尿素とは…成分効果と毒性を解説

保湿 浸透
尿素
[化粧品成分表示名称]
・尿素

[医薬部外品表示名称]
・尿素

哺乳類の尿中に含まれる化学式CH4N2Oかつ分子量60.06の窒素化合物です(文献2:1994)

医薬品分野において古くから保湿剤として尿素軟膏などに用いられています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンド&フットケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、ネイルケア製品、ヘアカラー製品などに使用されています。

水分量増加および柔軟持続性向上による保湿作用

水分量増加および柔軟持続性向上による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割および角質細胞における乳酸Naの役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように、

角質層の構造

角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献3:1990;文献4:2002)

また、角質細胞中に存在し水分を保持する働きをもつ水溶性物質は、天然保湿因子(NMF:natural Moisturizing Factor)と呼ばれ、以下の表のように、

成分 含量(%)
アミノ酸類 40.0
ピロリドンカルボン酸(PCA) 12.0
乳酸 12.0
尿素 7.0
アンモニア、尿酸、グルコサミン、クレアチン 1.5
ナトリウム(Na⁺) 5.0
カリウム(K⁺) 4.0
カルシウム(Ca²⁺) 1.5
マグネシウム(Mg²⁺) 1.5
リン酸(PO₄³⁻) 0.5
塩化物(Cl⁻) 6.0
クエン酸 0.5
糖、有機酸、ペプチド、未確認物質 8.5

アミノ酸、有機酸、塩などの集合体として存在しており(文献5:1985)、これらのアミノ酸およびその代謝物は、以下の図のように、

天然保湿因子の産生メカニズム

表皮顆粒層で産生されたフィラグリンがブレオマイシン水解酵素によって完全分解されることによって産生されることが報告されています(文献6:1983;文献7:2002)

尿素は、フィラグリンより産生されたアミノ酸の一種であるアルギニンがアルギナーゼという酵素によって変換されてできるアミノ酸代謝物であり、水分と結合するとともに角層タンパクとの間の柔軟性を向上させる役割を果たしています(文献8:2004)

このような背景から、角質層の水分保持および柔軟性に尿素が重要な役割を果たしていると考えられています。

1983年に資生堂によって報告された保湿剤の吸湿性・保水性比較検証によると、

尿素は相対湿度75%、PEG6000は84%から潮解(∗1)しはじめるため、吸湿性のみで保湿剤の保水性を評価しにくい。

∗1 物質が空気中の水(水蒸気)をとりこんで自発的に水溶液となる現象のことをいいます。

そのため、乾燥試料の10wt%水溶液を25℃相対湿度75%条件下に5時間放置したときの残存水分量をその保湿剤の保湿性として評価したところ、以下のグラフのように、

各保湿剤の吸湿性・保水性比較

各保湿剤の吸湿性は、

マルビトール = PEG6000 = グルタミン酸Na = 尿素 < グリセリン

各保湿剤の保水性は、

マルビトール << PEG6000 < グルタミン酸Na < 尿素 < グリセリン

の順序であった。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1983)、尿素に水分量増加による保湿作用が認められています。

ただし、グリセリンとの比較で明らかなように、尿素は吸湿性に優れているというわけではなく、保水性をもちつつ角質柔軟化作用を有しているという点が重視されていると考えられます。

浸透による染毛促進

浸透による染毛促進に関しては、毛髪の膨潤性(∗2)を向上させて毛髪内部へ他の薬剤の浸透を促進する作用があるため(文献10:2012)、ヘアカラー剤などに使用されています。

∗2 膨潤とは、水分を含んで膨れる(膨張する)ことです。

複合保湿原料としての尿素

尿素は、天然保湿因子を模した複合保湿原料があり、尿素と以下の成分が併用されている場合は、複合保湿原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 LACTIL
構成成分 乳酸NaPCA-Naグリシン、フルクトース、尿素ナイアシンアミド、イノシトール、安息香酸Na乳酸
特徴・主な用途 皮膚のNMFをモデル化した保湿剤
原料名 dermofeel quadegra
構成成分 、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムデンプン、尿素乳酸Na乳酸塩化Naグリセリン、レブリン酸
特徴・主な用途 天然で生分解性の毛髪および皮膚コンディショニング剤
原料名 AMC Advancesd Moisture Complex NP
構成成分 グリセリンPCA-Na尿素トレハロース、ヘキシレングリコール、ポリクオタニウム-51、トリアセチン、カプリリルグリコールヒアルロン酸Na
特徴・主な用途 水分結合特性を有する集中保湿の複合体

尿素は、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 10
育毛剤 3.0
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 3.0
薬用口唇類 3.0
薬用歯みがき類 3.0
浴用剤 3.0

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2000-2001年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

尿素の配合製品数と配合量の調査結果

スポンサーリンク

尿素の安全性(刺激性・アレルギー)について

尿素の現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1950年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:3%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2005)によると、

  • [ヒト試験] 10人の被検者に5%尿素を含む化粧水0.3mLを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、5%尿素を含む化粧水はわずかな皮膚刺激を示した(Hill Top Research,1977)
  • [ヒト試験] 16人の被検者に10%尿素ベース、ベースのみ、10%尿素ベース中の1%ヒドロコルチゾンアセテート、20%尿素を含む白色ワセリン皮膚軟化剤をそれぞれ閉塞パッチ下で21日間適用し、各24時間の最後の30分に刺激性を評価したところ、20%尿素を含む皮膚軟化剤はすべての被検者において刺激を示した。この試験物質を除き、他の試験物質ではいずれの被検者も皮膚刺激を示さなかった(Fair and Krum,1979)
  • [ヒト試験] 17人の健康な被検者を対象に異なる尿素含有物の刺激作用を評価した。20%尿素を含むワセリンまたは水溶液を上腕の内側にFinn Chamberを24時間適用し、パッチ除去1時間後に試験部位の皮膚刺激、皮膚血流、皮膚の厚さおよびTEWL(経表皮水分損失)を評価したところ、20%尿素を含む水溶液よりもワセリンのほうが反応が顕著で、皮膚血流の有意な増加が生じたが、48時間後には正常に戻った。また、ワセリンのほうで24時間後に皮膚浮腫が観察され、皮膚の厚みは両方で試験前より増加がみられた。TEWLについてはワセリンのほうは24時間で有意な増加がみられたが48時間後には正常化し、水溶液のほうでは有意な増加は観察されなかった(Agner,1992)
  • [ヒト試験] 22人の被検者に3%尿素クリーム(pH3.5)を、23人の被検者に10%尿素クリーム(pH3.5)を1日2回3週間にわたって毎日適用したところ、10%尿素クリームで3人の被検者にスティンギング(チクチクと刺すような主観的な刺激感)が生じた。炎症性皮膚反応または紅斑の報告はなかった。TEWL(経表皮水分損失)は、3%尿素クリームでは変化がなかったが、10%尿素クリームで有意に減少した(Serup,1992)
  • [ヒト試験] 健康なボランティアグループ2群(各6人)に2%尿素を含む水中油型エマルション(化粧水およびクリーム)と4%尿素を含む油中水型エマルション(化粧水およびクリーム)を塗布し、塗布1時間後に皮膚反応を評価したところ、吸着性および脱着性は尿素を含む化粧水で最も高い値を示した。吸水性は、顕著な結果が生じた。尿素を含む油中水型クリームで処理した後減少傾向がみられた。2%尿素を含む水中油型クリームおよび化粧水で処理した水分保持容量は有意に増加した。水蓄積量に関しては両方の化粧水で有意な結果は得られなかった(Treffel and Gabard,1995)
  • [ヒト試験] 50人の被検者に3%尿素を含むボディクリームを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、この製品は皮膚刺激および皮膚感作の兆候を示さなかった(TKL Inc,1997)
  • [ヒト試験] 214人の被検者に3%尿素製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、この製剤は皮膚刺激および皮膚感作の可能性を示さなかった(Consumer Product Testing Co,1999)

と記載されています。

医薬部外品においてリーブオン製品(つけっぱなしの製品)への配合濃度は3%を上限としており、試験データをみるかぎり、3%濃度以下において共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されているため、一般に3%濃度以下において皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

また、リンスオフ製品(洗い流す製品)への配合濃度は10%を上限としており、試験データをみるかぎり、10%濃度では皮膚に塗布した場合はまれにスティンギングなどの刺激報告がありますが、リンスオフ製品として通常使用する場合には安全性に問題がないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2005)によると、

  • [動物試験] 12匹のウサギに0.5%ベンザルコニウムクロリドを1日2回合計5回投与することで角膜炎を誘発し、その後2.24%尿素を含む軟膏を1日2回11日間にわたって投与し、角膜炎および角膜上皮欠損について毎日11日間にわたって検査したところ、処置された眼において有意な改善が生じ、他の変化や異常は認められなかった(Charlton et al,1996)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

尿素は保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2005)「Final Report of the Safety Assessment of Urea」International Journal of Toxicology(24)(3_Suppl),1-56.
  2. 大木 道則, 他(1994)「尿素」化学辞典,1036.
  3. 田村 健夫, 他(1990)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  4. 朝田 康夫(2002)「角質層のメカニズム」美容皮膚科学事典,22-28.
  5. 尾沢 達也, 他(1985)「皮膚保湿における保湿剤の役割」皮膚(27)(2),276-288.
  6. I Horii, et al(1983)「Histidine-rich protein as a possible origin of free amino acids of stratum corneum」Normal and Abnormal Epidermal Differentiation: Current Problems in Dermatology(11),301-315.
  7. 朝田 康夫(2002)「皮膚と水分の関係」美容皮膚科学事典,90-103.
  8. 田上 八朗(2004)「角層バリア機能と皮膚保湿機能の研究」Fragrance Journal(32)(9),10-16.
  9. 西山 聖二, 他(1983)「クリームによる皮膚水和の研究 (Ⅱ) W/Oクリームによる水和効果」日本化粧品技術者会誌(17)(2),116-120.
  10. 鈴木 一成(2012)「尿素(カルバミド)」化粧品成分用語事典2012,129-130.

スポンサーリンク

TOPへ