ローヤルゼリーエキスの基本情報・配合目的・安全性

ローヤルゼリーエキス

化粧品表示名 ローヤルゼリーエキス
医薬部外品表示名 ローヤルゼリーエキス
INCI名 Royal Jelly Extract
配合目的 保湿 など

1. 基本情報

1.1. 定義

ミツバチ科ミツバチ属動物ミツバチ(学名:Apis mellifera 英名:Honey bee)の若い働きバチが咽頭腺および大腮腺から分泌する膠状物質から得られるエキスです[1]

1.2. 成分組成

ローヤルゼリーは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は一例として、

種類 成分名 構成比率(%)
タンパク質   36-42
糖類 フルクトース 55 33-39
グルコース 38
スクロース 3
マルトース  
アミノ酸 プロリン 55 0.8
リシン 25
グルタミン酸 7
アルギニン 4
その他  
脂肪酸 10-ヒドロキシデセン酸 32 10-15
10-ヒドロキシデカン酸 22
グルコン酸 24
その他  
ビタミン パントテン酸 30.3mg  
イノシトール 30.3mg
ナイアシン 15.2mg
リボフラビン 2.7mg
チアミン 1.8mg
アスコルビン酸 1.2mg
ピリドキシン 0.9mg
ビオチン 0.5mg
葉酸 0.1mg
アセチルコリン 95.8mg
ミネラル カリウム 77 3
カルシウム 9
ナトリウム 9
マグネシウム 2
亜鉛 2

などで構成されており[2]ハチミツと同比率の糖構成に加えて、遊離脂肪酸とくにローヤルゼリー酸ともよばれる10-ヒドロキシデセン酸の含有量が多いこと、ビタミンとしてパントテン酸の含有量が多いことなどが特徴となっています。

化粧品においてローヤルゼリー(生ローヤルゼリー)は、独特の香りとべたつきがあるため、一般にデセン酸を残したまま、ベタつきのものとである油分や刺激のものであるタンパク質を除去したローヤルゼリーエキスが使用されています[3a]

1.3. ミツバチにおける役割

女王蜂は、身体的には働きバチの約2-3倍の大きさとなり、寿命は約30-40倍(自然状態で2-3年)も長く、成熟すると自分の体重と同じ重さの卵(約1,500-2,000個)を年間通して毎日産み続けることが知られており、この驚異的なエネルギーは孵化してから一貫してタンパク質、ビタミン、ミネラルが豊富なローヤルゼリーのみを与えられることに起因していると考えられています(∗1)[3b]

∗1 働きバチも孵化してから3日はローヤルゼリーで飼育されますが、その後は女王蜂となる幼虫のみがローヤルゼリーを与えられ、働きバチとなる幼虫は花粉とハチミツが混ぜられた餌で育てられます。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品に配合される場合は、

  • 角層水分量増加による保湿作用
  • 配合目的についての補足

主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、日焼け止め製品、ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、洗顔石鹸、クレンジング製品、シャンプー製品、コンディショナー製品、トリートメント製品、アウトバストリートメント製品、ヘアカラー製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 角層水分量増加による保湿作用

角層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および天然保湿因子と水の関係について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[4][5]

角質層において水分を保持する働きをもつ天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)は低分子の水溶性物質であり、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸、ギ酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しています[6a]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[7a][6b]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[7b]

このような背景から、角層の水分量が低下している場合に角層水分量を増加することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2014年に山田養蜂場によって報告されたローヤルゼリーエキスのヒト角層の水分量に対する有用性検証によると、

– ヒト使用試験 –

16名の女性ボランティア(30-60歳代)の片方の腕にローヤルゼリーエキス配合溶液を、もう一方に未配合溶液をそれぞれ4週間塗布し、塗布開始前、2週間後および4週間後に角層の水分量を測定したところ、以下のグラフのように、

ローヤルゼリーエキスの角層水分量への影響

ローヤルゼリーエキス塗布部位は、継続して塗布することで角層水分量が増加していくことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており[8]、ローヤルゼリーエキスに角層水分量増加による保湿作用が認められています。

2.2. 配合目的についての補足

ローヤルゼリーには、皮膚組織の新陳代謝を促進する細胞賦活作用やシミや小ジワ防止作用があることが報告されていますが[3c][9]、ヒト試験データがみあたらないため、現時点では保留とし、詳細がわかり次第追補します。

また、ローヤルゼリーエキスの主要成分のひとつである10-ヒドロキシデセン酸には皮脂抑制作用が認められていますが[10]、ローヤルゼリーエキスとしての皮脂抑制作用に対する試験データがみあたらないため、現時点では保留とし、詳細がわかり次第追補します。

3. 安全性評価

ローヤルゼリーエキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

3.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「ローヤルゼリーエキス」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,1098.
  2. 松香 光夫(1998)「ミツバチ女王蜂にとってのローヤルゼリーの意義」ミツバチ科学(19)(1),1-8. hdl:11078/694.
  3. abc杉井 伸二(2002)「ローヤルゼリーの生成と有用性および化粧品への応用」Fragrance Journal(30)(3),55-58.
  4. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  5. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  6. ab武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  7. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  8. 織部 恵莉(2014)「肌状態の改善に関するミツバチ産品由来原料の効果」ファインケミカル(43)(11),19-26.
  9. 堤 龍彦, 他(2002)「ミツバチ由来原料の香粧品への応用」Fragrance Journal(30)(3),17-24.
  10. 北原 隆・武馬 吉則(2000)「皮脂抑制剤ヒドロキシ酸の開発」Fragrance Journal(28)(12),17-21.

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