加水分解卵殻膜とは…成分効果と毒性を解説

保湿 抗老化成分
加水分解卵殻膜
[化粧品成分表示名称]
・加水分解卵殻膜

[医薬部外品表示名称]
・加水分解卵殻膜

キジ科動物であるニワトリ(学名:Gallus gallus domesticus 英名:Chicken)の卵殻膜を酸、アルカリまたは酵素によって加水分解して得られる水溶性の卵殻膜ペプチドです。

卵殻膜とは、鶏卵の殻と白身の間にある0.07mmの薄膜であり、殻の内側に密着するように存在し、イオンチャネル(∗1)の役割を果たすほか、外部からの最近の侵入を防ぐとともに卵の内部へ酸素を供給する酸素透過性を有しています。

∗1 イオンチャネルとは、細胞膜に存在し、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、塩素イオンなど種々の無機イオンの流入および流出を制御することで細胞内のイオン濃度、膜電位を保持・調整している仕組みのことです。

また昔から相撲部屋では擦り傷の手当てに使われており、創傷部の皮膚の再生を促進する働きを有していることも知られています。

主成分は、Ⅰ型、Ⅴ型およびⅩ型コラーゲン、グルコサミン、デスモシンおよびヒアルロン酸などの繊維状タンパク質で、これらが網目構造を形成しており、アミノ酸組成は一例ですが、

アミノ酸 割合(%)
酵素処理 アルカリ処理
リシン 3.2 – 3.3 3.2
ヒスチジン 4.0 – 4.1 4.1
アルギニン 7.2 – 8.1 7.4
トリプトファン 0.0 – 3.3 3.2
アスパラギン酸 8.7 – 8.8 9.8
トレオニン 5.7 – 8.1 4.4
セリン 5.3 – 6.8 5.0
グルタミン酸 7.6 – 12.8 14.9
プロリン 9.8 – 10.2 10.8
グリシン 6.1 – 6.9 7.9
アラニン 3.0 – 8.6 3.2
システイン 6.8 – 7.9 2.5
メチオニン 1.1 – 3.8 4.4
バリン 6.9 – 7.1 7.9
イソロイシン 3.3 – 3.4 3.4
ロイシン 4.8 – 5.5 5.0
チロシン 1.9 – 2.2 1.5
フェニルアラニン 1.6 – 1.9 1.7

このように報告されています(文献2:2018)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗浄製品、ネイル製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2016;文献3:1993;文献4:2008;文献6:2009;文献7:2010;文献8:2012;文献9:1999)

角質層水分量増加による保湿作用

角質層水分量増加による保湿作用に関しては、加水分解卵殻膜のアミノ酸組成がヒトケラチンのアミノ酸組成と類似しているため、親和性が高く、角層水分量増加による保湿効果が認められています(文献3:1993)

また1999年に東北大学医学部皮膚科によって報告された卵殻膜水溶液入り化粧水の角層保湿能におよぼす影響検証によると、

1998年12月21日から1999年2月4日までの期間において、20人の健康なボランティア(男性4人、女性16人、平均年齢28歳)の左右前腕屈折部に、クエン酸で加水分解した卵殻膜配合化粧水7μLと、比較対照として市販化粧水、ヒルドイド軟膏10μLを、室温22℃、相対湿度50%に保った室内で均一に塗布した。

資料塗布前、塗布1分後、30分後、60分後、90分後および120分後に高周波伝導度(伝導度が高いほど水分量が多い)を測定したところ、以下の表のように、

試料 高周波伝導度
塗布前 1分後 30分後 60分後 90分後 120分後
無処置
対照
50.3±4.7 50.5±4.8 46.6±4.0 44.7±3.4 45.6±4.7 45.4±4.8
卵殻膜
化粧水
52.1±4.4 334.2±51.2 161.9±20.2 144.8±15.0 140.9±16.3 149.2±19.9
ヒルドイド軟膏 48.6±4.2 315.4±31.2 173.1±13.2 155.7±13.1 149.2±14.0 148.2±12.1
市販
化粧水
52.1±3.7 269.5±35.6 105.3±7.0 87.1±8.1 82.7±6.3 78.9±8.0

加水分解卵殻膜配合化粧水は、塗布120分後で、市販化粧水より高周波伝導度値が有意に高く、ヒルドイド軟膏と比較して有意差は認められなかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:1999)、加水分解卵殻膜に角質層水分量増加による保湿作用が認められています。

さらに2010年にアルマードと東京大学の共同研究によって報告された加水分解卵膜の効果検証によると、

1%加水分解卵殻膜配合化粧水またはクリームを、30人のボランティア女性(20-65歳、各15人)の前腕と上腕に1日2回3ヶ月にわたって塗布し、対照として加水分解卵殻膜未配合化粧水またはクリームを各15人に塗布した。

3ヶ月後の化粧品塗布部位の水分量は卵殻膜群・対照群とも塗布前と比較して有意に増加したが、その増加量は卵殻膜群のほうが大きかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2010)、加水分解卵殻膜に角質層水分量増加による保湿作用が認められています。

皮膚弾力改善による抗老化作用

皮膚弾力改善による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮の構造・役割と線維芽細胞について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

真皮において細胞外マトリックスを構成するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸は、同じく真皮に点在する線維芽細胞から産生されるため、線維芽細胞が活発に働くことでこれらが正常につくられていることが皮膚のハリ・弾力維持において重要です(文献5:2002)

キューピーによって公開された技術情報によると、

in vitro試験において培養したヒト線維芽細胞に加水分解卵殻膜を0.1μg/c㎡添加し、2日間培養したところ、以下の画像のように、

加水分解卵殻膜による線維芽細胞培養試験結果

ヒト線維芽細胞の顕著な増加が確認された。

また卵殻膜ペプチド上に培養したヒト線維芽細胞でⅠ型およびⅢ型コラーゲンの発現量が増加したことも確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献1:2016)、in vitro試験において加水分解卵殻膜に線維芽細胞増殖促進作用が認められています。

次に2008年および2009年にアルマードと東京大学の共同研究によって報告された加水分解卵膜の効果検証によると、

ヒト皮膚線維芽細胞に加水分解卵殻膜を特異的に作用させたin vitro実験において、ヒアルロン酸合成酵素2(Has2)のmRNAが卵殻膜ペプチド60~100 mg/mlで度依存的に増加した。

またヒト皮膚に加水分解卵殻膜配合化粧品を1日2回2ヶ月間にわたって塗布した結果、皮膚の弾性が増加する傾向がみられた。

加水分解卵殻膜はin vitro試験において線維芽細胞増殖作用を示すこと、かつヒアルロン酸合成酵素のmRNAを増加させることを考慮すると、ヒト皮膚における弾性の改善傾向は、線維芽細胞の増殖および/またはヒアルロン酸の改善が影響したと考えられる。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2008;文献6:2009)、加水分解卵殻膜による抗老化作用が認められています。

さらに2010年にアルマードと東京大学の共同研究によって報告された加水分解卵膜の効果検証によると、

1%加水分解卵殻膜配合化粧水またはクリームを、30人のボランティア女性(20-65歳、各15人)の前腕と上腕に1日2回3ヶ月にわたって塗布し、対照として加水分解卵殻膜未配合化粧水またはクリームを各15人に塗布した。

3ヶ月後の化粧品塗布部位の水分量は卵殻膜群・対照群とも塗布前と比較して有意に増加したが、その増加量は卵殻膜群のほうが大きかった。

弾力性は、卵殻膜群で有意な増加が確認された。

in vitroにおいて培養したヒト線維芽細胞への加水分解卵殻膜添加による線維芽細胞の増殖やヒアルロン酸合成酵素のmRNA発現量増加などの試験結果から卵殻膜成分の皮膚状態改善機能の存在が示唆された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2010)、加水分解卵殻膜に皮膚弾力改善による抗老化作用が認められています。

また2012年にアルマードと東京大学の共同研究によって報告された加水分解卵膜の効果検証によると、

ヒト皮膚線維芽細胞は、細胞膜を真似た人工ホスホリルコリンポリマーに加水分解卵殻膜を添加して培養した場合、創傷治癒過程初期に必須のⅢ型コラーゲン、デコリン、MMP2遺伝子を、コラーゲンコートおよび細胞培養ディッシュ上の条件に比較して有意に高く発現することをすでに発表した。

そこでさらにヒトを対象とした実験を実施した。

30人の女性被検者(20-65歳)の上腕部および前腕部に1%または0%加水分解卵殻膜配合化粧水またはクリームを1日2回3ヶ月塗布したあと、皮膚粘弾性の変化を評価した。

その結果1%加水分解卵殻膜配合化粧品群で、塗布前後において皮膚粘弾性指標の有意な上昇がみられた。

In vitroおよび動物実験の結果を踏まえ、ヒトにおける弾力性アップには、『Ⅲ型コラーゲン・デコリン・MMP2』の組み合わせが鍵となると考えられる。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2012)、加水分解卵殻膜に皮膚弾力改善による抗老化作用が認められています。

現時点では、加水分解卵殻膜による抗老化作用と、in vitro試験結果で報告されている線維芽細胞の増殖やヒアルロン酸合成酵素のmRNA発現量増加との関連性は示唆しているものの明確化はされておらず、明確化にはさらなる検討が必要であると考えられます。

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加水分解卵殻膜の安全性(刺激性・アレルギー)について

加水分解卵殻膜の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、卵にアレルギーを有する場合は、アナフィラキシーまたは接触皮膚炎を惹起する可能性があるため、注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

キューピーの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • 皮膚一次性試験の結果、皮膚刺激性なし
  • [ヒト試験] ヒトパッチテストの結果、異常なし
  • 皮膚感作性試験の結果、陰性

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、卵にアレルギーを有する場合は、アナフィラキシーまたは接触皮膚炎を惹起する可能性があるため、注意が必要です。

眼刺激性について

キューピーの安全性データ(文献1:2016)によると、

  • 眼粘膜刺激性試験の結果、眼刺激性なし

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

加水分解卵殻膜は保湿成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. キューピー株式会社(2016)「EMプロテイン」技術資料.
  2. キューピー株式会社(2018)「卵殻膜加水分解物」特開2018-177713.
  3. キューピー株式会社(1993)「卵殻膜分解物」特開平5-97897.
  4. 藤田 恵理, 他(2008)「卵殻膜ペプチドの皮膚への効果」日本皮膚科学会 第107回日本皮膚科学会総会.
  5. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30-31.
  6. 藤田 恵理, 他(2009)「卵殻膜ペプチドの皮膚への効果」日本皮膚科学会 第108回日本皮膚科学会総会.
  7. 藤田 恵理, 他(2010)「可溶性卵殻膜入り化粧品のヒト皮膚への効果」日本皮膚科学会 第109回日本皮膚科学会総会.
  8. 藤田 恵理, 他(2012)「加水分解卵殻膜塗布によるヒト皮膚の粘弾性およびマウス皮膚Ⅲ型コラーゲンの増加」第44回日本結合組織学会学術大会・第59回マトリックス研究大会合同学術集会.
  9. 沼上 克子, 他(1999)「卵殻・膜末水溶液入り化粧水の角層保湿能におよぼす影響について」皮膚(41)(3),387-390.

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