シラカンバ樹液の基本情報・配合目的・安全性

シラカンバ樹液

化粧品表示名 シラカンバ樹液
慣用名 シラカバ樹液、白樺樹液
INCI名 Betula Platyphylla Japonica Juice
配合目的 保湿基剤 など

1. 基本情報

1.1. 定義

カバノキ科植物シラカンバ(学名:Betula platyphylla var. japonica 英名:Japanese White Birch)の幹に穴をあけて得られる溢出樹液です(∗1)[1][2a]

∗1 化粧品表示名において「シラカンバ樹液」は日本の白樺樹液を指し、「シラカバ樹液」はヨーロッパの白樺樹液を指します。また、一般的には「シラカバ」と称されますが、標準和名は「シラカンバ」です[3]

1.2. 成分組成

シラカンバ樹液の成分組成は、

成分 構成比率(%)
99.3
固形分(有機物・無機物) 0.7

このように報告されており[2b]、固形分(0.7%)の組成は、

種類 成分名 構成比率(%)
有機物 糖類 グルコース 48.0
フルクトース 41.0
ガラクトース 0.50
スクロース 0.60
有機酸 リンゴ酸 3.10
コハク酸 0.20
アミノ酸 シトルリン 0.15
グルタミン 0.10
グルタミン酸 0.05
その他 0.07
タンパク質 0.08
その他 3.35
無機物 ミネラル カルシウム(Ca) 微量
(合計2.7%)
カリウム(K)
マグネシウム(Mg)
その他

このように報告されています[2c][4]

ただし、個体によって著しい差異が認められるのに加えて、同一個体であっても採取年によって含量差が認められることが明らかになっています[5]

1.3. 分布と歴史

シラカンバ(学名:Betula platyphylla var. japonica)は、日本において本州中部地方の山地および高原、関東地方北部、東北地方から北海道まで、高冷地の落葉広葉樹林帯と亜高山帯下部に分布し、とくに冷涼な北海道では平地にも生え、そこら中にあるごく一般的な樹であり、その樹液はそのまま飲料として用いられています[2d][6]

1.4. 化粧品以外の主な用途

シラカンバ樹液の化粧品以外の主な用途としては、

分野 用途
食品 飲料として用いられています[2e]

これらの用途が報告されています。

2. 化粧品としての配合目的

化粧品およびに配合される場合は、

  • 保湿作用
  • 水性基剤

主にこれらの目的で、スキンケア製品、メイクアップ製品、化粧下地製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、マスク製品、洗顔料、シャンプー製品、コンディショナー製品、クレンジング製品、ボディソープ製品、ネイル製品など様々な製品に汎用されています。

以下は、化粧品として配合される目的に対する根拠です。

2.1. 保湿作用

保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

水分を保持する働きもつ天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造になっており、この構造が保持されることによって外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています[7][8]

角質層において水分を保持する働きをもつ天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)は低分子の水溶性物質であり、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸、ギ酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しています[9a]

また、角質層内の主な水分は、天然保湿因子(NMF)の分子に結合している結合水と水(液体)の形態をした自由水の2種類の状態で存在しており、以下の表のように、

角質層内の水の種類 定義
結合水 一次結合水 角質層の構成分子と強固に結合し、硬く乾燥しきった角質層の中にも存在する水です。
二次結合水 角質層の構成分子と非常に速やかに結合するものの、乾燥した状態でゆっくりと解離するような比較的弱い結合をしている水の分子のことをいい、温度や湿度など外部環境によって比較的容易に結合と解離を繰り返す可逆的な水です。
自由水 二次結合水の容量を超えて角質層が水を含んだ場合に液体の形で角質層内に存在する水であり、この量が一定量を超えると過水和となり、浸軟した(ふやけた)状態が観察されます。

それぞれこのような特徴を有しています[10a][9b]

角質層の柔軟性は、水分量10-20%の間で自然な柔軟性を示す一方で、水分量が10%以下になると角層のひび割れ、肌荒れが生じると考えられており、種々の原因により角質層の保湿機能が低下することによって水分量が低下すると、皮膚表面が乾燥して亀裂、落屑、鱗屑などを生じるようになることから、角層に含まれる水分量が皮膚表面の性状を決定する大きな要因として知られています[10b]

このような背景から、角層の水分量が低下している場合に潤いを付与することは、皮膚の乾燥、ひび割れ、肌荒れの予防や改善において重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2007年に新田ゼラチンによって報告されたシラカンバ樹液のヒト皮膚への有用性検証によると、

– ヒト使用試験 –

10名の女性被検者(20-50代)の顔に100%シラカンバ樹液および対照としてを1日2回2ヶ月にわたって塗布した。

2ヶ月後に「有効:使用前と比べて改善した」「やや有効:使用前と比べてやや改善した」「無効:使用前と比べて変化なし」の3段階で判定したところ、以下の表のように、

試料 保湿に対する評価(人)
有効 やや有効 無効
シラカンバ樹液 3 4 3
0 0 10

シラカンバ樹液は、水と比較して皮膚の保湿効果がみられた。

このような検証結果が明らかにされており[11]、シラカンバ樹液に保湿作用が認められています。

2.2. 水性基剤

水性基剤に関しては、シラカンバ樹液は一般に約99%がで構成されていながら、それ自体保湿作用を有することから、保湿などにアプローチする水性基剤として水と併用して使用されています。

3. 安全性評価

シラカンバ樹液の現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

3.1. 皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)

飲料としても用いられており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

3.2. 眼刺激性

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細不明です。

4. 参考文献

  1. 日本化粧品工業連合会(2013)「シラカンバ樹液」日本化粧品成分表示名称事典 第3版,521.
  2. abcd寺沢 実(1995)「樹液を飲む」化学と生物(33)(11),755-760. DOI:10.1271/kagakutoseibutsu1962.33.755.
  3. “植物和名ー学名インデックス YList”(2003)「シラカンバ」, 2020年5月3日アクセス.
  4. 姉帯 正樹, 他(2000)「シラカバ樹液成分の経時変化」北海道立衛生研究所報 第50集,41-46.
  5. 姉帯 正樹, 他(2001)「シラカバ樹液成分の経時変化(第2報)」北海道立衛生研究所報 第51集,39-42.
  6. 辻井 達一(1995)「シラカンバ」日本の樹木 都市化社会の生態誌,85-88.
  7. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  8. 田村 健夫・廣田 博(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  9. ab武村 俊之(1992)「保湿製剤の効用:角層の保湿機構」ファルマシア(28)(1),61-65. DOI:10.14894/faruawpsj.28.1_61.
  10. ab日光ケミカルズ株式会社(2006)「水」新化粧品原料ハンドブックⅠ,487-502.
  11. 新田ゼラチン株式会社(2007)「樹液配合化粧料」特開2007-320921.

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