加水分解シルクとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 バリア改善成分 付着
加水分解シルク
[化粧品成分表示名称]
・加水分解シルク

[医薬部外品表示名称]
・加水分解シルク液、加水分解シルク末

蚕(かいこ)の絹繊維を構成するタンパク質であるフィブロインを酸、アルカリまたはタンパク質分解酵素の下で加水分解して得られる可溶性シルクです。

他のタンパク質加水分解物と比較すると、サラッとした使用感を有しています(文献2:2016)

シルクに存在するフィブロインとは、以下のシルクの断面図をみるとわかりやすいと思いますが、

シルクの断面図

蚕の絹糸の約70%を占める主要成分であり、その主要なアミノ酸組成は、加水分解の方法などで多少の変動はありますが、

アミノ酸 割合
グリシン 約43%
アラニン 約30%
セリン 約10%
チロシン 約5%

このような組成比となっており(文献3:1969;文献4:2000)、酸性アミノ酸や塩基性アミノ酸はほとんど存在しません。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、洗浄製品など様々な製品に使用されます(文献2:2016;文献4:2000;文献6:2005;文献7:2016)

表皮細胞の情報伝達正常化によるバリア改善作用

表皮細胞の情報伝達正常化によるバリア改善作用に関しては、まず前提知識として表皮細胞の情報伝達とバリア機能の関係について解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層には、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっています。

また表皮細胞は、乾燥や紫外線などの外部ストレスを受けると、細胞膜に存在するイオンチャネル(∗1)を介して、瞬時に周りの細胞に情報を伝えて恒常性の維持を図ることが明らかになっていますが、乾燥や紫外線などの外部ストレスが過度になると、イオンチャネルのバランスが崩れ、この情報伝達システムが正常に機能しなくなることも明らかになっています(文献5:2004)

∗1 イオンチャネルとは、細胞膜に存在し、カルシウムイオン、ナトリウムイオン、塩素イオンなど種々の無機イオンの流入および流出を制御することで細胞内のイオン濃度、膜電位を保持・調整している仕組みのことです。

また乾燥や紫外線などの外部ストレスが過度になり、イオンチャネルのバランスが崩れ、この情報伝達システムが正常に機能しなくなると、バリア機能の低下や肌の乾燥などの原因となること明らかとなっています(文献5:2004)

このような背景から、表皮の情報伝達システムを正常な状態に戻し、肌状態を回復させることは重要であると考えられます。

2005年に資生堂によって公開された技術情報によると、

ヒト前腕部の皮膚にテープストリッピングを施して破壊された皮膚バリア機能が、もとの状態へ回復していく過程を、経皮水分蒸散量(TEWL)を指標として評価した。

皮膚バリアが破壊された前腕部に0.95%加水分解シルク(加水分解フィブロイン)水溶液100μLを塗布し、その上にラップをのせて約5分後にそれを剥がし、1.5時間経過後にTEWLを測定し、各時間の測定値から角層除去前のTEWL値を差し引き、回復率を算出したところ、以下のグラフのように、

加水分解シルク(加水分解フィブロイン)の皮膚バリア回復効果

加水分解シルク(加水分解フィブロイン)は、無添加と比較して有意に皮膚バリアの回復を示した。

なお配合範囲は0.0001%-1%が好ましく、より好ましくは0.01%-0.001%である。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2005)、加水分解シルクに表皮細胞の情報伝達正常化によるバリア改善作用が認められています。

まつ毛への付着

まつ毛への付着に関しては、加水分解シルクは水に溶解し、粘着性のある皮膜を形成するため、まつ毛への付着性を向上させることができ、また乾くと粘着性のない柔らかな皮膜を形成するため、まつ毛同士が付着しあう束つき現象は起こらないと報告されています(文献7:2016)

このような背景から、まつ毛への付着性向上目的でマスカラなどのまつ毛メイクアップ化粧品に配合されます。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2015年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

加水分解シルクの配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

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加水分解シルクの安全性(刺激性・アレルギー)について

加水分解シルクの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし
  • 光毒性・光感作性:ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2015)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者(男性2人、女性18人)に20%加水分解シルク水溶液~3mgを閉塞パッチ(Finn Chamber)下で48時間適用したところ、パッチ除去30分後で3人の被検者に軽度の紅斑が観察され、24時間では3人のうち1人に軽度の皮膚刺激がみられた。残りの17人の被検者には皮膚刺激はなかった(Dermis Research Center Co,2003)
  • [ヒト試験] 24人に被検者(男性10人、女性14人)の背中に6.5%加水分解シルク水溶液0.2mLを24時間閉塞パッチ適用したところ、非刺激性物質として分類された(Osaka City Institute of Public Health Sciences,1984)
  • [ヒト試験] 57人の被検者を対象に加水分解シルク0.2mL(濃度不明)のHRIPT(皮膚刺激&皮膚感作性試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、非刺激性および非感作性だと結論付けられた(Consumer Product Testing Co,1997)
  • [ヒト試験] 49人の被検者を対象に加水分解シルク(平均分子量=1,000Da)2mLのHRIPT(皮膚刺激&皮膚感作性試験)を半閉塞パッチ下で実施したところ、誘導期間中で1人の被検者において9回目のパッチ除去後一過性の紅斑(非刺激性および非アレルギー性)がみられ、この被検者はチャレンジパッチでほとんど知覚できない紅斑を有したが臨床的にアレルギー性接触皮膚炎または炎症の兆候ではないと結論づけた(Essex Testing Clinic,1985)
  • [ヒト試験] 48人の被検者を対象に20%加水分解シルク20μLのHRIPT(皮膚刺激&皮膚感作性試験)を閉塞パッチ(Finn Chamber)下で実施したところ、加水分解シルクは非刺激性および非感作性であった(Aster Cosmétologie,2004)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に27%または32%加水分解シルク水溶液を処理したところ、非刺激性であると判断された(Active Concepts,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、ほとんど共通して皮膚刺激性や皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性や皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に15%-25%加水分解シルク水溶液0.1mLを点眼し、眼はすすがず、Draize法に基づいて72時間まで観察したところ、加水分解シルクはウサギの眼に対して実質非刺激性であった(Consumer Product Testing Co,1997)
  • [動物試験] 6匹のウサギの右眼に6.5%加水分解シルク水溶液(平均分子量~300Da)を点眼し、24,48および72時間後に反応を評価したところ、1匹のウサギにわずかな結膜の赤みが観察された。アメリカの連邦危険物法(FHSA)の定義によると、加水分解シルクが眼の刺激剤に分類される可能性は低いと結論付けられた。またより高い分子量の加水分解シルク(平均分子量650Da)を用いてウサギに同じ手順で試験し評価したところ、眼刺激性はなかった(Faculty Medicin, Hiroshima University,1985)
  • [動物試験] 6匹のウサギの右眼に加水分解シルク(平均分子量~1,000Da)0.1mLを点眼し、24,48および72時間後に角膜混濁、虹彩炎または結膜炎の兆候を観察したところ、加水分解シルクはウサギの眼に事実上非刺激性であると結論づけた(Consumer Product Testing Co,1985)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2015)によると、

  • [動物試験] 6匹のモルモットの背中のに6.5%加水分解シルク(平均分子量650Da)0.05mLを1日2時間週5回合計10回適用し、2時間UV照射した。2週間の無処置期間をおいて適用部位を2時間UV照射し、24,48および72時間後に検査したところ、試験部位に照射の影響はみられなかったため、加水分解シルクはこの試験において非光感作性であると考えられた(Faculty Medicin, Hiroshima University,1985)
  • [動物試験] 6匹のモルモットに6.5%加水分解シルク(平均分子量650Da)水溶液0.05mLを適用し、ある部位には一度UVランプを照射、他方は非照射とし、24,48および72時間後に皮膚反応を観察したところ、加水分解シルクは非光毒性に分類された(Faculty Medicin, Hiroshima University,1985)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光感作性なしと報告されているため、光感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

加水分解シルクは、保湿成分、バリア改善成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 バリア改善成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2015)「Safety Assessment of Silk Protein Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「アミノ酸およびペプチド」パーソナルケアハンドブック,410.
  3. 塩崎 英樹, 他(1969)「フィブロイン繊維のアミノ酸分布について」日本蚕糸学雑誌(38)(3),230-236.
  4. 大海 須恵子, 他(2000)「シルク加水分解物類およびそれらの誘導体について」Fragrance Journal(28)(4),22-27.
  5. “株式会社資生堂”(2004)「外部刺激を瞬時に伝える表皮細胞の新しい情報伝達システムを解明」, <https://www.shiseidogroup.jp/newsimg/archive/00000000000458/458_h8s48_jp.pdf> 2019年1月15日アクセス.
  6. 株式会社資生堂(2005)「皮膚バリアー機能回復促進剤」特開2005-002063.
  7. 大東化成工業株式会社(2016)「睫用化粧料」特開2016-041673.

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