水溶性コラーゲンとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 刺激緩和
水溶性コラーゲン
[化粧品成分表示名称]
・水溶性コラーゲン

[医薬部外品表示名称]
・水溶性コラーゲン液(1)、水溶性コラーゲン液(3)、水溶性コラーゲン液(4)

[慣用名]
・アテロコラーゲン

生体組織(∗1)より抽出・精製して得られる繊維状タンパク質であり、分子量平均約30万のアテロコラーゲン(∗2)です。

∗1 2001年に国内でもBSE(狂牛病)が問題視される中でウシ由来コラーゲンの使用が控えられ、代替としてブタ、鳥類、魚介類などのコラーゲンが使用されてきています。これらの代替生物は、熱変性温度(安定性)には多少の差異はありますが、効果に有意な違いはなく、全体的な理解として由来の差異は無視して解説します。

∗2 アテロコラーゲンの解説は長くなるので後述します。

生体内においては、哺乳動物の皮膚、腱、骨、血管などの結合組織の膠原線維を構成している繊維状タンパク質として多量に存在しており、皮膚においては、以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

主に真皮において線維芽細胞から合成され、水分を多量に保持したヒアルロン酸コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類(グリコサミノグルカン)を維持・保護・支持し、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支える膠質状の性質を持つ枠組みとして規則的に配列しています(文献2:2002)

この生体内のコラーゲンは、組織の中では分子間に架橋(∗3)が形成され、不溶化されているため、コラーゲンが溶解する酸性条件下であっても僅かなコラーゲン(可溶化コラーゲン)しか得られません。

∗3 架橋とは、主に高分子において分子間に橋を架けたような結合をつくることで、物理的、化学的性質を変化させる反応のことです。

そのため、化粧品成分としての水溶性コラーゲンは、以下のアテロコラーゲンの構造図のように、

アテロコラーゲンの構造図

生体内コラーゲンの分子間架橋の形成部位かつコラーゲン分子両端の非らせん部でもあるテロペプチドを、タンパク質分解酵素であるペプシンで分解処理することで、可溶化コラーゲン(アテロコラーゲン)として用いられています(文献3:2001)

またコラーゲンは、分子量10万のポリペプチドが3本寄り集まった三重らせん構造で構成されており、各ポリペプチドはアミノ酸組成として、

グリシン – アミノ酸X – アミノ酸Y

このように3種のアミノ酸の繰り返し構造を持っています。

このアミノ酸の繰り返し構造は、3個ごとにグリシンが含まれているため、配列としては、

グリシン-アミノ酸X-アミノ酸Y-グリシン-アミノ酸X-アミノ酸Y-グリシン-アミノ酸X-アミノ酸Y

となり、また人体においてはアミノ酸Xにプロリンが、アミノ酸Yにはヒドロキシプロリンが選択的に現れるため(文献4:2010)、強固で弾力性に富むコラーゲン繊維を形成しています。

この3種のアミノ酸構造かつ3個のうちひとつはグリシンが含まれている構造は、他の動物種でも同様であり、ヒトコラーゲンと構造的な違いが少ないため、抗原性(∗4)が低いのですが、生体内コラーゲン(不溶化コラーゲン)ではテロペプチドを有しており、このテロペプチドは三重らせん構造を持たないため、コラーゲン分子の主要な抗原部位となっています(文献3:2001)

∗4 抗原性とはアレルギーを起こす性質のことをいいます。

つまり、ペプシン酵素処理を行いテロペプチドを切断したアテロコラーゲンは、水溶性になるだけでなく、抗原性も低くなり安全性の高いコラーゲンとなっています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、ヘアケア製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献5:2001,文献6:2002;文献7:1985)

水分蒸散抑制および水分保持による保湿作用

水分蒸散抑制および水分保持による保湿作用に関しては、2002年にテクノーブルライフサイエンス研究所によって報告された水溶性コラーゲンの保湿性検証によると、

ヒト前腕内側部に0.3%ヒアルロン酸Na、魚由来水溶性コラーゲン、キンメダイ由来コラーゲン5%BG溶液または比較対照として無添加5%BG溶液を塗布し、拭き取った後の角層水分量(角層コンダクタンスが高いほど水分量が多い)の変化を測定したところ、以下のグラフのように、

水溶性コラーゲンの保湿効果

キンメダイ由来水溶性コラーゲンはヒアルロン酸Naと同等の角層水分量を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2002)、水溶性コラーゲンに水分蒸散抑制および水分保持による保湿作用が認められています。

ただし、水溶性コラーゲンおよびヒアルロン酸Naは高分子であり、ほとんど皮膚に浸透することがないため、水溶性コラーゲンの塗布による角層水分量の変化は、皮表に留まることによる水分蒸散抑制および吸湿性によるものであると考えられます。

1985年にポーラ化成工業によって報告された保湿剤の保湿性検証によると、

ヒアルロン酸Naの吸湿性および保水性を検討した。

吸湿性は、相対湿度80%(20℃)に調整したデシケーター中に乾燥した各試料(ヒアルロン酸Na,水溶性コラーゲン,グリセリン,PEG-75,PCA-Naおよびソルビトール)1gを放置し、1日単位で5日までの長時間の吸湿量を測定したところ、以下のグラフのように、

各保湿剤の長時間における吸湿性

水溶性コラーゲンは、長時間においてPCA-Naやグリセリンの吸湿性にはおよばないが、中等の吸湿性が示された。

次に保湿性試験として、各試料1gに0.1gの水を加えたものを相対湿度0-80%中に24時間放置し、測定重量の変動より保湿量を求めたところ、以下のグラフのように、

各試料の保水性

水溶性コラーゲンの保水性は、PCA-Naやグリセリンほど大きくはなく、また比較的湿度の影響を受けにくいと考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:1985)、水溶性コラーゲンに水分蒸散抑制および水分保持による保湿作用が認められています。

ラウリル硫酸Naに対する刺激緩和作用

ラウリル硫酸Naに対する刺激緩和作用に関しては、2001年に川研ファインケミカルによって報告された安全性試験によると、

1%ラウリル硫酸Na溶液に0%-0.2%のブタ皮由来水溶性コラーゲンを添加したときのモルモットにより皮膚一次刺激性の変化を調べたところ、以下のグラフのように、

1%ラウリル硫酸Na溶液にコラーゲンを添加したときの刺激評価点

水溶性コラーゲンの添加濃度が高くなるにつれて皮膚刺激値が下がるという結果が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2001)、水溶性コラーゲンにラウリル硫酸Naに対する刺激緩和作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

水溶性コラーゲンの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

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水溶性コラーゲンの安全性(刺激性・アレルギー)について

水溶性コラーゲンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 目刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2017)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデルを用いて大西洋タラ由来水溶性コラーゲン25,50,75,100または125μLを処理し、皮膚刺激性を評価したところ、非刺激性と判断された(Active Concepts,2015)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデルを用いて牛由来100%水溶性コラーゲンを処理し、皮膚刺激性を評価したところ、非刺激性と判断された(Active Concepts,2015)

川研ファインケミカルの安全性試験データ(文献5:2001)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてブタ皮由来水溶性コラーゲンの皮膚一次刺激性をDraize法に基づいて試験・評価したところ、無刺激であった
  • [動物試験] モルモットを用いてブタ皮由来水溶性コラーゲンの皮膚感作性を評価したところ、陰性であった
  • [ヒト試験] 100%ブタ皮由来水溶性コラーゲンに対するRIPT(累積刺激および感作試験)を実施したところ、無刺激であった

テクノーブルライフサイエンス研究所の安全性試験データ(文献6:2002)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギを用いてキンメダイ由来水溶性コラーゲンの皮膚一次刺激性をDraize法に基づいて試験・評価したところ、刺激性なしであった
  • [動物試験] 5匹のモルモット4群を用いてキンメダイ由来水溶性コラーゲンの皮膚感作性を評価したところ、陰性であった
  • [ヒト試験] 40人の被検者の背部にキンメダイ由来水溶性コラーゲンに対するRIPT(累積刺激および感作試験)を実施したところ、無刺激であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2017)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデルを用いて大西洋タラ由来水溶性コラーゲン25,50,75,100または125μLを処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、最小限の眼刺激性と判断された(Active Concepts,2015)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデルを用いて牛由来100%水溶性コラーゲンを処理し、眼粘膜刺激性を評価したところ、非刺激性と判断された(Active Concepts,2015)

川研ファインケミカルの安全性試験データ(文献5:2001)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いてブタ皮由来水溶性コラーゲンの眼粘膜刺激性を評価したところ、最小の刺激であった

テクノーブルライフサイエンス研究所の安全性試験データ(文献6:2002)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギを用いてキンメダイ由来水溶性コラーゲンの眼粘膜刺激性を評価したところ、刺激性なしであった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激性または最小限の眼刺激性と報告されているため、一般的に眼刺激性は非刺激または最小限の眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

∗∗∗

水溶性コラーゲンは保湿成分、抗炎症成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 抗炎症成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Skin and Connective Tissue-Derived Proteins and Peptides as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  3. 伊藤 博, 他(2001)「コラーゲンの安全性確保について」Fragarance Journal(29)(11),47-51.
  4. 奥山 健二, 他(2010)「コラーゲンの分子構造・高次構造」高分子論文集(67)(4),229-247.
  5. 鈴木 邦夫(2001)「豚皮由来コラーゲンについて」Fragarance Journal(29)(11),59-64.
  6. 大澤 豊, 他(2002)「海洋性コラーゲンの開発とその特性」Fragarance Journal(30)(6),113-118.
  7. 外岡 憲明(1985)「ヒアルロン酸ナトリウムの保湿性」皮膚(27)(2),296-302.

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