加水分解シルクとは…成分効果と毒性を解説

保湿成分 美白成分 エモリエント成分
加水分解シルク
[化粧品成分表示名称]
・加水分解シルク

[医薬部外品表示名称]
・加水分解シルク液、加水分解シルク末

蚕(かいこ)の絹繊維を酸、アルカリ、またはたんぱく質分解酵素などで加水分解(∗1)して抽出、精製して得られるわずかに特異なにおいのある白色~薄黄色の粉末または液体です。

∗1 加水分解とは化合物が水と反応して起こす分解反応ですが、分子量が大きくて肌に浸透しないたんぱく質を小さく分解して浸透しやすい状態にすることです。

成分としては、たんぱく質で構成されており、

  • フィブロイン:70%
  • セリシン:30%

という2つのたんぱく質が主成分で、これらのたんぱく質のアミノ酸組成は、

という構成でなりたっています(文献1:2009)

この成分構成をみるとわかるように、加水分解シルクはフィブロインとセリシンという2つのタンパク質でできていますが、もっと詳細に分解するとおよそ4種類のアミノ酸で成り立っていることがわかります。

これらのアミノ酸は、肌の表皮の保湿成分として有名な天然保湿因子(NMF)の40%を占めるアミノ酸の一種なので、その効果は肌の水分を保持したり、バリア機能を強化するものとなります。

多くのたんぱく質加水分解物に比べると吸湿性は少ないですが、皮膚や毛髪に対する吸着性や浸透性に優れているので、良好な保湿効果が期待できます。

また、チロシナーゼ活性抑制作用があり、メラニン色素の生成を抑える美白効果もあります。

さらに、乾燥や紫外線などの外部刺激を受けた皮膚のバリア機能低下や乾燥を予防するなど皮膚に対する幅広い効果が期待できるためスキンケア化粧品やヘアケア化粧品に幅広く使用されています。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

加水分解シルクの配合製品数と配合量の調査結果(2015年)

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加水分解シルクの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

加水分解シルクの現時点での安全性は、皮膚刺激性および眼刺激性はほとんどなく、皮膚感作(アレルギー)の報告もないため、安全性の高い成分であると考えられます。

ただし、シルクアレルギーの方はアレルギーを引き起こす可能性があるので、使用を控えることをおすすめします。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗1)やレポートを参照しています。

∗1 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Silk Protein Ingredients as Used in Cosmetics」(文献2:2015)によると、

  • [ヒト試験] 20人の被検者(男性2人、女性18人)に20%加水分解シルク水溶液~3mgを閉塞パッチ(Finn Chamber)下で48時間適用したところ、パッチ除去30分後で3人の被検者に軽度の紅斑が観察され、24時間では3人のうち1人に軽度の皮膚刺激がみられた。残りの17人の被検者には皮膚刺激はなかった
  • [ヒト試験] 24人に被検者(男性10人、女性14人)の背中に6.5%加水分解シルク水溶液0.2mLを24時間閉塞パッチ適用したところ、非刺激性物質として分類された
  • [ヒト試験] 57人の被検者の腰部に誘導期間として加水分解シルク0.2mL(濃度不明)を半閉塞パッチ下で繰り返し適用(HRIPT)した。チャレンジパッチを処置部位と前腕の未処置部位に適用し、24および48時間後に適用部位を評価したところ、非刺激性および非感作性だと結論付けられた
  • [ヒト試験] 49人の被検者に誘導期間として加水分解シルク(平均分子量=1,000Da)2mLを半閉塞パッチ下で繰り返し適用(HRIPT)し、チャレンジパッチは24時間未処置部位に適用した。24および48時間後に適用部位を評価したところ、誘導期間の中で1人の被検者において9回目のパッチ除去後一過性の紅斑(非刺激性および非アレルギー性)がみられ、この被検者はチャレンジパッチでほとんど知覚できない紅斑を有したが臨床的にアレルギー性接触皮膚炎または炎症の兆候ではないと結論づけた
  • [ヒト試験] 48人の被検者の背中に誘導期間において20%加水分解シルク20μLを閉塞パッチ(Finn Chamber)下で48時間繰り返し適用(HRIPT)し、チャレンジ期間においては未処置部位に48時間パッチ適用し評価したところ、加水分解シルクは非刺激性および非感作性であった

と記載されています。

試験では1人の被検者で24時間後も皮膚刺激が観察されていますが、ほとんど皮膚刺激性や皮膚感作性なしという結果のため、皮膚刺激性や皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

ただし、加水分解シルクは動物性たんぱく質なのでアレルギーの抗原(∗2)になりえますし、シルクアレルギーの方は使用を控えることをおすすめします。

∗2 生体には、非自己的な物質を投与されたとき、それに対応する抗体や感作リンパ球をつくりだす性質がありますが、こうした反応を引き起こす異物を抗原と呼びます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Silk Protein Ingredients as Used in Cosmetics」(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に15%~25%加水分解シルク水溶液0.1mLを点眼し、眼はすすがず、Draize法に基づいて72時間まで観察したところ、加水分解シルクはウサギの眼に対して実質非刺激性であった
  • [動物試験] 6匹のウサギの右眼に6.5%加水分解シルク水溶液(平均分子量~300Da)を点眼し、24,48および72時間後に反応を評価したところ、1匹のウサギにわずかな結膜の赤みが観察された。アメリカの連邦危険物法(FHSA)の定義によると、加水分解シルクが眼の刺激剤に分類される可能性は低いと結論付けられた。またより高い分子量の加水分解シルク(平均分子量650Da)を用いてウサギに同じ手順で試験し評価したところ、眼刺激性はなかった
  • [動物試験] 6匹のウサギの右眼に加水分解シルク(平均分子量~1,000Da)0.1mLを点眼し、24,48および72時間後に角膜混濁、虹彩炎または結膜炎の兆候を観察したところ、加水分解シルクはウサギの眼に事実上非刺激性であると結論づけた

と記載されています。

試験結果は共通して眼刺激性なしと結論付けられているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Silk Protein Ingredients as Used in Cosmetics」(文献2:2015)によると、

  • [動物試験] 6匹のモルモットの背中のに6.5%加水分解シルク(平均分子量650Da)0.05mLを1日2時間週5回合計10回適用し、2時間UV照射した。2週間の無処置期間をおいて適用部位を2時間UV照射し、24,48および72時間後に検査したところ、試験部位に照射の影響はみられなかったため、加水分解シルクはこの試験において非光感作性であると考えられた

と記載されています。

試験結果はひとつで根拠としては弱いですが、照射の影響がいずれのモルモットにもみあたらないため、現時点では光感作性はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
加水分解シルク

参考までに化粧品毒性判定事典によると、加水分解シルクは■(&lowast3;)となっており、やや毒性ありという判定です。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

加水分解シルクはベース成分、保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:ベース成分 保湿成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. アミノ酸-タンパク質と生命活動の化学-(2009):59-60
  2. “Cosmetic Ingredient Review”(2015)「Safety Assessment of Silk Protein Ingredients as Used in Cosmetics」, <https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR699.pdf> 2017年11月7日アクセス.

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