ローヤルゼリーエキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿 皮脂抑制
ローヤルゼリーエキス
[化粧品成分表示名称]
・ローヤルゼリーエキス

[医薬部外品表示名称]
・ローヤルゼリーエキス

ミツバチ科昆虫セイヨウミツバチ(学名:Apis mellifera 英名:honey)の若い働きバチが花粉やハチミツを食べ、体内で分解・合成し、咽頭腺および大腮腺から分泌する膠状物質から得られるエキスです。

ローヤルゼリーを化粧品に用いる場合は、生ローヤルゼリーではなくローヤルゼリーエキスを用いるのが一般的です。

これは、生ローヤルゼリーを化粧品に配合した場合、独特の香りとベタつきが残るためであり、このような理由から独自成分であるデセン酸を残したまま、ベタつきの原因である油分や刺激の原因となるタンパク質を除去したエキスが配合されています。

ローヤルゼリーエキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

種類 成分名称
糖類 グルコース、フルクトース、スクロース、オリゴ糖
アミノ酸系 リシンヒスチジンフェニルアラニンロイシンイソロイシン、メチオニン、バリントレオニン、トリプトファン、プロリンアルギニンチロシンアラニングリシングルタミン酸セリンアスパラギン酸、シスチン、γ-アミノ酪酸タウリン
ビタミン類 ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、パントテン酸、葉酸、ビオチン、ナイアシン、イノシトール、コリン
ミネラル ナトリウム、リン、鉄、カルシウム、カリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン
特有成分 10-ヒドロキシデセン酸(∗1)

∗1 10-ヒドロキシデセン酸は、ローヤルゼリー酸とも呼ばれています。

などで構成されています(文献2:2002;文献3:-)

ローヤルゼリーは働きバチによって分泌されますが、女王バチが産んだ幼虫(後の女王バチ)や成虫となった女王バチにのみに与えられる食物であり、このことから王乳(おうにゅう)とも呼ばれ、また別名をビーミルク(Bee Milk)ともいい、さらに中国では蜂乳や女王寒天質とも呼ばれています。

ローヤルゼリー(Royal Jelly)という名は、王様のゼリーという意味で、17世紀にオランダのスワンメルダムという学者が命名し、18世紀末にスイス出身のスワンメルダムの著書「蜜蜂に関する新観察」によって世界中に広く知られるようになりました(文献1:2011)

ローヤルゼリーの有用性に関しては、創傷治癒作用、脂質低下作用、抗菌作用、老化防止作用、慢性疾患に対する作用など、日本および欧米諸国において臨床試験について多くの研究報告例が報告されています。

ただし、基本的には生命の根源を司る間脳(生命中枢)に作用して、自律神経系の調節作用、細胞の賦活作用や抗体の産生能など生体の防御機構に直接的あるいは間接的に関与していると考えられています(文献2:2002)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、ハチミツをコンセプトにした製品、スキンケア化粧品、リップ製品、ハンド&ボディケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、ヘアケア製品、頭皮ケア製品、シート&マスク製品、ネイル製品など様々な製品に使用されています。

角層水分量増加による保湿作用

角層水分量増加による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献4:2002;文献5:1990)

2014年に山田養蜂場によって報告されたローヤルゼリーエキスの保湿効果検証によると、

16人の女性ボランティア(30-60歳代)を対象に、一方の腕にローヤルゼリーエキス配合溶液を、もう一方には未配合溶液を4週間塗布し、塗布開始前、2週間後および4週間後に角層の水分量を測定したところ、以下のグラフのように、

ローヤルゼリーエキス塗布による角層水分量の変化

ローヤルゼリーエキス塗布部位は、角層水分量が増加していたことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2014)、ローヤルゼリーエキスに角層水分量増加による保湿作用が認められています。

皮脂腺の脂質合成低下による皮脂抑制作用

皮脂腺の脂質合成低下による皮脂抑制作用に関しては、まず前提知識として皮脂の構造と役割について解説します。

以下の皮膚の最外層である角質層の構造図および皮脂の流れ図をみてもらえるとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮脂の流れ

皮脂とは、狭義には皮脂腺で合成された脂質が毛包を通って皮膚表面に分泌される脂肪のことをいい、主にスクアレン、ワックス(ロウ)、脂肪酸系物質(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、遊離脂肪酸)(∗2)で構成されています(文献7:2002;文献8:2002)

∗2 遊離脂肪酸は、オレイン酸ステアリン酸パルミチン酸などです。

また、表皮細胞(角化細胞)は分化の過程においてコレステロール、コレステロールエステルなどの表皮脂質を産生し、この表皮脂質と皮脂腺由来の皮脂が皮膚表面で混ざったものを皮表脂質といいます(文献7:2002;文献8:2002)

このような背景から皮表脂質の組成は、ヒトによって含有量が異なり、また同じヒトであっても日によって変動がありますが、

由来 成分 含量(%) 含量範囲(%)
表皮細胞
(角化細胞)
コレステリルエステル 2.5 1.5 – 2.6
コレステロール 1.5 1.2 – 2.3
皮脂腺 スクアレン 10 10.1 – 13.9
ワックス 22 22.6 – 29.5
トリグリセリド 25 19.5 – 49.4
モノグリセリド、ジグリセリド 10 2.3 – 4.3
(ジグリセリドのみ)
遊離脂肪酸 25 7.9 – 39.0

このように報告されており(文献9:1990;文献10:1969)、皮脂腺由来の脂肪が約90%を占めることから、広義には皮表脂質も皮脂と呼ばれています。

皮表脂質は、皮膚表面で汗と混合(乳化)して薄い脂肪の膜をつくり、皮表脂質膜(皮脂膜)を形成することで、

  • 皮膚や毛髪にうるおいやなめらかさを付与する
  • 外界の刺激から皮膚を保護
  • 弱酸性を示し外部の影響などによってアルカリ性となった皮膚を元のpH値に戻す緩衝作用
  • 有害な細菌の増殖を抑制

このような生理的役割を担っています(文献11:1988)

しかし、皮脂の分泌が過剰な場合は、脂性肌という主観的な認識に結びつき、肌のテカリやベタつきといった皮脂由来の直接的な肌の悩みだけでなく、皮膚表面の洗浄作用が低下し、ほこりや雑菌が付着、繁殖しやすくなり、脂漏性湿疹、ざ瘡(ニキビ)発症の原因となります(文献7:2002;文献12:1986;文献13:2016)

さらに、過剰な皮脂は毛包周辺の角層細胞とともに角栓を形成し、毛穴の開大を招いたり、皮膚表面上の皮脂が紫外線により酸化し、この過酸化脂質が角層細胞にダメージを与え、バリア機能を低下させるなどの悪影響をもたらすことが知られています(文献13:2016)

このような背景から、過剰な皮脂を抑制することは、皮膚を健常に保つ上で重要であると考えられます。

1988年にポーラ横浜研究所によって報告された皮脂に対するローヤルゼリーエキスに含まれる特有成分であるヒドロキシデセン酸の影響検証によると、

アンドロゲン刺激としてテストステロンを皮下注射した雌ハムスターの耳介に、10-ヒドロキシデセン酸を塗布したところ、未塗布部位と比較して皮脂腺肥大化の抑制が認められた。

さらに、ハムスター耳介皮膚片を用いて¹⁴C酢酸を基質として測定したin vitro脂質生合成評価系において、10-ヒドロキシデセン酸添加による脂質合成低下を確認した。

これらの結果から、ヒドロキシデセン酸は皮脂腺での脂質合成阻害作用を有しており、これがローヤルゼリーの皮脂腺抑制作用を担うものであることが示唆された。

このような検証結果が明らかにされており(文献14:1988)、ローヤルゼリーエキスのヒドロキシデセン酸に皮脂腺の脂質合成低下による皮脂抑制作用が認められています。

また、2000年に花王によって報告された皮脂に対する10-ヒドロキシデセン酸の影響検証によると、

アンドロゲン刺激としてテストステロンを皮下注射した雌ハムスターの耳介およびテストステロンを皮下注射していない耳介に10%10-ヒドロキシデセン酸溶液を、どちらの雌ハムスターも他方の耳介には基剤のみを2週間塗布して皮膚片を採取し、¹⁴C酢酸を基質として皮脂腺での脂質合成能を測定したところ、以下の表のように、

試料 アンドロゲン刺激雌ハムスター耳介
(テストステロン100ppm同時塗布系)
雄ハムスター耳介
10-ヒドロキシデセン酸 81.2 ± 6.54 98.6 ± 7.94

テストステロンを塗布しアンドロゲン刺激した耳介において、10-ヒドロキシデセン酸の塗布は有意な脂質合成の抑制が認められた。

一方でテストステロンを塗布せずアンドロゲン刺激していない耳介において、10-ヒドロキシデセン酸の塗布はほとんど脂質合成の抑制が認められなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献15:2000)、ローヤルゼリーエキス(ヒドロキシデセン酸を含む)に皮脂腺の脂質合成低下による皮脂抑制作用が認められています。

ただし、ヒドロキシデセン酸の脂質合成抑制作用は、男性ホルモンであるテストステロンが過剰に分泌された場合にのみ有効である可能性が示唆されています。

また、10-ヒドロキシデセン酸の脂質合成抑制作用は濃度依存的であり、10%濃度では有意な作用が認められていますが、実際の製品においてローヤルゼリーエキスとして低濃度で配合される場合は、ほとんど効果を示さない可能性が考えられます。

効果・作用についての補足

ローヤルゼリーの特有成分であるヒドロキシデセン酸には、チロシナーゼ活性阻害作用、線維芽細胞増殖作用があることが報告されていますが(文献2:2002;文献16:2002)、ヒトでの有効性試験データがみあたらないため、現時点では保留とし、詳細がわかり次第追補します。

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ローヤルゼリーエキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ローヤルゼリーエキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

皮膚刺激および皮膚感作(アレルギー)の原因となるタンパク質を除去しており、また20年以上の使用実績の中で皮膚刺激性および感作性の報告もみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

ローヤルゼリーエキスは保湿成分、皮脂抑制成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 皮脂抑制成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 鈴木 洋(2011)「ローヤルゼリー」カラー版健康食品・サプリメントの事典,205.
  2. 杉井 伸二(2002)「ローヤルゼリーの生成と有用性および化粧品への応用」Fragrance Journal(30)(3),55-58.
  3. “みつばち健康科学研究所”(-)「ローヤルゼリーの成分」, <https://www.bee-lab.jp/megumi/royal/treasury.html> 2020年6月8日アクセス.
  4. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  5. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  6. 織部 恵莉(2014)「肌状態の改善に関するミツバチ産品由来原料の効果」ファインケミカル(43)(11),19-26.
  7. 朝田 康夫(2002)「皮脂腺の機能と構造」美容皮膚科学事典,38-45.
  8. 朝田 康夫(2002)「皮表脂質の組成とその由来」美容皮膚科学事典,45-48.
  9. 鈴木 敏幸(1990)「スキンケアと界面化学」表面科学(11)(4),260-264.
  10. D.T. Downing, et al(1969)「Variability in the Chemical Composition of Human Skin Surface Lipids」Journal of Investigative Dermatology(53)(5),322-327.
  11. 松尾 聿朗, 他(1988)「皮表脂質の生理的役割」油化学(37)(10),827-831
  12. D.T. Downing, et al(1986)「Essential fatty acids and acne」Journal of the American Academy of Dermatology,(14)(2)221-225.
  13. 冨田 秀太(2016)「マイクロバイオームとニキビ」日本香粧品学会誌(40)(2),97-102.
  14. 前田 哲夫, 他(1988)「ローヤルゼリーおよび10-ヒドロキシデセン酸のハムスター耳介脂腺におよぼす作用」日本皮膚科学会雑誌(98)(4),469.
  15. 北原 隆, 他(2000)「皮脂抑制剤ヒドロキシ酸の開発」Fragrance Journal(28)(12),17-21.
  16. 堤 龍彦, 他(2002)「ミツバチ由来原料の香粧品への応用」Fragrance Journal(30)(3),17-24.

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