ポリクオタニウム-51とは…成分効果と毒性を解説

保湿 帯電防止 ヘアコンディショニング 毛髪保護
ポリクオタニウム-51
[化粧品成分表示名称]
・ポリクオタニウム-51

[医薬部外品表示名称]
・2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液

化学構造的に細胞膜を構成するリン脂質の一種であるホスファチジルコリンの極性基をもつ2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルを8:2で重合した、分子量10万-100万(平均70万)の水溶性重合体(∗1)です。

∗1 重合体とは、複数の単量体(モノマー:monomer)が分子結合し、鎖状や網状にまとまって機能する多量体(ポリマー:polymer)であり、一般的に高分子化合物です。

リン脂質とは、以下の図のように、

細胞膜の構造

脂肪酸鎖(疎水基)とリン酸基(親水基)で構成された両親媒性の脂質であり、生体細胞膜では図のように脂質二重層を形成し、主要な構成要素となります。

ポリクオタニウム-51を構成している2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC:2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine)は、リン脂質と類似した構造のリン脂質極性基を側鎖にもつ重合体であり、保湿剤として皮膚に塗布することで透明の水和ゲル膜を形成し、皮膚刺激緩和、水分蒸散抑制およびバリア機能の低下した角層の角層細胞面積増加によるバリア機能改善など角層に複合的な効果を付与することが報告されています(文献2:1996;文献3:1999)

この2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンの角層に対する効果のメカニズムは、水和ゲル膜が物理的なバリア代替物として水分蒸散量や物質の透過を抑制することで、角層に水分が保持され、皮膚トラブルの原因となりうる物質との接触が減少し、その結果として角層状態が改善されたためと考えられており、このような背景から擬似角層として機能する生体適合性リン脂質ポリマーとも呼ばれています(文献3:1999)

そして、高い親水性をもつ2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンとの重合に選択されているのが、疎水性の炭素数4のアルキルメタクリレートであるメタクリル酸ブチル(ブチルメタクリレート)であり、一般的に8:2の組成で合成されています。

このような組成のポリクオタニウム-51は、分子が両親媒性であり、界面活性能を有していますが、化粧品への配合目的としては2-メタクロイルオキシエチルホスホリルコリンに起因する皮膚や毛髪への複合的な保湿効果が主であり、界面活性能は皮膚や毛髪への吸着効果として保湿能やコンディショニング作用の向上効果として機能するため、一般的には界面活性能を有する保湿剤として知られています。

また、界面活性能を有していますが、医療機器分野においてはコンタクトレンズの保存液およびケア用品に、医療分野においては生体適合性を応用し体内に使用する人工医療機器に用いられていることから(文献4:2010)、生体に対する安全性の高さが知られています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的でスキンケア化粧品、ヘアケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、シート&マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品、トリートメントインシャンプー製品、ネイルケア製品など様々な製品に汎用されています。

水分保持能および経表皮水分量蒸散抑制による保湿作用

水分保持能および経表皮水分量蒸散抑制による保湿作用に関しては、まず前提知識として水分保持能および経表皮水分蒸散について解説します。

以下の表皮における角質層の構造をみてもらうとわかりやすいと思いますが、

角質層の構造

皮膚の最外層である角質層は、様々な刺激や物質の侵入を防いだり、体内の水分が体外へ過剰に蒸散していくのを防ぐバリア機能が備わっているのと同時に一定の水分が保持されており、バリア機能の維持と水分保持能は密接に関連しています。

皮膚表面から水分が蒸散されることを経表皮水分蒸散(TEWL:Transepidermal Water Loss)といいますが、経表皮水分蒸散が大きくなるということは、バリア機能が低下していることを意味しており、経表皮水分蒸散は、角質層のバリア機能低下のバロメーターでもあります(文献6:2002)

一般的にTEWLは、年齢を重ねるごとに大きくなる傾向にあり、また表皮の新陳代謝異常が起こると、角質層の細胞間脂質に形状異常がみられるようになり、TEWLが大きくなることで最終的に角質細胞が規則的に並ばなくなり、そこに生じた隙間からさらに水分が蒸散し、バリア機能・保湿機能が低下する結果となります(文献6:2002)

このような背景から、水分保持能の維持および経表皮水分の蒸散を抑制することは、健常な皮膚の維持において重要であると考えられます。

1998年に日油によって報告された皮膚に対するポリクオタニウム-51の保湿性検証によると、

ポリクオタニウム-51をスキンケア化粧品に配合した場合におけるヒト皮膚の保湿性を検討した。

左前腕内側に0.2%ポリクオタニウム-51を含む50%BG水溶液と比較対照として0.2%ヒアルロン酸Naを含む50%BG水溶液を塗布し、塗布50分後、その後塗布部位を水洗し水洗直後、水洗後2時間経過後に溶液塗布前の水分量を1として相対皮膚水分量を計測したところ、以下のグラフのように、

ヒト皮膚に対するポリクオタニウム-51の保湿性

ポリクオタニウム-51は、ヒアルロン酸Na溶液と比較して塗布後および水洗後の両方において同等以上の水分保持能を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1998)、ポリクオタニウム-51にヒアルロン酸Naと同等以上の水分保持能による保湿作用が認められています。

ポリクオタニウム-51のヒト皮膚水分保持メカニズムは、ポリクオタニウム-51が分子中に疎水部分を有することにより皮膚に吸着し、なおかつリン脂質の存在により含水膜をつくり、その含水膜が洗浄後も存在するためと考えられています(文献5:1998)

次に、同じく1998年に日油によって報告された皮膚に対するポリクオタニウム-51の水分蒸散量検証によると、

前腕内側に1%ポリクオタニウム-51を含む化粧水と対照としてポリクオタニウム-51を含まないベース化粧水を1日2回(朝と夜)塗布し、1日目と7日目にベース化粧水塗布部位の皮膚水分蒸散量を1として相対皮膚水分蒸散量を測定したところ、以下のグラフのように、

ヒト皮膚に対するポリクオタニウム-51の水分蒸散量

ポリクオタニウム-51塗布部位は、ベース化粧水塗布部位と比較して皮膚の水分蒸散量が経時的に減少する傾向が認められた。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1998)、ポリクオタニウム-51に経表皮水分量蒸散抑制による保湿作用が認められています。

ポリクオタニウム-51の経表皮水分量蒸散抑制メカニズムは、ポリクオタニウム-51を長期的に連用することにより、皮膚表面の水分量が高い状態で保持されたこと、およびポリクオタニウム-51のリン脂質極性基が細胞間脂質のラメラ構造の形成に寄与したことで、角層のバリア機能が改善されたためであると推測されています(文献5:1998)

帯電防止

帯電防止に関しては、まず前提知識として帯電防止について解説します。

水道水やシャンプーは一般的に弱酸性(pH5-6)であることから、ぬれた毛髪の表面はマイナスに帯電しており、一方で陽イオン界面活性剤は以下の図のように、

陽イオン界面活性剤の構造図

親水基部分がプラスの荷電をもっている構造であることから、親水基部分がマイナスに帯電した毛髪表面に静電的に吸着します。

そして、疎水基(親油基)部分は外側を向くため、毛髪表面が親油基で覆われることでなめらかになり、その結果として静電気の発生をおさえ(帯電防止)、すすぎや乾燥後の摩擦を低減し、毛髪のくし通りがよくなります(文献7:1990;文献8:2010)

ポリクオタニウム-51は、分子中に親水部分と疎水部分が存在することから界面活性能を有しており、吸湿により導電性が向上する性質であるため、毛髪にコーティングすることで低湿度下においても毛髪の静電気発生を防止することが明らかにされています(文献5:1998)

このような背景から、帯電防止目的でヘアミスト、ヘアマスク、ヘアジェルなどアウトバスヘアトリートメント・ヘアケア製品やトリートメントインシャンプー製品などに使用されています。

水分量増加によるヘアコンディショニング作用

水分量増加によるヘアコンディショニング作用に関しては、1998年に日油によって報告された毛髪に対するポリクオタニウム-51の保湿性検証によると、

女性健常毛を用いて1%ポリクオタニウム-51水溶液に浸漬した後、恒温恒湿室(24℃,相対湿度30%)で1昼夜放置した処理毛および比較対照として水に浸漬した後、恒温恒湿室(24℃,相対湿度30%)で1昼夜放置した未処理毛の水分量を測定したところ、以下のグラフのように、

ヒト毛髪に対するポリクオタニウム-51の保湿性

ポリクオタニウム-51水溶液で処理した毛髪は、未処理毛と比較して約3質量%高い値を示し、毛髪にポリクオタニウム-51を塗布することにより毛髪の保湿性が向上することが明らかとなった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:1998)、ポリクオタニウム-51に経表皮水分量蒸散抑制による保湿作用が認められています。

毛髪に対するポリクオタニウム-51の保湿性の向上メカニズムは、ポリクオタニウム-51は毛髪表面に皮膜を形成し、低湿度下でポリクオタニウム-51の親水部分が水分を保持したまま皮膜内部に潜在化するためと考えられています(文献5:1998)

毛髪保護作用

毛髪保護作用に関しては、ポリクオタニウム-51は分子中に疎水部分が存在し、かつ高分子であることから毛髪に対する吸着力および被膜形成能が高いことが明らかにされており(文献5:1998)、ヘアコンディショニング作用および帯電防止など毛髪に対する複合的な効果目的でヘアケア製品に使用されています。

効果・作用についての補足

ポリクオタニウム-51は、安全性が高く、かつ分子が両親媒性であり界面活性能を有するため、化粧品に配合される他の界面活性剤の配合量を低減できることから(文献5:1998)、複合的な保湿性など主となる効果を付与しつつ界面活性助剤として処方されている可能性が考えられます。

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ポリクオタニウム-51の安全性(刺激性・アレルギー)について

ポリクオタニウム-51の現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 1990年代からの使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:ほとんどなし-最小限
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

日油の安全性データ(文献1:2006;文献5:1998)によると、

  • [ヒト試験] 被検者に5%ポリクオタニウム-51水溶液をパッチテストしたところ、いずれの被検者も陰性であった
  • [動物試験] ウサギの皮膚に5%ポリクオタニウム-51水溶液をパッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれのウサギも皮膚刺激性を示さなかった
  • [動物試験] モルモットに5%ポリクオタニウム-51水溶液を対象に皮膚感作性試験を実施したところ、いずれのモルモットも皮膚感作を示さなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作なしと報告されていることから、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

日油の安全性データ(文献1:2006;文献5:1998)によると、

  • [動物試験] ウサギの眼に5%ポリクオタニウム-51水溶液を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、この試験物質は実質的に非刺激剤であった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、実質的に眼刺激性なしと報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

∗∗∗

ポリクオタニウム-51は保湿成分、帯電防止成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:保湿成分 帯電防止剤

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文献一覧:

  1. 日油株式会社(2006)「LIPIDURE-PMB」material Safety Data Sheet.
  2. 大場 愛, 他(1996)「複機能性リン脂質ポリマーpoly (MPC) の角層結合水増加作用と乾燥性荒肌および乾燥性皮膚疾患に対する効果」日本化粧品技術者会誌(30)(4),428-440.
  3. 神保 和子, 他(1999)「リン脂質ポリマー水和ゲル膜のバリアー効果と角層機能改善効果」日本化粧品技術者会誌(33)(2),147-153.
  4. “LIPIDURE(リピジュア)”(2010)「リピジュアの活用」, <http://www.lipidure.com/use/> 2019年12月16日アクセス.
  5. 土田 衛, 他(1998)「化粧品用リン脂質コポリマーpoly(MPC-co-BMA)の合成と応用」Fragrance Journal(26)(7),97-104.
  6. 朝田 康夫(2002)「保湿能力と水分喪失の関係は」美容皮膚科学事典,103-104.
  7. 田村 健夫, 他(1990)「ヘアリンスの主剤とその作用」香粧品科学 理論と実際 第4版,456-460.
  8. 鐵 真希男(2010)「コンディショナーの配合成分と製剤」化学と教育(58)(11),536-537.

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