レイシ柄エキス(レイシエキス)とは…成分効果と毒性を解説





・レイシ柄エキス、レイシエキス
[医薬部外品表示名称]
・レイシエキス
サルノコシカケ科植物マンネンタケ(学名:Aspalathus linearis 英名:Rooibos)の子実体から水、エタノール、BG(1,3-ブチレングリコール)で抽出して得られるエキスです。
レイシ柄エキスは天然成分であることから、国・地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、
- 多糖類:β-グルカン
- アミノ酸
- ビタミン類
- トリテルペノイド:ガノデリン酸
などで構成されています(文献1:2006;文献2:2011;文献4:1984)。
マンネンタケは霊芝(レイシ)と呼ばれており、中国の各地や日本の各地に分布する担子菌類で、主に広葉樹の切り株や枯木の根元に生える有茎で硬いキノコです。
中国最古の薬学書である「神農本草経」では、最高位の上薬として記載され、また芝草(キノコ)を紫芝・赤芝・青芝・黄芝・白芝・黒芝の六芝に区別し、「久しく食すれば身を軽くして老わず、年を延ばして神仙となる」と記され、不老長寿の薬として珍重されてきました。
かつては入手が困難で非常に高価な霊薬とされていましたが、1970年代に日本で人工栽培に成功して量産が可能となり、現在では中国や韓国でも人工栽培されています。
霊芝には多糖類のβ-グルカン、苦味成分のガノデリン酸、各種アミノ酸などが含まれており、薬理としては、抗腫瘍、血糖降下、緩和な血圧降下、高脂血症改善、肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー、血小板凝集抑制作用などが報告されています(文献2:2011;文献5:1986)。
漢方では、強壮・安神・健胃・止咳の効能があり、体力低下や慢性疲労、不眠症、老人性気管支炎、気管支喘息、胃腸虚弱などに用いられます(文献2:2011)。
化粧品に配合される場合は、
- 保湿作用
- 抗炎症作用
- 抗アレルギー作用
- AFF-4発現亢進による抗白髪作用
これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、頭皮ケア製品、ヘアケア製品、洗顔料、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献5:1986;文献6:1986;文献7:2008;文献8:2012)。
AFF-4発現亢進による抗白髪作用
AFF-4発現亢進による抗白髪作用に関しては、まず前提知識としてAFF-4遺伝子について解説します。
以下の毛髪の構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、
毛髪の黒化は、色素細胞であるメラノサイトの活性によって行われていますが、メラノサイトに隣接する毛母細胞にはメラノサイトを活性化する回路が存在し、それに関わる遺伝子がAFF-4であり、AFF-4遺伝子を活性化することで結果的にメラノサイトを活性化させ、色を復活させることが期待できると考えられます(文献8:2012)。
2012年に資生堂によって公開されたAFF-4を指標とした抗白髪剤のスクリーニング方法 によると、
白髪の2割はメラノサイトが残っているがメラニンをつくっていない状態で、この場合はメラノサイトを活性化することができれば色を復活させることができると考え、メラノサイト活性化に関与するAFF-4遺伝子を発見した。
そこで、AFF-4遺伝子を活性化する生薬を探索する中で、ヒト毛包上皮系細胞におけるレイシエキス(エキス乾燥残分として0.5ppm)の影響を検討したところ、以下のグラフのように、
レイシエキスは添加後1時間から2時間の間でAFF-4の発現が有意に亢進し、以降4時間までは発現が亢進し続けた。
以上よりレイシエキスはヒト毛包上皮系細胞においてAFF-4発現亢進効果が確認された。
このような検証結果が明らかにされており(文献8:2012)、レイシエキスにAFF-4発現亢進による抗白髪作用が認められています。
レイシ柄エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について
ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について
化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
眼刺激性について
詳細な試験データはみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
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レイシ柄エキスは保湿成分、抗炎症成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
- 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,386.
- 鈴木 洋(2011)「霊芝(れいし)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,487-488.
- 鈴木 一成(2012)「レイシ(霊芝)エキス(マンネンタケエキス)」化粧品成分用語事典2012,354-355.
- 水野 卓, 他(1984)「マンネンタケ(霊芝)の水溶性多糖類の分画,構造,抗腫瘍活性について」日本農芸化学会誌(58)(9),871-880.
- 野上 真里, 他(1986)「霊芝 (Canoderma lucidum, 子実体) の研究 (第6報)」YAKUGAKU ZASSHI(106)(7),594-599.
- 野上 真里, 他(1986)「霊芝 (Canoderma lucidum, 子実体) の研究 (第7報)」YAKUGAKU ZASSHI(106)(7),600-604.
- 山田 佳史, 他(2008)「185 霊芝の抗アレルギー作用についての検討」アレルギー(57)(9-10),1493.
- 岩渕 徳郎, 他(2012)「AFF-4を指標とした抗白髪剤のスクリーニング方法」特開2012-531185.
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