・ベンジルアルコール

ほのかな心地よい芳香臭のある無色透明の液体で、抗菌性を有する油性の溶剤です。

染毛剤、防腐剤、香料、石鹸など様々な成分を溶かし込む溶剤または溶剤補助として使用されます。

また、天然にも存在するため天然由来としてオーガニック化粧品の植物エキスを溶かし込む溶剤としても使用されることがあります。

実際の配合製品数や配合量の範囲は、海外の2009年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ベンジルアルコールの配合品数(1998年)

ベンジルアルコールの配合状況調査(2010-2011年)

1989年から2011年までの約20年で配合製品数が約20倍に増えているのがわかります。

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ベンジルアルコールの安全性(刺激性・アレルギー)について

ベンジルアルコールの現時点での安全性は、わずか~軽度の皮膚刺激が起こる可能性があり、アレルギー(皮膚感作)が起こる可能性はほとんどありませんが、軽度~中等の眼刺激性が起こる可能性もあるため、毒性は低いのですがやや安全性に懸念のある成分であると考えられます。

また、ベンジルアルコールは、非アレルギー性接触じんま疹(かぶれ)が起こる可能性がある成分ですが、配合濃度がきわめて低い場合は起こりにくく、化粧品に配合される場合はきわめて微量であり、販売前に安全性テストをクリアしているため、実際の使用におけるかぶれの報告が見当たらないことからもこの点に懸念はほとんどないと考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid, and Sodium Benzoate」(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 9名の健康な女性被検者の背中に3%ベンジルアルコールをポリプロピレンチャンバー内で4日間連続適用し、5日目にFrosch-Kligmanスコアリングシステムによって採点したところ、刺激剤であった(Harvell et al.,1994)
  • [動物試験] 8匹のウサギの背中(8匹中4匹は擦過している)に10%ベンジルアルコールを含むスクワランを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去時および72時間後にDraize法に基づいて評価したところ、0~8の刺激スコアの範囲でスコア0であり、皮膚刺激は観察されなかった(Shiseido Research Center,1972)
  • [動物試験] 3匹のモルモットの背中に3日間連続して10%ベンジルアルコールを含むスクワラン0.3mLを毎日解放パッチ適用し、毎回24時間後に処置部位を0~4の刺激スコアで評価したところ、スクワラン中のベンジルアルコールの累積刺激スコアは0.4で、刺激性がない範囲におさまった(Shiseido Research Center,1972)

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献3:2014)によると、

  • [動物試験] ウサギのドレイズ試験の2報告で、皮膚一次刺激性指標値(PII値)は、それぞれ、1.56、1.83(ECET OC TR 66(1995))であり、いずれも2.3より低いため区分外(皮膚刺激性なし)とした

JETOC 日本化学物質安全・情報センターの初期評価プロファイル(文献4:2001)によると、

  • ベンジルアルコールは皮膚に対して軽微な刺激をもつ

と記載されています。

動物試験では共通して刺激性なしですが、ヒト試験では軽微な刺激性があるという結果で共通しているため、軽度の皮膚刺激が起こる可能性があると考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Final Safety Assessment of Benzyl Alcohol, and Benzoic Acid and its Salts and Benzyl Ester」(文献2:2011)によると、

  • [動物試験] 9匹のウサギの中のそれぞれ3つの眼の硝子体内にベンジルアルコール濃度0.0073%,0.022%,0.073%,0.222%,0.733%を注入し(全部で15個の眼)、対照の眼には生理食塩水を注入した。最も低い濃度では眼刺激性は観察されなかった。0.022%ベンジルアルコールでは3眼のうち1眼で一時的な網膜出血および白化がかんさつされたが、顕著な病理学的な変化は認められなかった。残りの濃度では、外側の受容体やセグメントの短縮や喪失を含む網膜の変化が観察された

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献3:2014)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた眼刺激性試験(OECD TG 405) で、中等度の刺激性(modera tely irrita ting) (SIDS (2008))に基づいて区分2(軽度~中等の眼刺激性)とした

JETOC 日本化学物質安全・情報センターの初期評価プロファイル(文献4:2001)によると、

  • ベンジルアルコールは眼に対して刺激性をもつ

と記載されています。

動物試験結果では共通して眼刺激性が認められているため、軽度~中等の眼刺激性があると考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid, and Sodium Benzoate」(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 110人の被検者の上腕または背中に誘導期間として0.65%ベンジルアルコールを含む2つのマスカラ処方物0.15gを24時間閉塞パッチで9箇所に3週間にわたって適用し、毎回パッチ除去後に処置部位を評価した。9回の誘導期間後に12~20日の無処置期間を経て未処置部位にチャレンジパッチを適用し、パッチ除去24および48時間後に部位を評価したところ、誘導期間およびチャレンジ期間のいずれにおいても皮膚反応は認められなかった(Hill Top Research,1997)
  • [ヒト試験] 25人のボランティアの前腕に誘導期間として10%ベンジルアルコールを含むワセリンを閉塞パッチ下で48時間適用を5回繰り返し、10日間の無処置期間を経て、被検者の背中にチャレンジパッチを適用した。パッチ除去48および72時間後に試験部位を評価したところ、誘導期間およびチャレンジ期間のいずれも反応は観察されなかった(Kligman,1970; Opdyke,1973)
  • [ヒト試験] アレルギー性接触皮膚炎の可能性のある5,202人の患者(517人が化粧品に対する過敏症、アレルギーまたは刺激の病歴)に化粧品の感作試験を実施したところ、ベンジルアルコールで48人(0.92%)の反応が認められた。化粧品アレルギー患者155人の中では2人の反応が認められた(Broeckx et al.,1987)

厚生労働省が運営する”職場のあんぜんサイト”の安全データシート(文献3:2014)によると、

  • データ不足により分類できない。なお、2261人のボランティアに対するパッチテストにおいて約1%に陽性反応がみられたが、他方、本研究の最大投与量(10%濃度、48時間×5回)のテストにおいても25人の被験者には感作反応が現れなかったとの報告がある

JETOC 日本化学物質安全・情報センターの初期評価プロファイル(文献4:2001)によると、

  • [動物試験] ベンジルアルコールは動物試験で陽性と陰性の結果を示した
  • [ヒト試験] ヒトのパッチテストにおけるベンジルアルコールの感作率はわずかに1%であった。数十年間の間にベンジルアルコールによる感作は作業員に認められていない

と記載されています。

ヒト試験では非常に陽性反応もありますが、1%未満の非常にわずかな反応のため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

非アレルギー性接触じんま疹について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid, and Sodium Benzoate」(文献1:2001)によると、

  • [ヒト試験] 5%ベンジルアルコールを含むワセリンを湿疹皮膚炎患者15人、化粧品過敏症16人、対照19人に解放試験および48時間パッチ試験を実施したところ、解放テストでは湿疹皮膚炎患者15人中7人(47%)、化粧品過敏症患者16人中10人(63%)、対照19人中15人(79%)にじんま疹がみられたが、パッチテストでは陽性反応は認められなかった(Emmons and Marks,1985)

と記載されています。

非アレルギー性接触じんま疹は、アレルギー性ではないため誰にでも起こりうるじんま疹ですが、初回の接触で症状が出る点がアレルギー性とは異なります。

ただし、配合濃度が高ければじんま疹を起こしやすくなりますが、配合濃度がきわめて低い場合はじんま疹(かぶれ)を起こしにくくなります。

そのため、上の配合濃度の範囲をみてもらえればわかるように、化粧品に使用される場合はきわめて微量で、販売前に安全性テストをクリアしているはずで、ベンジルアルコールによるじんま疹の報告がみあたらないことからも、非アレルギー性接触じんま疹が起こる可能性は低いと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ベンジルアルコール

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ベンジルアルコールは■(∗2)となっており、濃度によって見方は変わりますが、試験結果の皮膚刺激性などをみると妥当な判定だと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ベンジルアルコールはその他にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:その他

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2001)「Final Report on the Safety Assessment of Benzyl Alcohol, Benzoic Acid, and Sodium Benzoate」,<http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1080/10915810152630729> 2017年10月30日アクセス.
  2. “Cosmetic Ingredient Review”(2011)「Amended Final Safety Assessment of Benzyl Alcohol, and Benzoic Acid and its Salts and Benzyl Ester」,<https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR574.pdf> 2017年10月30日アクセス.
  3. “職場のあんぜんサイト”(2009)「安全データシート」,<http://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/100-51-6.html> 2017年10月30日アクセス.
  4. JETOC 日本化学物質安全・情報センター(2001)「初期評価プロファイル ベンゾアート類」,<http://www.jetoc.or.jp/safe/siap_top.html> 2017年10月30日アクセス.

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