水溶性プロテオグリカンとは…成分効果と毒性を解説

保湿
水溶性プロテオグリカン
[化粧品成分表示名称]
・水溶性プロテオグリカン

[慣用名]
・プロテオグリカン

サケ科サケ(学名:Oncorhynchus keta 英名:Salmon)の鼻軟骨(氷頭:ひず)から抽出して得られる、コアタンパク質に一本以上のグリコサミノグリカン(酸性ムコ多糖)が結合した水溶性の複合糖質です(文献1:1995)

プロテオ(proteo)とはプロテイン(protein:タンパク質)を意味する連結形であり、またグリカン(Glycan)とは糖がグリコシド結合によって繋がりあった一群の化合物(糖鎖)を指すことから、コアタンパク質に一本以上のグリカンが結合したものを表す意味で「プロテオグリカン」と呼ばれています。

プロテオグリカンは、ヒト生体内において主に皮下細胞の増殖や接着に関与していることが報告されており、また局在する部位によって以下のように、

プロテオグリカンの種類 コアタンパク質量
(kDa)
グリコサミノグリカン 糖鎖数 局在組織
アグリカン 208-220 コンドロイチン硫酸
ケラタン硫酸
100以上
30-60
軟骨
バーシカン 265 コンドロイチン硫酸 12-15 真皮層
パールカン 480 ヘパラン硫酸 3 基底膜
デコリン 36 デルマタン硫酸 1 真皮層

異なる種類のプロテオグリカンが報告されています(文献2:2010;文献3:1977;文献4:1998;文献5:2004;文献6:2017)

皮膚組織においては以下の図のように、

プロテオグリカンの解説図

真皮細胞外マトリックスの主な構成要素であり、バーシカンはコアタンパク質にヒアルロン酸結合活性があり、ヒアルロン酸を含んだきわめて大きな会合体をつくることで真皮の水分量を保持し(文献7:2012)、また低分子プロテオグリカンであるデコリンはコラーゲン線維の太さを調節する機能があります(文献8:1990)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ハンド&ボディケア製品、日焼け止め製品、洗顔料、シート&マスク製品などに使用されています。

経表皮水分量蒸散抑制による保湿作用

経表皮水分量蒸散抑制による保湿作用に関しては、まず前提知識として経表皮水分蒸散について解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

角質層の機能は、レンガとセメントで例えられることが多いですが、レンガとしての角質内部には天然保湿因子として複数のアミノ酸が存在しており、またセメントとしての細胞間脂質はセラミドコレステロール、遊離脂肪酸などで構成されています。

そしてこれら角質層の構成物がバランスよく存在することで健常なバリア機能が維持されます。

一方で、皮膚表面から水分が蒸散されることを経表皮水分蒸散(TEWL:Transepidermal Water Loss)といいますが、経表皮水分蒸散が大きくなるということは、バリア機能が低下していることを意味しており、経表皮水分蒸散は、角質層のバリア機能低下のバロメーターでもあります(文献9:2002)

一般的にTEWLは、年齢を重ねるごとに大きくなる傾向にあり、また表皮の新陳代謝異常が起こると、角質層の細胞間脂質に形状異常がみられるようになり、TEWLが大きくなることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下する結果となります(文献9:2002)

このような背景から、経表皮水分の蒸散を抑制することは健常な皮膚の維持において重要であると考えられます。

2012年にサンスターおよび国立大学法人弘前大学によって報告された紫外線(UVB)照射後の経表皮水分蒸散量に対する水溶性プロテオグリカンの影響検証によると、

20匹のヘアレスマウスを1群5匹に分け、それぞれに基剤のみ、0.5%ヒアルロン酸水溶液および0.5%プロテオグリカン水溶液(サケ鼻軟骨由来)0.1mLを塗布するとともにUVB照射をおこない、UVB照射から5週間後にTEWL(経表皮水分蒸散量)を測定したところ、以下のグラフのように、

紫外線照射後の経表皮水分蒸散量に対するプロテオグリカンの影響

サケ鼻軟骨由来0.5%プロテオグリカン水溶液は、皮膚への塗布により有意にTEWLを下げることがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献10:2016)、水溶性プロテオグリカンに経表皮水分量蒸散抑制による保湿作用が認められています。

効果・作用についての補足

皮膚塗布における水溶性プロテオグリカンの効果として、ほかにもヒト試験において皮膚弾力改善、シワ改善、色素沈着低下などが報告されています(文献11:2012)

一方で、化粧品成分である水溶性プロテオグリカンは10万以上と非常に分子量が大きく、また水溶性であることから皮膚に浸透しないと推測されるため、皮膚内に影響を与えることは難しいと考えられます。

乾燥改善による弾力の向上やシワ改善は可能性としては考えられますが、作用メカニズムが明らかになっていない(みつけられていない)ため、これらの作用・効果については保留とし、作用メカニズムがわかりしだい追補します。

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水溶性プロテオグリカンの安全性(刺激性・アレルギー)について

水溶性プロテオグリカンの現時点での安全性は、

  • 生体内に存在する成分
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

生体内に存在する成分であり、食品にも応用されていることから、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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水溶性プロテオグリカンは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

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文献一覧:

  1. 岩田 博夫(1995)「プロテオグリカン」高分子(44)(8),572.
  2. A Varki, et al(2010)「プロテオグリカンと硫酸化グリコサミノグリカン」コールドスプリングハーバー 糖鎖生物学 第2版,193-208.
  3. D Heinegård, et al(1977)「Distribution of keratan sulfate in cartilage proteoglycans.」The Journal of Biological Chemistry(252)(6),1971-1979.
  4. H Watanabe, et al(1998)「Roles of aggrecan, a large chondroitin sulfate proteoglycan, in cartilage structure and function.」Journal of Biochemistry(124)(4),687-693.
  5. 依田 浩子, 他(2004)「基底膜型ヘパラン硫酸プロテオグリカン・パールカンの上皮内配置:上皮内間質という新しい概念」新潟歯学会誌(34)(2),83-85.
  6. 多田羅 洋太(2017)「コラーゲンとの結合特異性にも関与する糖鎖のクラスター効果」生化学(89)(2),290-292.
  7. 室賀 絵里(2012)「加齢および創傷治癒に伴う皮膚真皮細胞外マトリックスの組成変化:バーシカン発現に注目して」Cosmetology(20),128-131.
  8. D C Brown, et al(1990)「Characteristics of the In Vitro Interaction of a Small Proteoglycan (PG Ⅱ) of Bovine Tendon with Type Ⅰ Collagen」Matrix(9)(6),468-478.
  9. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  10. 国立大学法人弘前大学(2016)「プロテオグリカン含有物」特開2016-128467.
  11. 弘前大学プロテオグリカンネットワークス(2012)「直接塗っても得られる肌のアンチエイジング効果」奇跡の新素材プロテオグリカン,148-154.

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