加水分解エラスチンとは…成分効果と毒性を解説

保湿 効果促進成分
加水分解エラスチン
[化粧品成分表示名称]
・加水分解エラスチン

[医薬部外品表示名称]
・加水分解エラスチン

生体組織(∗1)より抽出・精製して得られるエラスチン(不溶性)を酸またはアルカリによって化学処理またはエラスターゼで加水分解して得られる可溶性エラスチンです。

∗1 2001年に国内でもBSE(狂牛病)が問題視される中でウシ由来エラスチンの使用が控えられ、代替として主に魚介類などのエラスチンが使用されてきています。これらの代替生物は、熱変性温度(安定性)には多少の差異はありますが、効果に有意な違いはなく、全体的な理解として由来の差異は無視して解説します。

エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、生体内においてコラーゲンとともに項靭帯、血管、皮膚などの常に伸縮が繰り返されている結合組織中に繊維状タンパク質として存在し、皮膚においては、以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

主に真皮において線維芽細胞から合成され、水分を多量に保持したヒアルロン酸コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類(グリコサミノグルカン)を維持・保護しながら規則的に配列し皮膚のハリを支える膠原状タンパク質であるコラーゲンの交差上に存在し、コラーゲン同士に絡まり、バネのように支えて皮膚の弾力性を保ちます(文献3:2002)

エラスチンおよび加水分解エラスチンを構成するアミノ酸は、コラーゲンと同様にグリシンが約⅓と最も多く、アラニンバリンプロリンが主要のアミノ酸です(文献2:2016)

また加水分解エラスチンの分子量は、主に2,000-5,000程度のものが多量に分布しています(文献2:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品など様々な製品に使用されます(文献2:2016;文献4:2001;文献5:2001;文献6:2001;文献7:2001;文献8:2012)

保湿作用

保湿作用に関しては、2001年に公開されたノエビアの技術情報によると、

開口したバイアル瓶に精製水100mLを入れ、開口部を0.45μmのメンブランフィルターで覆い、固定して作製した皮膚モデルに各試料1%配合乳液50mgを滴下し、メンブランフィルター上に20分後に保持されている水分量を測定したところ、以下の表のように、

試料 pH 保湿効果
タラ皮由来加水分解エラスチン 4.0 1.55
タラ皮由来加水分解エラスチン 3.0 1.04
無添加(精製水) 0.40

1%タラ皮由来加水分解エラスチン配合乳液は、無添加と比較して有意に保湿効果を示し、またタラ皮由来加水分解エラスチンにおいてpH4.0で最も保湿効果を示した。

また保存性および乳化安定性の観点からもpH4.0が最も優れていた。

このような検証結果が明らかにされており(文献4:2001)、加水分解エラスチンに保湿作用が認められています。

また2012年に日本水産によって報告された加水分解エラスチンの保湿試験によると、

32人の女性被検者(30-50歳代)に0.01%加水分解コラーゲン配合クリームを5日間使用してもらい、2日間の休息期間を設けた後に0.01%加水分解コラーゲンと0.05%加水分解エラスチン配合クリームを5日間使用してもらった。

その後、使用後の肌の乾燥を5段階で評価してもらったところ、以下の表のように、

試料 評価(回答全体の割合:%)
かなり改善 やや改善 合計
加水分解コラーゲン 9 19 28
加水分解コラーゲン + 加水分解エラスチン 9 28 38

加水分解エラスチンを併用した場合において、加水分解コラーゲン単独よりも改善効果を実感する割合が多いことがわかった。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2012)、加水分解エラスチンに保湿作用が認められています。

植物エキスの効果発揮作用

植物エキスの効果発揮作用に関しては、2001年に公開されたノエビアの技術情報によると、

5α-リダクターゼ阻害作用を有する各植物抽出物0.3%を配合した養毛剤と、これらの養毛剤にさらに0.3%タラ皮由来加水分解エラスチン(pH4.0)を配合した養毛剤の毛髪再生能を、剃毛したマウスの背部にそれぞれの養毛剤を1日1回塗布し、剃毛後20日における再生毛面積比(再生毛面積/剃毛面積)を測定することで評価したところ、以下の表のように、

配合した植物抽出物 再生毛面積比
加水分解エラスチン未配合 加水分解エラスチン配合
セージ抽出物 0.62 0.87
ホップ抽出物 0.69 0.94
ローズマリー抽出物 0.61 0.89
オトギリソウ抽出物 0.65 0.92
ハッカ抽出物 0.58 0.86
セイヨウハッカ抽出物 0.67 0.91
カミツレ抽出物 0.59 0.84
アルニカ抽出物 0.64 0.85
タイム抽出物 0.68 0.90

タラ皮由来加水分解エラスチン(pH4.0)を配合した養毛剤は、タラ皮由来加水分解エラスチンを配合していない養毛剤に比べ、顕著な毛髪再生能が示された。

次に美白作用を有する植物抽出物0.5%を配合した美白液と、これらの美白液にさらに0.5%タラ皮由来加水分解エラスチン(pH4.0)を配合した美白液の色素沈着改善効果検討した。

20人のパネラーを1群とし、各群にそれぞれの美白液を1日2回1ヶ月にわたって使用してもらい、1ヶ月後の皮膚の色素沈着の状態を使用前と比較して5段階評価(4:強度 3:中程度 2:軽度 1:微妙 0:色素沈着なし)したところ、以下の表のように、

配合した植物抽出物 色素沈着状態
加水分解エラスチン未配合 加水分解エラスチン配合
使用前 使用後 使用前 使用後
ハマメリス抽出物 3.75 2.75 3.75 2.25
マロニエ抽出物 3.80 2.40 3.75 2.00
イタドリ抽出物 3.70 2.60 3.80 1.85
メリッサ抽出物 3.70 2.55 3.80 1.90
カワラヨモギ抽出物 3.80 2.50 3.65 2.05
セイヨウノコギリソウ抽出物 3.60 2.45 3.70 2.20
ボダイジュ抽出物 3.80 2.60 3.70 1.95
オトギリソウ抽出物 3.75 2.55 3.80 1.80
タイム抽出物 3.75 2.65 3.75 2.00

タラ皮由来加水分解エラスチン(pH4.0)を配合した美白液は、タラ皮由来加水分解エラスチンを配合していない美白液に比べ、使用後の色素沈着症状において高い改善度が示された。

さらにシワ・キメ・ハリの改善作用を有する植物抽出物においてもタラ皮由来加水分解エラスチンを配合した場合と未配合の場合において同様の傾向が示された。

なお植物抽出物は、通常化粧品に配合されている植物抽出物であれば、特に限定されない。

また配合範囲は、効果や製剤の安定性の点から0.001%-5%の濃度範囲が好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2001)、加水分解エラスチンに植物エキスの効果発揮作用が認められています。

保湿成分の効果発揮作用

保湿成分の効果発揮作用に関しては、2001年に公開されたノエビアの技術情報によると、

各保湿成分と0.5%加水分解エラスチンを配合した保湿クリームと、比較として保湿成分のみ、加水分解エラスチンのみまたは保湿成分および加水分解エラスチン未配合クリームの保湿効果を検討するために皮膚の乾燥症状の改善効果を評価した。

40-60歳代の男女被検者20人ずつに1日2回1ヶ月間使用してもらい、1ヶ月後の肌状態について使用前と比べて潤い、ハリ、柔軟性が改善したと回答した人数を以下の表に示したところ、

保湿成分 配合量(%) 評価
保湿成分 加水分解
エラスチン
潤い ハリ 柔軟性
ヒアルロン酸Na 1.00 0.5 20 20 19
加水分解コラーゲン 1.00 0.5 19 20 18
マルトース 3.00 0.5 17 18 19
グリセリン 10.00 0.5 17 16 16
ベタイン 3.00 0.5 18 17 19
コンブ50重量%BG抽出物 3.00 0.5 19 18 16
セラミド類似構造物 1.00 0.5 20 19 20
大豆リン脂質 1.00 0.5 19 20 20
イソステアリン酸コレステリル 3.00 0.5 19 18 20
↓  比較  ↓
なし 0.00 1.00 15 14 13
ヒアルロン酸Na 1.00 0.00 12 11 10
なし 0.00 0.00 10 11 8

保湿成分と加水分解エラスチン(pH4.0)を配合したクリームは、皮膚の潤い、ハリ、柔軟性の顕著な改善が示された。

それに対して、ヒアルロン酸Naまたは加水分解エラスチンを単独で配合した比較例においては、どちらも配合していない比較例よりは皮膚の潤い、ハリ、柔軟性改善効果が認められるが、1.0%ヒアルロン酸Naと0.5%加水分解エラスチン含有クリームのほうが皮膚改善効果が顕著に認められた。

なお保湿成分は、通常化粧品に配合されている保湿成分であれば特に限定されない。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2001)、加水分解エラスチンに保湿成分の効果発揮作用が認められています。

抗酸化成分の効果発揮作用

抗酸化成分の効果発揮作用に関しては、2001年に公開されたノエビアの技術情報によると、

抗酸化成分と加水分解エラスチンを配合したクリームと、抗酸化成分のみ、加水分解エラスチンのみまたは抗酸化成分および加水分解エラスチン未配合クリームを用いて6ヶ月の使用試験を実施した。

顕著なシワの発生もしくは弾性の低下などの皮膚症状を有する40-60歳代の女性20人を1群とし、各クリームをブラインドにて使用してもらい、使用開始前と使用終了後の皮膚状態を観察し、シワおよび皮膚弾性の改善状況について3段階(改善、やや改善、変化なし)にて評価したところ、以下の表のように、

抗酸化成分 配合量(%) シワ評価 弾性評価
抗酸化成分 加水分解
エラスチン
改善 やや改善 改善 やや改善
β-カロテン 0.1 0.5 16 4 19 1
ハマメリス
タンニン
0.05 0.5 19 1 20 0
ルテイン 0.5 0.3 18 2 16 4
酢酸トコフェロール 0.5 0.3 17 3 17 3
↓  比較  ↓
なし 0.0 1.0 9 8 10 7
β-カロテン 0.3 0.0 8 8 10 6
ハマメリス
タンニン
0.2 0.0 10 7 8 7
ルテイン 1.0 0.0 9 6 7 9
酢酸トコフェロール 1.0 0.0 10 8 10 6
なし 0.0 0.0 4 8 1 5

抗酸化成分と加水分解エラスチンを配合したクリームにおいては、シワおよび皮膚弾性の改善が認められない被検者は存在せず、16人以上の被検者において明確な改善が認められた。

一方で比較例においては、抗酸化成分と加水分解エラスチンのどちらも未配合のクリームよりシワおよび弾性の改善傾向が認められたが、明確な改善が認められた被検者の数は10人以下であった。

なお抗酸化成分は、通常化粧品に配合されている抗酸化成分であれば種類、基原を問わない。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2001)、加水分解エラスチンに抗酸化成分の効果発揮作用が認められています。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2016-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

加水分解エラスチンの配合製品数と配合量の調査結果(2016-2017年)

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加水分解エラスチンの安全性(刺激性・アレルギー)について

加水分解エラスチンの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

これらの結果から、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2017)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギにDraize法に基づいて未希釈の加水分解エラスチン(平均分子量~3,000Da)を24時間閉塞パッチ適用したところ、一次刺激スコアは最大8.0のうち0.38で、本質的に刺激剤ではなかった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に加水分解エラスチン(平均分子量~4,000Da、濃度不明)を処理したところ、皮膚刺激性は予測されなかった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(Irritection Dermal model)を用いて、角層表面に加水分解エラスチンを25%,50%,75%,100%および125μLで処理したところ、皮膚刺激性は予測されなかった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に加水分解エラスチン(ウシの皮膚)を処理したところ、皮膚刺激性は予測されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性なしと報告されているため、皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2017)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギにDraize法に基づいて未希釈の加水分解エラスチン(平均分子量~3,000Da)を点眼し、すすがずに評価したところ、本質的に眼刺激剤ではなかった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に未希釈の加水分解エラスチン(大西洋タラ由来)を処理したところ、眼刺激性は予測されなかった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に加水分解エラスチン(若いウシ由来)を25%,50%,75%,100%および125μLで処理したところ、眼刺激性は予測されなかった
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に未希釈の加水分解エラスチン(ウシ由来)を処理したところ、眼刺激性は予測されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性試験データ(文献1:2017)によると、

  • [ヒト試験] 52人の被検者を対象に25%加水分解エラスチン(分子量:3,000)含有コーンオイルのHRIPT(皮膚刺激&皮膚感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(CPTC Inc,1982)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

加水分解エラスチンは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2017)「Safety Assessment of Skin and Connective Tissue-Derived Proteins and Peptides as Used in Cosmetics」Final Report.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「アミノ酸およびペプチド」パーソナルケアハンドブック,409.
  3. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  4. 株式会社ノエビア(2001)「皮膚外用剤」特開2001-48770.
  5. 株式会社ノエビア(2001)「皮膚外用剤」特開2001-72569.
  6. 株式会社ノエビア(2001)「皮膚外用剤」特開2001-72570.
  7. 株式会社ノエビア(2001)「皮膚外用剤」特開2001-72571.
  8. 山之内 智(2012)「N-アセチルグルコサミン(天然由来)・加水分解エラスチンの機能について」Fragrance Journal(40)(8),81-84.

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