リンゴ果実エキスとは…成分効果と毒性を解説

保湿
リンゴ果実エキス
[化粧品成分表示名称]
・リンゴ果実エキス

[医薬部外品表示名称]
・リンゴエキス

バラ科植物リンゴ(学名:Malus pumila = Malus domestica = Pyrus malus 英名:Apple)の果実からBGまたはPGで抽出して得られる抽出物植物エキスです。

リンゴ(林檎)はコーカサス、小アジア地方を原産とし、西は欧州、東はインド北部を経て中国に入ったと考えられており、現在は主に中国、米国、トルコ、インド、イラン、ポーランドなどで栽培されています(文献1:2017;文献2:2019)

一方で中国には小果のリンゴ(学名:malus asiatica)が原生し、これが鎌倉時代(1192-1333年)以前に日本に渡来したと推定されていますが(文献1:2017)、大果のリンゴが日本に渡来したのは江戸末期の文久年間(1861-1864年)であり、明治5年(1872年)からリンゴ産業が本格化し、現在は青森県と長野県を中心に冷涼な気候の地域で栽培されています(文献1:2017;文献3:-)

リンゴ果実エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 単糖 フルクトース、グルコースソルビトール
少糖 スクロース
有機酸 リンゴ酸クエン酸

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2017;文献4:1967)

リンゴ果実の化粧品以外の主な用途としては、食品分野においてそのほとんどが生食用として用いられ、そのほか焼きリンゴ、アップルパイ、ケーキ、ジャム、ジュース、アップルティー、果実酒などに用いられています(文献1:2017)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品など様々な製品に汎用されています。

また、フルーツ(果物)やリンゴをコンセプトにした製品にも配合されています。

皮表柔軟化による保湿作用

皮表柔軟化による保湿作用に関しては、まず前提知識として皮膚最外層である角質層の構造と役割について解説します。

直接外界に接する皮膚最外層である角質層は、以下の図のように

角質層の構造

天然保湿因子を含む角質と角質の間を細胞間脂質で満たした、レンガとモルタルの関係と同様の構造となっており、この構造が保持されることによって、外界からの物理的あるいは化学的影響から身体を守り、かつ体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐとともに一定の水分を保持する役割を担っています(文献5:2002;文献6:2001)

一方で、老人性乾皮症やアトピー性皮膚炎においては、角質細胞中のアミノ酸などの天然保湿因子が顕著に低下していることが報告されています(文献7:1989;文献8:1991)

このような背景から、皮表を柔軟化することは肌の乾燥の改善ひいては皮膚の健常性の維持につながると考えられています。

リンゴ果実エキスは、フルクトース、グルコースソルビトールスクロースなど糖類の含有量が多いことから、皮膚を柔軟化する保湿効果を目的としてスキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディ&ハンドケア製品、洗顔料、クレンジング製品、シャンプー製品など様々な製品に汎用されています(文献9:2012;文献10:2020)

ただし、保湿効果を裏付ける試験データはみつけられておらず、みつかりしだい追補します。

複合植物エキスとしてのリンゴ果実エキス

リンゴ果実エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、リンゴ果実エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 フルーツリンクルプロテクトエッセンス
構成成分 サンザシエキスナツメ果実エキスグレープフルーツ果実エキスリンゴ果実エキス、オレンジ果汁、レモン果汁、ライム果汁
特徴 よどみのないフレッシュな肌への生まれ変わりをコンセプトとし、表皮角化細胞の増殖促進による表皮ターンオーバーの向上、CE強化因子産生促進によるバリア機能の向上、メラノサイト活性化因子の発現抑制による色素沈着抑制、h-BD3発現促進によるニキビの防止といった異なる作用で新鮮な肌(健常な皮膚)への生まれ変わりに総合的にアプローチする7種類の植物抽出液
原料名 AquaSpeed
構成成分 スイカ果実エキス、リンゴ果実エキス、ヒラマメ果実エキス、PCA-Na乳酸Naグリセリン
特徴 角層水分量の増加および保湿持続性に優れることから乾燥による小ジワに対しての改善効果にアプローチする3種の植物抽出液および2種の天然保湿因子(NMF)の混合液

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2015-2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品は、洗い流し製品(シャンプー、ヘアコンディショナー、ボディソープ、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

リンゴ果実エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2015-2016年)

リンゴ果実エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

リンゴ果実エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献11:2016)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に20%リンゴ果実エキスを含む製品を処理したところ、この試験物質は非刺激性に分類された(Active Concepts,2015)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養表皮モデル(EpiDerm)を用いて、角層表面に20%リンゴ果実エキスを含む製品を処理したところ、この試験物質は非刺激性に分類された(Active Concepts,2015)
  • [動物試験] 3匹のウサギの皮膚に20%リンゴ果実エキス水溶液を4時間単回適用し、OECD404テストガイドラインに基づいて皮膚刺激性を評価したところ、わずかな皮膚刺激性に分類された(Anonymous,2015)
  • [動物試験] ウサギの皮膚を用いて20%リンゴ果実エキス水溶液のMaximization皮膚感作性試験を実施し、OECD406テストガイドラインに基づいて皮膚感作性を評価したところ、陽性反応は観察されなかった。ただし、皮膚刺激は誘発しないもののわずかな皮膚感作を誘発する可能性があると結論付けられた(Anonymous,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献11:2016)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に20%リンゴ果実エキスを含む製品を処理したところ、この試験物質は非刺激性に分類された(Active Concepts,2015)
  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に20%リンゴ果実エキスを含む製品を処理したところ、この試験物質は非刺激性に分類された(Active Concepts,2015)
  • [in vitro試験] ウサギの角膜繊維細胞を使用して10%リンゴ果実エキス水溶液を処理したところ、細胞死は15%であり、したがって細胞障害性は無視できると判断した(Anonymous,2015)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼に20%リンゴ果実エキス水溶液0.1mLを点眼し、眼はすすがず、眼刺激性を評価したところ、試験物質は眼に対してわずかに刺激性があった(Anonymous,2015)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、一般に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

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リンゴ果実エキスは保湿成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分

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参考文献:

  1. 杉田 浩一, 他(2017)「りんご」新版 日本食品大事典,834-839.
  2. 中央果実協会(2019)「リンゴ」, <http://www.japanfruit.jp/Portals/0/resources/JFF/kaigai/jyoho/jyoho-pdf/KKNJ_138.pdf> 2021年2月7日アクセス.
  3. “りんご大学”(-)「日本国内生産量」, <https://www.ringodaigaku.com/study/statistics/statistics.html> 2021年1月29日アクセス.
  4. 森 健, 他(1967)「果実の有機酸組成に関する研究」日本食品工業学会誌(14)(5),187-192.
  5. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  6. 田村 健夫, 他(2001)「表皮」香粧品科学 理論と実際 第4版,30-33.
  7. I Horii, et al(1989)「Stratum corneum hydration and amino acid content in xerotic skin」British Journal of Dermatology(121)(5),587-592.
  8. M. Watanabe, et al(1991)「Functional analyses of the superficial stratum corneum in atopic xerosis」Archives of Dermatology(127)(11),1689-1692.
  9. 鈴木 一成(2012)「リンゴエキス」化粧品成分用語事典2012,353.
  10. 宇山 侊男, 他(2020)「リンゴ果実エキス」化粧品成分ガイド 第7版,153.
  11. Cosmetic Ingredient Review(2016)「Safety Assessment of Apple-derived Ingredients as Used in Cosmetics」Final Report.

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