ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 バリア機能
no-image
[化粧品成分表示名称]
・ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド

[医薬部外品表示名称]
・N-(ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシエチルヘキサデカナミド

セラミド2と類似の構造を持つように1987年に花王株式会社が開発したセラミド機能成分(合成セラミド)です。

花王株式会社の説明によると、

ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドは、以下のキュレル製品に配合:乳液、潤浸保湿フェイスクリーム、リップケア クリーム、潤浸保湿 美容液、アイゾーン美容液、入浴剤、ローション、ジェルローション、クリーム、ハンドクリーム、皮脂トラブルケア 保湿ジェル、美白乳液、美白クリーム、エイジングケアシリーズ、UVミルク、UVクリーム、UVローション、UVエッセンス。

リップケア クリームほんのり色づくタイプ、頭皮保湿ローション、BBミルク、BBクリームではセチルPGヒドロキシエチルパルミタミドと表記。

と記載されており(文献1:2018)セチルPGヒドロキシエチルパルミタミドとヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドは同一のセラミド機能成分であり、製品によって表記を変えているようです。

ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドは、合成セラミドまたは疑似セラミドのひとつですが、まずセラミドについて簡単に解説しておくと、以下の肌図をみるとわかるように、

セラミド(細胞間脂質)

肌の一番上にある表皮を形成している角質と角質の間を埋めている細胞間脂質の約50%を占める成分がセラミドで、細胞間脂質(セラミド)が満たされていることで、肌のバリア機能が正常に機能し、必要以上の水分蒸発を防ぎ、一定の水分を保持し、外界の刺激などから肌を保護する役割を果たしています。

セラミドはバリア機能の維持や表皮水分の保持の要ともいえる成分ですが、加齢とともに産生量が減少したり、乾燥肌、湿疹、アトピー性皮膚炎などによる落屑や皮膚を掻いたり擦ることで物理的にバリア機能が低下することで減少し、セラミドを含む細胞間脂質が減少すると、バリア機能はさらに不安定になり、水分蒸発量が増え、表皮環境に悪循環を招きます。

そういった状況の改善および防止対策としてセラミドによる効果は十分に認められていますが、ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドが開発された1987年には、ヒトと同じ天然のセラミドはあまりにも高価だったため、天然セラミドのひとつであるセラミド2と同様の構造で同様の効果が期待でき、なおかつ低価格で安定した配合が可能な合成セラミドとしてヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドが開発されました。

花王株式会社が実施したヒト型セラミド(天然セラミド)とヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドの保湿効果比較試験では、13人の被検者を対象にそれぞれ1%配合したクリームを1日2回、3日間連続で使用後にコンダクタンス(∗1)を計測したところ、ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドのほうがやや水分保持機能が高いことが明らかとなっています(文献2:2004)

∗1 コンダクタンスは皮膚に電気を流した場合の抵抗を表し、角層水分量が多いと電気が流れやすくなるため、コンダクタンスが高値になります。

ヒト型セラミドおよび合成セラミドの水分保持能改善効果比較

合成セラミドよりもヒト型セラミドのほうが高価なので保湿効果も高いと思いがちですが、少なくともセラミド2とヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドの比較では合成セラミドは天然セラミドと同等または同等以上の効果が明らかとなっています。

ただし、ヒト型セラミドは複数を併用することで相乗的に保湿効果を高めることもできるので、必ずしも合成セラミドのほうが効果が高いというわけではなく、あくまでも同じ濃度で天然セラミドであるセラミド2とヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドでは合成セラミドの効果が同等以上だったということです。

また、花王株式会社では、アトピー性皮膚炎患者を対象にした合成セラミドの有用性の研究も多く、

  • アトピー性皮膚炎患者29例の前腕皮膚に8%ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド配合クリームを適用し、水分保持能および経皮水分喪失量(TEWL)が改善するかどうかをヘパリン類似物質を含む軟膏と比較したところ、角層機能を含む総合効果判定において29例のうち25例(86%)に有用性を認めた。TEWLは有意差を認めなかったが、角層内水分量(コンダクタンス)は有意差をもって増加した。ヘパリン類似物質を含む軟膏との比較ではTEWLとコンダクタンスともに有意差を認めなかったが、皮膚所見を含む有用性においては合成セラミドクリームが有意に有用であった。副作用として1例に局所的発赤が認められたが外用を中止とともに改善した。以上より8%ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド配合クリームはアトピー性皮膚炎の乾燥皮膚に対し有用性の高い外用剤と考えられた(文献4:1999)
  • アトピー性皮膚炎患者19例の前腕皮膚に8%ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド配合クリームを適用し、改善効果を10%尿素クリームを対照として比較したところ、合成セラミド配合クリーム使用群は19例のうち13例(68%)に有用性を認め、対照クリームとの比較でも有意な差を持って有用であった。さらに試験開始前にダニの貼付試験で陽性であった4例に合成セラミド配合クリ-ムを4週間使用してもらった後に再度貼付試験を実施したところ、4例すべてが陰性であり、バリアー機能が向上したと考えられた。以上より合成セラミドを8%配合したクリームは、アトピー性皮膚炎患者皮膚に対する日常的なスキンケア剤として有用な製剤であると考えられた(文献5:2001)
  • 2003年1月から4月までの4ヶ月間に神戸大学医学部附属病院皮膚科外来を受診したアトピー性皮膚炎、光線過敏症患者およびケミカルピーリング治療中患者47例に対し、「キュレル®UVミルク」と「キュレル®UVクリーム」の使用試験を実施した。本剤はいずれも紫外線吸収剤を含まず、紫外線散乱剤として微粒子酸化チタンを、角層のバリア機能および保湿機能改善剤として合成擬似セラミドを配合したSPF25、PA++のサンスクリーン剤である。4週間以上の使用試験において、46例中45例(98%)に有用性を認めた。また副作用例はなく、有害事象例として1例に刺激感等をみたが、本剤使用との因果関係は不明であった。これらの結果から、本試験品はバリア機能が低下し乾燥した皮膚に対するサンスクリーン剤として安全かつ有用な製剤であると考えられた(文献6:2004)

それぞれの試験において共通してアトピー性皮膚炎に対する有用性と安全性が認められています。

スポンサーリンク

ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドの現時点での安全性は、化学構造はセラミドに類似しており、また1987年からの使用実績があり、乾燥肌およびアトピー性皮膚炎患者においても皮膚刺激はほとんどなく、眼刺激性はデータ不足のため詳細不明ですが、皮膚感作(アレルギー)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

化学構造はセラミドに類似しており、また1987年からの使用実績があり、上記に記載した有用性試験において、アトピー性皮膚炎患者に適用しても皮膚刺激は生じていないため、皮膚刺激はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全データはみあたらないため、データ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

試験結果や安全データはみあたりませんが、化学構造はセラミドに類似しており、1987年からの使用実績があり、皮膚感作(アレルギー)の報告はないため、皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミド 掲載なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドは掲載なし(∗1)となっていますが、化学構造はセラミドに類似しており、1987年からの使用実績の中でアトピー背皮膚炎患者に適用しても刺激およびアレルギーなどの報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ヘキサデシロキシPGヒドロキシエチルヘキサデカナミドは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “花王株式会社”(2018)「キュレルの歩みとこだわり」, <http://www.kao.co.jp/curel/concept/> 2018年3月14日アクセス.
  2. 岡田 譲二,山本 弓子,長澤 英広(2004)「セラミド類似の構造をもつ合成セラミドの開発と化粧品への応用」Fragrance Journal(32)(11),p35-41.
  3. 芋川玄爾(1990)「角質細胞間脂質の機能とその応用」Fragrance Journal(4)(26),p42-50.
  4. 中村 哲史,本間 大,柏木 孝之,坂井 博之,橋本 喜夫,飯塚 一(1999)「アトピー性皮膚炎に対する合成疑似セラミドクリームの有用性及び安全性の検討」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/61/5/61_5_671/_article/-char/ja/> 2018年3月14日アクセス.
  5. 水谷 仁,高橋 眞智子,清水 正之,刈屋 完,佐藤 広隆,芋川 玄爾(2001)「アトピー性皮膚炎患者に対する合成擬似セラミド含有クリームの有用性の検討」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/63/4/63_4_457/_article/-char/ja/> 2018年3月14日アクセス.
  6. 船坂 陽子,尾藤 利憲,山本 麻由,錦織 千佳子,市橋 正光,中村 正,石田 耕一,佐藤 広隆,芋川 玄爾(2004)「「キュレル®UVミルク」および「キュレル®UVクリーム」の低バリア機能皮膚に対する使用経験」, <https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch/3/1/3_1_62/_article/-char/ja/> 2018年3月14日アクセス.

スポンサーリンク

TOPへ